機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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人類の半数がジオン公国に虐殺された1年戦争の終結から7年。

それが、どれほど人類に深い傷を与えたのか、まだ誰も理解していない。

失われたものの尊さを。

この宇宙世紀の人々の傷を癒すために、更なる犠牲を宇宙は必要としていた。

それさえも、まだ誰も知らない。


パプテマス・シロッコ

アーガマがグラナダ港を攻略してしまえば、後は、僕の想定以上に事が進んだ。

正直、2カ月くらいグラナダで籠城出来れば、状況に変化も起きるだろう、という程度の提案でしか無かったから。

運が良かった。

 

グラナダをエゥーゴの基地化するのに、一番大きい働きをしてくれたのはアナハイムエレクトロニクスのウォン氏だ。彼は電話でヘンケン艦長から連絡を受けると、即時グラナダを攻略してエゥーゴで守ってほしい、と言い反対する人間を全て『修正』してみせるとまで言い切った。

本当に『修正』を実行した、とは後から聞いた。軍人と民間人の区別のつかない本当に困った人だが、ここまでされると寧ろ感心してしまう。カミーユには接触させないように気をつける事は別として。

 

まぁ、でも、ウォン氏以外のアナハイムエレクトロニクスやルナリアンを揺さぶったのは、サイド7グリーン・ノアだったのだろう。ティターンズはグリプスと呼びはじめ、軍備の量産を始めた。カミーユの故郷は、ティターンズ専用の軍需工場とされてしまったのだ。この、短期間で。

ティターンズ艦隊の動きが鈍いはずだ。彼らにエゥーゴなどという弱小組織に構っている暇など無かった。

 

「これから、アナハイムエレクトロニクスはティターンズに何を販売されるのですか?」

 

僕のこの一言がルナリアン達に危機感を抱かせたらしい。

 

「僕は、ティターンズがグリプスで軍備の安定量産を始めれば、彼らは月面都市を丸ごと武力で買いたたきにくると愚考します。」

 

ルナリアン達は軍事のこととなると無知だが、会社員としては優秀でエゥーゴの勝利が自分達に有益だと計算した。

そうなれば、グラナダはエゥーゴの基地となり、要塞となり、地球連邦軍の反ティターンズ派の拠点となった。

 

ちょっとなんだか、すごいことになってしまったのだ。

 

まぁ、基地化するまでの間になんの問題も起こらなかったわけではない。たかが中尉のエグザベ・オリベでは対処も難しい事もある。

例えば、グラナダに設定された中立的立場を保つ地球連邦軍が所持するオフィスビル。グラナダは民間船もジオン共和国の船も入るため、防衛面防諜面の不安は大いにあったが、エゥーゴとしても地球連邦軍としても、このオフィスビルを破棄することはできなかった。

 

ティターンズとエゥーゴが手打ちする日が来るとは思わないが。

 

そのオフィスの一室で机を挟んで向かい側に座る男、パプテマス・シロッコ大尉。

彼とは、グラナダの基地化が始まる少し前、彼がMAで地球とコロニー間の直行便テンプテーションに嫌がらせ、つまり軍事的ハラスメントをしていた際に交戦した。

 

パプテマス・シロッコは大胆で優雅であり、それでいて自信に満ち溢れた人物だ。ほぼ敵地に等しいであろうここでもリラックスしたようにしかし、姿勢良く座り、ちょっとした動きにも品を感じさせた。

彼もまた、当然のように才能と努力の塊だった。

 

そのパプテマス・シロッコは何故か僕との面会を求め、そして何故か僕はブライト艦長とクワトロ大尉と、カミーユと一緒に彼に対面していた。カミーユは別にいい。

問題はブライト艦長とクワトロ大尉だ。

ブライト艦長は、パプテマス・シロッコに軍事的ハラスメントされていた小型輸送船テンプテーションの艦長からクワトロ大尉に抜擢されて、今はアーガマの艦長をしている。

つまり、ブライト艦長もクワトロ大尉も僕の上官だ。

僕にとって予定外の行動をされても、今、この場では何も言うことができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パプテマス・シロッコと交戦したのは、カミーユのガンダムMk-Ⅱの訓練のため、月と地球の間の宙域にいたからだ。宇宙空間で目標にシールドを向け続けると言う基礎訓練だった。初歩的ではあるが、実戦を意識させる為のもので、シールドの使い方の基本を身に着けるための訓練だ。

敵の位置を常に意識する。自分から見てどの方向に敵がいるのか、シールドをどの角度で向けなければならないのか。身を護るために、シールドを有効に使うために必要な訓練だ。

 

グラナダで精力的に上層部の『修正』を行い続けているウォン氏はMSの訓練に必要な時間と物資と場所をプレゼンすると、納得したのか、直ぐに全て用意してくれた。

ウォン氏は会社員なので、彼の流儀に合わせるべきだろうと思い、1人で直接会って話したのだが、『修正』のしすぎで割と顔も手も足も傷跡だらけらしかった。歩き方で分かるほどに。まぁ、全然こりてもいないんだろうが。

 

そのウォン氏に訓練用として割り当てられた宙域を、テンプテーションはパプテマス・シロッコから逃げる際に救難信号を出し、通過したのだ。

 

 

 

 

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エグザベ中尉の訓練は、割と過酷なのかも知れない、とは最近うすうす気付き始めていた。カミーユはガンダムMK-Ⅱのコクピットの中で、背中と両足の筋肉痛と戦いながら、少し恨めしい気持ちでいた。MSの訓練がこんなにきついものだなんて、誰も僕に教えてくれなかった!

 

そんな僕にエグザべ中尉は、全身が痛くても出来る訓練はあるよ、と言い、軍でもやったなぁ、と懐かしそうに語ってくれた。僕はその訓練、ガンダムMk-Ⅱにシールドを構えさせると戻すという動作を繰り返させていた。

何でも、操作はMSの左腕だけを動かすだけだし、シールドには何も当てないからコクピットも揺れず負担も軽いとかなんとか。負担が軽いって、どういう意味だったっけ?と訓練後に思った。

 

最初はそれを月面でしていたが、僕が慣れたみたいだから、と言って、今は宇宙空間でしている。地面があるのとないのでは、MSの動きが違う。シールドを構えるだけだというのに、ガンダムMK-Ⅱの軸がぶれて、有効な盾の構え方ができていなかった。

 

「月はやっぱり衛星だからね、地球やコロニー程ではないけど、地面と引力がある。どうしても、宇宙空間とは勝手が違うよ。スラスターやAMBACを意識しないと。まぁ、今日は宇宙空間での初めての訓練だし、構えると戻すを繰り返すだけにしておこうか。こっちで出す光点滅信号の合図に合わせてくれ。姿勢制御は今日のところはスラスターで。AMBACはこの次にしよう。シールドを動かす動作を繰り返すとだんだん僕のリック・ディアスと対面、水平面の両方がズレると思うから、その時はやり直そう。合図を出すよ。大丈夫、月面やコロニーでやるより、身体に負担は掛からないよ。」

 

エグザべ中尉は通信機越しに軽くそう言って、リック・ディアスをガンダムMk-Ⅱと対面させたまま、正面スラスターを使いバックしていった。そう遠くはない。ミノフスキー粒子も散布されていないし、普通の通信も使えるだろうに、光点滅信号か。

いや、分かってる。宇宙で小さな光を読み取る訓練も兼ねているんだ。光の点滅を見逃さないように習慣づけるための訓練。月面でもそうしていた。

 

ガンダムMK-Ⅱで盾を構え、盾を戻す。ただそれだけの動作。機動兵器なのに動きもしない。でも、僕はエグザべ中尉の訓練で自分が馬鹿にされている、と感じることはなかった。

 

最初の訓練、月面でのホバー走行。あの後エグザベ中尉が手本に見せてくれた直線ホバー走行は、ほんの30分ほどだったけど、全くブレのない、まるで1回しか通ってないかのような恐ろしいくらいの直線だった。

 

多分僕と同じくらい、3時間やっても変わらないんだろうな。そう、確信した。訓練とは、必要だからあるのだ。

 

だけど、もう少し、もう少しだけ、甘くしてくれないかな、と心から願ってもいた。

 

 

 

 

 

宇宙空間には、目印になるものが極端に少ないと、エグザベ中尉は言った。訓練の休憩時間の時だ。ガンダムMK-Ⅱとリック・ディアスを近づけて、エグザべ中尉はガンダムMK-Ⅱのコクピットの中でそう、話してくれた。

 

「恒星は遠すぎて小さすぎるし、地球や月は近すぎて大きすぎる。デブリなんて月と地球とコロニーの引力の綱引きでぐるぐる動いてる。宇宙を目視だけで思い通りに進むなんて僕だってなかなか出来やしないよ。訓練なしじゃあ、ね。」

 

宇宙空間でまっすぐ飛ぶことの難しさを実感させられていた時だ。僕はガンダムMk-Ⅱを思い通りに動かしているつもりだったけど、計器によると左下方に緩くカーブしていた。月と地球の引力も関係していると言われた時は、なるほど最もだと思った。対処法を聞けばこれだ。やっぱり訓練か。そうだよな。

 

「気分転換しようか。次は動く的にシールドを向け続ける訓練にしてガンダムMk-Ⅱを動かそう。モニタの画面で地球や星や月やコロニーがクルクル動くのを見ると気分も良くなるよ。やっぱり星ってきれいだし。」

 

「…はい。よろしくお願いします。」

 

本当にもうちょっとだけ、手加減した訓練にしてもらえないかな。もらえないよな。シールドって大事だから。

 

考えてることが分かったのか、エグザベ中尉は、エグザベさんはちょっと困ったように笑った。

 

 

 

 

異変が起きたのはその、エグザベ中尉のいう気分転換のシールド訓練の時だ。救難信号をキャッチしたのだ。エグザベ中尉はリック・ディアスでハンドサインをだし、訓練を中止した。リック・ディアスとガンダムMK-Ⅱを近づけ、警戒を行う。

この宙域にはガンダムMk-Ⅱとエグザベ中尉のリック・ディアスしかない。僕らはここまで、ドダイに乗ってきた。ドダイのパイロットは、まぁ贅沢なタクシー運転手をして楽させてもらってる、と言っていた。迎えの時間は指定されているから、まだ迎えには来ない。

あの、ウォンさんの好意だってエグザベ中尉は言っていた。

 

だから、この宙域に来ると言うことは、本当に緊急で、恐らく、自分達がどの宙域にいるかも分からない混乱の中にいる何かだと、確信できた。

 

「カミーユはコクピットから出ないでくれ。まさかと思うが、ティターンズかも知れない。ようやく索敵が活発になってきたのか?」

 

それは今朝のブリーフィングで出た議題だと聞いた。ブリーフィングは定期的に行われるようになってきた。エマ中尉からも、エグザベ中尉からもそれは聞いていた。僕は参加していないけれど、ブリーフィングでは訓練方針やエゥーゴの目標など話し合っている、と。

何でもエマ中尉が言うには、エグザベ中尉が戦力を増強したからには使えるようにしてみせる、とブリーフィングで言ったから、とかなんとか。僕がそれを聞いてエグザベ中尉に尋ねたところ、いや、勝手にそう思われたみたいだ、って珍しくぼやくように言っていた。

権限や立場の問題に振り回されている、とエグザベ中尉は言う。

 

そして、今、僕らの目の前にある問題。救難信号を出す小型輸送船だ。僕は、その小型輸送船に見覚えがあった。コクピットの人影にも!

 

「あれ、テンプテーションです!エグザベ中尉。地球とグリーン・ノアを結ぶ直行便の、ブライト艦長の船です。」

 

「この救難信号は、敵に追われている。武装の少ない小型輸送船が落ちていないと言うことは!」

 

エグザベ中尉のリック・ディアスから、そう聞こえる。

 

そうか!つまり囮だと悟った。

 

「でも、ブライト艦長を確認しましたよ!」

 

「戦いたがっている、見つけた!カミーユ、テンプテーションを守って下がれ!」

 

言うやいなや、エグザベ中尉は一瞬光った何かに向けてバーニアを全開にした。

歯噛みをしたくなるくらい悔しい。だけど、僕もわかる。あれは、きっと強い、強い敵だ。

シールドをエグザベ中尉が飛んだ方に向けて構え、テンプテーションの速さに合わせてグラナダ港まで下がるしか僕にはできない。それくらい、強い敵だと確信した。

 

 

 

 

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こいつ、強い。分かってはいた。

 

リック・ディアスのバーニアを全開に一瞬光った、いや、わざと光らせ、こちらを誘った敵を追う。

 

モビルアーマーか?それにしては見たことがない。ジオンでも地球でも月でもない。

 

「遠い、ところから来たモビルアーマー!!」

 

コロニーでも地球でも月でもない、どこか。

 

そして、とても速い、上下左右の動きも良い。羨ましい。

モビルアーマーの機動性を活かし、死角に回り込もうとするのをブースターとスラスターの操作で防ぐ。

制式採用されるようなモビルアーマーではあり得ない動きをするのを見た。敵パイロットは天才的才能と新しい技術も併せ持つ。リック・ディアスのライフルなど掠らせるのが精々か。

 

敵の動きに合わせ続けようにも、速すぎる。リック・ディアスは僕の動きに追いついて来れていない。

ライフルをモビルアーマーの進行方向と思う方に咄嗟に投げ、ビームサーベルを抜きながら、死角になる方向に回り込もうとしたが。失敗した。

敵にビームライフルを撃たれ、いや、下がらず前進しかない!下がる動きが普通なら、そうでないほうが意表を付ける!

 

「私を知ったな!ニュータイプ!」

 

知らない男の声が通信から聞こえた。自信家だ、こいつ!

 

「ミノフスキー粒子さえ、撒かない!」

 

モビルアーマーがMSに変形をした?変形が速い、隙がない!距離を詰めたんだぞ、こっちは!ビームサーベルで切り結ぶしか。いや、そのつもりなのか。

 

「パプテマス・シロッコと呼べ!」

 

ビームサーベルで切り結んだ一瞬、そう通信機から声がした。

 

「機体の名前か!」

 

一度距離を出す。バルカンも撃ち牽制するが、装甲も硬いのか!まるで効かない!

 

「お前の敵の名だ!」

 

律儀だな。再度、ビームサーベルで切り結ぶ。が、リック・ディアスは力負けしている。

 

リック・ディアスは力負けしているのなら、敵がこちらを押す動きに合わせて、スラスター操作でパプテマス・シロッコの機体の横に回り込む!読まれていた!

咄嗟に距離を取りビームサーベルの斬撃を除け、バルカンを再度撃つ。今度は掠らせもしないか!

 

「エグザベ・オリベだ!」

 

突貫するため最大限バーニアを吹かし、ビームサーベルをパプテマス・シロッコの機体に対して直角に構える。

パプテマス・シロッコは天才だ。リックディアスの速さとビームサーベルの長さを正確に読んだ。くそ、間合いを誤魔化せるかと思ったが、ゆうゆうとビームサーベルで受け止められた。

 

ふと、笑っているのが、分かった。通信ではない。何で分かった。

そうか!戦いに来たのなら、いや!地球圏に帰って来たのなら、喜んでいると言うことか!

 

「私を知ったニュータイプがエグザベ・オリベか。」

 

そう言うと、パプテマス・シロッコは僕と距離を取り、見せつけるようにしてMSからモビルアーマーへと変形し撤退していった。欲をかいて、変形中だというのにバルカンを撃っても当たらない。

くそ、本当に強い。何故撤退した。

 

気づく。テンプテーションがグラナダに収容されたからか。パプテマス・シロッコは戦闘に他者が混じるのを嫌ったのか…

 

 

 

 

 

 

 




パプテマス邂逅編

パプテマス強すぎない?少し手加減。そうだよな、しないよな。0.5秒で変形できるメッサーラとパプテマス・シロッコは強すぎる。

これテレビ放送しないの?そう、しないか。アニメでこのシーン見たい。本当に見たい。

何気に無傷かも知れないエグザベ・オリベ。

アニメにならない?このシーン。そう、ならないか…本当に無理か?そうか、無理か…

ここを書いてる頃は、まだ、Zガンダム本編の20話くらいまでしか見てなかったのかな?

パプテマス・シロッコがラスボスのつもりで戦闘を書いてますね、俺。……無理だろ、これに勝つの…

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