ちょっと無理やりな感じがするけど。
俺こと木瀬亮太がISを動かしてしまってから、それからは本当に大変だった。
いきなり校長室に呼ばれて政府の人間からの、今現在の俺の置かれている状況の説明や必要書類の記入、そして家に押しかけるマスコミがあまりにも多く、学校に行くこともできず家にこもりっぱなしなのである。
「どうなってんだ、この状況は・・・。」
こたつに入り、ミカンを食いながら呟く。
こんな状況が一週間も続き、俺の高校の合格発表も葛西に見に行ってもらった。結果は合格。そこまではよかったのだが、どうやら俺の今までの頑張りが無効になる可能性が出てきた。なんでも日本政府は俺の身柄の安全のために、俺をIS学園に入学させるという話になっているらしい。だが、まだ可能性の話なので何とも言えないが。
そういえば先日久しぶりに親父とお袋から電話があった。ニュースで俺の事を知ったらしいが、親父の方は特にあわてた様子もなく、「まあ、そんな時もあるよな。」と軽く言いやがった。全然軽くねぇよ。お袋に関して言えば「まあ、そんな時もあるわよね」と軽く言いやがった。両親そろってなんで感想が一緒で軽いんだよ!!
思い出したらムカついてきた。冷静なのはとてもいい事だと思うが、冷静すぎると逆にキレたくなってくるらしい。
気晴らしにテレビをつけると俺と織斑一夏の事が話題に上がっていた。つか、なんで俺の顔写真が出てんだよ。まだ未成年だぞ。
「なんでこうなったのかねぇ・・・。」
「はい、りょうぼう、お茶。」
「ありがとう、ばあちゃん」
ばあちゃんが俺の前に湯飲みを置いてくれた。中身は緑茶である。
「・・・ばあちゃん、ごめんな」
「何がだい?」
「俺のせいで、店開けられなくて。」
とにかく俺の家の周りにマスコミが押し寄せてきたため、一般のお客が店に立ち入れなくなっていたのだ。おかげで店は人の波が引くまで休業を余儀なくされてしまったのだ。
「・・・気にしてないよ、それよりもりょうぼうこそいいの?学校に行かなくていいの?」
「いや、学校は病欠扱いにしてくれるって言ってた。」
どうにもそこらへんは葛西が関わっているらしいが、今だけは感謝をしておくことにする。
「まあ、しばらくは休みだと思えばいいのよ。」
「そうだね、ばあちゃん。」
その時、家のインターホンが鳴った。正直なところ、またかという感想だった。
どうにも俺が家から出ない事に焦れたマスコミが業者を装って玄関に上がりこんでくるのだ。そのため家に人がいるときでも鍵をかけることにしてからそれもなくなってきたのだが、どうにもまだ同じ事をする馬鹿がいるらしい。
「ばあちゃん、今日人が来る予定は?」
「なかっと思うけどねぇ・・・。」
「しかたねぇ・・・。」
俺はこたつから出て、壁に立てかけてあった箒を持つ。
こちとら家からも出られず、ストレスたまってんだよ。一発くらい殴ってやる!
俺は玄関に向かう。玄関のドアから見える人影は2つ。とりあえず、手前の奴を殴る、思いっきり!
がちゃがちゃと鍵のしまったドアを開けようとしているが、無駄である。俺は玄関の鍵を開け、箒を振りかぶる。
その時、ドアが開いた。
「てめぇら、いい加減にしろ!」
「ぶっ!!」
俺のフルスイングの一撃は見事相手の顔面をとらえ、倒れこむ。
「ざまみやが・・・れ・・・?」
「何をしているんだ・・・?」
「いきなり何しやがる・・・!」
そこにいたのは、俺の担任と恩人の葛西と織斑千冬だった。
「ごめんなさいね、りょうぼうが早とちりしちゃったみたいで。」
「いえ、こちらも状況を理解してアポイントを取るべきでした・・・。」
織斑千冬はばあちゃんに謝っている。その横で俺は葛西から四の字固めをくらっていた。
「いてぇ!!ガチで!本当に!」
「うるせぇ!せっかく来てやったってのに殴る奴が悪りぃんだよ!!」
「葛西先生、そろそろやめたほうが・・・。」
「心配すんな。この後さそり固めをやって終わりだ。」
「ぎぶぎぶぎぶ!!折れる、折れるって!!」
その後本当にさそり固めでしめて、俺は解放された。足がいてぇよ、ばあちゃん。しかもなんで止めてくれないんだよ・・・。そんな視線を送ったが、にこにことした顔で返され、早とちりした俺への罰の意味合いがある事を理解した。
「で、お二人は何用ですかね?」
俺は若干キレながら言う。
居間にはこたつしかなかったので、客間に移動して話をする事になった。ばあちゃんと俺は葛西と織斑千冬に相対するようにして座る。
織斑千冬はテーブルに1枚の紙をおいた。
「亮太、君のIS学園への入学が決まった。これはその同意書だ。」
「は?何言ってやがる。俺はそんな事聞いてねぇぞ。」
「あたりまえだ。今決まったことだからな。」
「だからなんで俺にそれが伝わってねぇんだよ!」
思わずテーブルをたたく。
「それについてはすまないと思っている。しかし事態はあまりにも急なのだ。こうでもしなければ、君を守れない。」
「俺を守れるだぁ・・・?」
「君は世界で2人目の『男性でISを起動できる人間』なんだ。その希少価値は計り知れない。いつ君が誘拐されてもおかしくはないんだ。」
「木瀬、織斑はお前の安全を考えてこの方法をとったんだよ。正直な話、お前は社会的に無防備なんだよ。織斑の弟はこいつが守れるとしても、お前はそういった後ろ盾がない。それくらいはわかるだろ。」
「わかってるよ・・・。」
頭を垂れる。
理屈はわかる。しかし心がついていかない。今までの頑張りがまるで無駄だったのかと思えるようだ。
それを察したのか、織斑千冬が俺に声をかける。
「君の頑張りは葛西先生から聞いているよ。あの夏から今まで頑張ってきて、こんな事になってしまったのは本当に残念だと思う。だが、私は君にIS学園にきてほしいと思っている。」
「・・・なんでだよ。」
「私はISを操縦する者にとって1番必要なことは、ISを恐怖する事だと思っている。それは君が1番適任でもある。」
「!」
なんでこいつは俺がISを怖いと思っている事を知っているんだ?
思わず顔を上げると、苦笑している織斑千冬の顔があった。
「職業柄な、そういう事はすぐにピンとくるんだ。」
「・・・そうかよ。」
最初からそんな事を見破られていると思うと少し恥ずかしい。織斑千冬から目をそらす。
そんな時、今まで黙っていたばあちゃんが口を開いた。
「りょうぼう、せっかくだから行ってみたらいいと思うよ。」
「ばあちゃん・・・。」
「若いうちは何事も経験だからね。それに、これは神様がくれた使命かもしれないね。りょうぼうができるって事はきっと、意味があるんだよ。」
意味がある。ただの偶然でなく、俺がISを動かしたことに意味があるのか?何をやっても普通の俺が。おおよそ物語の主人公にふさわしくない俺が。
「それでもつらくなって、もうダメだなって思ったら、またここに戻ってきたらいいさ。」
「・・・ありがとう、ばあちゃん。」
その言葉で俺の決心は固まった。
俺は何をしても普通の中学生だ。対して特徴もない。特別な力だってない。
それでも、俺は泥臭く、あがいていこうと思う。
「入学するよ、IS学園に。」
今までとちがう日常が来る事を俺は感じていた。
次回から原作突入。
プロローグはちょこちょこ加筆が入ると思います。