オーバーヒート(AI小説)   作:匿名希望

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AIが新セッションに移行して、AIの保有する様々な出力の前提が少し崩れてしまったためか、出てくる小説のクオリティが不安定になりました。
暖かい目で見てください。
訂正を入れながらの作成で、更新速度が鈍ります。

※ この系統の流れはクオリティが安定しなかったので更新中止しました。
が、見てみたいと言われる方がおられましたら、感想欄で一言いただければ、別ルートとして少しずつ更新をします。


旧25話(更新停止流れ)

 廃祠の夜は、思ったより静かだった。

 

 さっきまで獣王が暴れていたとは思えないほど、

 森のざわめきも、焚き火のぱちぱちという音も、落ち着いている。

 

 ダイは、少し離れた寝台でぱたんと仰向けに倒れ込んで眠っている。

 ポップはいびきをかき、マァムは寝返りを打つたびに毛布を直していた。

 

 レオナだけが、目を開けたまま天井を見ていた。

 

(……寝られない)

 

 目を閉じても、さっきの戦いが何度も再生される。

 

 クロコダインの斧。

 ダイのアバンストラッシュ。

 そして、その前に出た相馬の背中。

 

 胸のあたりが、じわじわと落ち着かない。

 

 そっと身を起こすと、廃祠の隅に目を向けた。

 

 粗末な荷物の間に、自分の荷袋がある。

 

 レオナは、できるだけ物音を立てないように歩み寄り、

 その奥から、布に包んだ小さな包みを取り出した。

 

 クロコダインの尻尾の先の皮。

 

 布越しでも、ごつごつとした感触が指先に伝わる。

 

(これさえあれば――)

 

 いつでも、相馬を「前の彼」に戻せる。

 

 そう思うと、胸の奥の不安が少しだけ和らぐ。

 

 けれど同時に。

 

(これを使うってことは、“今の相馬”とお別れするってことでもあるのよね)

 

 軽口ばかり叩いて、女の子に平気で近づいてきて。

 でも、命懸けになるときは、必ず前に出て守ろうとする。

 

 その“今の相馬”を、もう二度と見られなくなるかもしれない。

 

 安心と怖さが、同じ重さで心の中に居座っていた。

 

 ため息をひとつついて、レオナは布包みをそっと荷袋に戻した。

 

 ふと顔を上げる。

 

 ――視界の端に、相馬の寝顔が入った。

 

 焚き火の赤に照らされた横顔。

 いつもよりずっと静かで、無防備で。

 

(……ずるい顔)

 

 胸の奥が、きゅっと鳴る。

 

 足が、勝手にそちらへ向かいそうになる。

 指先が、そっと頬に触れてしまいそうになる。

 

(ダメ。近づきすぎたら、王女としての距離感が保てなくなる)

 

 自分にそう言い聞かせて、一歩だけ後ろに下がる。

 

 それでも、視線だけは離せなかった。

 

 ――ズギューン!!

 

【電子音声:レオナ(本人そっくり・甘々+困惑)】

『寝てるときくらい、普通の顔しててくれればいいのに……

 こんな静かな横顔見せられたら、王女とか関係なく、

 ただの女の子として隣に座りたくなる……しゅき……』

 

【レオナ→相馬 300/300(上限・変化なし)】

 

(……落ち着きなさい、わたし)

 

 頭上の数字は、もう振り切れたまま動かない。

 上限に刺さった針が、そこに固定されているみたいだ。

 

「……ん」

 

 その瞬間、相馬の睫毛がかすかに震えた。

 

 薄く目が開く。

 

「……あれ。王女様、夜這い?」

 

「違うわよ」

 

 条件反射で、小声のツッコミが飛び出した。

 

「見回り。ついでに、危険因子の様子を見に来ただけ」

 

「“危険因子”はまだ分かるとして、“ついで”扱いは地味に傷つくんだけど……」

 

 相馬は上体を起こし、背中を石壁にもたせかける。

 

 焚き火の赤が、その顔を正面から照らした。

 

 ――視界いっぱいに、相馬の顔。

 

 また、心臓が跳ねた。

 

【電子音声:レオナ(甘々+諦め気味)】

『近い……。こんな距離で見上げさせないで……

 ちゃんと危ない人だって分かってるのに、

 顔を見た瞬間に全部ゆるくなっちゃう……しゅき……』

 

【レオナ→相馬 300/300(上限・変化なし)】

 

(ほんと、どうすればいいのよこれ)

 

 レオナは視線をわざと斜めに逸らし、

 さっきまで触っていた荷袋の方をちらりと示した。

 

「起きたついでに確認しておくけど」

 

「ん?」

 

「……尻尾の皮、ちゃんと覚えてるわよね。

 あなたの“保険”」

 

「その呼び方どうにかならない? “俺の尻尾の皮”って」

 

 相馬が小声で笑う。

 

「そこまで行くと、ちょっとしたホラーなんだけど」

 

「自分で尻尾だの皮だの言い出したの、誰だと思ってるのよ」

 

「まあまあ」

 

 相馬は、焚き火の明かりの向こうで片手をひらひらさせた。

 

「安心しなって。あれないと、俺も困るし」

 

「困るの?」

 

「“戻る手段がある”って分かってるだけで、

 今みたいな性格でも、そこまで怖がらなくて済むんだよね」

 

 彼は、少しだけ真面目な声になった。

 

「このまま一生戻れないって言われたら、

 俺でもさすがにビビるからね」

 

「……そう」

 

 レオナは、自分の胸の内と同じ言葉に、

 ほんの少し肩の力が抜けるのを感じた。

 

「あなたのせいで、距離感がおかしくなってるんだから。

 普通の王女に戻れなくなったら、責任取ってもらうわよ」

 

「“普通の王女”ね」

 

 相馬は肩をすくめた。

 

「戻るか戻らないかって話なら――」

 

 彼は、すこし間を置き、焚き火の火を見つめた。

 

「俺、今の自分も嫌いじゃないんだよね。

 めんどくさいけど、楽しいところもあるし」

 

「女の子にちょっかい出せるから?」

 

「それも否定はしないけど」

 

 さらっと言ってのけるところが、また腹立たしい。

 

「でもまあ、一番は――」

 

 相馬は、ちらりと廃祠の奥を見やった。

 

 ダイの寝顔。

 ポップの寝相。

 マァムの丸まった背中。

 

「前より、ちゃんと“みんなの中にいる”って感じがするからかな。

 前の俺は、もうちょっと端っこで見てたし」

 

「…………」

 

 レオナの胸が、また変な音を立てた。

 

【電子音声:レオナ(甘々+弱点直撃)】

『そういうことをさらっと言わないで……

 “みんなの中にいる”って思ってくれてるの、

 すごく嬉しい……しゅき……』

 

【レオナ→相馬 300/300(上限・変化なし)】

 

「でも、だからって」

 

 レオナは、あわてて言葉を繋いだ。

 

「“戻らないでほしい”って、わたしが勝手に決めるのも違うのよね」

 

「お」

 

 相馬が目を細める。

 

「さすが王女様。話が早い」

 

「偉そうね」

 

「偉いのはそっちだけど」

 

 軽口を交わしながらも、

 焚き火の光の中で、二人の距離はさっきより少し近かった。

 

「だからさ」

 

 相馬が、少し真面目な顔で続ける。

 

「“いつでも戻れる”ってことだけは、

 ちゃんと持っててくれると助かる」

 

「わたしに?」

 

「うん」

 

 ためらいなく頷く。

 

「レオナが持ってるなら、

 変なタイミングで“勝手に戻される”ことはないだろうし」

 

「ずいぶん信用されてるみたいね」

 

「なんだかんだで、レオナが一番、

 俺のこと“危険”ってちゃんと言ってくれるじゃん」

 

「褒めてるの、それ」

 

「褒めてるって」

 

 相馬は、少しだけ視線を逸らしながら言った。

 

「危ないところも含めて見てる相手のほうが、

 ブレーキ役としては安心できるんで」

 

 その一言で、レオナの胸の中に、

 きゅっと何かが刺さった。

 

【電子音声:レオナ(甘々+ちょっと誇らしげ)】

『危険だって思ってるのに、

 そのうえで頼ってくれるの、ずるい……

 ブレーキ役でもいいから、隣にいたいって思ってしまう……しゅき……』

 

【レオナ→相馬 300/300(上限・変化なし)】

 

「……分かったわ」

 

 レオナは、立ち上がった。

 

「尻尾の皮は、わたしが“友人として”預かっておく。

 王女としてじゃなくて」

 

「友人、ねぇ」

 

 相馬が、少しだけ楽しそうに笑う。

 

「だとすると、俺、けっこう贅沢な友人持ってるよね」

 

「自覚があるなら結構」

 

 レオナは、焚き火に背を向けた。

 

「あなたが“戻りたい”って言ったとき、

 ちゃんと笑って渡せるように――」

 

 振り返らずに言葉を継ぐ。

 

「今のあなたも、ちゃんと見ておくから」

 

「……了解」

 

 相馬の返事は、不思議と軽くなかった。

 

「じゃあ、そのときまで、

 この危険因子、うまく使ってやってくれ」

 

「勝手に危険因子名乗らないで」

 

 レオナは、小さく笑って廃祠の奥へ戻った。

 

 王女としての仮面は、たぶんさっきかなりずれている。

 それでも今だけは、そのままでいいと思った。

 

◇ ◇ ◇

 

 翌朝。

 

 森の中に、鳥の鳴き声が戻ってきていた。

 

「ふあぁぁ……」

 

 ポップが、盛大なあくびをしながら廃祠の外に出てくる。

 

「生きて朝を迎えた喜びってやつだな……!

 オレ、改めて生きてる!!」

 

「昨日の夜も同じこと言ってたわよ」

 

 マァムが笑う。

 

「ほら、荷物まとめないと。ロモス城に戻るんでしょ?」

 

「分かってるって……いたたたた……!」

 

 前日の戦いの傷がまだ残っているらしく、

 動くたびにあちこちが痛むらしい。

 

「ダイは?」

 

「もう外で素振りしてる」

 

 マァムが親指で指した先では、

 ダイがパプニカのナイフを握りしめて、真剣な顔で斬撃を繰り返していた。

 

「よし」

 

 レオナは、荷袋の中をもう一度確認した。

 

 布に包まれた尻尾の皮は、ちゃんとそこにある。

 

(“保管役”を引き受けた以上、

 落としたり、なくしたりなんて絶対にできないわ)

 

 そう思うと、肩に乗った重さと、

 不思議な安心感が同時に増した。

 

「レオナ」

 

 背後から声をかけられる。

 

 振り向けば、相馬がいつものチャラい笑顔で立っていた。

 

 ――顔が視界に入る。

 

――ズギューン!!

 

【電子音声:レオナ(甘々+朝から全開)】

『朝からその顔は反則……

 さっきの真面目な顔も、今の軽い笑顔も、

 両方好きになってる自覚があるの、どうしてくれるのよ……しゅき……』

 

【レオナ→相馬 300/300(上限・変化なし)】

 

「なにその顔」

 

「いや、なんか今すごく失礼なこと考えてたなーって」

 

「何一つ当たってないから黙りなさい」

 

 レオナは、わざと拗ねた声を出してごまかした。

 

「それで、何?」

 

「城に戻る前にさ」

 

 相馬は、小声で続ける。

 

「尻尾ポーションの扱い、みんなと一回ちゃんと決めといたほうがよくない?」

 

「……そうね」

 

 レオナは、すぐに頷いた。

 

「わたしとあなたの問題であるのは確かだけど、

 マァムにも関わってくるし」

 

「治療担当だからね」

 

「ダイとポップにも、隠し事はしたくないわ」

 

 レオナは、焚き火の消えかけた場所を見やりながら言った。

 

「ここで助けてもらった命だもの。

 勝手に“元に戻しました”なんてやり方は、したくない」

 

「だよな」

 

 相馬は、珍しく最初から同意した。

 

「じゃ、移動前に“尻尾会議”やろっか」

 

「名前を変えなさい」

 

◇ ◇ ◇

 

 廃祠の前。

 簡単な朝食を終えたあと、全員が集まっていた。

 

「城の設備があれば、ポーションとして加工できるって話よ」

 

「俺の内側の“ウイルス的なアレ”を薄める薬、って感じのやつな」

 

「自分でウイルス言うな!」

 

 ポップの全力ツッコミが飛ぶ。

 

「でも、冗談抜きで」

 

 マァムが真面目な顔になる。

 

「そういう薬って、ちゃんとした場所で調合しないと危ないわ。

 材料が特殊だし、量を間違えたら身体のほうにも影響が出る可能性がある」

 

「だよなぁ」

 

 相馬があっさり頷く。

 

「だから、ここでは作らない。

 ロモス城に戻って、王宮の設備を借りるにしても――」

 

 レオナは、布包みをそっと閉じた。

 

「“いつ作るか”“いつ飲ませるか”“そもそも本当に使うかどうか”は、

 ここにいる全員で決めたい」

 

「全員?」

 

 ダイが目を丸くする。

 

「オレも?」

 

「当然よ」

 

 レオナは、ダイの目を真っ直ぐ見た。

 

「あなたにとっても相馬は大事な仲間でしょ。

 勝手に変えられて、平気でいられる?」

 

「……やだ」

 

 ダイは、短く首を振った。

 

「オレ、今の相馬も好きだよ。

 前の相馬、知らないけど」

 

「だそうですよ?」

 

 相馬が苦笑する。

 

「まぁ、前の俺はもっと地味で、

 女の子に声かける勇気ゼロでしたからね」

 

「それはそれで見てみたかった気もするわねぇ」

 

 マァムがぽつりと呟く。

 

【電子音声:マァム(本人そっくり・甘々+現実寄り)】

『今の相馬さんは、見てるこっちが心臓に悪いけど……

 ちゃんと痛みを減らそうとしてくれる優しさは好き……

 前の人も、きっと別の意味で好きになってた気がする……』

 

【マァム→相馬 114 → 117/150】

 

「マァムの電子音声も安定して増えてるぅ!!」

 

 ポップが頭を抱える。

 

「オレだけいつまで経っても“友達ゾーン”なんですけど!!」

 

「うるさいわね」

 

 レオナが、少しだけ笑いながら言った。

 

「とにかく――」

 

 彼女は、布包みを胸に抱え直す。

 

「この尻尾の皮は、わたしが預かるわ。

 王女としてじゃなくて、一人の仲間として」

 

「うん」

 

 マァムが頷く。

 

「調合するときは、わたしも絶対一緒にいる。

 医者みたいなものだから、責任持たないと」

 

「ダイとポップも、その場で文句言う権利くらいはあるわよ」

 

「“くらい”ってなんだよ!」

 

 ポップが叫び、それにダイが笑った。

 

「いいじゃない、ポップ。

 オレたちもちゃんと見届けられるなら、それで」

 

「むしろポップは“文句担当”だからなぁ」

 

 相馬が、さらっと言う。

 

「全員の中で一番、危ないとこ危ないって叫んでくれるし」

 

「……まぁ、否定はしないけどさ」

 

 ポップは、少し照れたように鼻をこすった。

 

「じゃあさ」

 

 相馬が締めくくるように言った。

 

「この件については――

 レオナとマァムと俺、それからダイとポップの“全会一致”じゃないと動かさない。

 ってことでどう?」

 

「いいわね、それ」

 

 レオナが頷く。

 

「そう決めておけば、

 安易に“戻せばいいじゃない”って考え方にならないもの」

 

「よし、じゃ決まり」

 

 相馬は、チャラく親指を立てた。

 

「尻尾は、ちゃんと“保管中”ってことで」

 

「だからその言い方やめなさいってば!」

 

◇ ◇ ◇

 

 ロモス城は、変わらず城壁が高かった。

 

 北門前で、見張りの兵士が勇者一行を見つけ、

 慌てて門を開ける。

 

「戻ったか!」

 

 門番の隊長が駆け寄る。

 

「クロコダインは――?」

 

「撤退したわ」

 

 レオナが、一歩前に出て答えた。

 

「ダイたちが追い払った。

 少なくとも、今すぐ城を襲うことはないはずよ」

 

「そうか……!」

 

 兵士たちの顔に、安堵が広がる。

 

「詳しい話は、王の前でね」

 

 レオナは短く微笑むと、

 一行を引き連れて城門をくぐった。

 

◇ ◇ ◇

 

 玉座の間。

 

 ロモス王の前で、

 ダイたちは膝をついていた。

 

「そうか……」

 

 王は、白い髭を撫でながら頷く。

 

「獣王クロコダインとやらを、退けたか」

 

「オレひとりの力じゃないです」

 

 ダイが、ぎゅっと拳を握る。

 

「アバン先生の技と、

 仲間のみんなのおかげです!」

 

「ふむ」

 

 王は、レオナを見た。

 

「パプニカの王女よ。そなたの目は確かだったようだな。

 この子らを“勇者候補”と見込んだのは」

 

「まだ候補ですわ」

 

 レオナは、王女の仮面をかぶり直して答えた。

 

「ですが――

 この子は、これから本当に勇者になる子です」

 

 その言葉に、ダイの背筋がぴんと伸びる。

 

 相馬は、その横顔を見て、少しだけ口元を緩めた。

 

「そちらの男」

 

 ロモス王の視線が、相馬に移る。

 

「そなたが、“世界一の家庭教師の弟子”という噂の男か」

 

「話が回るの早いなぁ」

 

 相馬は、膝をついたまま軽く頭を下げた。

 

「相馬って言います。主に面倒事担当してます」

 

「面倒事担当とは珍しい役職だな」

 

 王の口元に、うっすら笑みが浮かぶ。

 

「そなたのような者が一人いると、

 国というものは助かるかもしれん」

 

「ありがたく、半分だけ受け取っとく」

 

 相馬の軽口に、玉座の間の空気が少し柔らいだ。

 

「して――」

 

 王が、ふと真顔に戻る。

 

「その、獣王とやらから“記念”をもらったと聞いたが?」

 

「え、もう伝わってるんですかそれ」

 

 ポップが、心底いやそうな顔をする。

 

「情報伝達早くない?」

 

「護衛隊にも、いろいろ耳があるのでな」

 

 王が咳払いした。

 

「もちろん、無理に聞き出すつもりはない。

 ただ、戦場で交わされた“やりとり”が、

 今後の戦いに関わることもあるやもしれぬ」

 

「……そうだな」

 

 相馬は、一瞬だけレオナを見る。

 

 レオナが、ほんのわずかに頷いた。

 

「詳しく話すと、ちょっと話が込み入るんで」

 

 相馬は、言葉を選びながら続けた。

 

「ざっくり言うと、“戦士同士の約束”ってやつで。

 命は取らない代わりに、尻尾の先っぽをちょっとだけもらった、みたいな」

 

「……ふむ」

 

 王の眉が、若干妙な角度で上がった。

 

「詳細は、聞かないでおこう」

 

「助かる」

 

 相馬がほっと息をつく。

 

「ただし!」

 

 王は、少しだけ声を強めた。

 

「それが国に害をなすものでないと、

 そなたが胸を張って言えるのであれば、だ」

 

「ああ」

 

 相馬は、今度はチャラさを引っ込めて答えた。

 

「そこは、責任取るよ。

 少なくとも、ロモスには向けない」

 

「“少なくとも”ってところが不安なんですけど!?」

 

 ポップの悲鳴に、玉座の間に小さな笑いが起きた。

 

◇ ◇ ◇

 

 謁見のあと、一行は客間に通された。

 

 簡単な表彰と、晩餐の準備。

 ダイとポップは、豪華な料理に目を輝かせている。

 

「ほんとに、すごいね」

 

 マァムが、パンをちぎりながら言った。

 

「王様から“勇者一行”って言われちゃったよ」

 

「まだ全然なのにね」

 

 ダイは照れ笑いをする。

 

「でも、頑張らないと。

 アバン先生にも、レオナにも、

 ちゃんと胸張って会えるように」

 

「その意気ね」

 

 レオナは、グラスの水を一口飲んだ。

 

 向かいに座る相馬の横顔が、ふと目に入る。

 

 玉座の間で軽口を叩いて場を和ませ、

 王に対しても“責任は取る”と言った男の横顔。

 

 ――ズギューン!!

 

【電子音声:レオナ(甘々+誇らしさ多め)】

『王様の前でもふざけて、

 でも大事なところではちゃんと引き締めて……

 そんな横顔を見てると、

 “危険因子”なんて呼んでる自分のほうがおかしく感じてくる……しゅき……』

 

【レオナ→相馬 300/300(上限・変化なし)】

 

(だからと言って、安心して放っておけるタイプじゃないのよね)

 

 レオナは、心の中で小さくため息をついた。

 

◇ ◇ ◇

 

 晩餐のあと。

 

 女子用の客室で、マァムがベッドの上にごろりと転がった。

 

「はぁ~~~……お腹いっぱい……」

 

「食べすぎよ」

 

 レオナが苦笑する。

 

「だって、あんなに豪華な料理、

 そうそう食べられないでしょ?」

 

「それはそうだけど」

 

 レオナも、ドレスの帯を少し緩めた。

 

 ふと、部屋の中が二人きりだということに気づく。

 

「ねぇ、レオナ」

 

 マァムが、少し真面目な声で呼びかけた。

 

「何?」

 

「そーまのこと、どうするつもり?」

 

「唐突ね」

 

 さっきまで肉とスープの話をしていた口とは思えない。

 

「“どうする”って、何をよ」

 

「尻尾ポーション」

 

 マァムが起き上がり、ベッドの端に座り直した。

 

「さっきはみんなの前だったから、

 ああいうふうに決めたけどさ」

 

 彼女は、レオナの目をまっすぐ見た。

 

「本当の本音は、どうなの?」

 

「…………」

 

 レオナは、一瞬答えに詰まった。

 

「……ずるい聞き方するのね、あなた」

 

「ごめん」

 

 マァムは、素直に謝る。

 

「でも、わたし、治療に関わる以上、

 レオナがどこまで本気で“保管するつもり”なのか、

 ちゃんと知っておきたいの」

 

「保管、ね」

 

 レオナは、窓の外の夜空を見た。

 

 ロモスの城下町の灯りが、遠くに揺れている。

 

「わたしね」

 

 ゆっくりと言葉を選ぶ。

 

「前の相馬も、今の相馬も、どっちも好きよ」

 

「うん」

 

 マァムは、小さく頷いた。

 

「前の相馬は、

 もっと落ち着いてて、慎重で、

 危ないところに踏み込む前に、ちゃんと全部測るタイプだった」

 

「今の人は、測る前に飛び込むタイプだね」

 

「そう」

 

 レオナは、苦笑まじりに頷く。

 

「こっちのほうが、心臓に悪い。

 でも、その分、“一緒に戦ってる”って実感も強いの」

 

【電子音声:レオナ(甘々+自己ツッコミ)】

『一緒に危ない橋渡るのが嬉しいとか、

 王女としては完全にアウトな感性だと思うんだけど……

 もう戻れないんだろうな、こういうところ……しゅき……』

 

【レオナ→相馬 300/300(上限・変化なし)】

 

「だからこそ、よ」

 

 レオナは、自分の胸に手を当てた。

 

「わたしひとりの“好き”で、

 あの人を“今のまま”に縛り付けたくはない」

 

「……うん」

 

 マァムの表情が、少し和らぐ。

 

「そう言うと思ってた」

 

「あなたは?」

 

 レオナが、今度は問い返す。

 

「マァムは、どうしたいの?」

 

「わたし?」

 

 マァムは、少しだけ頬を赤くした。

 

「顔だけで言ったら、今の相馬さん、どストライクよ」

 

「知ってる」

 

「知ってたの!?」

 

 マァムがベッドの上で跳ねる。

 

【電子音声:マァム(甘々+自覚アリ)】

『顔を見るたびに、

 “こんな人が彼氏だったら”って考えちゃうの、

 本当にやめたい……

 でも、やめられない……』

 

【マァム→相馬 117 → 120/150】

 

「電子音声が全部バラしてくれるからね」

 

 レオナが呆れたように言う。

 

「……でも」

 

 マァムは、膝を抱えた。

 

「前の性格に戻るにしても、

 戻らないにしてもさ」

 

 視線を上げる。

 

「一番いいのは、“レオナと相馬が一緒に決める”ことだと思うの」

 

「わたしたち、二人で?」

 

「うん」

 

 マァムは、きっぱりと言った。

 

「わたし、治療する側としては口出しするけど、

 最後の“はい”は、あの二人が言うのが一番だと思う。

 王女としてじゃなくて、人として」

 

「……そうね」

 

 レオナは、ゆっくりと息を吐いた。

 

「本人を置き去りにして勝手に決めるのは、

 やっぱり違うものね」

 

「でしょ?」

 

 マァムが笑う。

 

「だから、レオナは“保管役”でいいと思う。

 相馬さんが戻りたいって言ったとき、

 ちゃんと渡せる人でいてあげれば」

 

「……そんな簡単な言い方しないでよ」

 

 レオナは、苦笑しながら立ち上がった。

 

「簡単じゃないから、今こうして悩んでるんだから」

 

「ごめん」

 

「いいのよ」

 

 レオナは、窓のカーテンを少しだけ開いた。

 

「ちょっと、夜風にあたってくるわ」

 

「うん。あんまり遅くならないでね」

 

◇ ◇ ◇

 

 ロモス城の回廊には、ひんやりとした風が流れていた。

 

 バルコニーから見下ろす街の灯りは、

 戦いの傷跡など感じさせないほど穏やかだ。

 

 レオナは、欄干に両手を置き、

 深く息を吸った。

 

(普通の王女のままでいられる未来も、

 きっとあったのよね)

 

 パプニカにいて。

 政務と礼儀作法と政治の勉強だけして。

 

 勇者候補と出会わず。

 危険な森にも来ず。

 クロコダインの尻尾の皮なんて、

 一生見ることもなく。

 

(でも、わたしはもう、そっちには戻れない)

 

 そう思うと、不思議と涙は出なかった。

 

代わりに、少しだけ笑ってしまう。

 

「夜風、一人占め?」

 

 背後から、聞き慣れた声がした。

 

「あなた、ほんとにタイミングが悪いわね」

 

 レオナは振り向かなくても分かった。

 

 相馬が、隣に立つのが、気配だけで分かる。

 

「女子会、終わった?」

 

「盗み聞きする気?」

 

「まさか」

 

 相馬は、欄干に肘をついた。

 

「さすがに、命がいくつあっても足りないからね」

 

「分かってるならいいわ」

 

 レオナも、欄干に寄りかかった。

 

 夜風が、二人の髪を少し揺らす。

 

「さっき、マァムと話したの」

 

「尻尾ポーションのこと?」

 

「ええ」

 

 レオナは、少しだけ横目で相馬を見た。

 

「わたしが“保管役”でいいかどうかって」

 

「いいんじゃない?」

 

 相馬は、夜空を見上げた。

 

「レオナが持ってるってだけで、

 だいぶ救われてるのは本当なんだよ」

 

「……どういう意味?」

 

「たぶん俺が一番怖いのって、“自分でも分からないうちに”なんか変なことになるパターンなんですよ」

 

 彼は、ゆっくりと言葉を探すように続けた。

 

「気づいたら誰かに迷惑かけてた、とか。

 気づいたら取り返しつかないことになってた、とか」

 

「…………」

 

「でも、“戻すボタン”を、

 ちゃんと分かってる人が押せるって分かってたら」

 

 相馬は、レオナの方を見た。

 

「ちょっとくらい危ない橋渡っても、

 ギリギリ踏みとどまれる気がするんだよね」

 

【電子音声:レオナ(甘々+限界近い)】

『そんな顔でそんなこと言わないで……

 “戻すボタン”なんて言われたら、

 押せるわけないって思うに決まってるじゃない……しゅき……』

 

【レオナ→相馬 300/300(上限・変化なし)】

 

「……ひとつだけ、いい?」

 

 レオナは、夜空から視線を外さないまま言った。

 

「どうぞ」

 

「わたし、あなたを“元に戻すためだけ”にこの尻尾を預かるつもりはないわ」

 

「ほう」

 

「“戻りたくなったときに、戻れるようにしておく”ために、

 預かってるの」

 

 レオナの指先が、欄干をぎゅっと掴んだ。

 

「だから――」

 

 振り向く。

 

 距離は、もう一歩踏み出せば、

 相馬の胸にぶつかりそうなくらい近かった。

 

「今のあなたも、ちゃんと見ておく。

 好きになったこと、なかったことにはしない」

 

「…………」

 

 相馬の目が、少しだけ揺れた。

 

 夜の静けさが、二人の間に降りる。

 

「それって」

 

 相馬が、わざと軽く言おうとしたのが分かった。

 

「結構な告白だよね?」

 

「違うわ」

 

 レオナは、即座に否定した。

 

「これは、王女としてじゃなくて、

 一人の仲間としての“宣言”よ」

 

「宣言」

 

「ええ」

 

 レオナは、ほんの少しだけ笑った。

 

「あなたの危険なところも、

 ちゃんと見て、それでも隣に立つって、

 そういう宣言」

 

「…………」

 

 相馬は、一瞬だけ言葉を探すように黙った。

 

「じゃあ」

 

 ようやく口を開く。

 

「その宣言、ありがたく受け取っときます」

 

「受け取るのね」

 

「うん」

 

 相馬は、肩をすくめる。

 

「いざってときの保管場所がレオナなら、

 変な怖さはないし」

 

 チャラい口調のわりに、

 彼の目は、さっきよりずっと真剣だった。

 

【相馬→レオナ 98 → 102/150】

 

【電子音声:レオナ(甘々+ちょっと泣きそう)】

『ちゃんと“受け取る”って言ってくれた……

 わたしの宣言を、笑わないで受け止めてくれるの、

 本当にずるい……しゅき……』

 

【レオナ→相馬 300/300(上限・変化なし)】

 

「電子音声、勝手にクライマックスにするのやめて!!」

 

 レオナは、自分の頭上に向かって小声で抗議した。

 

「え、クライマックスなの、今?」

 

「聞かないで!」

 

 顔が熱くなるのをごまかすように、

 レオナはくるりと回廊の外を向いた。

 

 夜の空は、さっきより少しだけ明るい気がした。

 

◇ ◇ ◇

 

 そのころ、別の場所。

 

 ロモス王は、書簡を一通読み終え、

 重く息を吐いていた。

 

「……パプニカ方面が、きな臭いか」

 

 王は、机の上に封蝋の割れた手紙を置く。

 

 魔王軍の動き。

 各地の小競り合い。

 そして、パプニカ王家に向けられた、微かな圧力の予兆。

 

「レオナ王女には、しばらくロモスにいてもらう予定だったが……」

 

 王は、窓の外の城下町を見下ろした。

 

「近いうちに、パプニカに戻さねばならぬやもしれんな」

 

 まだ、そのことを勇者一行に告げるには早い。

 

 だが、世界のどこかで、

 少しずつ次の波が立ち上がり始めている。

 

 ――クロコダインの尻尾。

――保管された危険因子。

 ――そして、パプニカからの不穏な知らせ。

 

 勇者と仲間たちの旅路は、

 ロモスの静かな夜を挟んで、

 また新しい騒がしさへと進んでいくのだった。

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