ただの普通の一般人がISに乗ってみた。   作:酢酸

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酢酸です。
初投稿なので大目に見てくれたら幸いです。


第0章
プロローグ1


「で、夏休み前に俺だけ呼び出しされてんですかね?」

 

7月も終盤に差し掛かり、明日からは中学最後の夏休みが始まる。明日からはのんびり過ごそうと思っていた俺こと木瀬亮太は帰り際に担任に呼び出しをくらい、進路指導室で顔を合わせている。

 

「お前だけでてねぇーんだよ、進路調査書」

 

担任である葛西はテーブルの上に置かれている紙をとんとんとたたく。

 

「期限なんざとっくに過ぎてんだよ。さっさと出しやがれ」

 

無精ひげをはやし、右目の上に傷痕のある葛西先生は中学教師というよりはヤクザの構成員といったほうがよっぽどしっくりくる。今だって恐喝にしか見えない。なのに生活指導部の主任である。

 

「そんな事急にいわれましてもねぇ~、困っちゃいますよ」

「アホ、1か月前から言ってるわ」

 

葛西は胸ポケットから煙草を取出し、吸い始めた。普通生徒のいる前で吸うか?

 

「だいたいなんだ、お前のその頭。ゴールデンレトリバーかと思ったぞ」

「馬鹿にしてんのか!これでも相当な決心で染めたんだぞ!」

 

俺は染めたての金髪を葛西に向けていった。

 

「夏休み中に染めるやつはよくいるが、夏休み前に染めて学校に来たのかお前が初めてだよ・・・」

 

葛西は呆れたようにため息をついた。

 

「おかげで教頭に小言いわれる羽目になるしよ。・・・あ~思い出したらムカついてきた。木瀬、教頭自慢の外車に傷つけてこい。あるいはパンクさせてこい」

「あんた生徒に何させようとしてんだ!」

「アホ、俺の生徒に金髪頭はいねぇーよ」

 

葛西は煙草の煙を俺に向けて吐き出した。

 

「うわ、ケムい!やめろ極道教師!」

「んだとこら!根性焼きすんぞ!」

「おうおう上等だ!そのまま教師クビになれ!」

 

立ち上がりしばらく睨み合っていたが、葛西がため息をついてソファーに座った。俺も倣うようにして座る。

 

「たく、こんな事してる場合じゃねぇんだよ。こっちはお前がこれを出さなきゃ帰れねぇーんだよ」

 

葛西はボールペンを投げつけた。俺はそれを片手でキャッチする。

 

「お前がどうしても決まらねぇーなら俺がお前の学力にあった高校を2、3校探してやる。とりあえず今考えているとこあったら書いてみろ。お前はそこまで馬鹿じゃねーから選択は結構あるはずだろ」

 

俺はボールペンは握りながら考える。確かに俺はそこまで頭は悪くない。しかしだからと言って頭がいいわけでもない。いわば「普通」なのである。どこにでもいる普通の中学生。そして俺はそんな自分があまり好きではない。

俺は第一志望の欄に「IS学園」と書いた。その瞬間葛西のゲンコツが俺の頭に落ちてきた。

 

「ふざけてんのかお前は?」

「はい、その通りです・・・」

「はぁ~、たく、お前は面倒を増やすやつだな。もういい、今日はもう帰れ。そんで明日また来い。高校探しするぞ」

「えぇ~、ガチで?」

「文句いってんじゃねぇ」

 

葛西はソファーから立ち上がり、部屋を出て行こうとした。

 

「鍵閉めるからさっさと出ろ」

 

俺はリュックを背負いながら席を立つ。そしてある疑問を一つ聞いてみた。

 

「なあ、葛西」

「あ?」

「なんで教師を目指したんだ?」

 

葛西はあっけにとられた顔をしたがすぐに背を向けて歩き出した。

 

「え、おい、」

「てめぇにはぜってぇ教えねぇ」

「は?なんでだよ!」

「うるせぇ!その話題に触れるな!」

 

速足になった葛西を追いかける。なんか地雷踏んだ感じだな。

 

「いいからてめぇはさっさと帰れ。寄り道すんなよ」

 

そういうと葛西は職員室に入って行ってしまった。

 

「なんだよ、たく・・・」

 

釈然とはしないが解放されたわけだし、さっさと家に帰るか。

 

 

 

 

 

学校を出ると夏の日差しがジリジリと差し、グラウンドからは部活動の掛け声が聞こえる。3年間無部の俺としてはこのクソ熱い中練習する奴らは表彰されてもいいと思う。

そんな事を考えながらうだるような暑さに耐え、俺は家に向かう。とは言っても学校から家までは5分とかからない距離にある。少し行ったところに「木瀬商店」と書かれた古い看板が掲げられた商店がある。日用雑貨から駄菓子まで売っているこの商店こそが俺の家である。

中に入り、丸椅子に座り膝に猫をのせているばあちゃんに声をかける。

 

「ばあちゃん、帰ったよ」

「ああ、りょうぼう。おかえり」

 

白髪の頭に目じりにしわのたまって、優しそうな笑みを浮かべているこの人がこの家の主「木瀬久美子」。通称ばあちゃん。両親の出張が多く、友達も作りづらい環境だったため、小学校4年生の頃から母方のばあちゃんに預けられている。ばあちゃんも一人暮らしなのでよろこんで受け入れてくれたらしい。

 

「店番変わるよ。今日は暑いからばあちゃんは休んでてよ」

「帰ってきたばかりで悪いね。冷蔵庫にラムネがあるから飲んでいいよ」

「サンキュー、ばあちゃん」

 

ばあちゃんが立ち上がると膝に乗っていた猫も飛び下り、店の外に出て行ってしまった。

 

「この暑いのによく外に出れるな、セリは。蒸し焼きになるぞ」

「猫はどこかで日陰を探してきっと寝てるよ。心配いらんよ。じゃ、りょうぼう後は任せるね」

「おう」

 

ばあちゃんはそういうとそのまま店の奥に入っていった。

俺は販売用の冷蔵庫からラムネを取出した。ビー玉を押し、パンと音と同時に飲み口のビー玉がはずれ、ラムネ飲んだ。

 

「あぁ~、沁みる~」

 

どかっ、と丸椅子に座る。

しばらくはお客も来ないし、暇になるだろうな。と、そんな事を思っているとある雑誌が俺の目にとまった。この店では普段置いていない雑誌があった。パラパラとめくっていくと「インフィニット・ストライプス」という女性向けの雑誌で各国のIS操縦者を紹介した特集記事が掲載されていた。といってもほとんどグラビアみたいなものであったが。

 

「ISねぇ・・・」

 

IS。正式名称「インフィニット・ストラトス」。もともとは宇宙開発用のマルチスーツとして開発されたのだがなんの因果か「白騎士事件」とかいうでかい事件もあって今ではすっかり軍事転用されてしまった。そしてISは最強の兵器として今では君臨している。まあ、確かに2000発以上のミサイルをすべて落とし、しかも被害を何も出さなかったという結果が出てしまえばある意味当然だと思う。

そしてIS最大の特徴、もとい欠点は「女しか動かせない」ということがあげられる。おかげで今ではすっかり「女尊男卑」の風潮になっているらしい。

らしい、というのは俺はその「女尊男卑」の風潮を肌で感じたことがないからだ。俺が住んでいる場所が田舎だからからだと思う。この町で実際にISを見た奴はいないし、使えるやつもいない。ISという力を知らないから何も変わらず、現状維持のまま時間が過ぎていっているのだと思ったりする。

 

「ま、俺には関係ないけど」

 

雑誌を放り投げ、俺はラムネを飲んだ。




どうでしたでしょうか?
少しでもお楽しみいただけたら幸いです。
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