ただの普通の一般人がISに乗ってみた。   作:酢酸

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今回ちょっと長め。


決意

せっかくなんでシャワーも浴び、ジャージに着替え、俺は食堂へと向かう。セシリア・オルコットは先に行ってしまったため鍵は俺がしめる事になった。ちなみに部屋のカードキーはその部屋の住人に1枚ずつ配布されているらしい。

鍵を閉め、食堂に向かう途中で一夏と篠ノ之さんが2人で食堂に向かっていた。一夏の方もうまくいったらしい。

 

「よお、一夏。仲直りできたみたいで?」

「お、亮太。そっちはどうだった?」

「何とも言えんよ。千冬さんは言いくるめてくれた感じはあったけど。」

 

そういって俺は肩をすくめてみる。

 

「しっかり謝ったのか木瀬?」

 

と、篠ノ之さんが言う。

 

「なかなか真面目に謝ったつもりなんだけどな。」

「なんだその曖昧な感じは。」

「まあ、なんとかするつもりだけどよ。」

 

最低でも一か月は同じ部屋だ。あんなにギスギスしたままでは部屋でゆっくりする事もできねぇ。女子が一緒の部屋の時点でリラックスできねぇけどよ。

そんな会話をしているうちに食堂に到着した。食券販売機の前に立つと一夏と篠ノ之さんは笑っていたので軽く睨んだ。たく、同じ轍は二度はふまねぇよ。よし、これからはこれを座右の銘にしよう。

そんな事をひそかに思いながら俺は醤油ラーメンを選択し、出てきた食券を食堂のおばちゃんに渡す。

 

「席はどこだ、と・・・・・・。」

 

盛り付けをされている間に席を探そうとあたりを見渡す。夕飯時ということもあり食堂はかなり混んでいた。しかも国籍の違う様々な人間が入り混じっているため、なんだがここが日本だという事を忘れそうになる。こう見ると俺がなかなかにすごいところに来ていると改めて実感する。

 

「はい、できたよ。」

「どうもー。」

「お、亮太。またラーメンか?」

 

とんかつ定食を手に持った一夏が言う。

 

「好きなんだよ、ラーメン。」

「へぇ~。そういえば俺の友達にもラーメン好きな奴がいたんだよ。しかも本場の中国から来たやつでさ。」

「ほう、そいつとはぜひ会ってみたいもんだな。」

「あ、でもそいつ中国に帰っちゃってさ・・・・・・。」

「あらそいつは残念。」

 

本当に残念だ。そいつとはきっと良いラーメン談義ができると思ったが。

 

「2人ともそこで話していると邪魔になるぞ。」

 

天ぷらそばを持った篠ノ之さんが言う。

 

「ん、そだな。」

 

醤油ラーメンの乗ったお盆を受け取りとりあえずそこから離れる。また席を探そうとあたりを見ると、なんかあの国民的ポケモンであるピカチュウみたいなキグルミ(全身)を着た女子が俺に対して手を振っている。とりあえずそこに行ってみると口の周りにパフェのクリームをべたべたとつけている本音ちゃんとそれを見て呆れている相川さんがいた。

 

「やっほーりょうちゃん、いっちー、モッピー。」

「も、モッピー・・・・・・?」

 

本音ちゃんは篠ノ之さんにもあだ名をつけていたらしい。箒→モップ→モッピー→って感じか?

 

「木瀬君も今夕ご飯?」

「まあな。あ、席いいか?」

「ん、いいよー。」

 

俺たちは2人の向かい合うようにして座る。

 

「あれ?木瀬君またラーメン?好きだねー。」

「お前らおんなじ事いうのね・・・・・・。」

「りょうちゃんはバランスを考えないとだめだよ~。」

「本音が言うな!」

 

びしっと相川が突っ込みを入れる。それを見て俺たちは笑った。

そんな感じで和気あいあいと夕飯を食っていると俺の視界の端に妙に人がいないスペースが目に入った。そこで1人で飯を食っていたのはセシリア・オルコットだった。

 

「・・・・・・」

「どうしたのりょうちゃん~?」

「・・・・・・なーんで1人で食ってんのかね?」

「あ・・・オルコットさんの事?」

 

飯は食い終わったようで紅茶を飲んでいる。しかしその姿が妙に無理をしているような、そんな印象を受けた。

 

「ほら、織斑君と言い争った時にいろいろと言っちゃったじゃない?それが広がったみたいで・・・・・・。」

「なるほど・・・・・・。」

 

一夏と言い争うきっかけとなった女尊男卑に対する考え方と日本への批判。確かにあれはなかなかにひどいものだった。俺は聞き流していたがクラスの空気は明らかに悪くなっていた。特に日本の方々はかなり不快な顔をしていた。それが広がり、セシリア・オルコットに対する評価はあまりよろしくないものになっているのだろう。

これに関して言えばセシリア・オルコットの自業自得な感じもするが、今のあの様子を見せられるとこっちも気になってしまう。

俺は食べかけのラーメンを持って席を立つ

 

「ん?どうした亮太?」

「ちょっと親交を深めに行ってくる。」

 

あの件に関しては俺も一応関わっているわけで、少しの責任くらいは感じてる。少しだが。まあ、これはなんとなくおせっかいな感じもするけどな。

みんながきょとんとした顔をしていたが、俺はそのままその場を離れる。そしてセシリア・オルコットの座っている席に向かう。

 

「よいしょっと。」

 

ラーメンをテーブルに置き、セシリア・オルコットの前に向かい合うようにして座る。それを見て驚きの表情を浮かべる。

 

「な、なんですかあなたは!?」

「なんですかって、飯を食いに来てただけだっつの。」

「あなたさっきまであそこの席にいましたわよね!?」

 

セシリア・オルコットは本音ちゃんたちの席を指さす。本音ちゃんたちはあわあわとして焦った表情を浮かべている。どうにも一悶着が起きそうだと思っているのだろう。

 

「せっかくなんで親睦でも深めようとね。」

「私はそんな気ありませんわ!」

 

セシリア・オルコットが立ち上がりその場を離れようとするが、それを引き止める。

 

「まあまあちょっと落ち着きんさいよ。どうせこの先しばらくは部屋で顔合わせんだからよ。ここいらでちょっと親睦を深めてお互いの事知っていこうや。」

「だから私にその気はありませんわ!」

「そんな事言うなよ。その紅茶飲み終わるまででいいからよ。」

 

俺はセシリア・オルコットが手に持っているティーカップを指さす。

 

「な?いちいち顔合わせるたびにいがみ合っててもストレスたまるだけだぜ。一時休戦といこうや。」

「・・・・・・一理はありますね。」

 

ん、やっぱり意外と話せばわかる奴じゃなねぇか。どちらかと言えば合理的に考える節があるようだ。ただの感情だけで動く奴でもないみたいだし。

セシリア・オルコットは席に着きなおし、紅茶をまた飲み始めた。とりあえず2人で食事をする事には成功したようだ。

しかし・・・・・・ここからどうすればいいのだろうか。別に女子と話すのが苦手というわけでもないが、いざ話すとなるとどうにも話題が見つからない。セシリア・オルコットも怪訝な目でこっちを見ている。

よし、ここは無難に家族の話題でいこう。

 

「オルコットさんのお父さんとか何やってる人なんだ?」

「・・・・・・父と母は事故で亡くなってしまいましたわ。」

 

いきなり地雷を踏んでしまった。

 

「え、あ、その・・・・・・。」

「気にしてませんわ。初対面の人にはいつも同じ反応をされますから。」

 

さも気にしてないような反応を見せたが、一瞬顔が強張ったのを見逃さなかった。

今更になって思うが誰もが同じ人生を歩んでいるわけじゃない。1人1人が違う人生を歩んでいて、それぞれの事情がある。そこらへんに対して俺は無神経であった。

 

「いや、そこは俺が無神経だった。すまん。」

 

これは俺が完全に悪い。頭を下げ、素直に謝る事にする。

 

「いえ、こちらの事情を察するのは難しいですからね。」

「いや、察するべきだったすまん。」

 

頭を上げるとセシリア・オルコットの顔が妙に神妙な顔している。

 

「・・・・・・なんだその顔は?」

「いえ、印象と違う方だと思いまして・・・・・・。」

「?逆にどう思ってたんだよお前は?」

「かなり軽薄は印象を持っていたものでして。」

「なんでそう思うんだよ・・・・・・。」

 

初めて言われたわそんな事。いくら俺がキャラに迷っていたとしてもそんなキャラは嫌だ。御免こうむる。

 

「言葉づかいも乱暴ですし、その適当に染めたような髪の毛がどうにも気に入らなくて。」

「ずいぶんはっきり言うのね・・・・・・。」

 

どうやら俺の第一印象はかなり悪かったらしい。つか、もしかして他の奴にもそう思われてるのか?うわ、これが高校デビュー失敗というやつか?

 

「まあ、それなりに礼節はあるようですね。」

「そいつはどうも。」

 

どうにもちょくちょく女尊男卑的な考えが出てくるようだが、多分こいつ自身はそこまで悪い人間じゃないんだろう。ただ考え方がちょっと極端なだけで。認めるところは認めることができる分別のある人間だ、と思う。

 

「・・・・・・あんた思ったよりもいいやつだな。」

 

あくまで今までの印象からっていう話だが。世間一般的にはどうなんだろうか。

 

「当然ですわ。オルコット家の当主たるものこれくらいで揺らいでいるようでは務まりませんわ。」

 

そう言うとセシリア・オルコットは紅茶を飲んだ。

 

「ん、そういやあんた確かガチで貴族の家柄なんだっけ?」

「あら、よく知ってますわね。」

「雑誌にのってたからな。」

 

俺が見ていた「インフィニット・ストライプ」に代表候補生のプロフィールがのっており、そこに書いていたはずだ。オルコット家はイギリスでは有名な家柄らしく皇室にも縁のあるガチの貴族らしい。その当主が16歳の少女と言う事で国内ではかなり話題になっているらしい。

 

「まあ私のようなエリートの存在を認知しているのはある意味当然のことですわね。今謝れば決闘の事も考え直してあげなくってよ?」

 

どうにもさっきまでと違い口がずいぶんとまわってきたようだ。どうやら調子を取り戻してきたらしい。

 

「いんや、せっかくだがその決闘は受けることにするよ。つか、俺よりも一夏の方がやる気あるみたいだしな。」

「あの方ですか?ふん、野蛮な方ですわ。」

 

ふっかけてきたのはそっちだけどな。

言ったら面倒なことになるのは目に見えているので心の内にとどめることにする。

 

「ですがお二人は初心者のようですからある程度は手心を加えてもいいですわよ?」

「・・・・・・いや、せっかく戦うんだ。手加減はなしで頼む。」

 

ISに対して俺と一夏はあまりにも無知だ。動かし方も知らないし、原理だって理解していない。それでも戦う時は絶対にある。多分今がそれなんだろう。俺が今することは自分のできる事を限界までやる事だ。それが相手に対する礼儀だと思うし、実力の全く足りない自分ができる事でもある。

俺の返事を聞いてセシリア・オルコットは真剣な表情へと変わっていった。それはさっきまで傲慢な態度をとっていたとは思えないほどだった。

 

「負けてもそれが糧になる。ただでは負けねぇよ。」

 

俺も真剣な顔でセシリア・オルコットの顔を見つめる。

 

「あんたも代表候補生だ。かなり努力をしてきたと思う。そんな奴に俺たちが勝てる可能性、道理もない。けどな俺だって覚悟決めてこの学校に入ったんだ。負けるとしてもただで負ける気はねぇ。それを糧にして、俺は成長していくつもりだ。」

「・・・・・・そうですか、わかりました。」

 

セシリア・オルコットは立ち上がり、真剣な表情でこちらを見つめた。

 

「私セシリア・オルコットは来週の決闘では全力でお相手させていただきますわ。」

「ん、こっちもよろしくなオルコットさん。」

「セシリアで構いませんわ、亮太さん。」

 

そう言うとセシリアはスカートのすそをつかみ、ドラマで見るような優雅なお辞儀をした。その姿が妙にきれいで少し見惚れた。

 

「それではと、言っても部屋で会いますけどね。」

「ん、まあな。」

 

いたずらな笑みを浮かべてセシリアは空になったティーカップを持ち、その場を立ち去って行った。

 

「んー・・・・・・やっぱ思ったよりも良い奴だったな。」

 

俺の中でセシリア・オルコットの印象と評価が大幅に上方修正された。それにしてもさっき俺が言った事を思い返すとずいぶんとらしくない事を言った気がする。熱血ってのは俺のキャラじゃないんだがな。

そんな事思っていると一夏がやって来た。

 

「おい亮太、大丈夫だったか?」

「ああ、全然問題なしだ。しかし・・・・・・。」

「しかし?」

「いやー、一夏。俺たち本気で恥かくかもしんねぇな。」

「は?」

「さ、そろそろ戻ろうぜ。俺はもう疲れちまった。」

 

そう言って残りのラーメンをかきこんで一気に食べ終えた。空になった食器を持ち、俺は席を立った。

 

 

 

 

セシリア・オルコットは部屋に戻り、一人物思いにふけっていた。そして頭にはある1人の少年を思い浮かべていた。

 

(木瀬亮太・・・・・・。)

 

セシリアの母は男尊女卑のころから実家の発展のために尽力していた母を心から尊敬していた。仕事の時にみせる凛々しい顔は今でも忘れないし、忙しい中でもなんとか自分のために時間を作って遊んでくれる母が大好きだった。

しかしそれとは逆に父の事はあまり好いてはいなかった。むしろ嫌悪に近い感情を持っていた。オルコット家に婿養子として迎えられた父だが、家族内でも立場の弱く、いつも母に対して卑屈な態度をとっていた。そんな父は幼いころのセシリアにとってあまりにも情けなく映っていた。そしてそれがいつしか男全体の印象へと変わっていき、女尊男卑の考えへとなっていった。

そんな時に両親の乗った列車が事故にあい、二人は帰らぬ人なった。

今となってはそれに関してはある程度の整理はついているつもりだった。しかし幼いころのセシリアにとって両親の他界は自分の世界がすべて壊れていくような衝撃があった。さらにそれい追い打ちをかけるように親戚と名乗る人々がセシリアのためという名分で家に多く訪れるようになった。しかしそれは両親の残した莫大な財産が目当ての者たちばかりだった。本当の意味で自分のために何かしてくれていたのは幼馴染のメイドのチェルシーだけだった。

幼いころのセシリアは神を恨んだ。自分から両親を奪っただけでなく、両親が残したものでさえ私から奪っていくのかと。そんな時だった。セシリアに高いISの適正がある事がわかった。

それからは必死に努力した。両親の残したものを奪われないために、自分の母が発展させたオルコット家の名を汚さぬために。誰よりも誰よりも努力した。その甲斐もあって今ではイギリスの代表候補生にまで上り詰めた。家の事に関しても経済学や法学を学び、両親の残したものを誰にも渡さなかった。自分自身の力で家を守り切ったのだ。

IS学園に来たのも、もちろんこれから国家代表を目指すうえでの技能を身に着けるためである。そんな時にISを操縦できる男が2人現れた。

そしてその2人は自分の入学するIS学園にさも当然のように入学してきた。入試倍率100倍以上のIS学園に入るために多くに女子が努力をしてきた。それを物珍しいという理由で入学が決まった事が、今まで努力を是としてきたセシリアにとっては腹立たしかった。

そして入学式で見た織斑一夏はへらへらとして自分の自己紹介もまともできないような人だった。片方に関しては遅刻をしてきたし、けだるそうな目に日本人であるにも関わらず金髪に染めるといった素行の悪さ目立った。

正直な話はかなりの悪印象だったのだ。

しかしさきほど話した木瀬亮太は自分の思っていた人物とはまるで違った。自分の非はきっちりと認め、今の状況をしっかりと理解して前に進もうとしている。それはセシリアが知っている男の印象とはまるで違った。

 

(少しは認めてもいいかもしれませんわね・・・・・・。)

 

そんな事を思っていると部屋のドアがノックされた。

 

「どなたですか?」

「俺だ、亮太だ。」

「どうぞ。」

 

部屋に入ってきたのはさきほどまで考えていた木瀬亮太だった。あくびを噛み殺しながらベットへと向かう。

 

「あぁ~ねみぃ~。」

 

木瀬亮太はそのままベットに倒れこんだ。

 

「ずいぶんとお疲れのようですね。」

「ん?まあ女子だらけで結構気使うのよ。悪いけど俺はもう寝るわ。シャワーはさっき浴びたし。」

 

そう言うと木瀬亮太はそのまましばらく倒れこんでいたかと思うと、寝息が漏れてきた。

 

「も、もう寝たのですか・・・・・・。」

 

半ばあきれながらセシリアはつぶやいた。そして自然と笑みがこぼれた。

 

「来週は楽しみしてますよ。」

 

聞こえるはずもないが、セシリアはそうつぶやいた。




展開が遅すぎる。
そろそろバトルまでいきたい。
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