機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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アーガマに新しい風が吹いた。ブライト・ノア。

しかし、その風が凶とでるのか、吉と出るのか。

誰にとっての凶か、吉か。

誰も考えはしなかった。


違和

エグザベ中尉の様子がちょっと変になったと、僕が感じたのは、パプテマス・シロッコとエグザベ中尉の戦闘が合った日の数日後くらいからだった。

 

あの戦闘の次の日、エグザベ中尉は、僕の幼なじみであるファ・ユイリィの身分を取り敢えずの処置でアーガマの衛生班に置いた、と言った。衛生班は士官の身の回りの世話、つまりアーガマで共用部屋やトイレ掃除をしていてくれている班だ。女性が多いということは知っていた。ファは彼女たちとアーガマの掃除の仕事を行うことになる、と教えてくれた。

まだ未成年のファに任せるには重労働になってしまって申し訳ないと、エグザべ中尉の部屋で僕とファに頭を下げて謝罪までしてくれた。

一緒に給与と、戦艦が戦闘に入った時の避難場所と避難の仕方も説明してくれさえした。本当は、衛生班の人から聞くことなんだけど、僕とファには事情があった。

 

ティターンズだ。

 

「こういう話をすると、怖がらせてしまって申し訳ないとは思うんだけど……はっきり伝えておく。正直、ティターンズの手は長いし、バスク・オムの様に正気と思えない者も多数いるから、ファには僕の近く、つまりアーガマに居てもらうことにしたよ。休日でも1人でグラナダへは行かないでほしい。僕自身もちょっとこの措置は、自分の正気を疑うんだけど。」

 

そう言いながら、エグザベ中尉は首を何回か傾げながら伝えてくれた。

僕とファはアーガマから離れられないことを特に気にしていなかった、と言うよりは一緒にアーガマに居られることがありがたかった。

僕はファの事が心配で仕方なかったし、彼女も1人でグラナダに行くのは嫌がっていたから。

 

2人でお礼を言ったけど、エグザベ中尉は本当は良くない事だから、とまた腑に落ちないような様子だった。

何度も首をかしげていた。

 

それからだ、エグザベ中尉が時折、廊下で立ち止まったり、道を引き返したり、部屋で居留守を使うようになったのは。

 

「思考が走りすぎる。」

 

そう呟くのも、何回か聞いた。僕と2人きりの時にしか言ってないようだったが、覚えるくらいには聞いた。

 

「なんです?それ。」

 

「頭が、ね、混乱しているんだよ。そっか、僕は疲れてるのか?」

 

そんな事をいいながら、ふらふらとエグザべ中尉は道を引き返していった。ふと、最近クワトロ大尉と会ってないことに気づいた。このアーガマの中で?

 

 

 

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アンノウン1のデブリーフィングの後から、クワトロ大尉の様子がおかしい。

僕、エグザべ・オリベはもう、何度目だろうか。そう、感じていた。

 

まぁ、初対面と言うか、航宙記録と戦闘記録を読んだ時からおかしかった、と言われたらそれまで、だ。ブリーフィングもデブリーフィングもして来ていなかった。

クワトロ・バジーナは大尉という職責にあるのだ。本来ならMS操縦の訓練も主導すべき立場にあるというのに、訓練計画について指示をもらったことはなかった。定期的に行われるようになったブリーフィングにも滅多なことでは、参加もしない。

 

そのクワトロ大尉がこだわるのが、カミーユ・ビダンだ。とは言っても、僕がアーガマに来てからも、気まぐれに声をかける程度だったのだが。

ここ数日やけに、カミーユに接触しようとし始めていた。いや、カミーユがガンダムMk-Ⅱで戦わなかった事に怒りと不満を抱き、カミーユを叱ろうとしている心算でいるようだった。やたらと、敵に向かっていかなかった理由を繰り返し聞き出そうとしてくる。しつこい。

 

僕は2度ほど、クワトロ大尉に対して、カミーユは僕の直属の部下で、僕の命令に従って行動しただけだ、と説明したのだが。

 

「どうも、何か変だ。」

 

何がどう変なのか?それを自分の中で理屈をつけられずにいた。久しぶりの感覚だった。

 

何故、クワトロ大尉は、カミーユが、まだMSの基本訓練をしている子供が嬉々として戦闘に向かうと信じ込んでいるのか。彼がガンダムMk-Ⅱに乗った経緯に問題はあるが、既にあの時とは様々に違っている。

それなのに、何故?

 

ここ、グラナダはエゥーゴの拠点となり、常に、5隻以上の戦艦と200機のMS、その他防宙設備が防衛している。ここまで来ると、いちMSパイロットの中尉には把握できる範囲にない。ウォン氏から、民間を含めた宇宙船が近づくことのない宙域をMSの訓練用に割り当ててもらっただけでも、破格のことなのだ。

 

この戦力増強の勢いにのって、グラナダとは月の反対位置、地球側の表面にあるフォン・ブラウン市もエゥーゴの拠点にしよう、と言う案も度々出ている。まだまだ、組織として若いし、軍として見た時も統制が甘いからやめておいたほうが良い、とは意見を上申しておいた。それはそれとして。

 

クワトロ大尉と付き合いの長いアボリー中尉とロベルト中尉まで、異変を感じているような有様だった。エマ中尉なんて、常にはカミーユのそばに居られない僕の代わりを時々申し出てくれる。

 

だが、新しくアーガマの艦長になったブライト・ノア大佐。かつて、ホワイトベースの艦長だった過去をクワトロ大尉に買われ、急遽アーガマの艦長に抜擢されたブライト艦長。

彼はクワトロ大尉と同意見のようだ。口にはしてこないが。

クワトロ大尉の奇行を止めようともしなかった。

 

どうにも、僕やカミーユにとってアーガマが不穏な場所になりつつある予感がしていた。だが、ティターンズとの戦いが待ち受けていると思えば、エゥーゴを簡単に離れられもしない。

苦肉の策で、カミーユのMS訓練の時間を延ばせるだけ延ばして、思考を走らせ、クワトロ大尉とカミーユの接触の機会を絶つくらいしかできていなかった。

 

 

そんな事をしている時に、パプテマス・シロッコが会談を申し込んでくれたのだ。

 

 

 

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パプテマス・シロッコはそうして、優雅に僕たち2人に敬礼をすると部屋から去った。残されたのはエグザベ中尉と僕と、クワトロ大尉とブライト艦長だ。

 

エグザベ中尉がさりげなく、ハンドサインを出してくれた。2人から見えない角度で。

ハンドサインも訓練の休憩時間の時に教えてもらった。船外つまり宇宙空間での作業する人ための、軍用のではないハンドサイン。

宇宙では通信が途絶する可能性は常に考えられてきていて、しかし対策もされているのであれば学んでおくと色々応用できる、と。

 

このハンドサインは、そう、『静かに』と言う意味だ。宇宙空間で『静かに』と伝えるのはなんだか笑える。が、エグザべ中尉に言わせると、まぁ、元々海中での作業で使われていたものだから、らしい。宇宙空間に馴染まないハンドサインも多々あった。

でも、便利なんだから使わない理由にはならない、と教えてくれた。

 

「エグザベ中尉!結局、シロッコは何をしに来たのかね!!」

 

ブライト艦長の緊張した声が部屋に響いた、人を押さえつけようとする、声に思えた。男の人の声だ。怒鳴る声。他人に命令を聞かせようとする、声。

嫌いだった。ブライト艦長から、1年戦争の英雄から、ニュータイプの彼から、こんな声は聞きたくなかった。

僕は、さりげなさを装って、エグザベ中尉の後ろに隠れた。

 

「パプテマス・シロッコ大尉です。ブライト艦長。彼は任務で必要に迫られテンプテーションを追い、僕と一戦したことで建前を得て向こうに帰還しました。これは直後のデブリーフィングでも話したことです。…その後、パプテマス・シロッコ大尉は僕と再戦を希望したのでしょうが、僕はリック・ディアスに乗り続けていた。その理由を直接、ここまで聞きに来てくれました。それだけのことですよ。」

 

一方、エグザべ中尉は穏やかな声でブライト艦長に対応している。でも、パプテマス・シロッコと話をしていた時と違って、……そう、飾った声、だ。士官の声、とでも言うのだろうか?エグザベ中尉がわざと使い分けていることが分かった。僕に、分かりやすいように?

 

「……ジュピトリスが敵対したことは確定した。」

 

クワトロ大尉が厳しい声でエグザベ中尉を責めた。ジュピトリスが敵対した?

そんなことは誰も言ってなかったのに。

 

「それもパプテマス・シロッコ大尉は話をしてくれたでしょう、たった今。ジュピトリスを思えば、と。ティターンズは何らかの手段でジュピトリスとその艦載員を、いえ、後は会話を傍受していた情報班からの分析を待ちましょう。彼らの仕事です。」

 

情報班もようやく作られた。グラナダ基地にエゥーゴ情報班の本部があって、アーガマにもその情報班の分隊が着任した、らしい。形だけだとしても無いよりは有り難いと、エグザベ中尉もエマ中尉も言っていた。

負担が減るから、その分訓練に充てられると。それを聞いた時、僕は真剣に仮病の言い訳を考えた。

まぁ、結局、その分をエグザベ中尉は自分自身の訓練に充てたから、要らぬ心配だったけど、本当の本当に、ファに相談するくらい本当に考えたのだ。エグザベ中尉は、笑いながら軍学校時代を思い出すなぁ、と気楽に言ってくれた。

 

「エグザベ中尉、君はニュータイプだったのか!」

 

ブライト艦長の、人を押さえつけようとする声がする。支配しようとする、声が。

嫌な、声音だ。優位に立とうとして、他人を押さえつけようとしてくる人間の。

エグザベ中尉の、柔らかな声がそれを遮ってくれなければ、僕はまた、怒りと憎しみにとらわれていたかもしれなかった。

 

「有り難いことに、パプテマス・シロッコ大尉はそう思ってくれたみたいです。彼のような実績も有能さも持ち合わせた人物に、その様に評価して頂けるなんて僕には身に余る光栄です。せめて、パイロット技術だけでもパプテマス・シロッコ大尉に追いつけるように精進しようと思います。」

 

僕からは2人に対して壁になってくれていて見えないけど、きっとエグザベ中尉は今、微笑んでいるのだろう。

この前、話してくれた。いついかなる時でも微笑んで見せるのも士官の仕事のうち、だと。教官の教えだよ、と言っていた。何度も何度も繰り返し教えられたそうだ。相手を安心させろ、不安にさせるな、焦りを悟らせるな、敵対心を抱かせるな、と。

 

敵対心を抱き、抱かせたから戦争が起きたのだ、と。だから、微笑むのは仕事だ、と。

 

その後、でも心は追いつかないね、とも付け加えていた。

 

「お二方は、上官です。僕の立場から、これ以上申し上げる事はありません。ありませんが。」

 

そこでエグザベ中尉は、一息入れた。

 

「いえ、出過ぎた真似を重ねるところでした。頭を冷やすため、アーガマへ、帰還します。お先に失礼します。」

 

そう言うと、僕の手をしっかり繋いで部屋からつれだしてくれたのだ。

 

 






スレで、「おは、シャア!早くさなぎになれると良いな!!」と言うレスがあって一人、大笑いしていた頃。
さなぎの前身ってwwwwと、なってた。

カミーユ・ビダン君は怒鳴る男の人は嫌い、らしいです。まあ、好きな人はめったにいないよな。
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