機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
あいつは、生まれる前の記憶がある、だなんて幼いころの僕に言った。
自分の持つ一番古い記憶は、それ、だと。
生まれる直前にカミュのお母さんが近くの公園で倒れているのを見つけたのが、僕の母だという。僕を抱いて散歩しに来ていた母と母に呼ばれ駆け付けた父が命の恩人だと、言った。
僕は良く笑う赤ん坊だった、とまで。
「俺に、誕生おめでとう、を最初に言ったのがお前だぜ、シャヴィ。」
そう言って、毎年、誕生日には僕にプレゼントを要求したのだ。そんな他愛のないウソをついてまで。
17回しか、渡せなかった。
カミーユが、自分の愛息子に対して、嘘だろ、と思ってしまったのは、
「ぼくね、もうおやさいもぜんぶたべるんだ。おにいさんだもん。」
と、エグザべさんに自慢気に言ったからだ。エグザべさんの膝の上に乗ってご機嫌に言った。お前。
昨日、僕が必死こいて作った野菜のみじん切りの入ったハンバーグを、ナイフとフォークで丁寧にぐちゃぐちゃにして選り分けてたじゃないか!!ニンジンとピーマンなんて、ほとんどペースト状にしてたのに!!
「そっか、偉いな。頑張ったんだな。」
エグザべさんはニコニコしながら、僕の愛息子の頭を撫でてくれている。でも、そいつ今、盛大に嘘ついた。証人の僕がいるのに!すぐバレる嘘ついた!
口出ししようとしたら、僕の方を向いて機嫌悪そうに舌出して…言葉も出ない。なんて生意気で可愛い子なんだ。
「きょうは、エグザべさんが、つきにくるって、おとうさんもたのしみにしてたんだよ。いっしょにおゆうはんたべようねって。あのね、エグザベさん、おとうさんのごはんもまずくはないんだよ!」
え?と首を傾げたくなるようなことをまた、言った。
昨日の、ハンバーグは?最後には僕の足を全力で、しかも拳で叩きながら、凄い顔して飲み込んでたじゃないか!ファも僕も、たじろぐくらいのしかめっ面してた。不味くないのに、あんな可愛いしかめっ面を??
もしかして、それは僕に対するフォローだったりするのか?
ファも一緒だったら良かった。ファなら上手に話してくれるのに。
今日はファのつわりが酷くて、ちょっと寝込んでしまっている。人の話し声が今日は辛いから、と言われて僕は愛息子と追い出されてしまった。
そのあたりの事情はエグザベさんに話したけれど、まあ、エグザベさんは恋人もいないし。よくわかってない顔で、わかった、と言われてお終いだった。
だから、恋人がいないんだと僕は思う。
「僕も皆に会えるのが楽しみで仕方なかった。…つわりって聞いて、少しでも役に立てばいいと色々買ってきたんだ。もちろん、小さなお兄さんにもあるよ。…これ、好きかな?100色色鉛筆とスケッチブック。最近、お絵描きが好きだってファから、君のお母さんから聞いたから。」
「エグザべさんはすぐ、甘やかすんだから。本当に、もう!…お礼言いなさい。」
「ありがとーございます!」
ニコニコ笑ってそう言うと、早速エグザベさんとスケッチブックを広げて抽象画を描き始めている。まったく、僕の息子ながら現金なやつだ。本当にもう、可愛いんだもんな。
何を描いてるのか、まだ分からないけど描いてるときはいつもご機嫌だ。青色とオレンジ色と紫色が最近のお気に入りで、それらだけ減りが早いから正直、親としては助かった。今度は1か月くらい持つと良いんだけどなぁ。
ここは、僕の家の隣だ。連邦軍グラナダ基地内にあるマンションの一室になる。軍関係者用の家族向けマンションだ。近所には幼稚園もエレメンタリースクールも商業施設もある。地球圏の経済が安定してきたので、小さな街1つがそのまま基地内に作られるようになっていた。
エグザべさんは、まだ共和国軍から離れられていないけれど、地球連邦軍はエグザベさんに、『きわめて好意的な最大限できる共和国軍の重要人物に対する護衛措置』として、ここを提供した。
そういうことになっている。
部屋の中は質素だ。アーガマに来たばかりのエグザベさんの部屋のようだ。
椅子とテーブル。それから寝具とタンス。そんなものしかない。
もっと家具を増やしてほしい。僕らへのプレゼントも嬉しいけれど、この部屋に何も無さ過ぎて、僕は嫌だ。
だって、食器も1つだって無い。必ず、外で買ってきた物しか口にしないし、僕らにもさせない。テロリスト制圧もだいぶ終わって、平和をようやく実感できるようになってきたのに。
テーブルの上のペットボトルの紅茶とグラナダ宇宙港のお土産のお菓子を見て、そう、思う。
「カミーユ。不満そうな顔して…何かあった?」
「別に。エグザべさんが相変わらずエグザべさんだなって。それだけですよ。」
僕の不満に気づかないわけじゃないだろうに、エグザべさんは苦笑しただけだ。もう。
「カミーユにもお土産あるよ。今度、外科医の学会に行くんだってね。ファから聞いたんだ。ネクタイピンとボタンカフスだけれど、使ってくれると嬉しい。」
なんてことのないプレゼントのように渡してくるけど、これ、僕への誕生日プレゼントだ。小さなカードに「誕生日おめでとう」って書いてある。デザインも凝ってる。どっちも、アスクレピオスの杖が浮き出る様に銀と金で加工されていた。
ええ?これ、素手で触っていい金額のアクセサリーじゃないと思うんだけど。ファに見つかったら、またエグザベさんに甘えてって怒られる金額なんじゃないか?
いや、これはファに何言われようと絶対に返さないけど。カッコいいし。
「ありがとうございます。嬉しいですけど、エグザべさんも自分のもの買ったらどうです?」
「ハマーンにも言われたよ。でも、必要なものは全部あるからね。」
そう言って笑うけど、ハマーンさんが言うなんてよっぽどだ。地球に行ったときに、なんか言ったか、したか。したんだな。エグザべさんは、本当にもう!
ハマーンさんかセーラに、エグザベさんが何したのか聞いておかないと。世話が焼けるんだから。
「エグザべさんのおたんじょうびっていつ?ぼくがね、プレゼントかってあげる!」
僕の可愛い息子がお絵描きしながら、そう、言ってくれた。
そういえば、エグザべさんは誕生日とか僕らに祝わせてもくれなかった。僕らが年下だからだ。常に自分がプレゼントする側だと思い込んでいる。
なんなら、自分の誕生日の時だって逆に僕らにディナーをごちそうしてくれたり、高級フルーツを買ってきてくれていた。何が欲しいか、なんて教えてくれない。まったく。
「今から、買いに行きましょう。ファには買い出しに行ってくるってメールで伝えておきます。夕飯の買い物もしてこないといけないし。」
ファのかわりに今は僕がひーひー言いながら家事をしている。
そうだ、昨日も愛息子を風呂に入れたら裸で家中を走り回って、僕は理不尽にもファに怒られた。だが、可愛い愛しい子だ。今だって、僕たちを助けてくれた。
「良い子だな!」
僕がエグザべさんの膝から持ち上げて頬すりすると、
「ぎゃああああ!」
と怪獣みたいに声をあげる。ほんとうに、こいつは可愛いったらない。
そうだよな、僕たちがエグザべさんにあげればいいんだよな。もっと大切なものを増やしてあげれば良いんだ。
だって、エグザべさんだもの。
腕の中の小さな怪獣が暴れているけど、僕はちっとも気にならなかった。本当に可愛い子だ。
ファに黙ってエグザべさんへのプレゼント選んだカミーユは怒られます 編
「カミーユ、なんで!いつも!1人で!選ぶの?!カミーユ!」
弊SSのカミーユは馬鹿なんで仕方ない。
ハマーンの家で一番ヒエラルキーが低いのがマシュー。全員から弟として可愛がられているので、ハマーン一家全員に連絡取りたいときカミーユはハマーンに連絡をとりがち。
マシューと話したいときはマシューの個人デバイスに連絡取るのにな。
多分、ラインがないんだろ、この世界。情報保護の観点で使ってないんだと思う。
カミーユの子供は、パパ好きなんだけどパパが自分を赤ちゃん扱いしてくるのは嫌い。お絵描きの邪魔するところも嫌い。
弊SSのカミーユはそーゆー分析が苦手。なので、「うちの息子全部可愛い」で押し通して来る。
10年後
「あのさ、俺、気づきたくなかったんだけど、俺んちの親父馬鹿なんだね。エグザベさん、なんで教えてくれなかったの?」
「ん?え?うん…いや、ごめんな。たぶん、頭は悪くないというより、カミーユは頭良いし、頭の回転も速いしすごく勉強熱心だよ。」
「エグザベさんがさ、そうやって甘やかすから親父は馬鹿のまんまなんだと思う。エグザベさんの責任じゃないのは分かるんだけど、親父を甘やかしすぎてるよ。本人もいい年してるんだから、あんまり甘やかさないでやってよ。本人のためにならないよ。」
「え?」
「母さんも親父を甘やかしすぎなんだよな。可愛いって言われてキスで全部誤魔化されちゃうんだから。ああいうの、子供の前でやるのよくないよ。せめて、部屋でやってくれなきゃさぁ。」
「…なんか、カミーユとファが迷惑かけててごめん。2人には僕からそれとなく言っておくから。」
「俺は良いよ、俺は。慣れてるから。でも、友達の前でされると。来年は弟もおんなじ学校に行くんだから、からかわれたら可哀そうだろ?」
「本当に、ごめん。すぐ、お説教に行ってくるから。部屋は自由に使ってていいから…!」
カミュ←こいつがだいたい戦犯