機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
軍大学の寮にはメンタルヘルス対策室がある。
何故なら、必要だから。
いや、寮に入るまで知らんかったけど。軍に来たのも金がかからないからだし。医学部に来たのも、故郷の皆が世話になってる近所のババア医者が自称、「死にかけてる」からだし。
あの近所のババア医者、10年以上前からずっと死にかけババアを自称してるけど。軍で任官拒否するつもりもないからババアの後継者になるのはいつ頃か知らんけど。それまで、生きてっかな、あのクソババア。だって、任官拒否って後々面倒だし、信用にかかわるし、町医者していくにも資金って必要だし、医者としての経験ないと意味ないし。クソババア本人も勤め終わるまで帰ってくんなって言ったし。
なんにせよ、メンタルヘルス対策室に寮で隣室の友人カミーユを連行したのは、彼が患者だからだ。
カミーユは、1か月前くらいから急激にメンタルが不安定になった。理由は知ってる。ていうか、同期全員知ってる。かなりの大騒ぎだった。
カミーユは隠し事が下手、というか、そーゆーのを卑怯で下劣だと思い込んでる。別にそれは良い。どうでもいいという意味で。
それに彼のその信念は今回、僕ら医学生の役にも立ってる。
不調の原因が分かりやすいから。
カミーユの不調の原因は、彼の「父」が暗殺されかけたからだった。白昼堂々の出来事だったらしい。普通に夕飯時のテレビ報道で見た。ライブじゃなかったのがラッキーだった。錯乱して寮を飛び出しそうになったカミーユを止めたのは僕ら同期の拙い格闘術ではなく、彼の「父」は無事、というカミーユの知人からの連絡だったから。
それで、その日からカミーユは絶不調だ。ヤバメンタルと判断したら発見者がメンタルヘルス対策室に連行して、医療室の医者に連絡することになった。通報者はだいたい、僕かVだ。隣の部屋だし。
メンタルヘルス対策室は患者が好きな音楽がかけられる。精神の安定のために。でも、カミーユは音楽にこだわりがないらしい。テキトーな、というか僕が好きなアニメソング流してるけど文句もない。ていうか、文句つける気力もなさそう。15年前のキュアッキュアッな曲でも文句ないのはカミーユが元々、変人だからだろうなあ。Vは懐メロをかけてるらしい。ハードロックとヘビメタは禁止されていた。先輩方の「ご尽力」でできたルールらしい。
取り合えず、患者用の高級ふわふわ柔らか椅子に座ったカミーユに現在処方されてる抗不安薬と水を渡して飲んだのだけ確認したけど。だって、これでも医者志望してるし。医療室の医者がそうしろって言ったし。
でもなぁ、なんかこの部屋来てからカミーユは、うーうー唸っているし、目が据わってるし、睨んでくるし。
11年前の難民キャンプで野犬に襲われかけたときのことを思い出した。
一定の距離を保ちつつ、目を離さない。クソババアは藪医者だけども大切なことは教えてくれた。
大人の男なら、逃げ道の確保を忘れたら潔く戦って死ね、とも教えてくれた。クソババア。
てか、カミーユがうーうー唸ってるのは初めてかも。なんか喋りたいのかな。こいつ、テンションの上がり下がり激しいもんな。
そういう気分?まあ、無くはないか。人と話し過ぎて1人反省会する夜は誰にだってあるはず。先ほどのカミーユがお父さんとの通話してた様子を思い出した。
でもなぁ。こういうのって医者の仕事だしなぁ。
「別にぃ。こっちとしても無理に聞きたくないですし。というか自分、まだ医者じゃないんで。」
「………僕だって医者じゃない。」
うわっ、喋った!まだ抗不安薬の効き目が出る様な時間じゃないのに。
うわぁ…正気?正気のカミーユかな?え、これ会話できる、というかするべき?
お互い医者じゃないのに?
お互いコミュ障なのに?
「うぇ。吐きそう…。」
勘弁してよぉ。医者!医者は?どうしてまだ来てくれないの?
患者がいるのに医者はどこで何してるんだよ?もうこの際、クソババアでいいから早く来いよ!
やだよぉ、同じコミュ障オタでも、カミーユは機械オタMSオタだし。同じオタでも、ちょっと畑が違い過ぎて何でもない会話も難しいし。
つーか、カミーユってちょっと世間知らずだし。メッサーラ量産型のブロマイドすら取引できないネット初心者だし。授業も体力作りも真面目だけど、真面目過ぎてオーバーワーク気味だし。正直、僕と違う方向で周囲から浮いてるし。空気読めない会話してくるし。
でもなあ、カミーユは悪い奴じゃないんだよな、悪い奴じゃ。いや、それがどうしたって言われたら、それまでなんだけど。
でも、カミーユは悪人じゃないんだよなぁ。
友人だし。一応。これでも。
「……医学やめて、MSパイロットやるのはおススメしないけど。向いてないでしょ、医者よりも。」
だから、それだけは教えておこう。カミーユって兵士に向いてない。僕だってそれくらいわかる。
「正直、医者も向いてない、と自分は思うけど…性格が。」
あの時の野犬、じりじり距離を詰めてきた。今のカミーユとそっくりに。
野犬にヘッショをキメて助けてくれたクソババアもいないのに!
「献体の解剖のとき、まだ吐いてるの、もう自分とカミーユだけだし。注射針いれるの上手くできてないのはカミーユだけ、だけど。想定訓練のとき、トリアージの黒つける手が震えてたのも自分たちだけだし。時々、戦時の訓話、わざわざ聞き直して泣いてるのも隣室だから知ってるし。誤診の判定喰らった後、いつも以上にランニングしてたのも知ってるし。つーか、そこは普通に開くでしょ、教科書と論文。他の奴らも先輩も皆、そうしてたでしょ?何で走った?」
うーうー、唸りながら迫ってくるカミーユから目を離さないように、じりじり後ずさりしてドアを目指す。
「今はまだ、性格が向いてなくてもさぁ、このまま医者やった方が良いって。MSパイロットとか、やめとこーよ。だって極論、あれって兵士だよ。いや、MS好きなのは知ってるけど、憧れは憧れのままがいいって。お互いコミュ障で陰キャだけど、医者なら病院にある程度慣れたら看護師さんや事務員さんもコミュ障のカバーはしてくれるよ。つーか、もうお互い、医者しか選択肢なくない?MSパイロットより全然こっちが良いって。」
藪医者ババアのところには精神をやられた患者は集まってきてた。ババアは専門内科だったのに、病室と待合室は内科の患者よりそっちの患者が多かった。戦後、だったから。
カミーユの目はそっくりだ。目の前で家族を亡くして、どうしようもなく死にたくなってた患者たちにそっくりだ。クソババアが「楽に」してくれるって根も葉もない噂聞いて集まってた患者にそっくりだ。
まあ、あっちの患者よりまだ大人しい…わけないっ!
飛び掛かってくるカミーユを避けた。
「なんで避けるんだ!」
「何言ってるんだ、こいつ!」
ほんと、何言ってんだ、こいつ!飛び掛かられたら避けるでしょ!
「避けるな!シゲル!!」
「怖い怖い怖い。やだやだやだ!」
野犬に背中見せんなってクソババアにクソほど拳骨喰らったのに。悪い癖って抜けない、めっちゃ怖い。
部屋の中をドタバタ走り回っても、誰も来てくれないの?患者が、ここにいるじゃん!なら医者はどこ?
めっちゃヤバい患者じゃん!これ、拘束が必要なタイプの患者じゃん!
あっ。
ヤバい…!
「何してんの?シゲルもカミーユも。」
服の裾を掴まれた、後ろに転んだ、もう駄目だ!助けてババア!
身体のどこか、殴られるか、噛まれる!目ぇ抉られる!とっさに顔を庇う。だって、最悪の患者ってそういうもんだし!
ああ、また目まで、つむってしまった。またババアに拳骨喰らう!
「……何してんの?俺、邪魔ー?」
V、Vの声がする!
「た、助け、お助け!」
「カミーユ、泣いてるけど。俺が助けるのシゲルなの?どっちが患者?」
泣こうが喚こうが関係あるか!これだからシティ育ちのボンボンは!
拘束してでも治療しろよ!暴れる患者は殴って気絶させてでも治療するんだよ!常識人はいねーのかよ!
ババア!助けて!
「泣くなよ、カミーユ。薬飲んだか?……ああ、そう。水飲むか?…はい、水。シゲルの背中にこぼすなよ。」
うう、背中に野犬が張り付いてるのに…Vが助けてくれない。
「…ん?でさー、なんでシゲルの服つかんで泣いてるの?」
Vによると、僕の背中側の服を掴んでカミーユが泣いているらしい。うええ、怖い。
野犬の、涎たらたらの口から覗いていた牙と舌を思い出した。荒い息をして…浮いた肋骨もそれに合わせて動いてた。
「助け、て。」
「たいじょぶだいじょぶー、カミーユ泣いてるだけだから。」
僕も泣いてるけど!泣いて助け求めてますけど!
「てか、BGM変えて良い?懐メロ聞きたい。70年代の懐メロ好きなんだよなぁ。ああいうアップテンポのメロディ、めっちゃアガるよなー。……歌詞は意味わからんけど。」
キュアッ!助けてキュアッ!光のパワーで僕を助けて!
それか、お医者さん呼んで!大人の男の人、呼んできて!!
助けてババア!
馬鹿!馬鹿V!カミーユに背中向けるな!暢気にBGM変えてる場合か!患者に背中、見せるな!飛んでくるぞ!拳とかコップとか本とか椅子とか!常識だろ!噛まれたら感染症で入院だぞ!いきなり鋭いモノで刺してくるんだぞ!
野犬と一緒だ!
「あのさー、悪い知らせなんだけど。高速道路で、玉突き事故だって。20台以上。…うん。だからさー、先生たちも、この前の国家試験受かった先輩たちも出動しちゃった。…泣くなよ、カミーユ。……うん。10人以上死んじゃってるんだってー。」
「ううううううううううう!!!」
カミーユが唸り声をあげたのと同時に、掴まれた僕の服の後ろが強く引っ張られる。
ああ、死体食ってた野犬が、器用に口と牙と爪で服を引きはがしてたのを思い出しちゃった。
「ひぃぃぃひいいいぃぃ!!」
なんか、ヒヤッと冷たい空気が背中に当たってるぅ!あの、あの時の野犬が背中に居るぅ!!
「うんうん。俺らも早く国家試験、受かろうなー。」
「うううううう!!!」
いやぁ!助けて!服が、服が破られる!野犬が!
「なになに?つーかさー、椅子使わねえなら俺、座っていい?…駄目なの?なんで?……俺、水飲ませてあげたのに?…はあー、別にいいけど。でも今日、先生、来ないよー。だから俺、椅子座ってよくない?……誰も座ってねーじゃん。」
Vが深いため息を吐いた。
「別によくね?カミーユはお父さんと話せたんだろ?なら、なんで泣くの?」
「ううううううううううう!!!!」
「ひぃっ!」
やめろ!患者を刺激すんな!!授業でやったとこじゃん!患者が自発的に話し出すまで、刺激しない程度の会話に努めろって!患者のペース乱すなって!ただし、暴れる奴を除くって。
ここには馬鹿しかいないのか!!馬鹿の国か!
「ま、いーか。…んじゃ、俺、部屋帰るから。寮長には伝えておくわ。」
帰りやがった!本当に帰りやがった!!V!!あの野郎!
カミーユのひきつけを起こしたようなうめき声としゃくり声がする。すぐ後ろから、聞こえてくる。
やだなぁ、本当にやだ。こんなの、飽きるほど毎日聞いてた時期があるのに。…すっげえやだ。
「………ああ、あの。あの自分、逃げないから。服、そんな引っ張らないで、ほしいです。に、逃げない、から。ほんと、約束する。約束。」
良かった。服、引っ張られなくなった。まだ、後ろの裾握られてるけど。少し振り返るくらいはできるようになった。
良かった、背中に居るのは野犬じゃない。カミーユだ。野犬じゃない。
最悪の患者かもしれないけど。
でも、ああ、クソ。涙が止まんない。ほんと、マジ、野犬はクソだ。いつまでもいつまでも、怖くて恐ろしいからクソだ。
唸り声上げるし、涎は垂らすし、死体をあさるし、病気は持ってるし、人間より手強いし、群れで襲ってくるし。
ババアの息子さんは、…幼馴染のクーヤのお父さんは野犬に襲われて亡くなった。クーヤのお母さんは助かったけど狂犬病に感染してて…
野犬は本当にクソだ!
野犬がいる地域に難民キャンプを作るしかなかった大人たちはマジでマジでどうしようもなくクソだ。
気を付けろって言われてたのに、外に出るなって言われてたのに、難民キャンプの外で遊んでた子供たちは、僕とクーヤはもっともっと最悪にクソだ。
だから、僕は…医者になって、誰かを助けないと救われないんだ。ダメなんだよ。医者しか道が無いんだ。
だって、クーヤは配信動画で生きてくっていうから。
僕が医者になるしかないじゃないか!
カミーユが唸り声を上げなくなった。泣いてはいるけど。
よかった。唸り声が無いだけで、だいぶ気分が落ち着く。あとで、抗不安薬は飲むけど。
部屋の中はカミーユの泣く声と懐メロで満たされている。
懐メロだ。
コロニーが地球に落ちてくる前に流行してた曲ばかりだ。戦前の明るくて、それでいて不倫とか浮気とか男女の情念とかが歌詞に入ってて、もてない男としてはすごく憂鬱になる懐メロだ。馬鹿の国の歌詞だ。今の流行の曲とは違う。
僕が大好きなキュアッキュアッな曲でもない。愛と勇気に溢れてない。
愛と勇気だ。医者に必要なのは、愛と勇気だ。
僕とカミーユに必要なのは愛と勇気だ。キュアならそう言ってくれる。光のパワーを分けてくれる。
「医者になろうよ。カミーユ、一緒に医者になろう。そりゃ、お父さんのこと、心配だろうけど。お父さんだってカミーユの事、心配してたんだろ?親に心配かけたくて、思っても無いこと言っちゃうって自分もよくしますけど。そのたびに自分、まだまだ子供だなって思っちゃって鬱になるけど。でも、親に甘えて何が悪いんだよっても思うんだ。」
僕の両親は助かった。クソババアが助けてくれたから。
クソな話だ。本当にクソな話だ。ババアは、クーヤは家族を亡くしたのに、僕たち家族はババアのおかげで無事だった。クソッたれ!
「世の中、心の底から信じられるもんなんて、そんなにないよ。…でも、信じられる親が、甘えても許してくれる親や友人がいるなら甘えて良いじゃないか。自分はそう思う。」
「……え、エグザベさん、は…」
カミーユは泣いてて言葉が出てこないみたいだ。いいや、もう。僕はまだ、医者じゃないし。患者の話、遮っても。
「カミーユの話と報道でしか、自分は知らない人だけど。でも、カミーユの家族でお父さんなのはわかるよ。なんだかんだ言う奴もいるかもしれないけど、……いや、殺されかけてたけど。ジオニズム批判講演だって、共和国にはあの人以外、真面目に正面から出来る人が、やれる人がいないんだってタタン先輩も言ってたし。やれること、やるべきことをちゃんとやってくれてる人って分かるから、自分だって応援するよ。カミーユのお父さん、カミーユのために、まだ、あそこで戦ってるんだって分かるし。応援できるよ、地球に居たって頑張れって言える。」
こんなの慰めにもならない。無責任だ。
患者になら、絶対に言っちゃダメだろうな。
「……死んでほしくない、だって、…でも、僕は、エグザベさんのほかにも、皆にも、顔、知らない人、も、誰にも、もう、誰に、も死んで、死んでほしくない。」
「カミーユ、だから、僕らは、医者になろうよ。」
友人だから。医者じゃ言わないことを言うんだ。
キュアは愛と勇気を、クソババアは戦い方を教えてくれた。
「全員、世界中の全員、助けるなんてできないし。医者も。…でも、それでも命を助けようよ。泣いても吐いても、殴られても噛まれても、助けよう。医者になら、それができるんだ。…いうて、自分もカミーユも性格が向いてないんだろうけど。でも、ここまで来たんだから。自分たちだって大学にも受かったし、進級だってできたんだから。医者にだってなれるし、命を助けられるって。」
「……サラも、シドレも、…MSに乗るって、言ってて、テロリストと、戦うんだって。僕、僕が、むいてない、から。」
ちょっとムカつく。なんだ?こいつ?モテ自慢か?女の子の友達多いって自慢か?そりゃ、同期には女性もいるけど、いるけど!!その他に女友達もいるってか!
こいつ、マジ、デリカシーないな。モテない男代表シゲルにこーゆーこと言う?彼女のほかに女友達もいるって言う?自虐風自慢…………じゃないのは分かってる。
だって、カミーユはそーゆーやつだ。悪い奴じゃない。悪人じゃない。そこまで性格ひねくれてない。いや、それはそれでムカつくけど。
「何回か、聞いた。カミーユ、前に言ってた、つーか愚痴ってたじゃん。2人とも、パイロットの才能があるって皆に褒められて、それで2人とも彼氏?と好きな人?がMS乗りだから同じ進路に決めたって。女って不純だって、下心で動くなんて信じられないって。」
その後、カミーユはどうも、2人だけじゃない、知り合いの色々な女の人からやっつけられたらしい。戦艦やMS乗りの女の人って格別に気が強い上に恐ろしくってねちっこいって、知った。
つまり、カミーユが謝り倒して、二度と彼女らの進路の邪魔をしないと降参するまで、理詰めやら感情的な暴論やら論点ずらしやらで、ぐうの音も出ないくらいに殴り倒した。
「別にカミーユのことだけ考えてるわけないじゃん。女の子ってそんなもんだよ。看護師とか幼稚園の先生とかデパートの店員とか勧めたって…勧めてたけど女の子が聞いてくれるわけないよ。」
だって女の子だ。怖い。
めちゃくちゃ僕ら陰キャコミュ障なんかより気が強いし、男や敵を集団でボコることに躊躇なんかしてくれない。なんなら、多分きっと楽しんでる。そんで、都合悪くなったら先生や親や警察や弁護士やイケメン陽キャ彼氏だ。学級裁判の始まりだ。
カミーユはイケメン無罪枠だから知らないだろうけど、女の子とか女の人って怖い生物だ。だって同期の女子組が、この件でカミーユをつるし上げてないのは、カミーユが「観賞用イケメン」だからって知ってる。
「でもさ、きっとカミーユのお父さんはカミーユが本気でMSパイロットになるって言い出したら、何もかも放り出して止めに来てくれるんだろね。……でも、お父さんが、それしちゃったら、きっとまたテロリストがここぞとばかりに宇宙と地球で大暴れしだすんだ。カミーユもそれ分かるんでしょ。一応、曲がりなりにも、ここに受かったんだし。頭も悪くないんだから、それが分かっちゃって、にっちもさっちもいかなくて、イライラして泣いてるんだろ?」
人の感情を、こうやって他人が決めつけるって本当の本当に駄目でクソなんだけど、僕はまだ、医者じゃない。
カミーユも医者じゃない。
「だから、医者になろう。カミーユ。」
僕らが医者になったからって、何が変わるわけでもない。世界中の全員を助けられるわけじゃない。とんでもなく世界が幸福になることも無い。
カミーユのお父さんが命を狙われなくなるわけでもない。
クーヤのお父さんとお母さんが戻ってきてくれるわけじゃない。
野犬が怖くなくなる、なんてことも無い。
「医者になって、命を助けよう。たくさん、たくさん。」
上手く言えないけど、僕が陰キャだから。でも、医者になって、医者が増えて沢山の人達を助けられたら、患者と患者の家族や友人の笑顔を守ることができたなら。
「たくさんの人を助けることができたら、きっと、ちょっとだけ、ほんの少し、世界は自分たちコミュ障陰キャにも優しくなる、と思うよ。」
陰キャが、コミュ障が、こうやって勇気を振り絞って励ましたんだ。声をあげたんだ。だから、言い終わって恥ずかしくなって僕が振り向いたとき、カミーユはもう泣いてなかった。
泣いてなかったけど。
「僕は、コミュ障とか、陰キャとか、じゃ、ない。」
とんでもないことを言いやがった。
なんだ?こいつ。
カミーユとカミーユの新しい友達たちの小噺 編
えー、原作の方にバレて、怒られたらこの小噺は消します。バレませんように。
カミーユ…息子たちに甘すぎるカミーユの始まりはココから。エグザベさん他には散々甘やかしてもらったので、自分は息子たちに還元してるだけ、と思ってる。親は子供を愛して愛して愛して甘えてきたら甘やかしていい、と思ったらしい。息子たちがしっかり者のファに似てよかったな。
シゲル…ババアが「死ぬ死ぬ詐欺」仕掛けてきたので、この後、吐くほど勉強し続けて国家試験合格した。小児科内科に進んだ。自分、不器用なので。
V…シゲルとカミーユは舎弟だと思ってる同期。禁忌問題を踏み抜いて国家試験に2度落ちた。反社会性パーソナリティ障害っぽさが言動にある。割り切りも早いので最前線向きじゃなかろうか。
シドレ…死ぬなら恋人と同じ戦場で、という精神。戦う男を好きになったんだから私も戦う、と進路と覚悟を決めた。
アドル…可愛くていじらしい恋人ができた。どこまでもついてくるって言うから、シドレを守るためにも頑張ります!ヤザン隊長!訓練、お願いします!
サラ…好きになった男は決して逃すな。そう、孤児院の姉妹たちに教わってきた。女は度胸。パプテマス・シロッコの糟糠の妻に収まってやる、と意気込んでいる。
パプテマス・シロッコ…なんも知らん。サラは気が利くな、くらいしか思ってない。なんだかんだ、サラとシドレには軽いお説教くらいしかしない。2人に甘いので、サラに押し倒されるのは時間の問題。
エグザベ…厳冬期だったためカミーユに会いに行けるのは雪解けしてから。カミーユには土下座した。まあ、簡単に許してはもらえない。頑張れ。
地球環境のために人類は滅ぶべき?数を大幅に減らすべき?
そんな思想、知ったことか!!
医者は、医療は、命を救うために闘ってるんだ。昔も今も未来も。もちろん、他にもたくさんの職業が、人々が、命のために日々働いて、戦ってくれてるんだ。
だから、カミーユは外科医になるんですね。人の命を救うんですね。
という納得を俺が得るための小噺。