オーバーヒート(AI小説) 作:匿名希望
ロモス北の森・廃祠の朝。
湿った石の匂いと、滝の低い轟音が、薄く開いた窓から入り込んでくる。
(今日よね、クロコダイン戦本番)
寝台から身を起こしたレオナは、いつものように――いや、もう儀式のように――自分の頭上を見上げた。
【レオナ】
相馬 280/290
(……安定のバカ数字)
昨夜、「元の相馬も今の相馬も好き」とかうっかり言ってしまったせいで、上限値だけまた伸びたのだ。
自覚はある。反省もしている。だが数字は容赦なく正直だ。
(しかもこれ、“顔だけで”ここまで来てるのよね……)
中身ももちろん嫌いじゃない。
でも、性格は今わりとチャラい。
それでもこの値なのは、要するに――
(顔が、致死級にどストライクってことよね)
自分で再確認して、朝から軽くダメージを受けた。
◇ ◇ ◇
階段を降りると、簡素な広間でみんなが朝食をとっていた。
「おはよう、レオナ!」
ダイがパンを大きくかじりながら手を振る。
「おう、姫さん。今日も数字真っ赤だな」
ポップが、わざわざレオナの頭上を指さしてくる。
【ダイ】
レオナ 76/150
相馬 77/150
【ポップ】
レオナ 52/150
相馬 48/150
(朝から観察するなっての)
レオナは心の中でツッコみつつ、視線をもう一人へ向けた。
――相馬。
焚き火の上で鍋を混ぜながら、マァムと何やら話している。
寝起きで少し乱れた髪。
それでも顔面偏差値は相変わらず高い。
視界に入った瞬間――
ズギューン!!
心臓が文字通り跳ねた。
【電子音声:レオナ(本人そっくり・甘々)】
『朝からその顔見せつけないで……
こっちは戦の前で緊張してるのに、心臓が別の意味で忙しい……しゅき……』
「っっ!」
自分の甘い声が廃祠の中にふわっと響き、マァムがきょとんとした顔で振り向く。
「また出てる……」
ポップが頭を抱えた。
【レオナ→相馬 280 → 283/290】
(ちょっと上がったわね!?)
レオナは自分にツッコむしかなかった。
「おはよ、王女様」
相馬が、鍋からスプーンを抜きながら振り向いた。
朝の薄暗がりの中、その顔は妙に絵になる。
――ズギューン!!
【電子音声:レオナ(甘々度さらに増し)】
『今の“おはよ”の声と顔の組み合わせ、反則……
さっき上がったばかりなのに、まだ上がりそう……しゅきしゅき……』
「二連発やめて!!」
レオナが叫ぶのと、
ポップが「今日もうるせぇなこのシステム!」と叫ぶのがほぼ同時だった。
◇ ◇ ◇
全員で朝食を終え、簡単に準備を整えたあと、
一行は廃祠の外に出た。
森の奥から、滝の音がはっきりと聞こえてくる。
「この先が、クロコダインの砦がある崖よ」
マァムが地形を説明する。
「崖の上に石造りの砦、その下に大きな滝。
足場も悪いし、魔物も多いから、気をつけて」
「いよいよかぁ……」
ダイが、アバン先生にもらった木刀の柄をぎゅっと握る。
「オレ、絶対負けないよ」
「そりゃそうだ」
相馬が、ダイの頭をぽんと叩いた。
「俺も尻尾の皮なんていう、とんでもないミッション抱えてるしな」
「あー……」
その話を思い出して、レオナの胃がきしむ。
「そうだったわね……ウイルス治療用のポーション……」
好感度システムのウイルスが出した、意味の分からない処方箋。
――獣王クロコダインの尻尾の先っぽの皮を煮込んだポーション。
どう考えても理不尽だ。
「ほんとにそれで治るのかな」
ダイが純粋に首を傾げる。
「治る“かもしれない”程度よ」
レオナが渋い顔で言った。
「でも、その“かもしれない”に賭ける価値はあるわ。
王女としては、エラー状態の恋愛システムを放置できないし」
「エラーって言うなよ、俺の性格」
相馬が苦笑する。
「ほら、前より楽しくない? 今の俺」
「楽しいかもしれないけど、心臓に悪いのよ!」
レオナは即答だった。
「女の人ナンパしながら炎の中突っ込んでいく人、
王女の公式お抱え危険因子にするわけにはいかないの!」
「評価軸そこ?」
ポップが吹き出す。
「……ま、治すかどうかは、尻尾の皮取ってからだな」
相馬は肩をすくめた。
「とりあえず、尻尾の皮“だけ”もらってくる。
本体の命までは取らない方向で」
「そうね」
レオナは、ほんの少しだけ安心する。
(クロコダインの命を奪ってまで治してほしいわけじゃない。
尻尾の先っぽの皮だけで済むなら、それで……)
そこまで考えて、ふと疑問が浮かんだ。
「……そういえば、クロコダインって“毛皮”じゃなかったわね」
「毛?」
マァムが首を傾げる。
「ワニっぽい魔獣よ。
硬い鱗とワニ革みたいな皮で全身覆われてるの。
モフモフ要素ゼロ」
「え、尻尾の皮って、ふわふわのを想像してたんだけど……」
相馬が、露骨にガッカリ顔をする。
「高級クロコダイルレザーに変更かよ。
なんかポーションというよりブランドバッグの材料だな」
「例えが最低ね!?」
レオナのツッコミが森に響いた。
◇ ◇ ◇
滝の音が一段と大きくなったころ、
視界が開けた。
切り立った崖。
その中腹から落ちる巨大な滝。
滝の上には、石を積み上げた簡素な砦が見える。
「うわぁ……」
ダイが目を丸くした。
「なんか、すごいところに陣取ってるね……」
「防御と威圧、両方兼ねてる感じだな」
相馬が感心したように言う。
「戦略的には悪くない位置取りだ」
「褒めないで!」
レオナが即ツッコミ。
「敵の砦よ敵の!」
「いやぁ、敵でも評価すべきところは評価しないと――」
「グオオオオオオオ!!」
会話を遮るように、
獣じみた咆哮が崖全体を揺らした。
滝の水煙を割って、巨大な影が現れる。
分厚いワニ革のような皮膚。
鋭い牙と爪。
片手には、常人なら持ち上げることすらできない巨大な斧。
「百獣魔団長――」
マァムが息を呑んだ。
「獣王クロコダイン……!」
崖の上から一歩、前へ。
彼は、獰猛というより、むしろ堂々とした目で一行を見下ろした。
「ふん。アバンの弟子どもに、その仲間か」
低く響く声。
「わしの縄張りで好き勝手暴れてくれた礼、
きっちり返させてもらおうか」
【クロコダイン】
ダイ 30/150(興味)
相馬 32/150(警戒)
レオナ 25/150(敵側の王女)
マァム 27/150
(わりと冷静な数字ね)
レオナは、頭上のパネルを見て小さく息をついた。
(でも、これからすぐ悪化するんでしょうね……)
◇ ◇ ◇
「オレたちは、好き勝手なんかしてない!」
ダイが一歩前に出る。
「村の人たちを守ってるだけだ!
あんたたち魔王軍が、好き勝手してるんだ!」
「ほう」
クロコダインが目を細める。
「小僧が、大口を叩く」
「小僧じゃない! 勇者になるんだ!」
ダイの頭上の数字が、じり、と揺れた。
【ダイ→クロコダイン 25/150(敵としての敬意)】
「ガハハ! 口だけは一人前だ!」
クロコダインの笑い声が、滝の音にかき消される。
その視線が、ふと相馬の方へ向いた。
「そっちのチャラついた人間はなんだ?」
「自己紹介どうも」
相馬は、悪びれもせず手を挙げた。
「山田相馬。旅の魔法使い兼、勇者候補のお目付け役。
あと、最近“尻尾の皮狙い”っていう、新しい肩書きも増えました」
「おい」
レオナとマァムとポップの声が、きれいに重なる。
クロコダインの片眉がぴくりと動いた。
「……尻尾?」
「なんでもないです」
全力で首を振る三人と、
ニヤリと笑う一人。
(この人、いま本気で怒らせるワード言おうとしたわね!?)
レオナは、頭を抱えたくなった。
◇ ◇ ◇
「まあいい」
クロコダインが、斧を肩に担ぐ。
「目的はどうあれ、
この森でわしに歯向かうというなら――」
一歩、前へ。
崖の上から飛び降りた。
巨大な身体が、岩場にドンッと着地する。
その瞬間、足元が微かに揺れた。
近くで見ると、そのワニ革のような皮膚の厚さがよく分かる。
(……あれ切り取るの、相当大変よね……)
レオナは、尻尾の先を一瞬見てから、慌てて目をそらした。
「戦士クロコダイン、全力で相手をしてやろう!」
「上等!」
ダイが木刀を構える。
「行くぞ、みんな!」
「おう!」
ポップ、マァム、相馬、レオナ。
それぞれが戦闘態勢に入る。
◇ ◇ ◇
先に飛び込んだのは、やっぱりダイだった。
「うおおおお!!」
低く構え、一気に距離を詰める。
「ふん、小僧が!」
クロコダインが、斧を横薙ぎに振るった。
轟音。
空気が裂ける。
ダイはその一撃を木刀で受け止め――ようとして、僅かに体勢を崩した。
「ダイ!!」
レオナが思わず叫ぶ。
「くっ……!」
木刀が、クロコダインの斧と激突する。
鈍い音。
次の瞬間――
バキィッ!!
「えっ」
みんなの声が揃った。
アバン先生にもらった木刀が、
クロコダインの斧との衝突に耐えきれず、真ん中から派手に折れたのだ。
「……あ」
ダイが、ぽかんと折れた柄を見つめる。
クロコダインの分厚いワニ革と鋼のような筋肉は、
木の剣など歯牙にもかけない。
「ガハハハハ!!」
獣王の笑い声が轟く。
「そんな木の棒で、このクロコダインに挑むつもりだったのか!」
「そ、そんな……」
ダイの頭上の数字が、がくっと揺れた。
【ダイ→自信 40 → 30】(※自己パラ・青色表示)
「あ、青くなってる!?」
ポップが叫ぶ。
「自信パラメータまであるのかよこのシステム!!」
「初耳よ!!」
レオナもツッコむが、笑っている余裕はない。
(まずい――ダイに武器がない)
あのまま素手で突っ込めば、
クロコダインの斧も、素手も、全部受け止めることになる。
それはさすがに危険すぎる。
「ダイ!」
レオナは、胸元に下げていたペンダントをぎゅっと握った。
そこに収めていた、小さな宝。
「こっちに来て!」
「レオナ?」
小さく後退したダイが彼女の元へ駆け寄る。
「アバン先生の木刀が折れたからって、
あなたの戦いまで折れるわけじゃないわ」
レオナは、ペンダントを外し、
そこから一本のナイフを取り出した。
蒼い宝玉がはめ込まれた、美しい短剣。
刃は短いが、鋭さはただ者ではない。
「これは――」
「パプニカのナイフ」
レオナは、ダイの手にそれを押しつける。
「本当は、もっと平和な記念のために渡そうと思っていたけれど……
今、あなたに必要なのは“折れない覚悟”と、“折れない刃”よ」
「レオナ……」
ダイの胸の奥が、熱くなる。
【ダイ→レオナ 76 → 80/150】(友情+尊敬)
【レオナ→ダイ 65/150(弟分+勇者候補)】
レオナの頭上のパネルも、ダイに対する友情値を少しだけ上げた。
その横で――
(いいシーンなのに、やっぱり顔がいい……)
レオナは、ナイフを渡したあと、
ふと視線を横にずらしてしまった。
そこには、やっぱり相馬が立っている。
真面目な顔で、そのやりとりを見ていた。
――顔イベント。
ズギューン!!
【電子音声:レオナ(甘々+誇らしさ)】
『ダイの武器が折れた瞬間、真っ先にこっちを守る動きしてたの、ちゃんと見てた……
そういうところも、ほんとに好き……しゅきしゅき……
戦い終わったら「よくやった」って抱きしめたい……頭なでなでしてほしい……』
最後の一文から、急に要望モードになった。
【レオナ→相馬 283 → 288/290】
パネルが真っ赤に点滅し、
周囲に甘い電子音が重なる。
『頭なでなで要求、履行まだです……
戦いのあと、ぎゅっとしてあげてもいいのよ……?』
「今そんなの流さないで!!」
レオナが悲鳴を上げる。
「タイミング選んで!!」
マァムも、「こんなときに何流してるのよこのシステム!」と頬を赤くしていた。
◇ ◇ ◇
「ほう……」
クロコダインは、そのやりとりをじっと見ていた。
「人間というやつは、
戦いの最中でもよくそんな甘い空気を出せるものだな」
「空気じゃないです! システムの嫌がらせです!!」
レオナの反論は、獣王にはよく分からなかった。
「ダイ!」
気を取り直して、レオナが叫ぶ。
「そのナイフは、パプニカでも特別なものよ。
大事に使いなさい!」
「うん!!」
ダイは、パプニカのナイフを構えた。
木刀とは違う、手に馴染む重量感。
短いが、鋭い。
これなら、ワニ革のような分厚い皮にも通じるはずだ。
「うおおおお!!」
再び、クロコダインへ向かって走り出す。
「さっきと同じことを繰り返す気か!」
獣王が斧を振るう。
だが今度は、ダイの動きが違う。
木刀のときと違い、重心が低く、無駄が少ない。
アバン先生の教え。
アバンストラッシュの構え。
それらが、ナイフという新しい武器に少しずつ馴染んでいく。
◇ ◇ ◇
「さて――」
その隙に、相馬も動いた。
「バイキルト」
低く詠唱し、ダイの身体に力の光を纏わせる。
「身体の負担は増えるけど、
今は“通す”こと優先だ」
「ありがとう、相馬!」
ダイの攻撃力が、目に見えて跳ね上がる。
【ダイ→相馬 77 → 81/150】
「ポップ!」
「おうよ!」
ポップは、いつものように前線から少し下がった位置で杖を構えた。
「メラミ!」
中火球が、クロコダインの腕を狙って飛ぶ。
獣王はそれを無造作に受け、ワニ革のような皮膚で大半を弾いた。
「効きが悪ぃな……!」
「レオナ、頼める?」
「分かってる!」
レオナは、杖を掲げた。
「ルカニ!」
守備力低下の呪文が、クロコダインの身体を淡く包む。
厚いワニ革の装甲が、ほんのわずかだが柔らかくなった。
「ほう、身体が軽く……いや、違うな」
クロコダインが眉をひそめる。
「守りを削りに来たか」
「当然よ」
レオナは言い返す。
「こっちは、村を守るために“全部乗せ”で行くんだから!」
その声に、マァムも頷いた。
「ホイミ!」
前線で細かい傷を負ったダイの腕が、瞬時に癒える。
「ダイ、もうちょっとだけ無茶していいから、
でも死ぬのは禁止だからね!!」
「う、うん!?」
条件がよく分からない激励に、ダイが戸惑う。
◇ ◇ ◇
戦いは激しさを増していく。
ダイのナイフは、確かにクロコダインの装甲に傷をつけ始めた。
だが、獣王の反撃もまた苛烈だ。
「グオオオオ!!」
斧の一撃。
地面を砕く蹴り。
岩をも割る拳。
「くっそ、タフすぎだろワニおじさん!」
ポップが叫ぶ。
「おじさん言うな!」
その最中――
相馬の視線が、ちらりとクロコダインの尻尾へ向かった。
(……あの先っぽの皮を、ちょっとだけ。
ほんのちょっとだけ、切り取ればいい)
戦いながら、そんな不謹慎な計算をしている自分に、
相馬は内心苦笑する。
(命までは取らない。
でも、尻尾の先をちょっともらう。
……冷静に考えると、かなり嫌がらせだよな、これ)
とはいえ、ウイルスを治すには必要な素材でもある。
クロコダインの尾が、大きく振り回される。
地面に叩きつけられた場所が、えぐれていた。
(硬っ……)
ワニ革どころか、ほとんど鉄の鞭だ。
「相馬!」
レオナが、戦いの合間に叫ぶ。
「今、尻尾狙うのはやめて!!」
「心読まれた!?」
「顔で分かるのよ!」
レオナの頭上のパネルが、真っ赤に点滅する。
【電子音声:レオナ(甘々+説教モード)】
『尻尾の皮は欲しいけど、命がけの戦いでそんな余裕見せないで……
まずは生き残ることに集中して……
治療は、あなたが生きてからの話……しゅき……』
【レオナ→相馬 288 → 290/290(カンスト)】
上限に到達した瞬間、
パネルがぶるぶる震え――
【レオナ→相馬 290/300(上限拡張・数値据え置き)】
またしても、上限だけが伸びた。
「もうやめてぇぇぇ!!」
レオナが、自分の数字に悲鳴を上げる。
「どこまで行くのよこれ!!」
「システム的には“未知の領域”ってやつだな」
ポップが遠い目をした。
◇ ◇ ◇
クロコダインは、そんな人間たちのやりとりを、
どこか楽しそうに見ていた。
「面白い奴らだ」
獣王の目には、
単なる獲物以上のものが映り始めている。
「アバンの弟子、パプニカの王女、
戦う僧侶、魔法使い――そして尻尾狙いのチャラ男」
「最後のだけ雑すぎません?」
相馬が抗議する。
「だが――」
クロコダインの顔が、獣のそれに戻る。
「だからこそ、全力で叩き潰す価値がある!」
彼は斧を大きく掲げた。
「獣王会心撃!!」
巨大な一撃が、滝の光を浴びて軌跡を描く。
「やべぇ!」
ポップが悲鳴を上げる。
「これ、真正面から受けたら死ぬやつ!」
「ダイ!!」
レオナが叫ぶ。
ダイは、ナイフを構えたまま、一瞬だけ躊躇した。
(受ける? 避ける?
でも、避けたら――)
後ろには、レオナたちがいる。
そのさらに後ろには、森と村。
「ダイ!」
そのとき、後ろから肩を叩かれた。
「真正面は任せろ」
相馬だった。
「お前は、その隙に“通せ”。
このナイフが、どれだけのものか――
獣王に見せつけてやれ」
「相馬……!」
【相馬→ダイ 85/150(頼れる後輩+勇者候補)】
【ダイ→相馬 81 → 86/150】
ダイの頭上の数字が、ぐっと跳ね上がる。
相馬は、肩を回しながら一歩前に出た。
(……戻るのがちょっと惜しくなるくらいには、
今の性格も悪くないな)
ウイルスのせいで軽口が増えた。
でも、そのぶん「やりたい」と思ったことを、
素直に行動に移せるようになっている。
(戦う理由も、守りたいものも、前と変わらない。
なら、今の俺でやれることをやるだけだ)
「レオナ!」
「分かってるわ!」
レオナは杖を掲げた。
「フバーハ!!」
炎と吹雪に強い防御の風が、一行を包む。
「マァム!」
「ホイミの準備はできてる!
でも死ぬつもりで前に出たら、怒るからね!!」
「はいはい」
相馬は、笑いながらも目は真剣だった。
「ポップ、援護頼む」
「はいはーい! やれるだけやるわ!!」
全員の視線が、クロコダインの巨大な斧へと向かう。
獣王会心撃が、振り下ろされる――。
滝の轟音と、獣王の咆哮。
人間たちの叫びと、好感度システムの電子音。
(尻尾の皮も、恋愛も、命がけの戦いも。
ぜんぶ、まとめて引き受けるしかないわね)
レオナは、心の中でそう呟きながら、
迫り来る獣王の一撃を睨み返していた。