私の名前は高宮 雷蔵。かつて地球は日本という島国で小さな商店を営んでいた独身、38歳の男で……多分、心臓発作で死んだはずの人間だ
何故「はず」だという言葉を使ったのか。それは意識を失った後、再び目を覚ました私の視界に映ったのが病院の白い天井ではなかったからだ
恐らくは何かの容器……カプセルだろうか? それに収められていて、目の前に見たこともない、明らかに人間では無い異形の存在に見下ろされていたのだ
異形の外見は全身を青白い…まるで海のように深く、そして宝石のように煌びやかかな光を放つ、鎧にも似た質感のスーツに身を包んでいる
そのスーツは両肩に白銀の肩パッド?、らしい金属質の装飾を持ち、異形の背中でたなびく表が真っ青、裏が真っ赤なマントはそれについているようだった
胴体にもかなそれと同じ金属質の…まるでおとぎ話に出てくる王様の鎧のような豪華な装飾がついていて、にもかかわらず頭は装飾らしいものは一切ない、ヘルメットをつけていて、バイザーらしき不透明な…プラスチックを連想刺さる質感のそれで顎から頭頂部までが隠されている
手足は胴体に対してアンバランスなほどに細かった。まるで昆虫の節足を連想せるほどに細いその四肢の先、手足をグローブみたいに厚い生地…らしいもので覆っていたものの、その形状から爬虫類を思わせる鋭利な爪と鱗がありそうだった
そんなSF作品に登場してきそうな、THE宇宙人と言った射手立ちだ
『見てくださいメルライン、無事に産まれたようですよ』
『あぁ、これでプロジェクトが始められる』
と、そこにいた異形たちは私を見下ろしながら嬉しそうにそう話している。話ぶりからして……私は誘拐されたわけではないのだろうか?
『とにかく。まずはこの子を創造槽から出してあげよう』
と、左の異形が右の異形に話しかける。それを受けて右の偉業はその提案を肯定した
直後、私の視界の中をいくつもの気泡が立ち昇っていき。それを見て私は自分が納められたこのカプセルの中を何かの液体が満たしていることを知った
液体はみるみる下に流れていき。やがて全て排出されたらしく、カプセルの前面にあった透明な壁が左右に開く
『さぁ、出てきてごらん?』
と、左の異形が私に手を差し出してくる。その手を躊躇いがちに掴み、立ちあがろうと全身に力を込める。それに異形は合わせて優しく手を引いてくれたのでなんとか起き上がることができた
「あ、あの、ありがとうございます…」
少しよろめきながらもなんとか立つことができた私は、見下ろしてくる異形におっかなびっくりお礼を述べる
『…! まぁ、なんてこと! メルライン!!!!』
と、私の言葉を聞いた右の異形が左のことをそう呼びながら殊更に驚いた様子を見せる
『あぁペルメイハ……。信じられん、まさかもうインプットした知識を使いこなしている……!!』
と、右のことをそう呼びながら左‥‥メルラインもまた殊更に驚いた様子でそう声を上げる
そこからはもう私も放置して二人でよくわからないむつかしいことばを使ったむつかしいかいわを始めてしまい。完全に蚊帳の外に置かれてしまう
「? ??」
突然の放置にどうしたらいいかもわからない私は、困惑しながらもとりあえず周りをキョロキョロしてみる
部屋の中はまさにSF映画の実験室をそのまま現実にしたような摩訶不思議な空間で、こんな状況でもなければきっと私はここを隅々まで見て回っていたことだろう
しかし今の私にこんな余裕はなく、辺りを見回していた時に背後にあるカプセルの扉…開く前は完全に透明だったそれが今は鏡のように景色と私のことを映し出していた
「………」
そこに映し出されていた自分の姿はどう見ても自分の……くたびれたおっさん姿ではなかった
まるで煌めく粉雪のようにきらきらと輝く新緑の中にほのかに青が混ざった幻想的な色合いの、腰どころか膝裏にまで届く髪
しゅっとした小顔と淡いオレンジ色の瞳を持つ二重の瞼、シュッとした鼻に瑞々しい唇を持つ、かわいらしいを体現した顔だち
明らかに男だった時よりも頭二つ分は長い身長からすると少し不安を覚えてしまうくらいに細く、引き締まった体と手足に巨大と双眸と臀部と言うアンバランスながらも、歪さを感じさせない美しい肢体
タイツのように体に密着した青いスーツで首から下を完全に覆い、両手にはケープのようなひらひらがついていて、スーツの上から青色のロングスカートがついている
「……?」
どっからどう見てもアニメとか漫画に出てくるヒロインである。そんな美少女が冴えないおっさんの代わりに鏡に映っていたわけである、そりゃこんな?顔にもなろうものである
試しに右手を上げてみると、鏡に映る美少女も同じように右手を上げる
続けて首を傾げてみれば、鏡に映る美少女も同じように首を傾げる
最後に笑顔を作ってみると、鏡に映る美少女も笑顔を……て
「うわ、めっちゃ可愛い……」
鏡に映る笑顔があまりにも可愛くて思わず声が出てしまう。と言うか喋った時の口の動きもそのまま鏡に映る美少女と連動してるっぽいし
「やっぱりこれ…‥私?」
流石にここまでの状況証拠が出てしまうと信じざる負えない。どうやらこの美少女は私で間違いないらしい
「………えぇ?」
しかし理解できるからと言ってそれが受け入れられるわけではない。私はその言葉の意味を実体験しながら、とりあえす自分のモチモチのほっぺを両手でもちもちするのだった