走り屋たちの外伝集   作:下戸摺り半

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 そもそも次の話が次の話として正常に投稿できているのか不安に感じつつ、投げていきます。


十八歳の憂鬱

 夜八時…。

「仁志、例のお客さんだ」

「あいよ…。よう、委員長。ホントに時間ピッタだな。乗りなよ」

仁志はレビンの左ドアを開け、約束の時間通りに現れた白石を乗せる。

「それじゃ、行ってくる」

「おう、事故るなヨ」

 

 「それで?また何か嫌なことがあったのか?」

「…友達が私のお父さんと寝てるって話はしたよね?」

「あぁ、俺がまだ無免だった頃だな…」

「その友達、最近また私の好きな人と話し始めて…」

 

流石に無免運転で他所の家の娘を連れ回すわけにもいかなかったため、その頃はガレージ前で度々愚痴を聞いた。現在、晴れて免許を取得した仁志は、こうして白石をドライブに連れ出している。

 

「とりあえず秋名湖行って落ち着こうや。悩める優等生にはマイナスイオンってな」

 

 一方その頃、政志の整備工場では…。

「全く、人をタクシー代わりにしやがって」

「固いこと言うなよ、祐一」

 

政志の顔なじみで、秋名山麓で豆腐店を営む藤原文太と、市街でガソリンスタンドの店長をしている立花祐一が訪れていた。

 

「おう、文太に祐一じゃねぇか。ハチロクだろ?言う通りにセットアップしたよ」

「いつもすまんな。請求書は俺の豆腐屋に送っといてくれ」

「そういや二代目はどこ行ったんだ?」

「まだうちを継ぐと決まったわけじゃないさ。仁志なら、近所の娘さん連れてドライブだ」

「ほぉ〜。隅に置けないじゃないか」

「それがナ、祐一、付き合ってるわけでもなきゃ、ヤッたわけでもないらしい」

「そりゃまた…最近の若モンの考えることはわからんねぇ」

「そんな付き合いもあるだろ。男と女のただの友達なんてのは」

「まぁ、俺のことは最近やっとオヤジと呼んでくれるようになったけど、今だに他の奴には壁作るからなぁ」

 

 政志と仁志の間に血の繋がりはない。政志の遠い親戚筋の女が、どこかの富豪の愛人となって産んだ婚外子が仁志であった。母親は病に命を落とし、親戚筋をたらい回しにされた末に政志に引き取られた。周りの人間から疎まれ蔑まれた経験により人間不信になり、破滅願望を持っていた仁志を、修理工場や家事を手伝わせながら、必要とされている実感を与え、少しずつ心を開かせてきたのが政志である。

 

「それで、今日出かけた娘ってのはなぜまた仁志と仲良くできてるんだ?」

「何でも、小中の同級生で、小学生の時に虐められていた仁志を学級委員長だったあの娘が助けてくれてたらしいんだよ。アイツは恩義を感じた相手には意外と義理堅いようでな」

「ふぅん…。で、今夜はどこにシケ込もうってんだろうな」

「文太、アイツにそういう度胸はないって。まぁこの辺でクルマで出掛けるとしたら秋名湖くらいしかないだろうな」

「秋名湖か…。秋名といえばうちのスタンドの若いのが今日もドリフトしに行っているはずだな」

「じゃあシケ込むどころじゃねえな。騒がしすぎる」

 

 その頃、秋名道路では一台の白いトヨタ車が登っていた。

 

「ねぇ、さっきからエンジンがうるさ過ぎて相談にならないじゃない。どうにかならないの!?」

「しょーがないだろ、これハチゴーなんだから」

「何よハチゴーって!?」

「ハチロクのジェネリックみたいなもんだヨ。本家より安いけど何かが足りてないっていうアレ」

「ハチロクって何よ!?」

「ハチロクはハチロクだヨ。バイアグラ飲んだハチゴーみたいなもんサ」

 

秋名道路に入り、きつい登り坂に入ると、エンジンを回せる限界まで回して登っていく。さらに、古い車の廉価版グレードで防音もそれなりでしかないため、もはや相談に乗るどころではなかった。

 

 「ふぅ~ぃ。どうにか秋名湖まで登れたぜ…」

「クルマの中で話せなかった分、長くなりそうだけど大丈夫?」

「…まぁ門限の十時には間に合うだろ、多分」

 

秋名湖に着いた仁志がハチゴーのエンジンを止めると、夜闇と静寂の世界が訪れる。

 

「それで、そのお友達とは何故か仲良くできてるわけか。委員長の親父さんと寝てるのに?」

「なつきのことは悪く言わないで。根はいい子なんだから」

「いい子、ねぇ。委員長がそう言うならあまり悪く言いたくはないけど、でも敢えて言うなら俺はそいつがいい子だとはとても思えないんだよ」

「なつきが他の誰と仲良くしようといいの。でも藤原君とだけは許せなくて…」

「藤原君っていうのか、その片思いの君は。それ俺に言っちゃって良かったの?」

 

そう訊きながら、先ほど二柱リフトに上がっていたトヨタ・スプリンタートレノのことを思い出す。藤原とうふ店…いやまさか、ただの偶然だろうと結論づけ、白石の話に意識を戻す。つけっぱなしだったFMラジオからは、誰がリクエストしたのか嗄れた声の男性ロック歌手が、がなるように歌っている。

 

「あっ…。まぁいいわ。とにかく、なつきのことは友達として好きだけど、でも藤原君と仲良くしてほしくはないの」

「仲良くしてほしくないっていうか、要するに自分がその藤原ってやつと仲良くしたいから嫉妬してるとかそんなんじゃねえの?」

「違うよ。私なんかじゃ藤原君とは釣り合わないし。藤原君は藤原君に相応しい相手がいると思うから…」

「でもその、なつきとかいうヤツは違う、と」

 

どうも俺はこういうのには疎いな、と仁志は考える。仁志がまともに人間と関わり始めたのがごく最近のことで、色恋などしたこともないのである。

 

「それで、委員長はどうしたいの?俺としては、だ。俺に対してそこまでグイグイ来れるンだし、その藤原ってヤツにも話しかけて仲良くなればいいンじゃねぇかと思うけどネ?」

「ねぇ聞いてた?釣り合わないって言ったよね?」

「わかんねーじゃねぇか。委員長こそ意外とその藤原ってヤツのタイプかもしれんぞ」

「そんなのあるわけないよ。こんな地味なガリ勉タイプなんて…」

「清楚な優等生って感じでいいと思うけどナ。それに正義感と優しさが委員長のいいとこじゃないか。いつも助けてもらってた俺が言うんだから間違いないって」

 

どうも卑屈になってるナ、小学校ではこんなんじゃなかったのにナ、と仁志は考える。どうにかして自信を持ってほしい、などと考えていると、何故か白石の手が仁志の太腿に伸びてくる。

 

「おい、何やってンだ」

「私のことそこまでいいって思うなら、私で興奮できる?ここで証明できる?」

「やめろ。俺に対する気持ちがないのに打算とヤケクソで迫られても俺はお前を抱けねぇぞ」

「ッ…!…ごめんなさい…」

「今のは聞かなかったことにする。なつきってヤツと藤原ってヤツがくっつくのが嫌なら、せめてなつきってヤツと同じ土俵には降りるな」

 

何でちょっとモッコリしてんだ俺は、と仁志は内心毒づく。胸の奥がチクリと痛んだ気がしたが、つい怒気を孕んだ声を出して怖がらせたせいだと思い込むことにした。

 

「…ところで今何時?このクルマ、時計が壊れててサ」

「九時半…」

「門限何時だっけ?」

「無理言って十時にしてもらった」

「帰ろう。今なら余裕で間に合うだろう」

 




 どれくらいの描写までが15禁で許されるのか。図らずもチキンレースのような投稿となりました。
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