001
「おい、あの役人帰って来たってよ……」
「マジかよ、俺の家族はどうなったんだ……」
ウルサス源石鉱山にて、会話が行われている、それは奴隷となった鉱石病患者の会話だ。
そのほとんどがあの役人についてであろうこと、予測には事欠かない。
なんでも拘束されてここまでやってきただとか。
サルカズの傭兵まで雇ったのに負けただとか。
そのうえウルサスの秘密をかけらだけでも与えてしまっただとか。
そんな感じのことばかりである。
中には家族が無事でほっとしたもの、俺も逃げたかったもの、逃げなかった俺らはどうなるのかと心配するものまでたくさんである。
だがそんなことを気にする必要がなくなることが起こる。
「天災だ!天災が来るらしいぞ!」
「天災だって!?ここじゃそんなの十年なかったのに!」
「どうするんだ……この際逃げるか?」
「逃げでどうするんだ、あの役人はしつこいぞ」
奴隷たちは一か所に集められる、それは役人だった男であったが、どこか違っていた。
というか何かに操られているとしか思えない言動をしていた。
逃げ出すものはあの空を飛ぶ機械に乗ればいいだとか。
逃げたきゃ好きにしろだとか。
俺はここで奴隷をいじめるのに集中しすぎて逃げだ出すのが遅れることとなっているだとか。
奴隷たちは混乱していたが、一人の感染者を見て冷静になることなる。
「お兄ちゃん!おばあちゃん!」
「サイサ!?お前逃げたんじゃ!?」
「サイサ!サイサがそこにいるのかい!?」
奴隷達のまとめ役であったサイサの兄貴であるレイサと家族、その者がサイサを確認したのだ。
まとめ役と言ってもその扱いはバイトリーダーのようなものだった、無論、賃金などはない。
「逃げた先で移動都市を見つけたんだ!そこの人がみんなを雇ってくれるって!」
「サイサ……信じたいところだが……」
『ではこのようなレクリエーションはどうかな?』
バンッ
今まで感染者たちをいじめていた者たち全員の首が飛んだ、無論、木っ端役人も。
その後ろには球体に触手。その先に丸鋸をつけた機械のようなものが浮かんでいた。
『これで味方だと信じてくれたかな?』
映像として浮かんだのはどこかの将軍のような衣服をまとった人物だった、どこかアニメのような丸顔をしているのは映像だからだろうか?それともそういう印象を受けるからだろうか?
否、今はどちらでもいい
「本当に俺らを助けてくれるのか……?」
『無論、ただとは言わない、野菜とか動物を育てる程度はしてもらうがね、望むなら賃金も出そう、故郷にも帰してやろう、どうだ?』
ゴクリ、と誰かが生唾を飲み込んだ、あまりにこちらに理がありすぎる、だが動植物を育てる、それは本来ならば誰にもできることではないが、ウルサスという大地においてそのスキルは必須項目であることは誰もが知っていた。
要するに命の危機がない職場につかせてやるというスカウトだ。
断ったら?それは役人たちが証明しただろう。
彼らは見せしめだ
断れる人間などいなかった。
002
「おいおい、殺したのか?」
「ははは、何を言っているんだティムケンとやら」
ありとあらゆる機械が働いている移動都市の艦橋、運転席、そこにティムケンと呼ばれたサルカズ傭兵とあらゆる将軍であるガールはいた。
「奴らを殺したのは奴隷でもメカでもない、ただの天災とやらだよ、それを見学するためにここに来たのだから」
映像画面では続々と本来よりも数倍ほどに強化されたベルチバード輸送機に乗った奴隷たちがここにやってくる様が見て取れる。
大小さまざまだが、全員が体表に黒い石のようなものがある。
「あれが鉱石病か、君は腕を出しているが体表にはないからわからなかったが、なんというか、グロいな」
「感想がそれか、もっと恐ろしいとか近寄りたくないとか言うと思ったが。」
「戦前見たB級映画っぽいなという感想しか出て来んよ」
コーヒーを飲む、そして同時に天災が巻き起こった。
連続した隕石だ。
艦橋のガラスのやってくる大風、ベルチバードは揺れているが誰一人の命も投げ出してはいない。
本来のベルチバードであれば墜落は必至だろう、だが彼女が設計を見直した(MODにより強化)したベルチバードは誰一人として落下させることなかった。
そしてこの移動都市にあたらしい住人がやってくることとなった。
「ほう、なんというか、すごいな」
「その感想だけか」
「まぁ、世界を崩壊させた光を見ていたからな、それよりは鉱山一つ爆発させるだけの光ではな」
「さて、ティムケンとやら」
椅子がティムケンに向き直る、それは真剣にこれからを左右させるという目であった。
「ロドス・アイランドに連絡を繋げてもらうか」
003
「はいこちらロドス……ティムケンさん!?」
ざわり、ロドスの連絡部が騒然とする、何せ死亡したと思われていた人員からの連絡が来たのだから。
逆探知は!?
今やっています!
連絡箇所は……
『あぁ、こちらティムケンであってる、俺がウルサスからの傭兵となったのは知ってるな?』
「はい、それでウルサスの奴隷内情を知らせてくれると……今までどちらに!?」
『あぁ……それなんだが、ロドスに連絡を取りたいという感染者の組織が出来上がったらしくてな、今繋ぐ』
「え!?ちょっと!?」
『~♪』
『星■■よ永遠なれ!
吹き鳴ら■■■を 力強きその手で
御旗を■■に轟き立てよ
その旗は邪智より 我ら守る、我ら守る
自由との■■ 大いな盾となれ
その高■■より 声響か■■をば
■■ざる■■が旗標とし
独立と権利を 称え歌え、称え歌え
栄誉と偉力を 称えいざ歌え
我が子らよ、■■■■己が旗振れど
旗の中の旗こそ 我らが祖国の旗なり
海陸の宝 ■■■よ永遠なれ
■■■■■もて 規範を示せ
か■■■■告げ 祖先の誉在りし日
旗は翻る ■■■■■下永久に
■■■■自由の鐘の音聞け、聞け、皆よ
■■■■■の祖国の民、民、答う
何処にあるとも■■負うため出で来て
■■■■の旗のもとで死を遂ぐのみ
心に忠誓いて、星■旗を追うのみ
■■■■、■■■■を広げゆく
海陸の宝 ■■旗よ永遠なれ
自由と正義もて ■■■■せ
かの愚政に告げ 祖先の■■りし日
旗は翻る 力と正義の下永久に!』
「なんの音楽なんですか!?ティムケンさん!?」
「……!しまった!時間稼ぎです!ロドス本艦が乗っ取られます!」
『聞こえてるかな?』
ありとあらゆる画面が乗っ取られられる、その声はどこかアニメのような、現実離れした声がした。
『我々はアメリカ合衆国、その一つの地方、連邦、その支配者であるミニッツメンの将軍、ガールである』
どこかの将軍服、およそ戦闘用とカスタマイズされたそれを纏った女性の姿が映し出される。
丸顔とした緩やかな顔とは思えないほどの真剣な瞳、数々の勲章が胸元にあり、この者の地位を表している。
『この放送は決して敵対的なものではないと思っていただきたい、現に画面以外の運営は通常通り行われていることだろう。』
「確認しろ!」
「医療!軍事!食料!どれも正常です!」
『だがこれでこちらの組織がどれだけの戦力を持っているかを理解してもらえたと思う』
ゴクリ
唾をのむ音がする、これだけのハッキングを一度にするとはどんな組織なのだろうかと。
『来月、こちらの拠点に来るためのベルチバード……あー、移動用の機械を用意する、代表者を連れてくるように、護衛も許可しよう、あと医療関係者も欲しい、こちらには鉱石病患者がいるが治療者がいないのだよ、可能ならベルチバードに乗れる人員のみとしたいとこだが、まぁ三台ほどはそちらに回そう』
「この通話ではいけないのですか?」
小さな少女が返答する、ロドスの現代表、アーミヤである。
『ふむ、君が代表か』
「っ」
『君が現れてからまわりの空気が一変した、そういうことなのだろう』
「それはティムケンさんから聞いたことですか?」
『いや、私の直感だ、だがティムケンから聞いた話には代表は心が読めるのだろう?だから直接会いたいという話だ』
「こちらに来れないのは何か事情がおありですか?」
『そちらを完全には信用していないというのがあるが、問題はコイツだ』
画面が切り替わり、ガラスの瓶、その人が入れるサイズの中に入っている人員がいた。
服装はそのまま、灰色のロングヘアー、ガラスの瓶に立て掛けられていたのは大剣だ。
「スカジさん!?」
『やはり知っていたか、コイツの回収もお願いしたいのだよ、解放したとたんにこちらで暴れられるのは勘弁したいのでね』
「……わかりました」
『ありがとう、こいつには困っていたのだよ、連絡員にはティムケンを向かわせよう、では失礼する』
ブツン
画面が通常に切り替わる
「ミニッツメン……ガール……いったいどんな人なのでしょうか」