機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
花束は、オレンジのダリア、紫色のチューリップ、白いカスミソウ、黄色い百合、それから…赤い薔薇で作ってもらった。
花の名前なんて、僕にはよくわからなかったから、店員さんがくれたメモが役に立っている。簡単に絵で描いてくれたから、どれが何の花か説明できた。たどたどしくだけれども。
ハマーンは微笑んで受け取ってくれた。
彼女の誕生日祝いの白ワインも。
「花言葉を知っているのか?意外とロマンチックなのだな。」
否定する言葉は出てこなかった。店員さんのメモには、花言葉もちゃんと書いてあったからだ。
まあ、つまり、そういうことだ。僕はちょっとずるくて臆病な奴かも。
それを笑わないで受け止めてくれたハマーンは優しい人だ。
チョコレートで出来た赤い薔薇の花を見たことがある。大輪の大きな赤い薔薇だった。本物と見紛う程に綺麗で美しかった。
その薔薇は、10センチくらいの小さな白い木の箱に白い綿と詰められていた。
ルウムで、カミュの家で、見た。
カミュのお母さんが職場でもらってきたから見たのだ。職場の男の人から誕生日プレゼントにもらった、と無邪気に自慢されたのも覚えている。家の中で箱を持ってスキップしていた。そういう人だった。
12歳になった僕がビックリするくらいにお高いチョコだったらしいのに。
「おばちゃんもビックリしたのよ!だって、本物の木の箱よ!」
カミュのお母さんはチョコレートで出来た赤いバラより、木に夢中になっていた。本物の白樺に目が釘付けになっていた。
カミュはその様子をを見て、頬を引きつらせていた。
カミュとカミュのお母さんは、とてもよく似てる。僕がそう思うとき、カミュはいつも頬を引きつらせていた。
「チョコレートは2人で食べていいわよ。私は箱をもらうんだから!」
芸術的な赤い薔薇は、すぐに僕らのおやつになった。僕とカミュが止める間もなく、乱暴に皿の上に出された衝撃で粉々に割れてしまって、繊細だった薔薇の形は失われた。失われたから躊躇なく食べられたのだけれど。
赤いチョコレートはホワイトチョコレートに食紅で色付けされていただけだった。薔薇の香りもしない。普通に甘いチョコレートだ。ただ、口の中であっという間に溶けていった。
高いチョコレートだから、僕もカミュも薔薇の花びら1枚ずつ口に入れて食べた。
「な、再婚できない理由、わかるだろ?」
カミュが苦い顔をして言う。チョコレートは甘いのに。
まあ、気持ちは分からなくなかった。
でも、
「……カミュのお母さん、良い人だよ。」
チョコレートをタダでもらった僕はカミュにそう言うしかなかった。買収されたから。
「チョコレートの作り方?」
世間は、今日バレンタインだった。
僕が赤い薔薇のチョコレートを思い出したのは今、ビデオ電話でマイネちゃんから相談を受けているからだ。
グラナダで過ごす休日は大体、カミーユとファの家にお邪魔している。赤ちゃんが生まれたからだ。
皆とあまり一緒に過ごせる時間がない分、僕は家の掃除や買い出しを手伝わせてもらっている。
ファにもカミーユにも、もっと赤ちゃんとゆっくり過ごせる時間を作ってあげたかったから、そうしている。時々、抱っこもさせてくれる。
そのファとカミーユは今、買い物に出かけているから留守番の僕がマイネちゃんからの電話を受け取ってしまった。2人はすぐ帰ってくるから、と言っていたはずなんだけど…
まあ、グラナダ基地は警備に力を入れているから僕でも安全に過ごせる場所だ。スーパーもレストランもショッピングセンターも基地の内部にあるし、久しぶりに2人きりで息抜きでもしてるんだろう。
夫婦ってそういう時間が必要だって、サラさんとシドレさんからも聞くし。
僕の腕にはぐっすり寝ている赤ちゃんがいる。カミーユとファの赤ちゃんだ。
もうそろそろ1歳になる。子供の成長って本当に早い。初めて会ったときはあんなに小さくてふにゃふにゃしてたのに、今はがっしり僕の腕を掴めるくらいになった。
ベッドに寝かせようとすると泣いてしまうから、性格はカミーユに似ているのかもしれない。軽くゆすると、少し笑ってて可愛い。
「型と材料はお母様に買ってもらったの。セーラ姉さまと一緒に作るはずだったのに…」
マイネちゃんが相談の電話をしてきているのは、セーラさんがロースクールのゼミの用事で遅くなるから、だという。ハマーンの帰りに間に合わないそうだ。
「セーラさんが間に合わないのならアマンダを待つべきだよ。台所には刃物もあるから1人じゃ危険だ。チョコレートって熱湯を使うはずだし。」
大人としては、そう、言うしかない。ハマーンは本当にマイネちゃんに対して相変わらず過保護だな。
いや、ハマーンもセーラさんも仕方ないか。彼女達だって地球に降りるまで台所に立つことはなかった。そういう立場で育てられてきた。
普通のエレメンタリースクールやジュニアハイスクールに通っていた僕とは、時代も環境も違う。
「お母様を驚かせたいの!」
「一緒にお菓子を作る思い出もアマンダなら喜んでくれるよ。」
「分からずや!」
今日のマイネちゃんは少し、機嫌が悪いのかな?そんなに1人でお菓子を作ることにこだわらなくても良いと思うんだけど。
1人で抱え込もうとするところがハマーンに似てきたような気がする。
「そんなことを言われても……いや、マイネちゃんの気持ちも分るよ。お菓子作りってどうしてか、マイネちゃんくらいの年齢で流行するから。」
マイネちゃんは年齢を2つ誤魔化して、今はエレメンタリースクールの6年生クラスに通っている。軍人家族、あるいは遺族のために設立された私立だ。スクールは軍人遺族会や退役軍人会が後ろ盾にもなってくれている。
普通のエレメンタリースクールよりも運動や野外活動や社会見学にも力を入れているとハマーンとヌー曹長から聞かされていた。子供たちに広い視野と考える力を身につけさせる教育を重視している、というのは僕の通っていたハイスクールと同じ目標だった。
お菓子作りなども、その一環で学校で教えてもらえるから流行するんだろうな。
僕も記憶にある。懐かしいな。きっかけはエレメンタリースクールの授業じゃなくて、お菓子作りが趣味の女の子だった。はずだけれど。
エレメンタリークラスの女子は手作りお菓子の交換会までしていた。だんだん、凝っていって先生から保護者に注意喚起もされていた。
まあ、僕もカミュも男子だったから関係なかった。料理もホットケーキとか目玉焼きみたいな簡単な物しか作らなかったから本当の本当に無関係だったけれど、女子は大変だったらしい。みんな宿題なんか放り出して作ってきていた。
「そう!クッキーとかパウンドケーキとか、みんなおうちで作って、それでランチに持ってきて私に自慢するのよ。ちゃんと1人で作れたって!……違う!違うの!話をそらさないで!悪い癖よ!」
「ごめん。でも、アマンダが心配する気持ちも分かるんだよ。火傷したり、包丁で手を切ったら痛い思いするのはマイネちゃんなんだから。ニスリーンさんまで台所から締め出してたら僕も当然止めるよ。…いや、ニスリーンさんと一緒に作ればよくないか?呼んで来たら、僕から頼んであげるよ。」
アーガマで情報部に居たニスリーン・ジャダール一等兵は伍長に昇進した後、アマンダの屋敷に秘書兼ナニーとして勤めている。あまり話したことはないけれど、書類整理と噂話が好きな性格で、ヌー曹長は彼女を便利屋扱いをしていた。
「ニスリーンは駄目よ!この前、彼氏と別れたから!」
「なんで?」
純粋に疑問だった。お菓子作りに何にも関係しないだろうに。
あと、プライベートな話するくらい仲は悪くないみたいなのに、そんな叫ぶように拒絶しなくてもよくないか?
「それに、ニスリーンはお台所では何の役にも立たないの!常識でしょ!お湯だって沸かせないし、すぐお化けの話するし!」
「ヌー曹長にまた苦情出しておくね。怖い話は2度としないように、今度こそ、しっかり注意してもらうから。」
お湯が沸かせない、というのは宇宙移民には珍しいことじゃない。お湯は蛇口から出てくるし、家庭によっては電子レンジで温めるだけの食事ミールセットで済ませるからだ。
料理を作ることはある意味、贅沢な趣味扱いになっていた。
でも、ニスリーンさんは軍事訓練としてお湯を沸かす、くらいの経験はしているはずなんだが?
「お湯も沸かせないような彼女や奥さんは嫌でしょ?!」
マイネちゃんの言う、その感覚はあんまり分からない。
お湯って蛇口から出るし、電気ポットはあるし、必要だったら自分でやるし。
「嫌、とおっしゃい!」
「……うん、嫌、です。」
そう、答える以外は許されないんだろうな。マイネちゃんの怒り方がハマーンに似てきているのは間違いない。
しかし、本当に僕では役に立たない相談だ。
そもそも、僕ができる料理って少ないし、マイネちゃんの年齢と身長から考えると、台所に踏み台が無いと作業が難しいと思う。
デバイスで台所を使わなくても済むレシピを調べようにも、僕の両手はカミーユとファの赤ちゃんに占有されている。
電子レンジだけで作れるお菓子って確かあるはずなんだけど。
僕が目を瞑っていても作れる料理はホットケーキくらいなものだ。小麦粉と卵と牛乳とベーキングパウダーとバニラエッセンスを混ぜて作る。
僕の両親は何故か、ホットケーキと目玉焼きが作れれば全ての料理を作ることができる、と信じていた。それで、僕とカミュにホットケーキの作り方を徹底的に叩き込んだのだ。僕もカミュもそんなことは信じていなかったけれど、僕らに台所の使い方をしっかり教えてくれた事には感謝していた。おやつを自分で作れるのは便利なことだった。
「アマンダへのプレゼントをお花に変更するのはどうかな?地球のバレンタインはもともと、恋人に薔薇とかの花をプレゼントする行事のはずだけど?」
「今は、家族にもプレゼントするの!流行ってそういうものなのよ。少なくとも、うちのクラスはそうなの。それに薔薇はマシューがお家のあちこちに飾ってるから、私が渡してもお母様も驚かないでしょう?」
「アマンダなら、一生大事に持ってると思うけど。」
ハマーンは、絶対に僕にも見せないくらいに、マイネちゃんからの薔薇を大事にすると思う。ブリザーブドフラワーとか栞とかに加工するんじゃないだろうか?
「…そちらは、何か用意してるの?」
今日は答えづらい質問ばかりされる日だな?
恋人の日だ。僕には関係ない。
「お花を渡す、お相手がいるのって聞いてるのよ?」
「……いないです。忙しいし、こんな職業だし。」
「あら?この間、広報のお仕事で写真撮ったの、カミーユから聞いてるんだから。ポストカードになって高値で売れてるって。」
これも答えづらい質問だ。
僕のポストカードが売れているのは確かだけれど、それは僕の顔に銃弾をぶち込む為に買っていく人間がジオン共和国には非常に多いからだ。適当にコピーして使えばいいものを……
摘発された反政府武装勢力の射撃練習場でも、よく見つかっている、そうだ。そんな無意味な律義さを発揮されても、手心を加える気には到底なれない。
「化粧してもらってから写真撮ったからね、僕だって分かる人は少ないんじゃないかな?外に私用で出ることも無いから、ポストカードが売れてても知人も友人も増えなくて、何だか緊張して写真撮ったのが損だった気がするよ。」
「ふうん。それで、同僚とか部下の方は?お渡ししないの?」
「バレンタインって恋人たちの行事だよ。少なくともコロニーでは。……いないよ。渡したことも無い。僕のハイスクールは男子校だったんだ。彼女が他校にいる生徒も多かったけれど、僕は勉強と部活と友人たちの世話でいっぱいいっぱいだったよ。軍なんかそれどころじゃないよ。分単位で生活が管理されてて……あの、もしかして、僕は今、尋問されてるのかな?」
マイネちゃんは時折、表情と目配せとジェスチャーで話を促してくる。こういうところはセーラさんに似ているな。
「尋問される心当たりがあるのかしら?」
「ないけど。」
ないんだけれど、じゃあ、なんで僕はこんな話をさせられてるんだろうか?
「じゃあ、もらったことはあるの?」
「それもないよ。本当にない。…ハイスクールの時も軍の時もないよ。」
ハイスクール時代のバレンタインは本当に思い出したくない。3人の女子が校門の前で、あの大馬鹿野郎を待ち伏せていた。三股なんかしやがって。何も知らなかった僕だけが彼女達と話をしてしまって、大騒動になる所だった。あの場で全員と別れてもらったけれど、その後であいつが僕らに言ったのは「チュッ、俺だけモテすぎちゃって、ご・め・ん♪」だけだった。
クラスメイト全員で、小一時間はのらくら逃げる大馬鹿野郎を小突きまわったのだ。カミュもぶちぎれて靴まで投げつけた。次の日のホームルームでは教室からあいつの机と椅子は廊下に出すことが決定された。学校の評判を落とした罪で有罪判決が満場一致で可決されたからだ。
「コロニーだと、本当に夫婦と恋人たちの日なんだよ。できるだけ、部下の残業が無いようには気を配るけど。まあ、難しい時は謝るしかないよね。」
「今日はお休みなんでしょ!恋人の日にお休みをもらっておいて、全く予定がない、なんてあり得ないことよ!」
そういうあり得ない、があるのが僕の職業だ。仕方がない。それに、休みだってバレンタインだけじゃない。今日から1週間は休める、…そのはずだ。本国で何事も無ければ。
「……そうだね、いつかは誰かと薔薇を交換できる日が来ればいいけれど。」
まあ、遠い未来の話だろう。というか、遠い未来の話だ。
ヌー曹長と同じく、僕みたいな職業の人間は出会いがない。軍人なんて職業は結婚相手としては、喜ばれないという現実がある。
というか、ようやく復興特需が人類の生存圏に起こり始めた今となっては公務員は不遇の職だ。単純に民間よりも給料が……
喰いっぱぐれなんて滅多にない、社会に必要不可欠な職ではあるのだけれど…。
まあ軍人や警察や消防士や救急隊なんて暇なのが一番だ。
暇にならなければ、今回みたいな特別休暇だってとれやしない。
「そうだ、次の休暇は、そっちに行くよ。その時になら、僕がマイネちゃんにホットケーキの作り方を教えることができるから。」
「ホットケーキ?」
マイネちゃんが首を傾げている。それに合わせるように、腕の中の赤ちゃんも首を傾げて僕を見上げた。可愛い。
背中を軽くたたいてあげると、また眠ってしまう。
「僕の両親はね、今でもちょっと笑っちゃうんだけど、ホットケーキと目玉焼きが作れれば、どんな料理も作れるって信じてたんだよ。僕が目をつむってても作れるくらいに教え込まれた。」
「今日なのよ!バレンタインは!」
「分かってる。でも、今すぐそっちに手伝いに行けないし、大人として情けないけどお菓子の作り方も教えられないのは本当にごめん。マイネちゃん、ごめんな。間に合わない代わりに、というか、お詫びにもならないかもしれないけれど、今からマイネちゃんにお花を贈るよ。僕から、謝罪をこめて。」
ハマーンには事情を説明しないといけないだろうけれど、まあ、許してくれるだろう。彼女は薔薇を始めとした花々が好きな可愛い所がある。少なくとも、僕がマイネちゃんに花束を贈っても怒りはしないだろう。
「…本物のレディーはお母様の許しも得ないで、男の人からお花は受け取らないものよ。」
ツンとお澄まし顔で言うマイネちゃんは、ハマーンによく似ていた。お花が大好きなのもそうだ。
「そうだったね。じゃあ、アマンダ宛に贈るよ。マイネちゃんとセーラさんとアマンダの好きなお花を全部合わせて贈るから。それならどうかな?今日の僕の情けない姿の埋め合わせになるかな?」
「今日中に届くのなら。あと、マシューの好きな薔薇も忘れないでくれるかしら?」
マシュー君は僕から花をもらっても喜びはしないだろうけれど、そうだな、仲間外れは傷つくだろう。
うっかりしていた。
「わかった。でも、ごめん。今日中は無理だ。間に合わないよ。」
「意気地なし!!軟弱もの!!」
いや、プレゼントの花が今日中に届かないのは、意気地とか全く関係ない事情だ。そもそも、僕から物を贈るときはヌー曹長の情報部を介しての配達になる。僕とハマーンは互いに、そういう立場と職業だ。
「いや、配達とか検査とかがあってね、それは僕にもどうにもできないから…」
「いいこと?本当に心から申し訳ないと思うのなら、自分でちゃんと花束を持って、会いにくるものなのよ。分かるかしら?誠意ってそういうふうに見せるものでしょ。」
「はい。そう、その通りです。」
ぐうの音も出ない。
「分かったかしら?分かったのなら、次の休暇に何をしてくれるの?」
「アマンダの屋敷に花束を持っていきます。それから、マイネちゃんにホットケーキの作り方を教えます。もちろん、僕がアマンダもセーラさんもマシュー君も説得させていただきます。マイネちゃんが1人でも台所に入ってお料理できるように説得させていただきます。」
「ええ、まあ、それでよろしいです。とりあえず、それで許してあげましょう。」
マイネちゃんの満足そうな笑顔は、まあ、太陽のように眩しかった。まあ、つまり、僕程度が逆らえるわけがなかったのだ。
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「よくやりました!よくやってくれました!マイネ!流石、私の妹!もう!もう!もう!勲一等ものよ!主演女優賞は間違いないわ!」
相変わらず、セーラ姉さまは恋愛に夢中すぎる。高校で恋の女神さまって呼ばれてからずぅっと、キューピットの真似事をして…でも、そう言うところも大好き。
私を抱っこしてクルクル回ってくれる。温かいし、楽しいし、素敵だから、もっとクルクルして欲しいけれど、この前転んじゃってお母様に怒られたから、そろそろ止めないと。
「セーラ姉さまったら!フフッ、ニスリーンも褒めてあげて。マシューを抑えてくれたのよ、1人で!」
「もちろん!もちろんよ!ニスリーンさん!よくやったわ!助演女優賞は貴女のものよ!お約束通り、ウィジャ盤はお返ししますね!ああ、あと、これはいつか探されていたセージの束です。アジア地方で有名な乳香?もお付けしてます。」
セーラ姉さまから白い葉っぱの束と白い小石みたいなものを受け取ったニスリーンは深く笑ってる。あとで、ヌーさんに取り上げてもらったほうがいいのかしら?
「いいのですよ、お嬢様がた。恋愛は大事です。その恋愛に何より大事なのは、ドラマチックな切っ掛け…周囲からの祝福も大事ですけど。ええ、特にドラマチックな恋愛は大事です。人生を豊かにしますし、幸福の種ですよ。一生忘れえない想い人は、何人いてもいいものです。……浮気でさえなければ。」
ニスリーンは何か変な人形を……男の人の顔写真を張り付けた人形を片手で握りつぶしながら言う。布が裂ける音がした。そうね。壮絶で凄惨な事件になりかけたって、ヌーさんに聞いたもの。そうよね。
「ドラマチック!そうね!そうね!そうであれば、エグザベ少佐の次の休暇です。できるだけ、お姉さまの誕生日に近い日取りにしてもらいましょうね。ヌー曹長に連絡を取らなければ!……ああ、マイネ、大丈夫です。台所の使い方も、お菓子作りも私と姉さんがちゃんと教えますからね。」
そうは言っても、セーラ姉さまもお料理上手じゃないのに。ニスリーンほどではないけれども。
お母様のお料理はおいしいけれど。でも、ちょっと手つきが…時々、手を切っちゃったり、火傷したりしてるし。
お料理を教えてくれる先生を誰かに頼まないと、私の心配はずっと続いちゃうもの。
ホットケーキをみんなで作れば、ちょっとは怪我が減るかしら。お母様もセーラ姉さまもニスリーンも。
だって、エグザベさんは目をつむっててもホットケーキを作れるって言ってたわ。
「ファとカミーユに連絡取らなくていいの?セーラ姉さま。」
思えば、ファお姉さんも一緒に暮らしていたときに私が教えてもらえば良かったんだわ。あの頃はお母様もセーラ姉さまもお料理で怪我してなかったもの。ファお姉さんが手伝ってくれていたから。
でも、カミーユがグラナダに連れて行っちゃった。もう、本当にカミーユったら!
「ええ、ええ!もちろん。…もう帰っていいってメールしたわ。あら?カミーユから着信が6件も?何の用かしら?」
「セーラ姉さま、私が出るわ!カミーユったら、せっかくのバレンタインだったのに、ファとデートに行く予定も立ててなかったらしいの。サラとシドレからも後から叱ってもらわなきゃ!」
カミーユには言いたいことがたくさんあるわ!
何より、宣戦布告しなくっちゃ。貴方のお父様はいただくわって。
暗黒コミュニティの陰謀 編
気を付けろ!!!こいつらは手段を選ばない。女子供という立場を盾に仕掛けてくる。
立場を盾に外堀を埋め始める、どころか、同時に内堀も埋めている…大阪城かな??
カミーユはこの陰謀にうすうす気づいてても、手が出せない。暗黒コミュニティが完封してくる。マシューは物理的に完封させられている。なんでかって?セーラとマイネにとってマシューは弟だから。6年経っても弟か…まあ、そうだな。仕方ない。
頑張ったんだけど、評価は覆せなかった。地上軍のMS部隊に所属して、テロリスト鎮圧を主導するマシュー・ゼロ大尉として部下にも同僚にも大事にされている。つまり、軍でも弟みたいに可愛がられている。上司にブラン大佐がいる。
Q 公式カプなのに、なんでアドル×シドレ書かないんですか?
A 青春の輝き純情恋愛SSなんてもの、俺には書けないから!!!書いてる間に吸血鬼みたいに灰になって心が死ぬに決まってるだろ!!分かってくれ!!
無理だよ!コメディと陰謀のない恋愛は!!純愛は!!俺に!書けないの!!
そんな経験も想像も!!欠片もできないの!!悲しい生き物なの俺は!
そんな目で俺を見るな!!やめろ!
た…す…けて