機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
ニュータイプ。その言葉と力に魅入られすぎて、己も他人も見失う無様を晒す下らない人々を、パプテマス・シロッコは木星で幾人も観た。
人の革新などという耳触りの良いだけの言葉に誘惑され、目の前の現実、人は品性を持つべきなのだという普遍の原理原則を忘れた、力の家畜どもを。
家畜になればどうなるか。人類が何故家畜を必要としてきたか、どう扱ってきたか、考えればわかる。使い潰され食い荒らされるだけだ。
その様を見て、人の革新、ニュータイプなどと指される事が、心底不快だった。家畜をニュータイプと言い換えてみせる程度のことしかしない品性のない人々が心底、不快だった。
この、パプテマス・シロッコを下らぬ連中の言うニュータイプという位置づけに落とす無礼者にはそれ相応の罰を与えてきた。
だが、地球圏に戻った時に、リック・ディアスと戦った時に、エグザベ・オリベと言葉を交わした時に、カミーユ・ビダンの才能を見た時に気づいた。あの無礼者共に毒されたパプテマス・シロッコがいる事に気づくことが出来た。
いつの間にか、力に惑わされているパプテマス・シロッコが居た。
力の家畜に、人類を導けるものか。
「私に、このパプテマスに地球の友ができたと言えば、貴様は私を嗤うか?」
ジュピトリスにあるパプテマス・シロッコのオフィスには副官がいる。当然、彼とは長い付き合いだ。物は分からないが、話の分かる人間で話をしていても苦痛はない。
「いいえ、古今東西、人を率いる指導者の周りにはそれを慕う人々が集まります。友情というものも、他者を慕う感情の一つでしょう。私のエゴではありますが、喜ばしい事のように思います。」
その答えに、満足を得た。
地球圏にはまだ、私の友になれるような人類がいる。いてくれた。
8年間も、離れていた地球圏。ジュピトリスでの長い航宙。そして木星。
木星を、生き残るのさえ過酷な場所で、今も人類の存続と発展の為に尽くす人類がいる場所を、想った。
4年も過ごした、あの星を。
良き人々ばかりではなかった。下らぬ人々ばかりではなかった。
地球圏も、同じだった。
ああ、そう言えばもう一つ、思い出したことがあった。大したことではないが、副官、ハイファンに打ち明けて困ることでもない。
「シャア・アズナブルとブライト・ノアと言う無礼者共もいたか。私は品性のない行為を好まない。」
副官は話の分かる人間だ。
そう、例えニュータイプであろうとオールドタイプであろうと、人々は分かり合える。その方法が人間それぞれが品性を持つと言う事だと、パプテマス・シロッコは認識しているのだ。
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ここ最近、ファと一緒にエグザベ中尉の部屋で勉強することが増えた。ファがアーガマに来てから、勉強のことをエグザベ中尉に相談したからだ。
中尉は気を利かせてくれて、ハイスクールのテキストや問題集、参考書なんかも取り寄せてくれて、僕とファが勉強するための時間も確保してくれた。……正直、訓練だけでも辛いのに、勉強まではやってられない、と僕は思った。言わなかったけど。
だから、正確には、勉強しているフリをしている、僕とファの2人して。エグザベさんは、書類仕事が多いからと自室のドアを開け放したまま、机に向かって唸ってばかり居るから、実は僕らが勉強してない事に気づいていないようだった。
お互い訓練や仕事で自由にできる時間はあまり取れないし、流石にこの年で部屋に2人きりになるのは、まぁ、他人の目も気になった、何もしてないけど。
僕はファの、彼女の事が心配で、手助けになる事は全部してあげたかった。ファも僕の事をずっと心配してくれていたのは、恥ずかしくて言わないけど、嬉しいと思った。だから、2人して静かに話しても放って置いてもらえる場所として、エグザベ中尉の部屋と勉強時間を選んだのだ。我ながら、いい選択をしたと思う。
「ねぇ、カミーユ、これ。」
ファが、そっと僕の腕を引っ張って情報タブレットを見せてくる。新聞を見るためのものだ。すごい近い距離で囁いてくるファの声にドキッとしながら、
「なんだよ、急に。」
とそれを覗いてみた。ゴシップ記事だ。女って奴は本当こういうの好きだよなぁ、と口にしたら引っ叩かれるような事を思うが、ギリギリで押し留めた。記事の内容がそれをさせてくれた。『英雄ブライト・ノア、二度目の不倫発覚?!』そう書かれていた。
慌てて、両手で口を塞いだ。ブライト艦長が不倫?しかも、2度目?!
僕だって、1度目の時の記事、読んだことないのに?
「うん?ああ、パプテマス・シロッコは、本当に周囲に慕われているんだな。彼も部下か誰かに会話を傍受させていたんだろう。」
エグザベ中尉は、僕とファにそのゴシップ記事を見せられてそう、言った。驚きもしない。
僕たちが勉強していなかったことにも、驚かなかった。
まさか、本当にブライト艦長には不倫癖があるんだろうか。いや、まさか。1年戦争の英雄なのに、そんな…
「随分と、各方面から苦情が出そうな記事を書かせたんだな。いや、カミーユ、違うよ。ブライト艦長の生活の方は僕も知らないけれど、パプテマス・シロッコの報復じゃないよ。パプテマス・シロッコなら、こういう手段は取らないよ。彼らしくない。そうだな?アーガマ級の戦艦でもって、こちらを叩きに来るか?いや、あんな無礼は歯牙にもかけないか。気高い人だからね。」
エグザべ中尉の正気をちらっと疑ったが、まぁ、でもパプテマス・シロッコは謝罪してくれた。全て許せるかと言えば違うけれど、それでも子供の僕に誠実に向き合ってくれた事を思えば納得もできた。
ファにもパプテマス・シロッコが謝罪してくれた時の事は話してある。許せはしないけど、と彼女は言ったが飲み込むしかないことも理解してくれた。ファは誰にでも優しいから。
だから、僕は彼女の助けになりたいと思ったのだ。
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ニュータイプ。それは1年戦争以来、自分自身と家族、そして戦友達を縛り続ける言葉だ。
あの時、1年戦争のア・バオア・クーで確かに私はニュータイプに希望を、未来を、友愛を感じた。それは確かな事だった。忘れられない、忘れたくない奇跡だった。
だが、7年たった今、自分、ブライト・ノアはこの言葉に息苦しさしか感じることができなくなっていた。この7年間、何をするにも自分にはニュータイプと言う言葉が付きまとっていた。
何気ない行動一つさえ意味を求められているような、いや実際、家族旅行で行った観光地で指さした先にたまたま月があったからと言って地球連邦軍への反抗的態度などとゴシップ誌に書かれたこともあったのだ。ただただ息苦しかった。
軍での立場もそうだ。1年戦争の栄光は、自分の功績は、ニュータイプに対する偏見の為に正統な評価をされていない、と感じていた。
何故、私が戦艦の艦長ではなく、コロニーと地球の直行便テンプテーションの艦長と言う面白みもやり甲斐も感じられない役職に居なければならないのか。
ティターンズの発足は、宇宙移民への虐待は、何故誰も止められなかったのか。
ニュータイプがいれば。…自分がいれば、アムロ・レイがいれば!
1年戦争。あの時、確かに輝いていた自分が、つまらない男を見る目でこちらを見ている気がずっと、していた。
「エグザベ中尉!君はニュータイプだったのか!」
エグザベ・オリベ中尉はアーガマに所属するMSパイロットだ。テンプテーションがシロッコのアンノウン1に追われていた所を助けてくれた恩人でもある。
しかし、その後のデブリーフィングで彼は言った。
「恐らくパプテマス・シロッコは、テンプテーションを護ってグラナダまで連れてきたんでしょう。」
その証拠として、彼はアンノウン1の戦闘記録を提出した。見れば分かる。
私は、ブライト・ノアはこんな事に気づきもしない程、衰えたのだ。
ニュータイプ、衰えた自分、過去の栄光。それが今の現実だ。残酷な現実だった。
『ガンダムMk-Ⅱ』
しかし、アーガマには、ガンダムがあった。あの時の栄光がまだ、あった。
己の衰えを突き付けられたデブリーフィングの後、直ぐにチャンスは与えられた。宇宙移民の希望であるニュータイプのブライト・ノアには、エゥーゴの旗艦となるアーガマの艦長の座が用意されたのだ。
ようやく、自分は正統な評価を得た。そう、まだその時は、思った。
ガンダムMk-Ⅱを、ガンダムを運用するアーガマの艦長に着いて、見事、地球連邦軍の総司令部があるジャブローを制圧して見せれば!
ティターンズを討伐して見せれば!
ジャブロー降下作戦が、エゥーゴ内部で検討され続けたまま放置されていることを知ったのだ。クワトロ大尉が教えてくれた。
ガンダムもある。ニュータイプもいる。ティターンズを討伐するという大義もある。正義があるのだ。
躊躇する理由は何もないと思った。
しかし、全艦ブリーフィングで、クワトロ大尉以外の賛成は得られなかった。勝算はない、と彼以外全艦載員が認識していた。
ガンダムがあるのに?ニュータイプが居るのに?
テンプテーションを追い回したように見せグラナダまで守ったシロッコは、ニュータイプのブライト艦長ではなく、リック・ディアスのエグザベ・オリベ中尉を指名し、会談を申し込んできた。
屈辱を感じた。ニュータイプの私ではなく、ただのパイロットの彼を?
エグザベ・オリベ中尉はニュータイプなのか?
その質問は微笑んではぐらかされた。エグザべ中尉はガンダムMk-Ⅱのパイロット、ニュータイプのカミーユ・ビダンの保護者をしている。
カミーユ・ビダンの戦闘の才能を、恐らく撃墜王にもなれ、アムロ・レイの戦果さえ上回るような才能を発揮する機会を握りつぶしてもいた。
過保護が過ぎると感じていた。クワトロ大尉も同意見だった。
アーガマの艦長に着任してから何度か、クワトロ大尉の直属の部下にカミーユを配置転換をしようとした。大尉なら彼の才能を戦場で伸ばしてくれると思えたからだ。
強い、『ガンダム』を望んだ。
カミーユの配置転換が出来なかったのは人事課からの苦情が入ったからだ。憲兵さえ来た。軍隊内の警察が事情を聞きに来た。
カウンセリングと休養を勧められるだけで済んだのは、恐らく、それこそ、ニュータイプの、1年戦争の功績のためだった。
ニュータイプに縛られている己を、自縛自縄になっている自分をようやく知った。
しばらくは、アーガマの出航は無いとデッキクルーに伝えられてから記憶はない。気づけば2日、経っていた。
その間、私はただ艦長室で泣いて過ごしていたようだった。
ブライト・ノア。お前は愚かな間違いをした。覆しようのない愚かな間違いを。
子供を戦場に送り、それを己の手柄にしようなど、戦友を、アムロ・レイを、ニュータイプを、お前は道具扱いしたのだ。戦争の道具に。己の名誉と出世のための道具に。
宇宙移民の為などという耳触りの良い言葉を盾に、お前は子供を兵器にしようとしたのだ、子供を人殺しにしようとしたのだ!!ブライト・ノア!!
償いようのない罪だった。
カミーユ・ビダン。彼はまだ子供だ。
そうだよ!あの頃のアムロ・レイと同じ、子供じゃないか!
彼はティターンズに命を狙われていて、アーガマ以外に安全な居場所を失ってしまった悲しい子供だ!
ハサウェイとチェーミンを思った。お前は自分の子供を、戦場に送れるのか!
ハサウェイとチェーミンに!人を殺せ、と命じることができるのか!
あの、私とミライの大事な子供たちに、私を愛してくれる子供たちに、戦場で苦しめ、などと言えるのか!
自分の罪に、泣くしか出来なかった。
ブライト休養編
大丈夫そう?これ?書いてて辛かった。本当にブライト視点が辛かった。
なんでブライトこんなに苦しんでるんだ??
え?ここから回復を?!もちろん回復してもらう。してもらった。
Zガンダム本編を見ると小型輸送船は冷遇と言うほど冷遇ではないかなとは思った。
仕方ないとは言え、民間人の子供をガンダム乗せて戦わせてたホワイトベースの艦長だし。
それに、多分ブライト、佐官教育まともに受けてなさそう……いや、ブライトだけじゃなく、Zガンダム本編に出てくる人物、大体が正規教育課程を受けてない感じはある。
英雄という名誉職として『大佐』の地位をもらった感じはある。
子供2人いるのなら、戦艦の艦長より忙しくない小型輸送船の艦長は、逆に嬉しくないか???子供と過ごせる時間が増えるのに、なんでブライトが不満気なのか、俺にはよくわからない。給与???ミライさんの実家の収入に比べたら、ちりあくたのような誤差じゃないか?
殴られるシーン?ほらだって、相手がティターンズだし。バスクだし。
カミーユを殴るシーン?いや、自分が殴られてここまできたからって、部下(子供の民間人)殴るのはルールで禁止ですよね?後玉食らいたいのか???