機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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赤い巨人はシャア・アズナブルを守っていた。

扱いやすい便利な道具を傷つけないようにアクシズを、そして包囲網を大回りしたからだろう。僕でも追いつけた。

僕が先回りしていたのを見て、シャア・アズナブルは驚いた。

驚くんだな。

とても意外だった。僕に対して人間らしく振舞ってみせるその姿が、とても不思議だった。


飛び出していけ、宇宙の彼方!

 

今、この瞬間も。

宇宙は広がり続けている。

遠く、遠くへ。無限に広がるのが宇宙だ。

 

赤い巨人。お前もそれを知っているだろう。無限のエネルギーを持っているのなら、僕が見えているのなら、お前にも見えているはずだ。このニュータイプの力を人間に与えたのがお前ならば、当然知っている。

 

今も広がり続ける宇宙を感じているはずだ。それが分かっているのに、何故、生命なんかに、人間なんかに固執する?無限のエネルギーを、意識をニュータイプに注いで何がしたい?因果地平の彼方への導きなんて、お前自身さえ死にかける様な負担がかかるような真似をして、何になる?

無限の宇宙があるのならば、無限の可能性だってあるはずだ。現に、無限のエネルギーをお前が持っている。

 

瞬間、白い光が、脳裏に瞬いた。赤い色の殺意が2つ走ってくるのが見えた。

 

ビームサーベルの柄を長く握る。

いや、見えるのだから、怖れる必要も、動く必要もないか。それが、分かった。見ればわかる。

これは、僕の思考が届く距離だ。走ってきた殺意の方向を捻じ曲げて、構えたビームサーベルにぶつけて消した。

 

こんなものが、何になる。僕とお前の間に必要か?赤い巨人。

巨人を見た。

巨人は人類を見ている。観察をしている。でも、それは因果地平の彼方へ導くために。ずっとそうだ。変わらない。

 

次の生命体の、いや次の人類の為に。

 

お前は諦めた。とっくに、諦めていた。そして、ニュータイプの力を押し付けられただけの人類では、良き生命体になれはしない、と確信した。

 

だが、押し付けた力がお前の枷となった。お前を見ている僕だから分かる。

 

また、赤い殺意が迫ってくる。右手に大型のビームサーベルを構えたシャア・アズナブルとその殺意の欠片4つ。

 

思考を届かせて欠片を奪う。全部をシャア・アズナブルの前でぶつけ合わせ潰した。

 

爆破の煙幕さえ貫いて、シャア・アズナブルが突撃を仕掛けてくるが、見えている。爆発の余波に少し体が揺さぶられたな、シャア・アズナブル。進行方向が少しずれた。

それでは、僕の左肩を掠る程度しかできない。

もちろん、ビームサーベルで防いだ。勢いのままぶつかってきたシャア・アズナブルを蹴り飛ばす。

 

そうだ。枷だ。ニュータイプは赤い巨人の枷だ。

お前の一部になった僕たちが、ニュータイプの誰かが望まなければ、因果地平の彼方へ全生命体を導くことができなくなった。予想もしていなかったんだろう。

 

今のままでは、お前はこの宇宙を終わらせることができない。

 

だから、道具を使っている。争いが続けば多くのニュータイプがそれを望むようになると、お前は知っている。

宇宙の終焉を願うことを知っている。人間が絶望することを、知っている。

 

人間を知っている、赤い巨人。

 

「50億年後には太陽系も消える。1000億年もすれば天の川銀河も。無限のエネルギーがあるお前は待てばいいだけだ。道具を使う必要があるのか?」

 

赤い巨人に問いかけた。応えない。

 

宇宙が生まれて、星が生まれ、銀河が生まれて、生命が生まれて、人類が生まれて、宇宙で命を繋ぐようになるまで、140億年を待っていたお前が、たったのあと50億年を何故待たない。

お前が最初にニュータイプの力を押し付けた人間が誰であろうと、人類が誕生して2000万年程度も経っていない。たったの2000万年で何が分かる?何故、自然に宇宙が終わるまで待たない?

 

「人類は何度も滅亡の危機を迎えて、戦争を繰り返して争い続けてきていたのに。世界や人類の滅亡を心底願った人間たちだって、きっといたのに。お前はニュータイプを待っていた。僕らの答えを待っていた。」

 

ニュータイプ。その概念はジオン・ズム・ダイクンが提唱した曖昧な表現の新人類のことだった。

しかし、実際にニュータイプと呼ばれている僕たちは新人類ではない。そんなものではなかった。お前が実験的に、力を押し付けた人間だ。実験結果を得るための、そして因果地平の彼方の為の道具だ。

 

シャア・アズナブルが下方から斬りかかろうとしてくるのが見えた。蹴り飛ばした時に僕の上右方に殺意の欠片1つを飛ばしていた。思考で欠片を掴んで、シャア・アズナブルの頭にぶつけた。上から斬りかかれるように体勢を変え、シャア・アズナブルのビームサーベルをビームサーベルで抑え込んだ。粒子が飛び、僕とシャア・アズナブルの表面に無数の小さな穴が開く。焼けただれていく。

 

「お前は、お前が望む答えだけを待った。お前が望む人間から、望む答えだけしか欲さなかった。そうだ。だから、僕らは会話ができなかった。」

 

「アムロでない貴様が!私の前に立つというのか!!」

 

「人間と同じ形をしている。指があって、掌があって、腕があって、肩があって、頭があって、胴体があって、腰もあって、脚もあって、足首があって、つま先もある。お前と僕らは似ている。姿が似ている。」

 

シャア・アズナブルが左腕からビームガンを撃つ。袖に隠していたつもりらしい。でも左腕、とっくに動かないだろう。力が抜けて動かないまま撃っても僕には当たらない。最後の殺意の欠片も、とっくに僕の思考の中にあった。全部が、僕の思考の中にある。

 

「機体の制御を奪っておきながら!情けをかけたつもりか!」

 

「似ているんだ。僕とお前は、似ている。人間の形をしている。そう、同じ人間の形をした、人類の敵だ。」

 

「ニュータイプがニュータイプとして生まれ出でる道を阻むというのか!ニュータイプが作る時代を!」

 

赤い巨人は、どうしてシャア・アズナブルを手放さないのか。それも分かる。

僕と赤い巨人は同じ、人類の敵同士だ。わかる。

 

「人間と人間の戦いしか、人類の心と心のぶつかり合いしか見ていない。お前が精神だけの、意志だけの存在だからだ。でも、お前が、お前たちが失くした肉体は僕たちと同じ形をしていた。同じ形のものにしか共感できないんだ、精神だけの存在だから。人の形を忘れられない。忘れてしまえば、精神の発する意思は方向性を見失う。宇宙に溶ける。」

 

お前たちが、ロボットの体を享受したままでいるのは、老若男女の区別さえ失くしてしまって、いや、お前たちが滅ぼしてきた過去宇宙の人類の精神さえも取り込んでしまったからだ。

個々の形を失ったからだ。

宇宙にお前たちの精神の目印を必要とした。無限のエネルギーを持つお前たちが存在し続けるための道具がロボットの体だ。

無限に広がる宇宙に、お前たちが留まるための目印を必要とした。

 

ロボットだ。どこの誰でもなく、どこの誰でもある。誰がロボットの中に居ても可笑しくない。思えば便利な道具だな。

 

シャア・アズナブルもそうだ。だから、手放せない。

 

『め』じるし。

 

肉体から解放されて精神だけの存在になっても『見る』ことさえも止められない。『話す』ことも、止められない。

握ることも立つことも、している。

そう、因果地平の彼方への導きを乞う声を『聴く』つもりでいる。

 

目印が必要だ。無限の宇宙には目印がなければ、時間がかかりすぎる。時間を短縮するために目印になる道具が必要だった。

 

宇宙には、光速という限界がある。

 

だが、赤い巨人の力の一部、僕でさえ、まだ何もない無限に広がり続ける宇宙の彼方をも見る。

 

見る、ということは、知る、ということだ。

知る、ということは、支配する、ということだ。

見える、ということは、いずれ、そこへ行くことができる、ということだ。

 

 

宇宙の彼方が見える僕には、それができる。

お前を見て、知った僕にはできる。

お前たちにもできるのならば、僕にもできる。無限のエネルギーを使えば、できる。

 

無限に遠くへ、引き離す。

 

人類の敵を、人類から引き離す。

 

前に、進む。無限に広がる宇宙の彼方に進む。

訓練をしてきた。宇宙をまっすぐに進む訓練を思い出す。目印になるものがない宇宙だが、僕はまっすぐに、この宇宙を進むことができる。

 

シャア・アズナブルにパンジャンドラムを押し当てた。彼を通して、赤い巨人をも、木星の巨人をも思考で掴んだ。

 

無限のエネルギーを手にした。

 

ニュータイプさえ、ニュータイプの声さえ追いつけない距離へ。

 

人類が、太陽が、銀河が終わるまでの時間を稼げる距離へ。

 

宇宙の彼方へ…

 

 

 

 





あんまり読者の皆さんに関係ないかもですけど、俺はここまでの時点で3つの奇蹟をエグザベ・オリベにかけました。
発動は遅い。でも生きて帰ってこれるように願いを賭けた。
・『母』マリアの「光あれ」
・『父』の代弁者エリフの「贈り物と後押し」
・『神を見るもの』ルウムのカミーユからの『洗礼』


宇宙世紀の世界は道徳とか倫理観という奴が必要だが、どうにもこうにも死んでいるような気がするので、『復活』が必要なのでは???
エグザべがする必要がない?まあ、はい。そうです。
パプテマス・シロッコとかハマーンとかゴップとか、指導者には教育改革とかも頑張ってもろうて…の精神で宇宙世紀が維持できるのであれば、その通りです。
悲しいね。

スレのみんなからは「歓喜の歌」がBGMにおススメって言われました!俺はジークアクスの主題歌もおススメ!

飛び出していけ!宇宙の彼方!!

いや、だめだよ…ドンびくわ…こわ…なんで飛び出す?やめろって…こわ…

え?「コレ」に戦いを挑んだの?シャア君。こわ…逃げるっていう手もあったと思うよ…
だって、正気じゃないじゃん、この人…こわ…
全ての武器捨てて、MSのコクピットから出て降伏していたら、違う道もあっただろうに…逆シャアでアムロがしたみたいに…そうだよな、それができないから、シャア・アズナブルなんだものな…

エグザべ、まだ、人??木星まで、ノータイムで見れるのは人か?

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