次の日の朝。
葛西に学校にくるように言われていたので俺はあくびをしながら学校に向かっている。
「めんどくせぇ・・・」
自分の進路の事なのにとてつもなく無責任は事を言っているのは承知しているが、そこはあえてスルー。遊びたい盛りの中学生にとっては夏休み中に学校に行くことなんて面倒このうえないものだろ。確かに他の中学3年生たちは補習があって学校には行くだろうが、それは目標が定まっているからであって、きっとそれなりにやりがいがあるのだろう。しかし俺はその目標すら定まっていない状態なのだ。やる気が起きるわけがない。
まあ、ただ単に俺がはっきりしないだけなんだけどな・・・。
「はぁ~」
深くため息をつく。
どうにも俺は自分の将来が思い浮かばない。今までそれなり夢中になったものやはまったものはある。だが、人生を変えるような出来事はなかった。突然女の子が空から降ってくることもないし、そこらへんに置いてあった人型機械を操作して相手を倒すような事もない。悪の秘密結社なんて存在もせず世界征服をされるようなこともない。すべてはフィクションの世界の事なんだと俺はいつからか気が付いた。あるのはただの現実。
そんな当たり前の事を考えていたらいつの間にかもう進路を決めなければいけない時期になっていた。
「本当・・・どうしようかね・・・」
正門に入ると朝練の部活動の声が聞こえる。少しうらやましい。何かやりたい事や目標があるのが。俺にはどうにも見つからない。
「来ましたよっと、先生」
職員室に入り、葛西を探す。入ってすぐ左の向きに葛西の席はある。そしてそこには見慣れない人影があった。黒い髪にすらっとした感じの人。タイトスカートをはいているところ見ると女だろう。そいつが葛西となにやら楽しそうに談笑をしていた。
「そうか、一夏君はもう中3か。はやいもんだな」
「今更ながら報告が遅れて申し訳ありません。本当なら一番はじめに挨拶をしなければならなかったのに・・・」
「気にしてねぇよ。まあ、俺もお前を教え子にもててうれしい限りだ」
「恐縮です」
どうやら元教え子のようだ。うん、せっかくの再会に水を差すのも無粋というもの。ここはおとなしく退散してまた出直そう、明日とかに。
そろりと職員室を出ようとすると、
「あ、てめぇ!何逃げようとしてやがる!こっちこい!」
ち、見つかった。しぶしぶ葛西まで向かう。
「このアホ、今日は逃がさねぇぞ」
「へいへい、わかったっての」
「それと、てめぇは客に挨拶もできねぇのか、アホ」
「うーす」
葛西のゲンコツが頭を直撃した。
「いてぇ・・・」
「当たり前だ。悪いな織斑、ちょっとこいつは馬鹿なんだ」
「いえ・・・」
頭をさすりながら顔を上げると、織斑と呼ばれた女と目があった。オオカミを連想させるような鋭い目つきで、顔立ちも非常に整っている。つか、なんだこの人めっちゃ美人じゃん。そして超怖そう。とりあえずここはちゃんとした挨拶から。
「どうも・・・」
軽くお辞儀をして挨拶をする。どうだ、しっかり挨拶したぜ。ドヤ顔で葛西に目を向けるとずいぶんと不満そうな顔をしている。なんだどっか間違ってんのか?
「お前、なんか感想はないのか?」
「は?」
何言ってんだ葛西。確かに美人ではあるが。
「えっと、ずいぶんきれいだな、と」
「そうじゃなくてだな・・・」
今度は頭を抱えだした。なんだよ、俺がなんかしたのか?
「お前、ISは知ってるよな?」
「そりゃ、まあ・・・」
「じゃあ、こいつは誰だ?」
葛西は女を指さす。うーん、葛西の元教え子の時点で俺には何の接点もないし、少なくとも俺は初対面だ。多分都会の方の人間かと思うくらいだが・・・。
「わかんねぇっすね」
葛西は心底呆れたため息を出した。
「ここまでものを知らねぇとはな・・・」
「すいません先生、私はこれから講義に行かないといけないので・・・」
「ああ、かまわん。悪いな引き止めちまって。じゃあな」
「はい、帰るときも寄らせていただきます。それでは」
会釈をして女は職員室を出て行った。残された俺と葛西の間には微妙な空気が漂っている。
「先生、ありゃ誰だ?」
「IS世界大会の優勝者織斑千冬だ」
「へぇ、有名人なんすね」
「お前を除いてな・・・」
「そりゃ、初対面ですから」
「そうは言ってもテレビで中継されてたろうが。ニュースもやってたしよ」
「その時はばあちゃんが階段から落ちて骨を折って入院してた時期だったな。あんときは大変だったし」
「それは第2回大会の時だろ。第1回大会の時の事はわかるだろ?」
「興味なかったんで見てない」
「そーかいそーかい・・・・・」
今度は可哀想な奴を見る目で見てきた。喧嘩売ってんのか、おい。
「まあいい。お前の無知は今に始まったことじゃなねーしな」
「興味がないから見てねーんだよ」
女しか乗れないISを見たところで俺の人生の何かが変わるとも思えないし。
「とりあえず午前中は志望校探しだ、ちゃんとやれよ」
「うーす」
やっぱり文章を書くのは難しい。