TSして承認欲求爆発しちゃった俺がガチ全能系クラスメイトに愛されて幸せになっちゃうまで   作:あるふぁせんとーり

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第10話「アソビきれない毎日を。」

「……うん。今日のお仕事も完璧。あなた達が来てからまた図書館が明るくなった気がするわ〜」

 

「え〜、褒めすぎですよ〜」

 

 

 とある午前授業の日の放課後。

 

 俺達は閉館中の図書館で蔵書整理を終えた後、図書研の部室で阿須加先生とお茶をしていた。

 

 

「というか2人とも珍しいよね〜。今の時代、わざわざ実際の本で読みたいって子、だいぶ少なくなってると思ってたんだけどな〜」

 

「そ〜ですか?わたし、紙の匂いすきなんですよね〜」

 

「私は……紙の方がすぐ読めるので」

 

「ま、そんなもんだよね〜。私もだいたい一緒〜」

 

 

 ああ、なんて素晴らしい午後だろうか。

 

 責務に追われることも、未来に葛藤することもない。

 

 明るい部屋で温かい紅茶を啜り、甘いドーナツを頬張る。

 

 そう、これ。

 

 こういうきらら系みたいなのが俺の求めていた高校生活。

 

 このドーナツの生地に染み込んだシロップの甘さが美少女と化した俺の人生の味。

 

 その甘さをありったけの感覚とともに頬張っていると、カチャッという軽い音とともに部室のドアが開いた。

 

 

「お疲れっす、阿須加さん。……あ、白山さん達も来てたんすね。作業、お疲れっした」

 

 

 相も変わらず「これで男かぁ」とため息が出るような美貌で部屋に入ってくる氷室先輩。

 

 少し暑くなってきたからか、ホットパンツにタイトめTシャツ、その上から薄手のパーカーと自分に似合う女装を心底楽しんでいる様子だった。

 

 

「んで、阿須加さん。これ、ご注文のやつっす」

 

「あ!ありがと〜氷室くん!これでもっと賑やかになる〜!」

 

「あれ、これなんですか?」

 

「あ、これっすか?Wiiっす。実家から持ってきた」

 

「Wii……えWii?あの〜……任天堂の?」

 

「そっす。世間話で「いらないWiiがある」なんて話したら、阿須加さんが欲しがったんで」

 

 

 そんなことを言いながらも氷室先輩は手際よく部室のテレビに本体を繋いでいく。

 

 それからほんの一分程度で懐かしいサウンドとともにテレビに明かりが灯った。

 

 

「お、きたきた〜」

 

「いやいやいやいや……え、いいんですか?学校ってゲーム持ち込むの禁止じゃ……?」

 

「大丈夫だよ〜。持ってきちゃいけないのは生徒で、今回はWiiの所有権を私に譲って、それから持ってきてもらったから校則違反な〜し」

 

「脱税?」

 

 

 そして待ってましたと言わんばかりにうっきうきでカバンからWiiソフトを取り出す阿須加先生。

 

 もじぴったん、Wii Party、Wii fitとこれまた懐かしいタイトルを揃え

 

 

「Wii fit!?!?」

 

「……え、阿須加さんWii fit持ってきたんすか?」

 

「そうそう。これ好きなんだよね〜。あ、これウィーボくん」

 

 

 ……待って、この人ウィーボくんカバンに入れたまま出勤してきたの?

 

 正気か?

 

 

「……あ、私ボクシングやりたいです」

 

「いいよ〜、やりなやりな〜!」

 

「黑谷ちゃんの順応が早すぎる」

 

 

 そしてWiiリモコンとヌンチャクを構え、ウィーボくんの上に乗る黑谷ちゃん。

 

 表記された体重は42kg。

 

 えっと、黑谷ちゃんの身長が168cmだから……

 

 

「わ、BMI15!黑谷ちゃんほっそ〜♡」

 

「え、氷室くん氷室くん、今の子ってこんな痩せてるものなの?」

 

「いや、流石にこれは……」

 

「え〜、でも氷室くんだってすっごい細いでしょ?そう考えると……」

 

 

 そう何かを言いかけたところで、「あ」と阿須加先生は何かを思い出したように声を漏らす。

 

 

「白山ちゃん、今、何時……?」

 

「うーん、そろそろ1時半ですかね?」

 

「おあ、やばいやばいやばい〜!校長が半から図書館来るらしくて〜!」

 

 

 大慌てでソフトケースをカバンに詰め込み、部室を出ようとする阿須加先生。

 

 それと同時に、部室の扉のドアノブが捻られる音が響いた。

 

 

「……おや、いないと思ったら部室でしたか、阿須加先生」

 

「あ、校長先生……タイヘン、ゴブサタシテオリマス」

 

「ところで今は何を……」

 

 

 あ、マズい。

 

 時既に遅しとはこんなタイミング向けの言葉なのだろう。

 

 ふと動いた校長の視線の先にあったのはテレビの画面であった。

 

 

「おや、これは……」

 

「え〜っと、違うんです。これはですね、生徒達の健康意識を高めようと〜」

 

「Wii fitではありませんか!懐かしい、またこの画面が見れるとは。いいですねぇ」

 

「……あら。でしたら、校長先生も少し遊んでいきますか〜……?」

 

「いいんですか?これはラッキー。私、このゲームのスキージャンプが大好きでしてね」

 

 

 そう言ってスーツのジャケットを脱ぎ、まさかの参戦!してくる校長。

 

 阿須加先生はほっと胸を撫で下ろし、「こんなのもどうですか?」と調子に乗ってソフトケースを再び広げ始める。

 

 それで盛り上がる大人達を尻目に、「ちょっと出ません?」と俺達の肩を叩いた氷室先輩。

 

 俺と黑谷ちゃんはそれに従い、購買の方へ移動した。

 

 

「盛り上がってましたね、阿須加先生達」

 

「ね〜」

 

「ああ、あれなんすけど……多分、逃げた方がいいっす」

 

「逃げる?なんでですか?」

 

「あの人達……手加減しようがないくらい、下手なんで」

 

 

 その言葉の意味を本当に理解できたのは数時間後。

 

 閉門時間ギリギリまでウィスピーウッズを倒せなかった彼らの姿を見届けてからだった。




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