ただの普通の一般人がISに乗ってみた。   作:酢酸

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更新遅れました。
今回は内容がちょっとシリアス。


思惑

入学式がつつがなく終わり、出席していた教師たちはみな一様に疲れた様子であった。IS学園は世界的にも注目されている機関であり、入学式といえど世界各国の報道陣が詰めかけ、入学式の様子を映している。そんな中で居眠りでもしようものなら最悪クビにもなりかねない。そのためIS学園の教師たちはこの行事を生徒たちよりも緊張して出席しているのだ。

それに今年は例年よりもマスコミの数が多い。理由は簡単である。世界初の男性のIS操縦者が入学するためである。その様子をカメラに収めようとマスコミは必死になって追いかけており、教師陣はその対応も行っていたので、心身ともに疲れ果てていた。

そんな中、ある1つの問題が浮上した。

 

「なに?亮太が来ていない?」

「はい・・・・・・。」

 

この報告に職員室は騒然とした。やっと一息ついたところでまた問題が起き、IS学園の教師たちからはため息がもれる。

木瀬亮太が所属する予定のクラス担任の織斑千冬はこめかみに青筋が浮かび上がる。報告をした山田真耶はその迫力に伏し目がちになった。

マスコミの対応や自分の弟の事で日本政府の事情徴収で睡眠時間が著しく削られて睡眠不足の時に更なる難題が起こり、織斑千冬は頭を抱えていた。

 

「ホテルに問い合わせたらとっくに出発しているとのことでした。」

「はぁ~、どこで道草をくっているんだ。まさか迷子になったわけではあるまいな・・・。」

 

そのまさかなのだが、織斑千冬は知る由もない。

 

「あいつは自分の状況がわかっているのか・・・?」

 

木瀬亮太は世界で2番目の男性のIS操縦者である。それは今までISの常識を覆すものであり、言葉は悪いがその利用価値はわかり知れないものがある。最悪誘拐されて、どこかの実験施設に送られる事も可能性としてあるのだ。そんな状況で行方不明など、冗談にしても笑えるものではない。

織斑千冬の脳裏にある昔の記憶が横切った。それは自分の弟が誘拐された時の記憶。そしてあの時の胸が張り裂けるようなような気持ちが、じわじわと腹の底から這いあがっていた。

 

「・・・仕方ない、山田先生は先に1組の教室に行っていてください。私は木瀬亮太を捜索してきます。」

「気を付けてくださいね。」

「ええ、山田先生もHRをお願いします。」

「はい・・・え、1人でですか!?」

「お願いします。」

 

そう言って織斑千冬は職員室を出て行った。

 

「・・・先輩、不安ですよ。」

 

山田真耶は1人呟いた。

 

 

 

 

 

 

織斑千冬は廊下を足早に歩いている。その顔にはどこか焦りが見えている。

 

「だから護衛をつけるべきだと言ったんだ・・・。」

 

この言葉はこの場にいない日本政府の官僚に向けて言ったものでった。

織斑千冬は自分の弟についてのこれからの対応を協議するためにIS委員会に赴いた際に、木瀬亮太への対応についての協議にも参加していた。

その際に、自分の弟の織斑一夏については早々にIS学園に入学させるということで決着がついたのだが、木瀬亮太についてはなかなかに協議が難航していた。正直な話、木瀬亮太は織斑一夏ほどネームバリューがない。織斑一夏には織斑千冬という後ろ盾があり、扱いが慎重になっていたのだが、木瀬亮太に関してはそんな面倒なものがなく、正直な話、各国のあわよくば「実験体」として我が国に迎え入れたいという思惑が見え隠れしていた。

しかし木瀬亮太とは知らない仲ではない織斑千冬はその目論見を看破し、木瀬亮太のIS学園入学を強く希望した。

その時、日本政府は木瀬亮太のIS学園の入学に賛成をし、大いに支持をした。自国の人間がISの初の男性操縦者であるという強みを生かして、交渉を優位に進め、木瀬亮太のIS学園の入学を決めたのだ。

これでひと段落だと思ったのだが日本政府は木瀬亮太の入学にある条件を出した。

 

「木瀬亮太本人及び親族に警護、監視をする事を一切禁止する。また日本政府もこれに関与しない。」

 

この条件を聞いて初めて織斑千冬は謀られたと思った。

これはつまり木瀬亮太に何があろうと日本政府はまったく関与しないというこ事だ。ISの男性の操縦者という稀有な存在が犯罪に巻き込まれないはずがない。誘拐される可能性もある。そんな木瀬亮太に対して警護も何もないという事は、間接的に犯罪に巻き込まれるように促しているとしか思えなかった。もしくはそうなればいいと日本政府は考えているかもしれない。他国の仕業に見せかけて自分たちが木瀬亮太を誘拐し、存在を抹消する。IS学園は日本の国土にあるため手も出しやすい。

織斑千冬というネームバリューのある織斑一夏に手を出せないのなら、後ろ盾も何もない木瀬亮太を使えばいい。そんな思惑が日本政府にはあったのだ。

それに気づいた時にはもう遅かった。状況的にも今IS学園の入学を拒否すれば各国が黙ってはいないだろう。交渉に関しては無理やり通した部分があった。それを今更なしにとはいえる状況でもない。それを見越して日本政府は織斑千冬の希望に乗ったのだ。

しかしだからと言ってそこで織斑千冬が引くかと言えばそうではない。だが、そこで日本政府は切り札を出した。

 

「場合によっては織斑一夏のIS学園入学も取り消す可能性がある。」

 

とうとう織斑一夏という肉親まで引き合いに出してきた。ここで自分の意見を通し切れば、自分の弟に危険が及ぶ可能性がある。それだけは何としても避けたい。

そしてとうとう織斑千冬は折れたのだ。しかしこの選択を後悔しているかと問われれば、後悔していると即答するだろう。もっと他に方法はなかったのかと今でも考える。

 

「(これは私のまいた種だ。私の手でけりをつけるしかない)」

 

織斑千冬はその信念のもと、木瀬亮太の捜索に向かった。




今回は状況説明が多かったですね。
ご指摘ありましたらお願いします。
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