機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
エグザべ・オリベは、本当に、本当に久しぶりに、具体的に言うなら1年と8か月と10日ぶりにジオン共和国軍士官用に作られた独身寮の自室で台所に立っていた。途方に暮れていたのだ。
この引越ししてきたばかりの部屋で、途方に暮れていた。
自分は、休日の朝食に何を作って食べていたんだったか?戦艦暮らしが長すぎた弊害だ。自炊能力が格段に落ちている。
おまけに、割り当てられた部屋には電気コンロ以外の何もないのだ。オーブンレンジさえも。
「食器、調理器具は購買禁止か。」
水も食料も保管禁止とまで上官と寮の管理人に言われている。
ある程度は覚悟していたが、ここまで徹底されると…この部屋でできることって、寝ることだけではないだろうか?
両隣に部下の部屋があるここが僕の部屋として割り当てられたことの意味についても勘繰りたくなってしまう。部下の手前、無様は晒せない。つまり、休息も最低限にしろという暗黙の命令だろうか?
そう言えば、この寮、全室窓がない。屋上にも上がれない。急設された非常階段が2か所もあった。外も見られないまま、部屋にいる時間を最低限にしろ、とでも?
いや、僕は疑心暗鬼に陥っているな。共和国軍の上層部も、部下も僕の敵ではない。味方だ。
この措置は、僕に必要だからされている。そう、信じろ。
例え、朝食に何を食べればいいか分からなくなったとしても。
深呼吸を3回、した。酸素が、頭に廻ってくる。
「まあ、散歩も休暇の過ごし方か。」
そう、自分に言い聞かせて着替えた。出かけるときに部屋に備え付けてある通信機から憲兵に連絡を入れる。これも命令の1つだった。
共和国軍で憲兵がまともに運用されるようになったのは良いことだ。そうだろう?
自分は憲兵の護衛能力と追跡能力を策定するためのテストケースに過ぎない。憲兵も真面目にそれに付き合ってくれているし、部下も必要性を理解してくれている。何より雀の涙のような予算を削ることなく、護衛と訓練が両立できる素晴らしい案だ。
部下もそれに理解を示してくれたから、僕の部屋の隣なんて息苦しい場所にも引越ししてきてくれたのだ。
憲兵への連絡も護衛のために必要な情報共有をしているだけだ。
それが、僕の場合、超長期的であるだけで……ちょっと飲食に関しても過保護にされているだけで……士官用の独身寮もいざというときの逃走経路確保のために改築されただけで……
いや、誤魔化したところで仕方ないか。
命を狙われる生活というのは酷く窮屈だ。アムロ大尉が、地球で鬱屈してしまったのも当然のことなのだろう。僕は改めて彼の苦労を思い知らされた。彼はまだ少年だったのに、大人の僕がこの程度のことで。まったく、情けない。
寮周辺の地図は頭に入れている。勤務基地へは毎日変則的にルートを変えて出勤しなければならないからだ。基地の上官から5~6ルート、策定させられた。
歩いて10分無い距離なのにわざわざ遠回りしなければならないし、どうかすると40分程度かかるルートもある。まあ、仕方ないか。
そのうちの1ルート、途中にパン屋があったはずだ。
公園を大きく回って、マーケットに寄ってもいい。久しぶりにリンゴを1つ丸かじりで食べるのも悪くないだろう。なんせ自室だ。咎める人間もいない。寂しいことに。
「いや、1人じゃなかったな。」
そうだった。
僕を追跡して護衛してくれる憲兵はいるし、パン屋にもマーケットにも店員や他のお客もいるだろう。ストリートにだって、僕と同じように散歩している人も働いている人も。
そうだな、僕は1人ではなかった。
今はまだ、手紙のやり取りしかできないけれど。カミーユもファも僕を家族だって言ってくれるし、パプテマス・シロッコもハマーンも僕を親友だと言ってくれる。ヤザン大尉もゲーツ大尉も、地球連邦へ誘ってくれている。ブライト艦長もアムロ大尉もアストナージさんもアポリー中尉もエマ中尉もロベルト元中尉も、また会いたいと言ってくれた。
寂しいなどと言ったら、彼らに失礼だ。
孤独ではない僕は、宇宙で生きている。
エグザベ・オリベの孤独でないある日の朝。
朝飯って何食えば良いのか分かんなくて困る。
冷蔵庫のない生活は考えられない。
弊SSのエグザベの食生活は大変そう。エンゲル係数馬鹿上がりすると思う。
早いとこ、基地内の食堂を自由に使えるように交渉して……