機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
1か月と5日後、アクシズ戦争で食らった怪我も癒え、退院後の休暇もなく丸10日書類仕事に従事させられ、ジオン共和国に戻ることも無く、再びヴェルザンディのドゴス・ギアの直掩任務に配属された僕を待っていたのはギャン部隊とパプテマス・シロッコからの無謀な提案だった。
僕の入院中にヴェルザンディに派遣されてきたギャン部隊の面々、マリアやエリフ、カルティクやカント、イマニュエル伍長をはじめとする整備士たちに手荒い歓迎を受けた後に、僕はパプテマス・シロッコの個室に呼び出されて、その無謀な提案を聞かされた。
呼び出されたのは艦長室ではない。
必要最低限の私物しか置いてない彼の個室の小さなデスクで、頭を突き合わせるようにして僕らは話をしている。
まあ、確かに、こんな無謀な提案は極秘扱いにして当然だ。
僕は親友の、MS開発の技術者であるパプテマス・シロッコに無謀な提案をされた。
「メッサーラを?僕に?」
メッサーラ。それはパプテマス・シロッコが乗っていたあの「アンノウン1」のことだ。法律上の扱いはMSへの可変機構のついたMAという分類になるらしい。
まあ、僕はMA操縦免許を持っているから、操縦ができないわけではないけれど。
「正確には、量産に向けて私自らが改修したメッサーラ量産型試作機だ。私やジュピトリスが、お前にメッサーラを与える理由の半分はお前自身にある、エグザベ。お前が、いつまでもリック・ディアスなんぞに乗っていたからだ。あの時の責任を取ってもらおう。」
大分、昔の話じゃないか!カミーユにガンダムMK-Ⅱの訓練を付け始めていた頃だ。半年以上は前の話だ。
それにギャン改-Ⅱは僕だってあの後直ぐにジオン共和国軍に要求していた。ズムシティの案山子に使うからって、断られていただけで好きでリック・ディアスに乗り続けていたわけでもない。
「今更、そんなこと言われても困るよ。そもそも、僕は共和国軍の人間だから、乗る資格が…いや、許可が下りてるのなら、乗りたいよ。初めて見たときから、乗ってみたいと思ってた。」
それは本音だ。あんなに機動性に優れ且つ手数が多いMAは魅力的だった。
それに、僕のギャン改‐Ⅱはアクシズ戦争の時に失われてしまっていて、共和国軍から一時的に与えられた機体は完全に新品の未調整ギャン改-Ⅱだ。この共和国軍の措置には、僕だって色々思うところはある。特に電気ショック機能を除去していない件については陳情書を入院してから既に10枚は書いた。
リック・ディアスも悪い機体ではない。汎用性は高い。エゥーゴでは人気がある機体だった。
ガンダムMK-Ⅱと同じくガンダムの、後継機の1つだった。開発体系としてはそうなる、らしい。
1年戦争後にアナハイムエレクトロニクスに引き抜かれたジオンMS開発者により作られたガンダム。それがリック・ディアスだった。
全周天モニターはあるし、操縦系統はガンダムとドムのそれを融合させたものでもあったけど直感的に動かしやすい配置になっていた。特に高い耐G機能を持つリニアシートはギャン改-Ⅱにも欲しかった。
武装だって流石はアナハイムエレクトロニクス製だ。マラサイやハイザックの武装もそのまま流用できた。開発元が同じで、規格が同じだからだ。
僕がそのリック・ディアスの操縦に熟練していなかったから、あの時パプテマス・シロッコの全力を引き出せなかったのは分かる。
いやでも、仮にそれができていたら、メッサーラのビームライフルでリック・ディアスは大破していただろう。
それくらいメッサーラは機体の性能が段違いだった。
「私の名と機体の名を間違えたのは、世界でお前だけだ。」
その言葉に、今日のパプテマス・シロッコは機嫌が悪いんだな、と悟った。
そもそも、彼は仕事を引き受けすぎだ。軍内部と木星船団公社の政争にも巻き込まれているうえに、アクシズ戦争の後始末も共和国軍との折衝も引き受けている。
どれもパプテマス・シロッコでなければできない仕事ではあるんだけれど。
地球連邦軍は多忙すぎる。人類の生存圏は木星まで広がっている。それなのに1年戦争のせいで…
不機嫌なパプテマス・シロッコから紙の資料を渡された。わざわざ印刷してくれたのか。
「あれは…僕が機体の名前だって間違えたのは、君の、…いや、タイミングの問題だった、と思う。パプテマス・シロッコ。僕だけのせいじゃない。」
睨まれて言い直したけれど、あのタイミングで好戦的な敵から告げられるなら普通に機体の名前だって他の皆も、ヤザン大尉もエマ中尉もアポリー中尉もマリアも思うんじゃないかな?
そんなことを頭の隅で考えながら渡された書類をたしかめると、メッサーラ量産型試作機PMX-001のテストパイロットに関係する許可申請書だった。
「ちょっと、待ってくれ。パプテマス・シロッコ、書類がおかしいよ。テストパイロットの名前が、全部、アドル・ゼノに……確認のサインまで入ってる!このままだと、偽造書類になる。アドル曹長まで巻き込むのはすごく拙い。彼の進退にも関わる。」
僕の指摘にパプテマス・シロッコは面白くもなさそうに片眉だけあげて見せた。アドル曹長は真面目だから簡単に言いくるめたんだろうけど、流石に書類の偽造は拙い。
「ならば、自分で作り直すのだな。地球連邦軍ヴェルザンディ所属エグザベ・オリベ中尉の名で。」
無茶を言う。
「許可が下りなかったのなら、どうして僕に話を持ってきたんだ?君らしくないよ、パプテマス・シロッコ。」
焦っているのか?パプテマス・シロッコともあろうものがどうして?
苦々しい顔までしている。珍しい。僕しかいないからだろうけれど、でも本当に彼らしくない。
僕の疑問にパプテマス・シロッコはすぐに答えてくれる。
「連邦軍のコンペティションが近い。機種変換の訓練期間も満足にとれない。旧アナハイムエレクトロニクス系列や連邦製のMS、つまり競合MSには豊富なテストパイロットや実戦データがあるが……私でも、どうしようもないことがある。しかし、私のメッサーラが今回のコンペティションを勝ち取らねば、連邦軍のMSとMAの製造技術は50年は停滞することになるだろう。形振りかまっていられるものか。私はヤザンの名を借りた。」
そう言ってパプテマス・シロッコはもう一式の書類を渡してくる。
つまり、メッサーラの開発設計者であるパプテマス・シロッコと対メッサーラの戦闘を想定していた僕とで、ヤザン大尉とアドル曹長になり代わって模擬戦闘とデータ収集をしようという話だ。無茶が過ぎる。
なんでヤザンはパプテマス・シロッコの無謀を止めてくれなかったんだろうか。
いや、理由は分かっているけれど。ヤザンはパプテマス・シロッコに甘いところがある。彼は年上だしパプテマス・シロッコがヤザンに甘いからだ。彼のハンブラビはパプテマス・シロッコ直々に調整されることさえある。改修についてもヤザンの意見が積極的に採用されている。羨ましい。
確かにヤザンならパプテマス・シロッコに簡単に名前を貸すし、部下のアドル曹長にもそうさせるだろう。
「僕だって訓練期間は必要だよ。…いや、君の操縦するメッサーラの動きは覚えているから慣れたら再現もできるだろうけれど。でも、だからと言って、これは…駄目だよ。一線を越えている。」
再現ができるのは、僕がメッサーラとの戦闘をすべて覚えているからだ。あの戦闘の後、僕がリック・ディアスでメッサーラに対応することがエゥーゴで決定してしまった。だから、僕はできるだけの対抗手段を練った。つまり、あの10分にも満たない戦闘を何度も繰り返し『見た』し、シミュレーションルームでも再現したメッサーラと戦闘をしていた。
メッサーラ量産型も動きの基本がメッサーラと同じならば、再現だってしてみせる。
「この私とて、私らしくないことをしているのは分かっている。しかし、コンペティションに実戦データが必要などと、ふざけたことを言われればこうもなる。コンペティションを取っていないMSやMAにどうして実戦データがあるものか。」
確かに、制式採用されない機体が活躍できる戦場なんて、機会なんて滅多にあるわけがない。軍が運用許可を出していない機体が戦場に出たのはそれこそアクシズ戦争くらいの大規模戦闘になる。
そのアクシズ戦争でだって、マラサイやリック・ディアスを連邦軍は出したくて出したわけでもない。数を揃えることを優先したから出したのだ。
仕方なく、そうした。
実態は試験的投入とさえ言い難い。アナハイムエレクトロニクスの影がちらついていた。
まあ、試験的投入といえばジュピトリス製のモビルスーツもそうなんだけど。ヴェルザンディの宇宙軍司令がドゴス・ギアの艦長パプテマス・シロッコで開発設計者だから。
いや、それでもパプテマス・シロッコの持つ権限のギリギリ少し向こうになるんだけど、旧アナハイムエレクトロニクスよりはまだ情状酌量の余地がある、と僕も思う。なんせ連邦軍の管理下にある許可を得てジュピトリスで製造されていた。
「…旧アナハイムエレクトロニクスがエゥーゴにもティターンズにもMSを提供していた理由は、これか。連邦軍の次世代制式MSに採用されれば長期的には元が取れる、とでも考えたのかな?ルナリアンらしい。」
エゥーゴのリック・ディアスもティターンズのマラサイもどちらもアナハイムエレクトロニクス製のMSだった。相争う両組織にMSを提供し、コンペに必要なデータ収集を行っていたのだろう。あるいはコンペに間に合わせるために、相争わせるよう図ったのかもしれない。
そのあたりは、憲兵が調査をしているのだろうけれど。念のためにヌー曹長かラオ曹長あたりに聞いておくかな?僕が疎い分野だ。
「酷い癒着だ。軍の統制を引き締めねばならん。」
パプテマス・シロッコの言う通りだ。旧アナハイムエレクトロニクスと軍との癒着が無ければこんな無茶苦茶な採用基準を設定する暴挙に出れはしない。連邦軍の装備庁と連邦政府の財務省にも協力者がいるはずだ。
「それはそうだけど。…軍の統制をだすのなら、まず僕をテストパイロットにしたら駄目だ、パプテマス・シロッコ。ジオン共和国軍の、それも中尉でしかない僕なんかに任せちゃ駄目だよ。君だって、もうヴェルザンディのトップでドゴス・ギアの艦長だ。テストパイロットをしていい立場じゃない。」
当然だが、統制を引き締める側が偽造書類なんか使ってはいけない。自ら失点を作るような真似は、敵に足元を掬われるような真似は避けなければならない。
誰にもバレないような隠し事なんてないのだから。
それを僕は知っているつもりだ。教えてもらった。
『四知。天知る、地知る、我知る、子知る。』
…アイツの口癖だ。カミュの奴と一緒に、誰かに何らかの悪事か嫌がらせをした後にわざわざ僕に言いに来た。それで知っている。カミュが、いや、カミュ達が何をしてたのかは知らないけれど、あいつら全員、絶対に、確実に、何か悪事に手を出していた。確信がある。
僕が知ろうとしなかったのは勉強や部活とかに忙しかったのもあるけれど、まさにアイツの四知の忠告があったからだ。カミュの悪事の内容を知れば、僕はカミュに加担するしかなくなる。カミュの味方でいたくなる。だけど、その行く末に僕からカミュたちの悪事が漏れるのは簡単に想像できた。
僕にそういうことは向いていない。それをカミュではなくアイツから忠告され続けていた。『僕は知るな、調べるな』と。
その割にコミュニケーションサークル事件の時は手を抜いてスリルを楽しみやがって…
とにかく!悪事は新たな敵と癒着と弱点を生み出すだけだ。せっかく引き締めた統制だって緩くなる。
「ルウムのカミーユの言われるがまま動いたのがエグザベ、お前だ。私には流されないつもりか?」
「それは!…あいつの性格が悪いからだよ。」
カミュの性格の悪さについては、パプテマス・シロッコには悪いけど僕の方が詳しい。カミュも僕を手玉に取る方法に詳しい。僕がカミュの言うまま流されるのも当然だ、と思う。
パプテマス・シロッコは不機嫌そうに僕を睨んでくるけど、とてもじゃないがカミュの性格の悪辣さと狡猾さと質の悪さには及ばない。
というか、カミュと比べること自体がパプテマス・シロッコに失礼だ。
パプテマス・シロッコには正道がよく似合う。僕とパプテマス・シロッコには正道が性にあっている。
「君には正道がよく似合うよ、パプテマス・シロッコ。」
正直にそう言った。
メッサーラ量産型ってどこで生産すればいいんだろうか?編
俺営業職したことないからわかんなくてわかんなくてずぅっとスランプ。
とりあえず載せていくスタイルに切り替えようかなと思いつつこれ、どこで終わらせればいいねん音頭。
世の中余裕のある生産ラインなんてないし暇な工場もなし。でジュピトリスの工場もZのアニメ見る限り大規模生産には向いてなさそう…
じゃあどこでメッサーラ量産すればいいんですか?ジオン共和国で?御冗談を!
ジオン共和国で生産なんかしたらあっという間にジオン残党にデータと機体が流れるに100億円賭けていい。
それで、アナハイムエレクトロニクスはコンペ意識してたと思うんですよ。普通、試験的運用から始めるもんですけど、アニメだとすっ飛ばして実戦投入しているような…。勘違いかな?エゥーゴのリック・ディアスも百式もアナハイムエレクトロニクス製品で、ティターンズのハイザックもマラサイもアナハイムエレクトロニクス製…
あの、グリプス戦役ってもしかして、アナハイムエレクトロニクスによる盛大な自社MSコマーシャルの一環だったのでは……(真夏の怖い話)