001
「悪いが、鉱石病患者について渡すことは出来ない、彼ら彼女らは労働者なのでね」
「それは……」
「無論、奴隷扱いはしない、給料も渡すが……そもそも貴殿らロドスアイランド以外でお金を使うことは出来るのか?鉱石病患者は」
「一応国によっては可能です」
「なるほど、ではこの場所だけでの循環ではなく世界的な循環を目指そう」
「それがいいかと思います、ですが鉱石病患者については……」
「まぁそれなら希望者はそちらに渡そう、それでどうだ?一応言うがこのあたりが分水嶺だ」
「それならロボットだけでもいいのではないのですか?」
「ほう、ティムケンから聞いたか」
「はい」
「確かにロボットだけで運営したこともあったがな、ロボットだけでは不満が出んのだ」
「不満、ですか?」
アーミヤは奇妙に思った、不満というのは最初から出ないほうがいいのではないか?そう思ったのだ。
「不満というのはいわば悪いところがあるということだ、悪いことがあるということは改良できるということとなる、私だけでは我慢してしまうのでな、改善点が見つからなければ進化はできん」
「進化、ですか」
「そう、進化だ、我々は固定観念を壊し進化しなければならない、ということだ。」
紅茶を飲むガールを見る、その瞳は真剣だ。
「まぁそれはいい、それであのー……なんだ、スカジとやらを解放したいのだが」
「無力化して捕えているのですか!?スカジさんを!?」
「全体の資材の四割ほどを使ったがな、あのような生物がいるとはこの世界は信じられん」
「この世界、ですか?」
「私は異世界出身だ、君らにとってはな、まぁ説明できるもんでもない、スカジとやらのとこに案内しよう」
紅茶を飲み干すとバトラーと呼ばれたロボットと共に歩き出す、慌ててついていくアーミヤ達だった。
002
サンクチュアリ移動都市、その中を見たのはアーミヤ達が初めての見物客だった。
ロボットがいたるところで作業をしており、その間を子供が走り、大人がそれをたしなめる。
先民の人数にしておよそ数十と言ったところだろうか、少なくとも見れる範囲でそのあたりなのでもっといるのだろう。
「ここが野菜を育てる場所だ、あらゆる土地の土を使って実験的な繁殖もしているし、その辺から誘致してきた家畜も育てている」
上の廊下から下方向にガラスの先で見えたのは球体に触手を持った機械と人間が働いている様子だった。
先ほど見たテイトなどや、テラの大地でよくみられる野菜も育てられている。
どうやら本来車両などの駐車場のようなところを再利用しているらしい、農牧業も行っているようだ。
「感染者の中には植物学者もいてな、そのようなものを再雇用している」
「植物学者の地位までも奴隷にするなんて……」
「わたしから見てもおかしいが、君たちから見てもおかしいようだな、いやーころ、ンン、無力化しておいてよかったよあの役人」
はっはっは、と笑うガールにうすら寒いものを感じ取る、緩やかな殺意だ、こちらには向けられていない、その役人とやらに対してだろう。
「ここがメカの製造工場だ」
同じく駐車場を再利用したのであろう場所には驚きのものがあった、天井ぎりぎりまで開けられた空間に鎮座する巨大ロボットが数機いた。
その合間を縫ってベルトコンベアにて運ばれる部品と、それを組み立てるメカ、メカがメカを作っている様子に少々の奇怪さを覚える。
だが問題はあの巨大ロボットだ。
クロージャなんて窓にはりついてみている
「あの巨大ロボットはいったい……?」
「リバティプライム、戦術小型核を手持ちの爆弾として使い、地面を広範囲にガラス化させるビームを放ち、D32鋼だったか?あれをチーズの様に引き裂けるパワーを持つロボットだ、あれが今四機建造中だな」
全員が息をのんだ。
あれほどの者が四機、いったい何と戦うつもりなのかと。
「不思議か?建造中の一体はスカジに破壊されたものだぞ、修理中だ」
スタスタと歩くガールを慌てて追いかけるアーミヤ達。
その後はエスカレーターに乗ったりエレベーターに乗ったりしながら、途中ケルシー先生による診察現場を見ながらも研究所へと到着する。
「スカジさん!」
「今は昏睡液に浸されている、分析結果もなんもわからん、解剖するわけにもいかんのでな、体を再構築する自信ないし」
「よぉアーミヤとエースたち」
「ティムケンさんも!ご無事でなによりです!」
「無事っつーか無力化されたつーか……まぁいい」
はぁ、と溜息を吐くティムケンをしり目にバトラーはスカジの解凍準備を開始する。
『解凍準備整いました、解放します』
「スカジさん……!」
アーミヤがスカジへと近づく
「……アーミヤ?ここは……!」
スカジは瞬時に戦闘状態へと移行しようとするが、アーミヤがそれを止める
「アーミヤ、この女は危険よ」
「いえ、ロドスアイランドとガールさんは同盟関係を結びました!味方です!」
「……そう、雇い主がそう判断したならいいわ、私の武器は?」
「ほらよ」
ガールが持ってきた武器をスカジは受け取る、軽々しくスカジの武器を持ったガールにアーミヤの護衛、エース以外はビビリちらかしていたが。
「……何か手を加えてないでしょうね?」
「改造したい気持ちがあったがなんもしてないさ」
「そう、ならいいわ、さっさと帰りましょうアーミヤ」
「え、いやいや、そういうわけにも……ケルシー先生?」
研究所の扉、そこからやってきたのはケルシー先生と呼ばれた存在だった。
警戒心を微塵も隠そうとしていないのは彼女の歴戦の者としての感ゆえか。
「アーミヤ、検診は終わった、鉱石病抑制の薬も分析分も合わせて持ってきている、問題はない、そのガールという未知の存在がさらなる要求しないのであれば立ち去るのがいいだろう」
「ケルシー先生……?」
「おやおや、警戒されているな、仕方のないことだが」
「その認識であっている、我々ロドスとしては同盟を組むのは合意である、君の理念も理解しよう、だがそれは性急だと言える、君の理念はいわば感染者の完全なる味方と言える、それはテラの大地において緩慢な毒となるだろう、君だけで動かす組織となってしまう、ロドスの多量な意見によって選択される民主主義とは異なる独裁の組織だ、だがこれは君のことを詳しく知らないからだとも言える。」
「要するにもっと会話を行って互いに理解を深めようってことだろう?」
「そうだ、今の時点で行える支援と依頼は簡易なものとなるだろう」
「それで構わん、どうだ?握手でも」
「ふむ、仮初の友好の形としては悪くないだろう」
ケルシーとガール、裏のロドスの長と裏表の永遠のミニッツメンの将軍の握手であった。
「ティムケン、君達にはここミニッツメンに残って連絡員となってもらう」
「構わんがケルシー女医、そろそろ休暇が欲しいんだが」
「ミニッツメンの一時敵対したのは君たちの独断によるものだ、ロドスアイランドには関係がなく有給休暇を使って行われた少額の日稼ぎと認識している、故にそれは却下だと言えよう」
「へいへい……はぁ、最近いいことねぇなぁ」
「ティムケン、命があっただけ良いと思いましょう」
ティムケンが肩を落とし、それを相方であろう軍帽を被った女が慰めている。
「そういえば私の体に傷跡がないのはあなたが治療したのかしら」
スカジがそう発言する。
「あー?いや適当に栄養素ぶち込んだ液体も混ぜ込んだから勝手に摂取して勝手に回復したんじゃないか?」
「そう」
「それって活動していない状態でも栄養補給可能ってことですか!?」
アーミヤが驚いた顔をしていた。
「まぁ人造義体化計画には必要だからな、インスティチュート様様だな」
「インスティチュート……?」
「こちらの話だ」
ツカツカと歩くガール、その手にはテラの未来が握られていた。