走り屋たちの外伝集   作:下戸摺り半

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 前回までのあらすじ

 対向車に驚いてスピンした秋名スピードスターズの二台を、まるで野犬のような勘で察知し回避した仁志。いつまた同じようにスピンするか分からない局面、追跡が再開されるのであった。


ラフプレーも技術の内!?

 スピンして止まっていた二台の日産車に続いて発進するカローラレビン。しかしその貧弱なエンジンでCA18DET型とSR20DET型の加速には付いて行けず、直線路では離されていく。前を走る二台のドライバー達は、後ろにいたのがE80系列のカローラレビン、さらにその後ろにいるのは憎き高橋啓介だと気づいたか、此奴等にだけは負けられないと意地を張り、普段よりもカーブへの進入速度を上げるが、それが却って車体の挙動を乱していた。

 

 仁志は焦っていた。門限に間に合うように飛ばして帰りたいが、隣には嫁入り前の優等生が乗っており、既に怯えている。あくまでドライブ帰りなのでセンターラインを跨いだ走行ライン取りはしたくない。よってどうしても左カーブでは走行ラインが小さくなりスピードが乗らないし、右カーブでは大回りになりすぎる。そんな状況でも常識的な範囲で急いで帰れるはずが、先程からずっと直線路では自分より速く、カーブでは信用ならない車の処理に追われている。しかも最後の最後にこの二台をいっぺんに処理しなければならなくなっていたからである。

 

「やりづれえな。カーブでこんなに遅いのに、立ち上がりで抜こうと思ったら真っすぐだけは一丁前に速えからいつまでもコイツラの後ろにつかなきゃいかん」

「む、む、無理しなくていいよ、もう。親には私からフォローしとくから」

「いつまでもコイツラが前にいるのが危ねえっつってんの。事故られて道塞がれたら朝まで帰れねえぞ」

 

 ライムグリーンのシルビアを先頭に、四台の珍道中の様相を呈したまま、秋名道路の難所、五連ヘアピンに団子状態で差し掛かる。

 

「ここなら真っすぐが短い。ある意味ではチャンスなんだが、なんせ前が信用ならんからなぁ…。委員長、すまんが対向車線に出るかもしれん。怖かったら目を閉じとけ!ついでに耳も塞いどけ!」

 

五連ヘアピンに差し掛かると、仁志は敢えて減速した180SXのテールに急接近しプレッシャーをかける。前を走る二台のブレーキングは、仁志から見ると明らかに早すぎた。仁志は対向車の存在を確信し、ブレーキを踏み足して一旦距離を置く。案の定、レッドサンズのステッカーを貼ったユーノス・ロードスターが現れ、先程のスピンで懲りた二台はゆっくりと一つ目のヘアピンを立ち上がる。仁志は再び距離を詰め、前を走る180SXにプレッシャーを掛ける。

 

 180SXのドライバー、健二は焦っていた。先程から直線路では離れるもののカーブのたびに追いついてくる白いカローラレビンが、突然先程までの安全マージンを捨てて急接近し始めたからである。普段のブレーキング開始地点よりも遅らせてブレーキを踏まなければ追突される、かといってブレーキを遅らせすぎれば前を走る池谷のシルビアを押し出してしまう。最悪は前後の二台に挟まれる玉突き事故である。そうかといって、もしかしたらレッドサンズの構成員かもしれない相手に、今夜は素直に道を譲るという選択肢はなかった。五連ヘアピンの最初の右カーブで対向車をやり過ごし、対向車がいないことを確認して次の左カーブに向けて車体を右車線に振る。何故か後ろのレビンが右車線について来ないことに気付き、いつものタイミングでブレーキを踏んだ瞬間、左車線のレビンがセンターラインのスレスレまで右に寄ってブレーキを踏んだことに気付く。レビンはそのまま旋回を開始した池谷のシルビアと健二の180SXの間に楔を打ち込むようにその鼻先をねじ込み、180SXに幅寄せをしたまま左カーブを曲がって立ち上がる。外側にはガードレール、内側にはレビンがいてアクセルが踏めなくなった健二の目に、次の右ヘアピンから立ち上がる対向車のライトが見えた。健二は、アクセルを抜いてレビンの後ろに付くしかなかった。

 




 野犬が牙を剥いた。突然のラフプレーにより前を塞いでいた二台の内一台をやり過ごす。しかし、依然としてライムグリーンツートンのシルビアが前にいるのであった。
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