秋名道路最速を自称する走り屋チーム・秋名スピードスターズと、赤城道路を拠点に自他共に認める赤城最速の走り屋チーム・赤城レッドサンズの交流戦。火花を散らす両陣営によって足止めされ、巻き込まれないように距離を取って様子を見るものの、赤城レッドサンズのリーダー・高橋涼介に見つかり、開き直って野犬のように喰って掛かる仁志。そうこうしている間に練習走行の体裁を取ったレッドサンズの示威行為が始まり、帰り道が開放され、白石家の門限に間に合わせるため仁志は秋名道路を下るのであった。
その様子に何かを感じ取った涼介は、実弟にして赤城レッドサンズのナンバーツー・高橋啓介とその舎弟・中村賢太に仁志の追跡と撮影を命じるのであった。
秋名道路をレビンが下る。あくまでセンターラインは割らず、それでもリアタイヤをわずかにスライドさせ、大きくロールしながら、それでもハイペースで下る。早くもスピードスターズの下位メンバー数台をパスしていた。
「怖くてごめんけど無茶しないってことだけは約束するワ」
「ッヒィ〜!もっと、もっとゆっくり急ぎなさいよぉ〜」
「無茶言うなって」
門限破ったら俺が殺されるんだけど、などと呟きながら、さっきから誰かに尾行されていることに仁志は気付く。不愉快だな、と胸の内でぼやきながら、さらに一台、カーブの出口でタコ踊りしたところをパスする。
「しかしまぁ、さっきから追いつくのは例の秋茄子ナントカ、だっけ?そっち陣営のヤツばっかりだヨ。赤城のお客さんはもうチラホラ戻ってきてるけど」
「う、う、運転に集中しなさいよ!」
恐怖を紛らわせるために話しかけたが逆効果だったようだ。こりゃ何しても裏目だな、と仁志は気にしないことにした。前方では白い180SXとライムグリーンツートンのシルビアが右カーブに突入するところだが、右カーブのガードレールが白く光って見えていた。仁志は尾行者が気付くようにブレーキを二回小突いてから、明らかに手前からフルブレーキで減速する。右カーブの向こうからレッドサンズのメンバーが現れ、センターラインをはみ出さずに立ち上がっていく。仁志はそれをやり過ごすと、さっきまでのハイペースが嘘のようにゆっくりと曲がっていく。程なくして、目の前に二車線を塞いでスピンしたシルビアと180SXが現れた。仁志はハザードランプを焚き、レビンを止める。尾行者もハザードランプを焚き、レビンの後ろに止まった。
「後ろは…上にいた黄色いセブンだ。隣のやつがカメラ回してるのが気に入らんナ。…委員長、大丈夫か?」
「うん、平気…。前の車が止まるってよくわかったね」
「なんか嫌な予感はしたんだヨ」
前方のスピンにより停車する少し前、高橋啓介は愛車、黄色のアンフィニRX-7で仁志のカローラレビンを追いかけていた。
「なるほど、兄貴が気にするだけのことはある。センターラインを跨がず、浅いドリフトでうまく走りやがる。確かにクルマさえ良ければスピードスターズなんか目じゃねえかもな」
「でも結局、コイツは走り屋ではないんでしょ、啓介さん?」
「残念だぜ。コイツ絶対やってると思ったんだがな。コイツがクルマ仕上げて来るんなら少しは楽しめるんだが」
「なんならもう四台抜きましたよね、ランタボ、スターレットにカリーナにスタリオン…」
「スピードスターズのコーナリングが遅いんだ。あのハチゴーのストレートの遅さからしてそういうことだろ」
「あっ、ブレーキ点滅してます!」
「まさか降りてくる気じゃないのか?」
「あっ…違うみたいです」
停車してハザードランプを焚いたカローラレビンの前には、先ほど池谷と健二と名乗った二人の車体がこちらに横腹を向けて止まっている。
「右コーナーなのに左向いて止まってますよ」
「ったく、何やってんだ。対向車が来てんのに無理して振り回して、土壇場でビビってタコりやがったな」
「これが本当にここの最速チームなんですかねぇ?」
「眉唾だな。…しかしあのハチゴーのドライバー、まるでこれを予想していたみてぇだな。兄貴の言う通り、野犬のような勘だ」
前方では、スピンして止まっていたシルビアと180SXがオタオタと再び走り始めていた。
「賢太、カメラしっかり構えておけよ。ストレートが速くてコーナーで危ないヤツ二台をあのハチゴーがどうやってやり過ごすのか、しっかり撮っとけ」
およそ走り向きとは言えない車で、センターラインを割らず、秋名スピードスターズの下位メンバーを次々と抜き去る仁志。その様子を見た啓介は仁志が走り屋ではないことを惜しむ。そんな中、仁志の見せた野犬のような危険回避に、仁志の走りを目に焼き付けようと決意を新たにする啓介と賢太であった。