ありふれた異世界で転生特典【ボカロ曲】を使って楽しんでみる   作:夢のまた夢

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え?あぁ、そう。……えぇ?マジで?

「それじゃあ、冒険再開としますか」

(次はどこへ向かうのですか?)

 

天使の質問に少し悩む。

 

「そうだな……、俺以外の転移先ってどこかわかるのか?」

(そうですねぇ?多分王都あたりだと思いますよ?あそこは神山が近くにあるので)

 

「ならそこに行くとするか」

(ちなみに途中にホルアドという町がありまして、そこで少し観光するのはどうでしょう?)

「……それはアリだ」

 

「まえからおもってたけど、だれとしゃべってるの?いまじなりーふれんど?」

 

「その言葉をどこで知ったのか気になるが、そういや説明してなかったな」

 

俺はリオネに天使の存在、そして目的について説明する。

 

「まず、そもそも俺はこの世界の人間じゃない。別の世界から連れてこられたんだ。エヒトとかいうここの神にな」

 

「そうなの?」

 

最近まで野生で生活していたリオネからするとイマイチ理解が及ばないのか、不思議そうな顔をする。

 

「そう。んで、俺はここに来るときに前の世界の天使に会ってな?その天使のお仲間がここトータスに逃げたらしいから、俺はそれを手伝っているんだ」

 

「じゃあいままでてんしとはなしていたの?」

 

「ああ、今は俺の魂の中に入ってる」

 

「なるほど、りかいした」

 

「それじゃあこれから王都に行くぞ。あ、でも少し別の町によるけどな」

 

「りょうかいした!」

 

──────────

 

「くっ、こんなんじゃ、南雲くんは救えない……!」

 

白崎香織は焦っていた。自らの弱さに。

 

彼女には好きな人がいた。ステータスプレートに告げられた天職から、『無能』の烙印を押された、南雲ハジメである。しかし、現在彼はホルアドの町にはいなかった。

 

異世界に転移して来てオルクス大迷宮へと潜ったとき、運悪く転移トラップの先の奈落へと落ちてしまったのである。彼を守る約束をしたのに。

 

そして白崎香織は決意した。必ず南雲ハジメを助けると。そしてその頃にはハジメを守れるように強くなると。

 

……なお、現在ハジメは奈落の底で恋人と言えるような存在と出会い、大迷宮から生還していることを、彼女は知らない。

 

「もっと……もっと……」

 

香織は今、大迷宮の強い魔物ではなく、外にいる弱い魔物と戦いながら、新たな魔法を研究していた。

 

「優しき光は全てを抱く───【光輪】」

 

無数の光の輪を形成し、それを網状にして狼の魔物へと被せ、動きを止める。しかし強度が足りず、爪で突き破り、網から這って出て、そのまま襲いかかる。

 

「きゃっ……!」

 

咄嗟に左に体を倒したことで避けることができたが、魔物は続け様に襲ってくる。

 

自分の死を悟り、香織は目を瞑る。

 

 

 

 

 

しかし、痛みになかなか来ないため、恐る恐る目を開ける。

 

「あれ、もしかしてなんか轢いた?」

 

聞き覚えがある声。

 

ここにあるはずのない列車。

 

そこから降りてきた謎の少女。

 

その後ろには、香織の友達であり、唯一トータスで見かけなかった者、神崎伊織がいた。

 

──────────

 

「あっぶねぇー、もう少しずれてたら危うく香織を轢くところだった……」

 

「ホントに危なかったんだからね!でもそれのおかげで助かったわけだけど……」

 

香織に列車のことを叱責され、少し気分を落とす。問題の中心によくいるコイツには怒られたくなかった。

 

「でも今までどこ行ってたの?王都にはいなかったし、それにその子だって……」

 

香織はリオネについて言及する。

 

「わたし、リオネ」

 

「ああ、それについては話が長くなるから後でしてほしい。というかここには香織しかいないのか?」

 

「いや、雫ちゃんもいるけど、実は私いまナイショで鍛錬してたから……」

 

「いるのならちょうどいい。雫を呼んできてくれ」

 

俺だと説明下手だから、下手な説明でもちゃんと理解することができる人がいた方が楽である。

 

それを言葉にする前に理解したのか、香織は「わかった!」といって、雫を呼びにどこかへ行ってしまった。……いや、コレ多分猪突猛進ガールが働いてるだけだな。

 

 

 

4、5分したのち、雫を連れて香織がやってくる。雫は俺の顔を見て、息をのむ。

 

「……い、伊織……?」

 

「おう、同名同姓の別の人じゃない限りは合ってるぞ」

 

「良かった……、貴方が生きてて、てっきり死んじゃったのかと……」

 

「そう簡単に死なないからな。少なくとも香織と光輝の暴走が安定するまでは」

 

「伊織くん?それはどういう意味かな?」

 

「ホントのことだろ。言われて嫌なら直せ。そんなだからハジメと結ばれねぇんだ」

 

「んなっ……そんなことないもん!」

 

「ハイハイ、二人ともそこまで。にしても本当に生きてて良かった。アンタまでいなくなったら……」

 

雫の顔がどんどん暗くなる。まずい、これ今良くないスイッチ入ってるな雫のヤツ。これはもしや誰か死んだか?

 

「……まあ一旦どこか休める場所に行こう。そっちも色々あったみたいだしな」

 

「……それもそうね。貴方には聞きたいことも多いし」

 

俺は雫に提案すると頷き、今使っている宿の部屋で話そうと、雫に案内される。

 

皆が席についたのを見計らい、集まった目的を切り出す。

 

「それじゃあ話し合うか。これからの、異世界の方針を」

 

──────────

 

俺はこれまでの出来事について、転生者であること、天使のことをぼやかし、自身の能力である【ボカロ曲】のことは転移したときについてきた能力ということにして、大迷宮の攻略やエヒトの所業をメインとして伝えた。

 

「つまり、神エヒトは私達を元の世界に帰すつもりは初めからなかったってこと?」

 

「おそらくな。元々アイツは人を玩具の駒としか思ってない。なら、自力で帰る方法を見つける方が確実だろうよ。同時に、エヒトを信仰している教会の連中はあんま信用しないほうがいいと思うぞ」

 

向こうの教会関係者がどのように説明していたかはわからないが、おそらく戦争に力を貸せば帰してくれるとかそんなこと言っていたのだろう。無論雫も同じように考えていそうだが。

 

「なるほど、わかったわ。元から少し胡散臭く感じてはいたけど、そうだったとは……」

 

「ま、そう落ち込むな。その代わり、帰る方法に目星はついてる。神代魔法が集まり次第、クラスメイト集めて帰らすよ」

 

「そのことなんだけど」

 

雫は神代魔法の眠る迷宮について聞く。

 

「神代魔法の眠る迷宮ってどのくらい強いの?オルクス大迷宮には入ったことあるけど、そこまで魔物は強くなかったわよ?」

 

「そうだな、オルクス大迷宮はわからないが、少なくとも俺が攻略したところは二人とも死ぬだろうな」

 

「……これでも地球にいた頃より強くなっているわ。それでもなの?」

 

「おう。──だって俺の攻撃に気付けてないし」

 

「え?」

 

何か違和感を感じたのか雫たちは自分の首に手を当てる。見れば指先に自身の血が付着しており、思考が停止する。

 

「……これって──」

 

「俺は今超高速で二人の首の皮を一枚裂いた。これに反応しろ、とまでは言わないが、まあ厳しいだろうな。気を抜いていたのもあると思うが」

 

「これほどまでの強さ……、どうやって手に入れたの?」

 

「手に入れたというかなんというか……、経験?まあいいや。それはそれとして」

 

とりあえず話を切り上げ、俺が今一番聞きたい話題に入る。

 

「異世界に来てから、何があった?」

 

──────────

 

「……え?マジで?ハジメ死んだの?」

 

「……死んでないよ」

 

話を聞き、口走ってしまった言葉を香織は即座に否定する。

 

「……まだ死体は見つかってないから、生きてるかもしれない。だから私達は、今オルクス大迷宮に潜ってる。少なくとも、私は信じてる」

 

「………うぉぅ

 

あまりにも覚悟がキマッている香織の言葉に、絞り出したようなうめき声が俺の喉から聞こえた。愛が重いって香織さん。

 

「伊織はこれからどうするつもりなの?一緒に行動する?」

 

「いや、俺はこのまま神代魔法の入手に勤しむことにするよ」

 

「いいの?伊織ってハジメくんと仲良かったでしょ?」

 

「だからこそっていうか、会うまでもないっていうか、まあ香織と同じかな。最初聞いたときこそ驚いたけど、ハジメのことだから生き残って『やっ!久しいね伊織』とか言ってくるだろ」

 

「いやそれだと体乗っ取られてるじゃない」

 

「まあともかくは別行動だな。なんだかんだ俺も異世界旅行を楽しんでるし」

 

「満喫ねぇ……。私達が苦労して迷宮攻略に精を注いでいる間に、そんなことしてたのねぇ……一発くらい殴っても良いかしら」

 

あ、やっべ。余計なこと言った。貼り付けた笑顔と漂う怒気が俺を襲う。

 

「落ち着け雫。お前は今冷静さを欠いている」

 

「あら、心配いらないわ。今極めて冷静に貴方を切り伏せることを考えているわ」

 

徐に剣を取り出す雫。何も言わずに土下座の姿勢に入る俺。

 

面倒見のいい姉的存在から逆らえない鬼嫁的立ち位置にジョブチェンジした瞬間である。

 

なお、親友達のやりとりを一人で見ていた香織は、後にこう語る。

 

『やりとりが夫婦みたいで、私もハジメくんとこんなやりとりできる関係になりたいな』

 

──────────

 

アンカジ公国で買ってきた土産を雫に与えたことで解放された。アンカジにいたときの俺ナイス。

 

「そうそう。聞き忘れてたけど、その子はどうしたの?」

 

「わたし、リオネ。イオリにしえき(テイム)された」

 

「「て、てい……む……?」」

 

どういうことかと、無言でこちらを見つめる香織。その後ろで冷やかな視線を向け、見損なったとばかりにため息をつく雫。

 

せっかくお土産で気分良くしたのにリオネが台無しにしやがった。悪気はないんだろうけどさぁ?絶対今ので『ロリコン』のレッテルを貼られただろ。

 

「リオネ。お前言葉が足りなさすぎだ。あと元の姿に戻ってくれ。その姿でテイムって言われると俺が変態みたいじゃねぇか」

 

「?そおなの?わかった」

 

魔力が体を包み込み、球状へと変わる。数秒して魔力が消え去り、現れた姿は、自分でも久々に見たリオネ本来の魔獣の姿だった。ただ、大きさは手のひらサイズにしてもらった。

 

「え!?もしかしてこのクリオネが、さっきの少女?」

 

「すごい!メ◯モンみたい!」

 

さっきまで可愛らしい少女だったリオネの、別ベクトルの可愛らしい姿に驚きを隠せない雫。普通に能力の凄さに驚く香織。

 

「おう。ちなみに他の魔物の姿にもなれるぞ」

 

すると何も命令していないのに兎の姿へと変化させる。

 

「か……可愛い……!」

 

口元に手を当てて喜びを隠しきれない雫。機嫌を直してもらうためにも、俺は【オブソミート】でカットされた人参を用意する。

 

「はい。雫ってこういう小動物のふれあい体験みたいなの好きだったろ?」

 

「いいの?」

 

そう確認を取りながらもやる気満々の雫さん。

最初は恐る恐る人参を手に近づくが、やがてリオネが人参を食べると堅かった表情がどんどん崩れていき、とても満喫そうな顔に変化していく。

 

「伊織!この子触っても良いかしら!?」

 

「おう、良いぞ。リオネもいいって言ってるし」

 

リオネを興奮している雫に渡し、膝に乗せる。軽く背中を撫でられると嬉しそうに首を震わせた。その仕草にさらに口角が上がる雫。

 

「少しの間、この子を預けてもらえないかしら!」

 

「いや流石に預けることはできない」

 

こうして話が脱線し、状況報告からリオネを預ける交渉に変わっていった。

 

──────────

 

「それじゃ、見つかったら報告するわ」

 

「伊織くんも大迷宮攻略、頑張ってね!」

 

「わかった。が、ちょっと待ってくれ」

 

最終的に次また会ったとき、リオネを犠牲にする(モフらせる)ことを条件に諦めてもらった。

 

そしてこの前作ったトランシーバーを香織に渡す。

 

「?これって──」

 

「トランシーバー。ハジメが見つかったり、何か緊急事態に陥ったらそれを使え。あと雫」

 

「なに?」

 

【マジック・メイド】を使い、刀を作り出す。雫の目の前で。

 

「この西洋風の世界に刀があると思えないからな。作ってやったぞ。ほれ」

 

「うわっ、とと」

 

放り投げた刀を慌てて雫がキャッチする。続けて、その刀の説明をする。

 

「その刀は雫の魔力に応じて強度、切れ味が変化し、傷を熱することで再生しにくくさせる、【聖剣】ならぬ【魔刀】だ。おまけに実体のない敵にダメージを与える特殊加工済みだ」

 

「え!?そ、そんなもの私にあげちゃってもいいの?」

 

あまりにも強い武器に本当にもらっていいのか困惑する雫。

 

「むしろあげるために作ったんだから当然だろ。それ使っておけばそう簡単に死ぬことはないだろうし」

 

刀を鞘から抜いてみると、刃が日光を浴びて黒く光る。その美しさに雫は息を呑んだ。

 

「こんなにま綺麗な刀、見たことない……。ありがとう、大切に使わせてもらうわ」

 

「喜んでくれて良かった。大事に使ってくれよ?」

 

「ところでこの後どこ行くの?」

 

「そうだなぁ、どうせここには戻ってくるし、ライセン大峡谷あたりにでも行こうかな?」

 

「大丈夫?そこって魔法が使えないんじゃなかった?」

 

「まあ問題ないだろ。俺別に魔法メインで戦うわけじゃないし。んじゃ、無事にハジメを救ってこいよ」

 

「うん!私、頑張るよ!」

「そっちも無理しないでよ?」

 

手を振る香織と雫を背に、俺はホルアドの町を出た。

 

──────────

 

(よかったのですか?香織さんと雫さんを置いていって)

「きっと大丈夫だろ。一応雫には俺の作った【魔刀】を渡しているし。後あの二人以外にも生徒がいるはずだ。わざわざ俺が行く必要はないな」

 

本音を言うと恵里と幸利にも会いたかったが、教会の関係者と会いたくないしな……、どうしたもんか。

 

ところで。

 

「いつまでついてくるつもりだ?」

 

「気づいていたのですね」

 

後ろを振り向くと知らない銀髪の女性が立っていた。

 

「まあな。別に俺もやましいことがあるわけじゃないんだけどな。……多分教会の関係者か?」

 

「間違ってはないですね。私は神の使徒、ツヴォルツ。ホルアドでの貴方の行動を監視していました」

 

「ほう、なるほど。つまりはエヒト直属の部下ってことか。いいのか?それを俺に伝えて」

 

「問題ありません。……ここで貴方は死ぬからです」

 

「だよな!【すろぉもぉしょん】」

 

外套を脱ぎ、現れた天使のような羽を無数に飛ばす。即座に【すろぉもぉしょん】を発動させ、羽を全て躱わす。

 

攻撃が終わり、余裕そうにツヴォルツは話を続ける。

 

「貴方の力は今後エヒト様の邪魔になります。なので、力をつける前に始末することとなりました」

 

「へぇ、エヒトってヤツはだいぶ臆病なんだな。俺なんかに構う暇があるほど、やることないのかよ」

 

「挑発は私に聞きません。私には感情がないので」

 

「ハッ(笑)。感情ないって、厨二病かよ(笑)。そういうヤツに限って意外と感情あるんだよな。今のだって強がりにしか聞こえないし」

 

ツヴォルツは目を細め、静かに怒りを抱きながら、大剣を構える。

 

その様子を不敵に笑い、睨む。

 

「神を殺すつもりなんだ。天使くらい殺せねぇとなぁ……!」

 

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