機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
視聴者の皆さん!もう、顔は洗いましたか?歯磨きはお済ですかぁ?
え?日の出まで5時間も早い??そんなの、我々の知ったことじゃないですよぉ!
前回!!我々、水の星どうでしょう班はあわやクマの親子と遭遇しそうになり、釣りでは坊主となりました。これがホントの太公望なんつってねぇ!
深夜に、夜中の10時過ぎに全員で塩にぎりを作って食べたいい思い出ですよ。
ええ、ええ!これが学生ならかけがいない素晴らしい青春の1ページでございますが、当番組は残念ながらテレビ!バラエティ番組です!
こんなんが撮り高になるわきゃなねーんで!フジムラをはじめスタッフ一同は一計を案じたわけでありますがっ!あーら大変!
はい、では今も私ら水の星どうでしょう班からの着信を拒否しているアムロ・レイさーん!!この番組見たらお電話くださーい!!さもねえと、来週の放送で外出できなくしてやるぞぉー!!なあーんつっって!!
はっはっはっはっは!!はい今週分の放送どーぞ!!
≪キャンプ3泊目≫
ゲーツ「盗撮カメラをまたフジムラさんに渡された。」
エグザベ「テントの中での会話を撮り高にしたいんだそうです。僕ら、さっきの釣りで1匹も釣れませんでしたから。」
アムロ「撮り高なんて、あいつらが気にしてるわけないだろう。特にフジムラが。」
エグザベ「僕らも疲れているから休みたいんですけど、若者の自然な会話が撮りたいってフジムラさんに頼まれちゃって。」
ゲーツ「フジムラさんのことが理解できない。私たち3人の会話を放送で流しても視聴者が喜ぶとは思えないのだが。」
アムロ「なんで、番組が続いてるんだろうな?俺みたいなど素人を出しておいて、地球環境の保全なんかアピールできるわけないのに…」
エグザベ「いえ、水の星どうでしょうは月でもコロニーでも人気ですよ。」
ゲーツ「まあ、アムロには不本意だろうが。人気番組なのは間違いないな。おかげで、月とコロニーの市政府も地上の復興予算の増額に意欲的になってくれた。」
エグザベ「水の星どうでしょう以前にも地球環境問題を取り扱った番組はありましたけど、視聴率が…いえ、それ以前に宇宙では配信サイトにもテレビにも取り上げられたことなかったんですよ。アムロさんを知りたい人達が水の星どうでしょうを見たがって、それで地球環境に興味を持つ人も増えたんです。」
アムロ「…俺は見世物なんかじゃない。」
ゲーツ「そうだな。本当にそうだ。」
エグザベ「でも、アムロさん以上に宇宙の人にも地球の人にも興味を持たれてる人って…」
ゲーツ「…エグザベ。その話は後にしよう。」
エグザベ「え?うん、わかった。」
アムロ「そもそも、水の星どうでしょうだって単発の番組のはずだったんだ。ワンシーズン、いや、3日収録すれば終わるって話だったから引き受けたんだ。その企画だって事前に聞いていた話と違ってて、サイコロで出た元海水浴場の清掃が3日で終わらなくて1週間以上かかって、最終的には清掃用のモビルワーカーを設計しないといけなくなって……そのまま流されて2年近くも振り回されて。俺の家、連邦軍がくれた屋敷とはいえ5年近くも住んでいた家が気づいたら廃墟になってたんだ。」
アムロ「俺だって全部が全部、不本意とは言わない。達成感を感じたこともあるし、心から笑ったこともある。が、フジムラを見ただろ?あいつも視聴者も俺の嫌がる顔や驚いた顔以外に何にも興味がないんだ!」
アムロ「正直、やめたい。この番組を降りたい。…ゲーツにエグザベまで巻き込んで…というか、エグザベは番組に3回も呼ばれてるんだぞ。頼むから、危機感を持ってくれ!このままだとレギュラーにされてしまうんじゃないか?!」
ゲーツ「いや、アムロ、ひとつだけ安心していい。エグザベがこの番組のレギュラーになることはない。次回の休暇もいつになることかわからないからな。」
エグザベ「まあ、ゲーツも僕も、そういう職だから、ね。今回はアムロさんの助けになれればと思って来たんだけど、逆に負担をかけてしまって。ごめんなさい。」
ゲーツ「私は、…広報に異動命令があれば別だが。多分、無理だろうな。すまない、アムロ。」
アムロ「2人とも、お人好しだぞ。なんで、2人が、俺に謝るんだ?なんで、俺なんかのために野外で寝に来るんだ?野外だぞ!しかも白夜なんだ。テントの外はずっと夕焼けで夜なんか4時間か5時間くらいしかないんだ。テントだからカヌーで疲れてるのに眠れないし。今日なんかクマに遭いそうになるし、フジムラはいつもああだし、夕飯は塩とライスだ!」
アムロ「今だって、そうだろ?なんか適当に、放送に流す用の会話撮れってフジムラに言われて、盗撮カメラ囲んで話してるんだぞ。馬鹿なんじゃないか?…馬鹿がすることだろ!こんなの!あのな!エグザベ!そんな顔しても俺は誤魔化されないからな。ゲーツも!2人とも、こんな馬鹿なことに付き合ってどうするんだ…?何になるんだ?」
エグザベ「友達と一緒だったら、たとえ馬鹿なことでも楽しいからね。」
ゲーツ「別に、休みの日くらい友人と過ごすのも悪くないだろう。お互いに忙しい身だ。俺も会える機会は大切にしたいと思っている。……野外で寝るのも、士官学校にいたころに比べれば楽しいものだ。」
エグザベ「アムロさんが思ってるより僕はずっと楽しんでるんですよ。本当に。アムロさんには申し訳ないとは思うけれど。…塩とライスだけでも美味しいごはんだったし、白夜の夕日やハクトウワシも奇麗だし、カヌーだって外で寝るのだって楽しいんだ。」
エグザベ「地球は広すぎて僕には想像もつかない日常や楽しみ方があるんだなって。知らないことを知っていくのは僕にとって楽しいことなんだ。」
ゲーツ「確かに白夜には驚かされたな。知っているのと体験するのは大違いだ。今もまだ外は明るいし、アイマスク無しでは眠れる気がしないな。夕焼けは奇麗なんだが…」
エグザベ「アムロさんとゲーツと一緒にユーコンに来れて僕は嬉しいよ。フジムラさんの無茶ぶりは困るけれど、でも楽しくて、美しいものを一緒に見ることができて…何でもいいんだ。誰かと一緒に楽しめるって大切なことだよ。みんなと一緒になら苦労も困難も楽しいって、もう一度思えるようになったんだ。僕は本当に運が良いよ。」
アムロ「…」(無言で隠しカメラを叩き壊すアムロさん)
≪4泊目の朝 怒りのフジムラ来襲!!≫
フジムラ「起きなさいよぉ!!このっ、馬鹿どもぉ!!」
フジムラ「ちょ、ほんと、ほんと冗談じゃ済まないんですよぉー!!カメラ!!隠しカメラ!壊しましたね!あんたら!!どぉーしてくれるんですか!!予算どおすんのよぉ!あんたら、これ保証書とかないんですよぉ!!最悪、カメラの修理代金、私の自腹になるでしょー!!どうしてくれるんですか?!」
アムロ「……フジムラ、出てけ。」〈声カスカスで顔も上げないアムロさん〉
エグザベ「おはようご…」〈起きようとしたところをゲーツさんに頭を押さえられるカスカスの声のエグザベさん〉
ゲーツ「フジムラさん、今日は寝坊したい。本来、私もエグザベも休日なんだ。構わないだろう。」〈声カスカスで顔も上げないゲーツさん〉
フジムラ「あんたら、覚えときなさいよぉ!!3,000USダラーですよぉ!!3,000!!1家族が1か月余裕で生活できる費用なんですよぉ!!帰ったら私含めて全員、ウレシノさんからのお説教決定だから!!ほんとにどうすんのよ!!」
アムロ「でてけぇ!フジムラぁ!」〈カスカス声のまま顔を上げないアムロさん〉
フジムラ「あんたら全員、反省文の内容でも考えてなさいよぉ!!」
≪フジムラ、撤退!!≫(黒背景に白い筆の文字)
フジムラ「はいはいはいはい!!あんたらのわがまま通りに2時間!!いいですか?!2時間もお寝坊させてあげましたよ!!」
アムロ「ついでに2度寝したフジムラには言われたくない。」〈仏頂面が珍しくないアムロさん〉
エグザベ「ありがとうございました。フジムラさん、僕ら昨日…」〈ゲーツさんに口をふさがれるエグザベさん〉
ゲーツ「正直、盗撮カメラの件は悪かった。始末書も稟議書も必要ならば私が引き受けよう。」
アムロ「壊したのはゲーツじゃない。俺だ。というか俺たちに渡したフジムラが悪い、が反省文なら俺が書く。」
フジムラ「は?アムロさんに文章が書けるんですかぁ?!ウレシノ君を納得させるだけの文章が?!」
〈カーンッ!!〉(襟首をつかみ合うアムロさんとフジムラ)(慌てて2人を引き離すゲーツさんとエグザベさん)
アムロ「それで?今日は何を撮り高にするんだ?」
フジムラ「予定じゃ散策だったんですけどねぇ!この辺りの、ユーコン川流域の歴史をスクーカムさんから聞きながら散策っつー予定だったんですけどぉ!この馬鹿どもが寝坊したせいでスクーカムさんも寝ちゃったんでぇ!」
アムロ「スクーカムが?」
フジムラ「拗ねちゃったんじゃない?全員が寝坊したいっていうんだもん。」〈力なく笑う全員〉
ゲーツ「謝りに行こう。」
エグザベ「完全に僕らが悪い。」
アムロ「土下座で許してもらえるのか?考えてみれば、スクーカムにとって俺たちは最悪の客なんじゃないか?」
フジムラ「カヌーもキャンプも嫌がって、寝坊までしたがる客なんてユーコンに来るわけないもん。こんなのはスクーカムさんには前代未聞の客だよぉ。クレイマーより質が悪いよぉ。だって、こいつらが世界中にユーコン川キャンプのコマーシャルするっつってんだもん。もう、想像を絶する最悪な客だよ、こんなの。ハッハハハハハ!」
アムロ「合わせる顔がないな。俺たち全員スクーカムに、合わせる顔がない。」
エグザベ「遅いかもしれないけど、これからキャンプ楽しんでいこう。今日はゆっくり眠れたし、何とかなるよ。」
ゲーツ「何とか…これは、なんとかなるのか?あと2泊しかないが?」
エグザベ「しないとまずいよ、ゲーツ。僕らのあと2泊でキャンプとカヌーが楽しいって宣伝する、となると…何があるかな?」
フジムラ「まあまあまあ、順当にいけばフィッシングと火起こし、キャンプファイヤーとかですかねぇ?残ってる予定の消化ですけど。駆け足でやると撮り高が足りませんけど…皆さんにできますかねぇ?」
アムロ「最悪、チームで別れて対処しよう。」
フジムラ「でもですねー!あんたらが隠しカメラ壊しちゃったから、カメラ1台しかなくなったんですよー!2チームに分かれたら、どちらかは音声だけになりますけど?いいんですか?」
アムロ「いいわけないだろ?!馬鹿じゃないのか?!予備のカメラは?カメラマンも抱えてたじゃないか!」
フジムラ「アッハッハッハ!いやあ、アムロさんには言ってなかったんだけどねぇ。あのカメラマンさんね、予備用カメラのバッテリー忘れて来てるの。」(手を叩いて笑うアムロさんとフジムラさん)
ゲーツ「そんな、グダグダな体制で、よくいままで番組が続けられたものだな。」
エグザベ「もしかして、本当にサイコロも行き当たりばったりでいい加減だったんですか?南極大陸とアフリカとシベリアも?」
フジムラ「当たり前でしょお!!サイコロのアムロさんのリアクションいっぽんで、うちの番組続いてるんですよ!」
アムロ「そもそも、俺のリアクションありきの番組なのが変なんだろ!」
〈スクーカムさん、起床〉
スクーカム「おはようございます。」
エグザベ「スクーカムさん、おはようございます。今日は寝坊したいってわがまま言って、すみませんでした。」
アムロ「悪かった。スクーカム。もう寝坊はしないから。」
ゲーツ「すまなかった。スクーカム。」
フジムラ「ごめんなさいね!スクーカムさん。こう、うちの馬鹿どもも反省してますから。」
アムロ「お前も2度寝しただろう!フジムラ!頭下げろ。」
ゲーツ「責任者はフジムラさんだろう。なんで他人事のような立場をとるんだ?」
エグザベ「フジムラさん、ちゃんと一緒に謝りましょう。」
フジムラ「え?2度寝を提案したのあんたら馬鹿3人組じゃないの?なんで私が謝るんです?」
〈カーンッ〉(アムロさんに肩パンされるフジムラ)
スクーカム「いえ。怒ってませんよ。ユーコン川を守る会のメンバーに予定変更伝えて、私も2度寝しました。」
フジムラ「ほらね、やっぱりこの馬鹿3人組の面倒見るの大変だもの。プロのスクーカムだって疲れてるもの!」
アムロ「スクーカムが疲れてるのはお前みたいなカブトムシのせいだろ?!スクーカムだって虫の世話は初めてだろうに、このカブトムシは疲れただの眠いだの好き勝手、自分勝手に言うんだ!」
フジムラ「鈴虫の世話も大変なんですよぉ!この鈴虫、外じゃ寝れねーとか抜かしやがって。」
アムロ「ユーコンが白夜だってわかってたんなら、全員分のアイマスクぐらい用意して来い!この髭ダルマ!」
フジムラ「アイマスクで白夜遮ってる根性なしが何言ってるんです?大自然のパワーを感じなさいよー!アイマスクみたいな文明の利器がなきゃ眠れねーなんて根性足りてない馬鹿3人組がさぁ!」
アムロ「こっちはアイマスクも予備のバッテリーも忘れてるようなカブトムシの無計画に付き合わされてるんだぞ!!俺たちに根性がなかったらフジムラなんか最初の湖に置いてけぼりにしてたさ!」
フジムラ「こっちのセリフですぅー!!私らの努力と根性がなかったら鈴虫が世界中の人気者になれるわけないでしょぉーよー!!」
アムロ「いつ!誰が!世界中の人気者になりたいって言ったんだ?!俺が一言でも言ったか?世界一の有名人になりたいって?頼んじゃないんだぞ!」
フジムラ「はあ?!『アムロ・レイ文書』は7年ぶりの大ブームですけどぉ!!」
ゲーツ「フジムラさんっ!!」
エグザベ「やめてください!なんでそんな酷いことが言えるんですか?!」〈アムロさんを庇ってカメラから隠してくれるエグザベさん〉
ゲーツ「駄目だろう!さすがに一線を越えているぞ!人間として、社会人として!どうして!そんな残酷なことが言えるんだ!」〈フジムラをしっかり叱ってくれるゲーツさん〉
カメラマン「いやぁ、今のはフジムラさんが悪いよー。駄目だよー。フジムラさん、今のはさすがに駄目だよー。フジムラさん、反省して!」
≪反省のため、昼飯の魚を1人釣らされるフジムラ≫
カメラマン「はい、フジムラさん!笑ってー!」
フジムラ「こんなバカな番組あります?主演とゲスト映さねえで変なオッサンのさー、釣りしてるシーンだけ流してんの。」
フジムラ「ちょっと、口滑らしただけでカメラマンとゲストに怒られてさー、このオッサン1人で魚釣ってろって言われる番組がさ、世界中のどこにあんのよ!」(1人愚痴を言いながら竿を振るフジムラ)
フジムラ「おい!!鈴虫!こっち指さして笑ってんの見えてんだぁ!!つい昨日、坊主だった連中が暢気に朝食なんか食べてる間にもう、こっちは3匹釣りましたよぉ!もう入れ食いですよぉ!!入れ食いでグレーリング3匹も釣ったっていうのにねえ!カメラマンはエグザベさんとコーヒー談義しててさぁー!!それがひと段落ついて手持無沙汰になったからって、ようやくカメラ回してやんの!普通はね、オッサンが1匹でも釣った時のアムロさん達の喜ぶ姿をね、撮るでしょー!それ、撮らないであいつら全員で何してるかって、スクーカムに作ってもらったホットドック食ってコーヒー飲んでるの。」
アムロ「ホットドックとコーヒー持ってってやっただろ。無駄口たたいてないで、釣りに集中しろ。」
フジムラ「アムロさんも昔はああじゃなかったんですよぉ、視聴者の皆さん。謙虚でねぇ、腰の低い礼儀正しい若者だったのに。今はもう有名になられて、人が変わったかのようにお高く留まっちゃってねぇ…」
カメラマン「ウフフフ、そうなの?フジムラさん。」
アムロ「陰でこそこそ、阿漕な被害者面しやがって。面と向かって言ってみろ!」
フジムラ「人間って有名になったり、偉くなると人が変わるって本当でねぇ…我々を顎で使うようになられて、言葉遣いも荒くなられて。でもね、本当にアムロさんも昔はああじゃなかったんですよー。」
ゲーツ「カメラマンもフジムラさんもやり口が陰湿なんじゃないか?朝食を食べたら私たちも釣りに参加するという予定だっただろう?」
エグザベ「交代で朝食食べようって話だったのに、僕らが釣りをフジムラさんに押し付けたみたいに…」
≪再び釣りをするアムロさんとゲーツさんとエグザベさん≫
アムロ「フジムラのやつ、グチグチ言いながら1人で5匹も釣ってくれたな。」〈困ったように笑うアムロさん〉
エグザベ「僕らの誰か1人が釣れたら、魚の調理をするところを撮るみたいです。」
ゲーツ「予定が曖昧過ぎる。昨日と同じで釣れなかった場合の予定を誰も立ててない。」〈大きなため息をつくゲーツさん〉
エグザベ「まあ、ただのレクリエーションなら別にいいんだけど。釣れなかったら誰かが昼食抜きになるってフジムラさんが言ってるんで、僕たちも真剣にやってます。」(カメラに手を振ってくれるエグザベさん)
アムロ「フジムラの昼食抜けばいいだろ。言い出したのはフジムラだ。」
エグサベ「でも、5匹も釣ってくれたのフジムラさんだよ。」
アムロ「今、3度寝に入ったのもフジムラだ。」
ゲーツ「スクーカムが指導してくれるだけ、昨日よりは希望がある。フジムラさんも私たちの後ろで寝転んでないしな。」
スクーカム「昨日の失敗は取り返しましょう。フィッシング、楽しいです。必ず釣れるわけではないですが、魚との駆け引きがあります。釣れるか釣れないかの緊張感はハマると抜け出せません。」
アムロ「釣りが楽しくない、とは俺も思ってないんだ、スクーカム。無茶な企画に組み込まれてるから理不尽を感じているだけなんだ。」
ゲーツ「罰ゲームまでつけられては楽しむことより義務感が優先されるからな。」
アムロ「前に海で釣りした時も時間制限があって…趣味の釣りって、そういうものじゃないだろう?時間とかノルマがない状態で楽しみたいんだよ、俺は。」
エグザベ「本当は釣れなくても友達とゆっくり過ごせるだけでも楽しいんだろうけどね。」
ゲーツ「アムロ!引いてる、引いてるぞ!」
≪笑顔で釣れたグレーリングを見せびらかすアムロさんと拍手するゲーツさんとエグザベさん≫
≪罰ゲーム!回避!≫
スクーカム「アムロさん、おめでとうございます!大きいグレーリング、釣れましたね!」
カメラマン「さっ、次はグレーリングの調理だね。皆さん移動してください。」
アムロ「……もう少し、釣れた喜びにひたらせてもらえないか?!せっかく釣れたんだぞ。」〈諦めたように笑うアムロさん〉
エグザベ「普通の番組ならもっと皆で盛り上がってくださいって指示が出るんだろうけど…」
ゲーツ「この番組は普通の番組じゃないからな。」
アムロ「企画を聞かされた時は普通の番組のはずだったんだけどな。フジムラもカメラマンも、短い間にずいぶんと…いや、変わってないな。まったく成長がない。人間って2年程度じゃ成長も何もしないんだな。」
ふ、と思い出した。
皆で笑いながら帰ったハイスクールの帰り道を。
なんの話しながら帰ってたんだったかも思い出せないくらい何でもない、益体のない話で親友たちと盛り上がっていた日々を思い出した。そうだ。思い返せばチェスだけじゃなかった。学校だけじゃなかった。あいつらに誘われて初めて行ったライブハウスやカフェ、ゲームセンターを覚えている。スポーツジムだってみんなではしゃぎながらじゃなきゃ一生行くこともなかった。流行ってるからって理由だけで、テレビで見たって理由だけで僕たちには十分だったんだ。
ハイスクールのクラス全員で鬼ごっこをした時を。先生の目を盗んで授業中に変顔をしてみせるのが流行った時を。テスト前の追い込みで教室に居残りまでして勉強会をした日々を。
ジュニアハイスクールの時はクラスの誰が一番先生の真似が上手か隣のクラスも巻き込んで大騒ぎをしたっけ。先生も笑いながら参加してくれた。
エレメンタリースクールの時を、キンダーガーデンの時を…
思い出した。もう、帰れないあの時を。
きらめくだけきらめいて、もう取り戻せない思い出を。
壊れる音がした。
「アムロ!怪我は?!」
ゲーツの焦った声に目が覚めた。慌てて、監視カメラを叩き壊したアムロさんの手を取って怪我がないかを確認した。
よかった。血も出てないみたいだし、骨も痛めてないみたいだ。近くに置いていた手のひらサイズの懐中電灯で壊したらしい。彼の手の中で懐中電灯が壊れてないのは幸いだった。
「アムロさん!怪我したらどうするんです?!」
「俺は!友達の涙を、売り物にしたくない!!」
言われてようやく気付いた。僕がとったアムロさんの手に、僕の涙が落ちていた。慌てて、袖でそれを拭って2人から顔を隠した。恥ずかしかったわけじゃない。2人も泣いていたからだ。
ああ、また、僕は。
「…僕は。」
そうだ。取り戻せない日々はある。もう会えない人はいる。もし戦争がなかったなら、ルウムが無事だったのなら、あいつらもカミュも無事だったのなら、と思うときもある。
でも。
「僕は、本当に、運が良かった。カミーユにもファにもパプテマス・シロッコにもブライト艦長にもヌー曹長にもアムロさんにもヤザンにもハマーンにもゲーツにも、皆に、会えた。」
生き延びた先で得られたものも確かに合ったのだ。涙は生きていないと流せない。血から作られているからって言ってたのはカミュだった。
生きているから、今、僕らは一緒に泣いている。
アムロさんはエグザベ君の友人です 編
アムロさんは優しいので、エグザベが泣き出す直前に盗撮カメラを壊してくれました。
エグザベの思考が走ったので、皆、朝には声がカサカサになるまでちょっと泣いてた。
アムロもゲーツも、それぞれ泣きたくなる理由はあるし、でも、明日に絶望するほどスレてもいないので寝坊で済ませるくらいには大人です。
それで、あの日の煌めく思い出を胸に生きていけるんです。
天幕のジャードゥーガル、いいアニメだねー!