よかったら見てください。
織斑千冬と出会った夏休みから月日は流れ、今は2月。雪が積もり、真っ白な世界にそろそろ見飽きてきたころである。
俺は一般入試で工業高校受験をし、今は結果待ちの状態である。自信はかなりある。夏休みから心を入れ替えて勉強をしたおかげだ。そしてそんな俺は今、テレビで流れるニュースに釘づけになっていた。
テレビの画面には「世界で初の『男性』のIS操縦者の発見」と映されていた。
「名前は織斑一夏ねぇ・・・。」
俺はこたつに入り、ミカンを食べながら呟く。
織斑という姓でもしやと思ったが、案の定、織斑一夏は織斑千冬の弟であるようだ。テレビでもその事について大きく取り上げられていた。
織斑千冬の周りは今頃大騒ぎになっていることだろうな、と考えると思わず笑いがこみあげてくる。
そんな時、ニュースキャスターは思いもよらないことを言い始めた。
「日本政府はこの事実を受けて、全国の男性を対象にした、ISの起動実験を行うと発表しました。」
「まためんどくせぇ事やるな・・・。」
こちとら受験勉強から解放されゆっくりしたいってのによ。
そんな事を思っていると、台所からばあちゃんがお盆に2つの湯飲みを持って出てきた。
「はい、りょうぼう。」
「ありがとう、ばあちゃん。」
渡された青色の湯飲みを受け取り、中身を見ると緑茶が入っていた。それをすすりながら、またテレビに視線を戻す。
「あら、なんのニュース?」
「ISに乗れる男が出たんだって。」
「へぇ~、そうなの。」
ばあちゃんはそういいながらこたつに入り、お茶をすする。
そういえば、ばあちゃんはISをどう思っているんだろう?夏休みに出会った織斑千冬はISは欠点のある兵器と言った。俺はISを強すぎる兵器だと思っている。そしてそれに恐怖も抱いている。でも、ばあちゃんはどう思っているんだろう。なんとなく気になって聞いてみた。
「ねぇ、ばあちゃん。」
「なんだい?」
「ばあちゃんはISをどう思ってるの?」
「急にどうしたんだい?」
「いや、なんとなく。」
「そうだねぇ・・・。」
ばあちゃんはお茶をすすり、いつもと変わらないように言う。
「私はあんまり詳しくはないんだけどね。その、『あいえす』ってのは使い方を間違ったらいけないものだと思うよ。」
「使い方?」
「ええ。前に日本を守ってくれたことがあったからね。それだけ大きな力ってのは、使い方を間違えちゃいけないものだと思うんだよ。」
ばあちゃんが言ったのは、「白騎士事件」の事だろう。俺はあの事件でISの強さとそれに対しての恐怖を感じた。ばあちゃんが感じたのはその力の使い方だったらしい。
「そっか。ありがと。」
「いえいえ。」
力の正しい使い方。
その言葉は妙に俺の胸に残っていた。
テレビの報道から3日後。
俺の中学校の男子は全員体育館に集められている。冬なのに暖房設備のない体育館はすこぶる寒く、全員が体を震わせてた。そして俺もその1人。
「さみぃ~、ふざけんなよ・・・。」
男子は一列に並ばせられ、列の先頭に鎮座されているISに触れさせられている。
「はい、さっさとして!こんな事で時間食ってる場合じゃないの!」
ISの前で声を張り上げているのは、ISを搬入してきた政府の関係者らしい。いくらこっちが年下だからと言っても、あまりにも態度が悪い。寒さと対応の悪さから、男子は全員やる気を失っていた。
「なんなんだあいつ・・・。」
「政府の方だよ。」
葛西が俺にむかって話しかけてきた。葛西が渋い顔をしている。もともと怖い極道面がさらに歪み、なかなかに迫力のある顔になっている。
「あんたも検査受けたんだろ?どうだったんだよ?」
「俺が起動できるわけねぇだろ。」
政府は対象をを全国のすべての男性と指定したため、生徒だけでなく教職員も対象としている。
「だいだいよ、なんであんなに偉そうなんだ?ムカつくんだけど。」
「ありゃ今の『女尊男卑』の風潮にのっかてるやつの典型だな。」
「あんなに露骨なもんかんね・・・。」
俺自身は感じたことはないが、あれが今の風潮である「女尊男卑」であるらしい。はじめて見たが、やはり気分がいいもんじゃねぇな。
「さっさと帰ってほしいもんだぜ。」
葛西はめんどくさそうに言った。
「同感だな。それにさ・・・これって意味あんのか?」
「世の中には例外ってもんがいるんだよ。お前みたいに絵に描いたような普通人間と違ってよ。」
「てめぇ・・・、金髪直してから、さらに存在感が薄くなった俺に喧嘩売ってんのか?」
「知らんな。」
この野郎・・・。
「はい、次!さっさとしてよ!」
「ち、俺の番かよ・・・。てめぇ、覚えとけよ。」
「うるせぇ、さっさと行け。」
葛西を睨みながら、ISが鎮座されている場所に向かう。列の先にあったISは、第2世代の打鉄が置かれていた。なぜ俺が種類を知っているのかというと、織斑千冬と出会ってから、ISに対する恐怖を自覚した俺だが、それと同時に興味もわいてきたためである。この感覚に対しては不思議だというほかないのだが、「見たくないと思いながらも結局見ちゃうホラー映画」的な事だと思う。たとえが分かりずらいが。
ばあちゃんはあれから「インフィニット・ストライプ」を定期的に入荷しているので、暇があれば見ていたのだ。ほとんどはグラビアみたいなもんだったが、たまに真面目なことも書いているのでそれを中心に、受験勉強の息抜きに読んでいた。おかげである程度の種類や知識は持っているつもりだ。
「さ、はやくしてちょうだい。」
妙に偉そうな女は言う。
説明もなしかよ・・・。
「あの、どうすんすか?」
「は?ISに触ればいいのよ。これだから男は指示されなきゃなにもできないんだから・・・。」
なんてムカつく女だ。
衝動的に殴りたくなるのを抑える。
まあ、とにかく落着け俺。ここで揉めてもめんどうなだけだ。さっさとISに触って帰ればいいだけだ。
「はやくしてよ。」
「はいはい、そうしますよ。」
心底嫌な気分になりながらも、ISに触れる。冷たい金属の触り心地。そして信じられないことが起きた。
「認証、ISの起動者として認識。マニュアルにのっとってISを稼働させてください。」
「は?」
「え?」
色のなかった金属の塊に光が灯り、ISとして姿を現した。
つまり、俺はISを起動させてしまったのだ。
所変わって、ここはIS学園。IS操縦者の育成のための学校である。ただISを教えるわけではなく、高校の授業と並行して行われるため、日課は過密であり、入学してくる生徒は100倍近い倍率を突破してやってくるものや代表候補生として推薦でやってくるものが普通であるため必然的に授業のレベルは高くなっていく。それと同時に優秀な生徒に合わせるべく、教師陣も優秀なものたちをそろえられている。
そんな優秀な教師陣の中で特に目立っているのは「ブリュンヒルデ」の異名をもつ織斑千冬だろう。そして織斑千冬は今、IS学園の職員室で書類の整理に追われていた。自分の実弟である織斑一夏がISを起動させてしまったことにより、マスコミの対応や日本政府の事情徴収、おまけに国際IS委員会に織斑一夏の対応をどうするかという議題の会議に連日出席しており、いくら体力に自信のある織斑千冬でも、さすがに疲れが出始めていた。
「織斑先生、大丈夫ですか?」
織斑千冬に声をかけたのは同僚の山田真耶。疲れ気味の織斑千冬にコーヒーを差し入れる。
「すいません山田先生。」
「いえ、それより織斑先生ここのところ全然休んでないんじゃないんですか?」
「ええ、まあ。提出しないといけいない書類が山ほどあるので・・・。」
織斑千冬は自分の机に乗っている山のような書類に視線を向ける。山田真耶は思わず苦笑いをしてしまった。
「私もお手伝いしますから、遠慮なく言ってくださいね!」
「ええ、その時はお願いします。」
山田真耶がその場去り、織斑千冬がコーヒーに手をつけた瞬間、その知らせはやってきた。
職員室のドアが存外に開けられ、全員の視線がそこに向けられる。息を切らしながら入ってきたのは同僚の教師だった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「どうしたんですか、そんなあわてて。」
「新たな・・・はぁ・・・男性の・・・はぁ・・・IS起動者が発見されました。」
その言葉に職員室がざわつき始めた。
「名前は木瀬亮太。織斑一夏君と同じ中学3年生です。」
その名前を聞いて織斑千冬はコーヒーを噴き出しそうになった。
そろそろ原作に入るはず。