機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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天国での永久の祝福

悟りによるニルヴァーナ

『まっとうき全体』



不思議だよな。誰がそれを見たんだ?

たかが、人間に夢を見たのは誰だ?


修祓

 

 

ニュータイプ。他人と誤解なく分かり合える能力を持った新しい人類。

その能力は未来さえ予知し、知覚を拡大し、他者と時空と言語の壁を越えて感応を繰り返し、やがては世界の心理を体得するまでに至り、ありとあらゆる争いから解放されることが約束された…人類。

 

そうだ。笑える話だろう。

それとも、お前にとっては笑えない話か?カミーユ・ビダン。

 

ガンダムに乗ったニュータイプ。

 

お前は何のためにMSに乗った?戦場へ出た?

 

親の敵討ちのためか?ティターンズへの報復のためか?宇宙移民の為か?ニュータイプの世界の為か?クワトロ・バジーナの命令だったからか?軍人を男らしい仕事だと思ったからか?

 

違う。

 

あの日のグリーン・ノアで、カミーユ・ビダンは誰の命令でもなく、誰の頼みでもなく、誰のためでもなく、お前自身の意思と衝動でガンダムMK-Ⅱを盗んで、軍人に引き金を引いた。

他人を殺してしまうかもしれない、とさえ考えず、引き金を引いたんだ。

 

あの時のお前は無様で苦しい無意味な死を迎えて、自分自身の命を両親への復讐に使うためにガンダムに乗ったんだ。

両親の面子とプライドを潰す為に、お前の悲しみを顧みなかった両親への当てつけのために、母親と父親の造ったガンダムMK-Ⅱに乗った。

 

だが、逆にお前の両親は、お前の目の前で無残な死を迎えて、お前自身を終わらせるつもりで乗ったガンダムMK-Ⅱの性能にお前は生かされた。

 

そんなお前には居場所がないから、戦っていた。戦うことでしか己の居場所を作れなかった、哀れなカミーユ・ビダン。

 

だが、もういいだろう?

お前も、もう死にたい気分にならないだろう?戦場でなくても、生きていけるようにオリベは準備してくれただろう?頼れる大人もお前に紹介してくれただろう?

それを無駄にも無下にもできないよな?

 

オリベはお前が生きていける居場所を作ったはずだ。

オリベはもう、役目を果たしただろう?

もう、いいだろう?

 

俺達も俺達のカミーユも、エグザベ・オリベを待っていたんだ。ルウムのあの日、オリベは間に合わなかったから。

 

オリベと一緒に彼岸に行ける日を待っていた。

 

オリベを連れて行っていいよな?カミーユ・ビダン。

 

 

 

 

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赤い巨人に宿る残留思念集合体、その中の1人の、彼の願いは僕にもわかる。

僕にとっても、戦争は嫌なものだ。人を殺すことを、肯定したくはない。

だって、人間だ。社会で生きている人間だ。家族や仲間や友人、愛する人がきっと誰にだっている。

戦争は、争いは誰かから、誰かを奪うことになる。あの日の、僕のように奪われた人間を生み出してしまう。

 

でも、

 

「僕が『モノガタリ』になったところで、この世から戦争をなくせるはずがない。いや、僕だけじゃない。誰が、どんなに残酷で無残な目にあったって同じだ。人類の心から、意識から、争うという選択肢が無くなることも、決してない。」

 

そう、そんなことできはしない。肉体があって、自分以外の何かと関わって生きていこうとすれば、人間とも、人類でない何かとも争うことになる。

 

人間は、生物だ。

 

生きていくには、エネルギーが必要なんだ。どんな生物だって、自分以外の何かからエネルギーをもらって生きている。

 

食べる、というのがそれだ。

 

「カミーユの声は本当に届いていないんだな。宇宙も地球も人類だけでできているわけじゃない。この世は人間だけのものじゃない。例え、人間をお前の言うような『まっとうき全体』へ導けたとしても、人間以外の生物や地球や宇宙には何にも関係しない。人間に人間以外が合わせてくれるはずがない。そんな必要がないからだ。結局、人間は『まっとうき全体』を捨てるしかない。生きていけないのだから。」

 

彼は答えなかった。どうしてか答えてくれない。今も悲鳴を上げ、叫んでいる他の残留思念集合体とは違う。

 

ただ、黙って僕を見ている。僕も彼を見ていた。

 

赤い巨人の中、生きていた頃の姿かたちを失って、ぼんやりとした人の形にしか見えない。逆に言えば、彼だけが見える。

『まっとうき全体』を唱えた彼だけが、まだ、人の形をしてみえた。

 

「生きるために、共同体をつくる生物の1つが人類だ。あくまで1つに過ぎないけれど。地球が広すぎたから、たくさんの共同体が出来上がってしまって、人類同士で資源を奪い合う戦争を始めてしまった。それを1つのより強固な共同体にまとめなおせば、争わない人類が出来上がる、と考えたのか?」

 

そのための、ニュータイプの力。人間のすべてが、誤解なき相互理解を得られる力がニュータイプの力。

でも、その源である残留思念集合体の中で1人だけ人間の形を保っている彼を思う。

 

純粋なのだ。純粋に、人類の悲哀と苦悩を想い向き合ったからこそ、人類を高次元の存在へ押し上げようとしている。

人類救済の道を模索している。今を生きている人類さえ犠牲にしてでも、『理想』を求めている。

人類に『救済』『悟り』『天国』の訪れることを彼は待ち望んでいる。

 

どれも、全て人間が作り出した概念だ。真実、この世には無い。彼岸にだってない。

カミュがいるから、僕にも分かる。

 

だけど、彼は赤い巨人の中でたった1人だ。1人だから孤独に憑りつかれて、全人類を救おうと自分の思考の中だけで藻掻いている。それは、自分の思考に溺れているようなものだ。

 

孤独は彼に人間以外を見る価値観と視野を与えなかった。人間が生きている世界がどれだけ狭いものか、知ってしまえば一層辛くなる。人間だけの世界は狭くて息苦しいのに、一方で宇宙の、地球の、そして、他の生物の営みの世界は人間の理解が及ばない程広く多種多様に広がっていて、自己さえ見失う。

孤独だからだ。

広すぎる世界は孤独を鮮明に曝け出すだけだからだ。

 

彼は寂しくて、哀しい孤独感を癒すために人間を見ていた。

だけど、孤独な己を自覚しているから、人間の心と心のぶつかり合いだけ見ていた。互いを癒し合う姿から目を背けていた。人と人が温め合う姿なんて忘れた振りをしていた。

 

それでも、そんな彼だけが、人類を救う方法を模索していた。

 

「例え、誤解なく分かり合えたところで、生きているんだ。人間は生命だ。動物なんだ。殺し合うしかない時がある。僕とレコア・ロンドはそうするしかなかった。真っ当では、正しくはいられないんだ。生きているのだから歪にもなる。…全ては歪だからこそ愛おしい、とカミーユは言ってくれた。見知らぬ誰かと誤解なく分かり合うことよりも、僕はカミーユが生きてきた僕を認めてくれたことを嬉しく思える。僕の歪な『生/性』を祝福されて僕は嬉しかった。過ちですら、間違いですら認めてくれた。それを、嬉しいと思う僕と貴方は、違うんだ。違うから、貴方と僕は今、会話をしている。コミュニケーションをしている。孤独じゃないからできることだ。」

 

僕の身体を芯から揺さぶるような悲鳴と叫び声が、弱まった?

 

「貴方も赤い巨人に宿る残留思念集合体とは違う。『まっとうき全体』を信じている。赤い巨人に取り込まれてさえ、信じている。貴方だけが信じている。」

 

彼は、己のすべてを託せる人類が生まれることを信じていた。

僕が、カミーユ・ビダンに託したように。

彼も、誰かに託したかった。押し付けるのではなく、ただ、託したかっただけなのだ。

 

人類のために。

 

「…この宇宙が終われば、また人類の誕生を待つのか?」

 

彼を想う。彼の孤独を想う。残留思念集合体の中に合ってさえも、志を捨てられない悲しみを想った。

孤独を分かち合えれば、彼も急ぎ過ぎることを、因果地平の彼方への導きをしなくて済むのだろうか。

僕が彼の言う『モノガタリ』になれば、彼は希望を持つことができるのだろうか。

 

『その前に、全ての生命体を回収しなければ。生命の生まれいでる惑星は貴重なものです。生命の源となる惑星を選び、土に種をまくように、惑星にも生命の源をまかなければ、次なる人類は生まれない。』

 

「そうか。」

 

そうか。

僕と彼は、結局のところ、お互いが歪で相容れなかった。それだけのことだ。

僕と彼では、分かり合うことが、共感することができなかった。それだけのことだ。

孤独を癒し合うことができなかった。それだけのことだ。

 

宇宙が、生命体が、人類が終わる距離を稼がなければならないことには変わりがなかっただけのことだ。

僕のやるべきことはそのままだ。

 

生命を、地球を、宇宙を脅かすものを、引き離す。

僕は、皆に生きていてほしいから。

『良き生命体』じゃなくていい。

過ちや間違いをしようと、生命には、人類には、僕が愛した人々には生きていてほしいからだ。

 

 

遠く、遠くへ。どこまでも遠くへ。

赤い巨人と共に、どこまでも遠くへ。

 

僕は孤独じゃない。

分かり合えなくても、彼がいる。

僕を愛してくれた皆がいる。僕が愛した人々を覚えている。

 

いずれ、人々から、全ての生命から忘れ去られるとしても。

 

生きていてほしいから、僕には、できる。

 

 

 

 

 

誰かが泣いている。赤い巨人の、悲鳴や叫び声が、泣き声に変わっていた。

 

 





よぉし!お兄さん、ありとあらゆる宗教に喧嘩売ってくぞぉ!!四面楚歌するぞぉ!した。




カミーユ・ビダンは実はニュータイプの能力と性格の相性が悪いんじゃないか、と俺は思ってた  編

最高のニュータイプであるカミーユ・ビダンだって、悪意にさらされれば傷つくし攻撃的になる。Z本編の1話、ジェリドで証明されている通りに。
でも、人間から悪意を取り除くことは不可能だから『全能者カミーユ・ビダン』になれない。

というか人間に期待し過ぎ。人間の知覚や感覚、知能、知識全てを統合できても、全能には成れない。人間はそこまで賢くないし、便利じゃない。




ルウムのカミーユを始めとした友人たち。
全員、それぞれ別方向に性格が悪い。俺のSSのエグザべがやたら他人に甘いのもこいつらのせいだろうな。慣れちゃった。

ただ、わざとカミーユ泣かせたことがエグザべにバレたら殴り合いの喧嘩になります。なので、一番殴り合いに強い奴がカミーユ・ビダンを泣かせに行きました。エグザベが死んだあと、再会したら殴り合いの大げんかになるんじゃないか?で、オッズは??みんなどっちに賭ける?俺胴元するから…

頑張れカミーユ・ビダン!!負けるな!泣くな!!お前は強い子だ!!
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