機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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カミュは、僕にとって幼馴染で、親友で、神様だった。

あいつは馬鹿馬鹿しいって笑ってるんだろうな。

でも、そうだった。カミュは何でもできる、何でも知ってる奴だった。





小さいころの僕は、カミュが本物の神様になれるように、と願うつもりだった。

流れ星に、願うつもりだったんだ。そんな、残酷なことを。

笑えよ、カミュ。



星に願いを。

 

 

地球でしか見れないものがたくさんある、とカミュは言っていた。本当に僕らが小さいころから、ずっと言っていた。

地球で見たいものがたくさんある、と。

 

「流星とかオーロラとか虹とか雷とか噴火とか、おれが見れないまま人生終えるっていうのは、人類にとって大損失だろ?」

 

5歳くらいの頃、公園の砂場に何種類かの地球の世界地図を木の枝で描きながらそう言った。メルカトル図法の世界地図しかまだ描けないから他を練習してるとか言いながら、そんなことを言った。

僕には当然よく分からないから、カミュの描いた線を消さないよう隙間に犬とか猫とか、多分そんなものを描いていた。

 

「火星でも金星でも木星でも、どこでも、みにいけばいいだろ。ぼくもついていく。」

 

本当に、そのつもりだった。カミュについていけば僕はそれを見れるし、詳しく教えてくれるし、一緒に楽しめると本気で思っていた。

 

「流星見たらさ、3回願い事を唱えると叶うんだって、宗教と文化学の本に書いてあった。流星が消える前に唱えきったら願いを叶える星に変わるって信じてたんだと。ただの宇宙ゴミが大気圏で燃え尽きるだけの現象を有難がってた人間がむかし、居たんだ。1秒未満に3回。練習してみろよ、シャヴィ。」

 

「カミュは、なに、おねがいする?」

 

お願い事を口にする前に、僕がそう聞いたのはなんとなくだった。そのなんとなくの僕の疑問を、カミュは鼻で笑ってたんだから、あいつは本当に子供のころから性格が悪かったな。

 

「そんな間抜けなことはしない。宇宙ゴミに何願うって?ゴミだよ?」

 

「ずるい!」

 

「ずるくない!流星も、シャヴィ、お前と一緒に見るんだから、ずるくないだろ?」

 

「…うん、まあ、カミュといっしょにみるなら……あれ?ちがう。やっぱりずるい。」

 

あいつは、ずっとああいうやつだった。僕の願い事を聞きたかったんなら、素直に言えばいいのに。

 

「…カミュのおねがいごとはぜんぶ叶えばいい。流星には、ぼくがそうおねがいするから、カミュはすきなことしてればいいよ。これなら、間抜けじゃないだろ?」

 

5歳の僕にはそれが名案に思えた。カミーユは間抜けなことしないで済むし、僕は流星にお願い事を叶えてもらえると、思っていた。

 

一緒に地球に、行けると思っていた。

 

 

 

 

 

 

「流星など、地球に居れば毎夜のように見えるものだ。火球でさえ珍しくはない。わかることだろう、エグザべ。」

 

ハマーンからある相談を受けて、僕はその時の思い出を話した。僕自身は流星をまだ見たことない、という話もした。

 

地球上で夜間の外出が許可されていないからだ。緊急の場合を除いて、僕は窓の近くにも寄れない。狙撃の可能性があるから、どこへ行ってもカーテンさえ開けられない。仕方ないことだけれど。

 

あいつが言っていたオーロラもまだ見れていない。ついでに噴火も。いや、噴火はなくてもいいか。地球が大変なことになるから。

 

僕が地上での平和講演や慰霊祭などに参列するのにも、多くの護衛と監視がつくようになっていた。

こうして、友人と話すのだって地球連邦軍での活動の一環と見なしてもらわなければできないことだった。

 

ハマーンは、アマンダ・クランと名前を変えた。公の場では僕もアマンダと呼ぶようにしていたが、普段はハマーンと呼んでいいと、彼女は許可をくれた。

 

「あいつが箪笥の角に小指ぶつけるように願うよ、今なら。」

 

「3回、噛まずに言うところを見てみたいものだ。」

 

誤魔化したのがバレたのか、ハマーンに鼻で笑われているけれど、僕は今なら本当に、それを心から願える自信があった。噛まない自信はないけど。

 

「まあ、つまり、マイネちゃんが、夜空を見ながら『Sister』って3回唱えたのは…流星へのお願い事だよ。学校の授業か友達からか、聞いたんだと思う。」

 

宇宙育ちの人間には、流星へ願い事をするという文化はない。コロニーに流星はないのだから、そういう文化さえ宇宙移民は忘れてしまって、それを当然として不自由なく生きてきた。

 

逆に、地球の人たちも、流星にロマンと信仰を持てない僕たち宇宙移民のことを知らずに生きている。

 

別に生きていくうえで、それは悪いことではないけれど、そういう噛み合わない認識の積み重ねが現状を作り出したということも確かなのだ。僕が宇宙と地上を行き来しているのも、自分自身にそのことを再認識させるためでもあった。

 

「マイネにはセーラがいるのに、か?寂しい思いをさせているのだろうか?セーラもようやくハイスクールに慣れてきて友人もできたようだから無理はさせたくない。代わりに私が仕事や講義を減らしてもいいが、今更、『姉』をできるほど器用でもない。」

 

ハマーンの表情が曇るのは悲しいな。笑顔が似合うのに。

 

「『Brother』じゃないのは、なんでだろうね?」

 

話題を変えたのは、そう思ったからだ。

 

「カミーユとマシューがいるからだろう。不思議ではない。」

 

「なるほど。言われてみればそうか。カミーユもファも、マイネちゃんやセーラさん、マシュー君とビデオ通話をしてるって言ってたな。」

 

最近のマイネちゃんは、お小言ブームだ、とカミーユがボヤいていたのを思い出した。部屋の掃除とか洗濯とか爪の手入れとかの生活態度を細やかに注意されているそうだ。ついでに、マイネちゃんだけではなくサラとシドレからも、ファとのデートについてはお小言を言われているらしく、肩身が狭い、と嘆いていた。

 

かなり気落ちしていたようだから、カミーユと今度会えた時に……そういえば、僕は恋愛相談を誰にもされたことないな。カミーユにもファにもされたことなかった。なんでだろう?

 

「天文台へ流星群を観察しに行きたい、と言われてもいるが、これもお願い事のためか。」

 

「たぶんね。でも、さすがに天文台への夜間長距離外出は難しいと思うよ。しし座流星群のことかな?1週間後か。」

 

デバイスで簡単に検索しながら確認する。1週間後、しし座方面から流星が流れてくるらしい。しし座、というか星座も地球上でなければ見られないものだ。どうして、この線が獅子になるのか皆目分からないけれど。カミュの奴なら教えてくれたかな?

 

「そうだ。文化関係の報道には出ていたようだが、私は気づかなかった。マイネのように視野を広く持たねば、あの子の母として恥ずかしい。」

 

そういうハマーンは真面目だ。気持ちはわかる。一方で、子供たちに恥じない自分であるために無理をしていないか、心配にもなるけれど。

僕だって、カミーユやファに恥じない自分でありたい。そう思っている。

 

「流星が日常化していては、流星群も文化面で報道されてしまうものなのか。科学分野でも宇宙開発分野でもなくて。ハマーンが気づかなかったのも無理はないと思うよ。」

 

あいつがあんなに見たがっていた流星は、たぶん流星群のことだったんだろう。僕らが5歳のころだ。宇宙には今ほどデブリもなかった。毎日、地球に宇宙ゴミが落ちてはいなかっただろう時代だ。

 

宇宙から落ちてくる何かに恐怖せずに人々が生きていた時代だった。

 

「宇宙デブリを片付けてしまえば…いや、本末転倒だな。マイネの願い事を叶えてあげたいのに、流星を消しても意味はない。」

 

「素直に聞いてみたらいいんじゃないかな?ハマーン。本末転倒だろうけど、僕に聞くよりマイネちゃんに希望を聞いてみるのが一番いいと思う。」

 

「素直に願い事を話したのか、5歳のエグザべは?」

 

ハマーンに言われて、言葉に詰まったのは覚えていないからではなかった。覚えていたからだ。

 

流星をカミュと一緒に見られたら、何を願うつもりでいたか覚えていた。話しながら、思い出してしまったからだ。馬鹿馬鹿しい願い事だった……

いや、口に出した願い事だって嘘ではなかったんだ。ただ、遠回しに言っただけで…

 

あいつは、あの時に分かってたんだろうか。分かっていたとしても鼻で笑ったんだろうな。

 

「ハマーン、マイネちゃんは5歳の僕じゃないよ。貴女の娘だ。もう10歳だよ。話してくれる。むしろ、ちゃんと話を聞いた方がいいよ。分かるだろう?」

 

「分かっている。だが、私では流星に願い事をしているなど、考えもつかなかったのだ。地上に降りてから平穏と安全を得られているが、未知の世界にいるようでもある。」

 

地上とコロニー、どちらも人間が生きる場所だ。生きている場所だ。

 

コロニーは、人間が不自由なく違和感なく宇宙で生きられるように情熱と技術を込められて作られていた。実際に、僕はルウムでの生活に不自由を感じたことはなかった。悪天候がない分、宇宙に近くて便利だとさえ思っていた。カミュも、そう、言っていたから。

 

「僕は未知の世界も悪くはないな、と思ってしまうけれど。…いや、ハマーンの不安も分かるよ。本当に。分かってる。本当だ。嘘じゃない。木星から先には行かない!いや、違う。間違った。火星から先には行かない。誓ってもいい。カミーユに連絡を入れるのは!待ってくれ、ハマーン!」

 

未知の世界も悪くはないけれど、僕は、僕の親友たちや友達と過ごせる世界の方が大切だ。

大切だと思える僕は、運が良かった。

 

 




宇宙世紀の1年戦争後に、流星群は果たして報道に出るのだろうか?天体観測の機会になれるんだろうか?子供たちが宇宙に親しめる機会をつくれるんだろうか?

もしかしたら、今、心穏やかに流星群を見れることだって奇跡に近いのかもしれない。

宇宙から落ちてくるものへの不安を子供たちから、少しでも取り除けるように、流れ星へお願い事をする習慣は蘇った。
これは地上の人間の苦肉の策でもあるんです。俺のSSではそうです。


ロマンティックを目指しました。このSSを書いているときはロマンティックを目指してたんです。
決してエグザベとハマーンのコントを書いていたわけではありません。ツッコみいない漫才を書いてたわけでは……両方ボケが飽和してる?うん。はい。そうです。
似た者同士のママ友だから…パプテマス・シロッコがこの経緯を聞いたら大爆笑ローリングするんじゃね?知らんけど。

カミーユ君は馬鹿な保護者が馬鹿しでかす前に、確実に止められるように肉体を鍛え続けてます。軍大学にも行ってるからね、仲間と切磋琢磨鍛えてます。唸って光る拳が出るかもしれない。


世界人類が平和でありますように、と願い続けてます。
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