機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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友の話をしよう。

君の友の話を。私の友の話を。

今会える友の話を。もう会えない友の話を。

君にもいるはずだ。大切な友が。

君にもいたはずだ。忘れられない友が。

友の話をしよう。




 

アムロ大尉が帰って行ったあと、ファさんに叱られていたカミーユは拗ねた顔をしている。

他人の話に割って入るのは、マナーがなっていない、と言われて、顔をむくれさせもした。

 

「わかったよ!ファ。俺が悪いんだろ!」

 

「そんないじけて見せたって、駄目よ。カミーユ!カミーユには何でもないことかもだけれど!知らない人に住所知られてるって怖いことなんだから!分かってるの?カミーユ!」

 

「住所までは知らないさ!シャイアンに住んでたのを知ってたのも俺じゃなくて、エマ中尉なんだぜ!」

 

そこが、僕にとってよくわからないところだった。シャイアン?聞いたことのない地名だ。それに、エマ中尉がどうしてアムロ大尉の居住地を知っているのか?今まで、噂にも上がったことのない地名なのに。

 

「カミーユ。ファさん。先に2人の勉強時間に割り込んだのは僕とアムロ大尉の方だよ。済まなかった。」

 

「エグザベ中尉さんはそうやって、カミーユを甘やかすんです?」

 

「甘やかしてるつもりはないよ。本当のことだ。…いずれ、2人にはしっかり話をしておかないといけないとは思っていたんだ。アムロ大尉の立場の事なんかを。」

 

そう、カミーユは公言こそしていないが、『ニュータイプ』と一般に言われるはずだ。他者からそう見做される。その恐ろしさについて、教えておかなければならない。僕が分かる範囲だけでも。

 

「カミーユには前に話したね。公国軍の残党がアムロ大尉に賞金が懸けていることを。」

 

「戦争なんて、もう終わってるはずでしょ!なんで、そんな酷いこと!」

 

ファさんの言うことはもっともだ。

 

「…戦争中、賞金を懸けられるエースは地球連邦軍にもジオン公国軍にもいたからね。その延長だと考えているんだろう。まだ、戦争が終わっていないと考えている人たちはたくさんいるんだよ。悲しいけれど。」

 

そう、実際、4年前にコロニーが地球へ落ちた。落とされたのだ。機密だから言えないけれど。

 

「アムロ大尉は、あの1年戦争の時からずっと賞金が懸けられたままだ。居住地の情報だけで10年は遊んで暮らせる。連邦軍人には、誘拐されて拷問された人も…冗談でも、昔話でもなく、現実にアムロ大尉は危険な立場にあるんだ。」

 

2人を怖がらせたくはないが、危険は教えなければならなかった。

 

「でも、アムロ大尉は監禁されていたって。監視されてたって言ってましたよ。」

 

カミーユが言う。

 

「……そうだな。監視、に監禁。だけど、ブライト艦長の家族と面識があるようだったし、他のホワイトベースクルーとも会えている。ちょっとよくわからない。…エマ中尉も会ってたんだっけ?カミーユ。」

 

「ええ、エグザベ中尉がアーガマに来る前に聞きました。シャイアンで不思議な青年に会ったって話してくれました。わざわざ大きな屋敷から出て来てまで助けてくれたって。使用人や業者にさせればいいのに、自分で車を修理してくれた不思議な青年だったって。…そっか、エマ中尉はシャアに会うまで、アムロ大尉だって気づいてなかった。」

 

シャアに会うまでアムロ大尉だと気づかなかった、というエマ中尉の表現が気になる。

かつて、アムロ大尉は何らかの事情で居住地近くにいたエマ中尉を助け、名乗らずに去ったのか。

だけれど、エマ中尉はクワトロ・バジーナ大尉に出会い、それがアムロ大尉だったと分かった。

 

ホワイトベースの後継艦アーガマ、ガンダム、ブライト艦長、ニュータイプ、少年兵…このエゥーゴにはアムロ大尉を想起させるものが多すぎる。

 

「僕がニュータイプ、だから。僕が、アムロ大尉のように成れるように、話してくれたんだ。アムロ大尉のように成れって。いや、エマ中尉だけじゃなかった。ブレックス准将もヘンケン艦長もクワトロ大尉も、皆がアムロ・レイに成れる、成るべきだって。…でも、エグザベ中尉、エグザべさん。僕は賞金なんか、懸けられたくないです。ファだって居てくれるのに。そんな。」

 

「当たり前だよ。誰だってそうだ。大丈夫だよ、カミーユ。君は、アムロ・レイにならなくていい。僕がカミーユをアムロ・レイにはさせないよ。」

 

そう、もう二度と戦争を起こさせないために、僕がいる。軍人はいるんだ。

 

子供を戦場へ送らないために、大人がいる。

 

子供に過ちを繰り返させないために。

 

「ニュータイプの話をしようか。カミーユ、ファさん。地球連邦軍の大きな失敗の話だ。」

 

アムロ・レイは、いやホワイトベースのクルーたちは戦争後、マスコミの前でニュータイプを公言した。自分たちがジオン・ズム・ダイクンの提唱したニュータイプである、と言った。ジオニズムを支持した、と思われても仕方ない発言だった。連邦軍の広報部は何故止めなかったのか、諫めなかったのか。

 

その結果が、ニュータイプの少年兵、か。

 

いや、結果が見えていたからこそ、あれ以上の混乱を避けるために、アムロ大尉の監視と護衛を強めたのかもしれない。状況の説明や相互理解の時間を設けなかった理由は、本当の本当に分からないけれど。

 

「地球連邦軍がニュータイプを躍起になって否定している現状を嫌う人もたくさんいる。特殊撮影だとか、トリックビデオだとか。でもね、考えてほしい。僕がアムロ大尉に言ったことを思い出してほしい。人間って、意外と思い通りに動いていないんだよ。動けないのが当たり前なんだ。…ニュータイプだって同じなんだよ。人間だから、ね。手の届く範囲でしか動けない。」

 

カミーユもファさんも真剣に聞いてくれている。

 

「でも、世の中には、ニュータイプに変な期待をかける人たちが沢山いるんだ。人類を導けだとか、世界を平和にだとか、人類を高次元の存在へだとか。よく分からないことを勝手に求めてくる人達がいる。……カミーユがMSパイロットにされたのもそうだ。勝手な期待だ。他人に求めてはいけない期待だ。でも、ニュータイプを公言してしまうと、そうあることを他人に、見知らぬ人たちに求められてしまうんだ。全員、殴り飛ばせればいいんだけどね。」

 

現実は、そうできない。僕が身をもって知っている。

 

「ニュータイプであることを、誰かの理想のニュータイプであることを他人に求められても、応えてはいけないよ。決して応えられはしないし、ただ使い捨ての道具になるだけだ。ニュータイプであることも知らない人に対して認めてはいけない。利用しようと思う人間を生み出してしまうから。」

 

アムロ大尉がそう、だ。ニュータイプであると認め、誰かの期待に応えようとした。だから、ニュータイプを公言した。かつてのアムロ・レイは人類全てを導くニュータイプであろう、としていた。

 

ニュータイプならばできることだ、と思っていたのだろう。

 

ニュータイプが生まれる前から、幾人もの人間が試し、失敗してきたことを。

 

ニュータイプであろうとなかろうと手の届く範囲は、変わりはしない。

 

過ちを繰り返さないために、カミーユとファさんには、それをまず知っておいてほしかった。

 

 

 

 

 

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ティターンズの総帥であるジャミトフ・ハイマン及びバスク・オム、彼らの機嫌を伺うだけの害虫ジャマイカン・ダニンカンは必ずこの世から消えてもらう。そうでなければ、この私、パプテマス・シロッコがわざわざ木星から帰ってきた甲斐もないというものだ。

 

「月面都市フォン・ブラウンを制圧しティターンズの軍事基地とする。増長をはじめたエゥーゴに対する威圧にもなる。」

 

全く無意味な作戦内容をジャマイカンは、この私に言った。

フォン・ブラウンはルナリアンの首都のようなものだ。信用に値しないルナリアン共の巣窟を手中に収めても火傷をするだけだと、何故わからん。

 

大方、バスクがエゥーゴに復讐心を抱いたのだろう。

奴が監督しているグリーン・ノアの軍事基地化は進み、今、かつてそう呼ばれたコロニーは2分割された。グリプスとグリプス2だ。バスクを嫌うティターンズも政府関係者も多いと言うのによく強行したもの事だ。

グリーン・ノアに住んでいた住民は財産を奪われ、再度、地球上で難民と化している。

ティターンズを支持していた地球連邦政府の関係者も苦情をジャミトフに言っているようだが、バスクは制御されていない。バスクは己のエゴと復讐心に囚われて、暴走している。

 

そこまでバスク・オムは追い詰められている。

 

「バスクミーム。人の悪意の行き着く先がこれか。」

 

まさか、あのバスクミームで、奴の権勢が、権威が薄れたとでも思ったのか?フォン・ブラウン市制圧で取り返せると?馬鹿馬鹿しい話だ。

それに巻き込まれる私の労苦と対価が合わない。

 

「私に時間を浪費させるのか?このパプテマス・シロッコにそれをさせるだけの価値が、フォン・ブラウンにあるとでも?」

 

あるわけがない。ルナリアンの都市だ。利己的で、根拠のない自尊心に満ち溢れた、他人を見下すしか出来ない信用に値しない人間の都市など、捨て置くのが一番正しい。

 

しかし、ジャミトフ・ハイマンは地球連邦軍の大将の位にある。バスクやジャマイカンなど無価値な連中とは違う。政治闘争にしか目を向けない無能な働き者だが、大将だ。

 

このパプテマス・シロッコの働き次第ではこのジュピトリス、ひいては木星にさえ正当な報酬を与えることが可能だ。今なら、ジャマイカンを誑かして、ジャミトフにそれを確約させることもできる。ティターンズが、このパプテマス・シロッコの力を欲している今ならば、できる。

地球連邦軍の大将はそれだけの地位と権限がある。

 

ジュピトリスと木星を想う。人類の存続と発展の為にある前線を想う。私が大将であるならば、手が届く、あの惑星を想った。

 

 

 

 

 

 

ジャマイカンのフォン・ブラウン市制圧作戦への参加要請を承諾すれば、直ぐにティターンズから1隻の戦艦が与えられた。地球連邦軍の最新鋭の艦。ドゴス・ギア。

 

贅沢な事だ。戦争の為ならばこれが出来るのか。ジャミトフ、無能な働き者め。人類の貴重な資源を喰い荒らす害虫が。

 

「この私、パプテマス・シロッコが参戦しようと言うのだ。その意味、分からぬとは言わせない。」

 

ジュピトリスに報いない地球連邦のティターンズに、パプテマス・シロッコが名を連ねる、それは貴様らに対する宣戦布告だ。そういう意味だ。

貴様らには人類のために消えてもらう。

 

私の怒りを更に募らせたものがドゴス・ギアにはあった。シドレ曹長とサラ曹長。まだ15歳の2人の少女は徴兵されてきたばかりのニュータイプだった。

 

 

 

 

 

 

「今作戦が初陣で、短期教育課程しか修了していない。それをモビルスーツの動きで一目で分かる程度にしか、訓練も行われていない。」

 

友を、エグザベを想った。お前の困難を、私も知る事になるとは。

 

ジオン共和国、その前身のジオン公国は少年兵を使って時間稼ぎを行い、それを全滅させ、敗戦した。当然の結果だ。

だが、地球連邦軍は成功してしまった。アムロ・レイ、そしてホワイトベースの成功が、パプテマス・シロッコとエグザベ・オリベ、私とお前を苦しめるのならば、いっそ敗戦していたほうが良かった。

 

ホワイトベースなど全滅していれば。

 

私を笑え、エグザベ・オリベ。私には少女2人を戦艦から降ろすだけの力もない。

 

私を笑え、友よ。

 

 

 

 

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本当は、エゥーゴの戦力を今はグリプスと呼ばれる、グリーン・ノア周辺に向けたかった。エグザベ『中尉』ではできない事だが。

 

グリーン・ノア周辺にティターンズが強固な防衛施設を築いている。民間船の航行ですら制限される有様だ。

デッキクルーや今だ病に臥せっているブライト艦長、経験豊かなパイロット達や新設だが仕事熱心な情報部も意見が一致している。バスク・オムは、恐らくソーラレイを作っている。一年戦争で、本来戦後を担うべき数多の地球連邦軍の将校たちを戦死させたコロニーを利用した兵器。

 

完成まで時間は掛かるだろうが、見逃していいわけがない。しかし、

 

「フォン・ブラウン市に今頃、侵攻を?」

 

アポリー中尉が、呆れた顔で僕に問いただしてくる。僕だって、3回くらい事実かどうか情報部と観測班に問いただしたから、アポリー中尉のことを悪くは言えない。

 

そう、今頃になって、ようやくティターンズが動き始めていた。

 

いや、今だからか?エゥーゴを月に釘付けにして時間稼ぎをするのであれば、最善とは言えないが悪くはない。だけど、月面都市だ。一応、程度には地球連邦に所属している都市だ。独立都市ではない。もちろん、ジオン共和国でもない。

 

「地球連邦の都市を仮にも連邦軍のティターンズが、武力行使して制圧するんですか?」

 

エマ中尉も驚きを隠せずにいる。

 

今、行っているのはブリーフィング前のブリーフィングだ。まぁ、本当ならこんな事しなくて良いのだが、モビルスーツパイロットだけでも、戦術方針を定めておかなければ。

 

戦場の風とか空気とか、言われても困るのだ。

 

「情報部と観測班が言うには、フォン・ブラウン宙域に向けて10隻の戦艦が進攻中らしい。」

 

ロベルト中尉が困った顔でいう。彼は表情豊かな人間で、話してみると社交的な人物だった。

 

ブリーフィングには、ロベルト中尉もアポリー中尉もよく参加してくれるようになった。新任のMSパイロットの訓練をお願いするようになってからだ。未錬成部隊の連携訓練も引き受けてくれて、熱心な指導は彼らからも評判がよかった。カミーユの訓練について相談に乗ってくれたし、僕も彼らの訓練の相談を受けた。

 

「エゥーゴの全戦力をもってかかれば、撃退は可能でしょうが。本来のエゥーゴの目標、ティターンズの暴走を止めることができなくなります。ソーラレイが完成してしまう。僕は、フォン・ブラウンに関して消極的な防衛に留めたいと考えています。」

 

今、彼らに語った通りだ。僕はいま、フォン・ブラウンを捨て石にしようと考えている。どうせ、ティターンズの手には負えない。

 

地球連邦軍どころか、連邦政府の上層部とも関係が近いルナリアンは多い。すぐに連邦政府から撤退命令が出るか、軍事基地化など出来ないまま放置するしかなくなるのだ。

フォン・ブラウン市への進攻は時間稼ぎ以外に使えない無意味な戦略だ。

 

「消極的防衛、ね。エグザベ中尉の消極的ってやつを聞いてみたいもんだぜ。」

 

ロベルト中尉が、挑戦的にこちらを見る。アポリー中尉もエマ中尉も。他のパイロット達も。いや、僕だって大したことは考えていない。

MS部隊は僕の納得がいくほどの練度に達していないのだ。現実、大したことはできない。

 

「敵MS部隊を撃破しましょう。フォン・ブラウン市の外側まで敵MSを誘引し、味方艦と連携して壊滅まで追い込めたら、今後が楽になります。戦艦は味方MSが無ければ、的になるしかありません。」

 

敵MS部隊だけならば、まだ僕らに勝ち目はあるはずだ。数で上回っているはず。

おまけに、敵艦隊はフォン・ブラウン市占領という作戦目標を達成するために、市近郊からは離れられない。そのはず、だ。

なんせ、敵の総大将がジャマイカンだ。

 

「情報部のお手柄です。今作戦、敵の総大将はジャマイカン、だと。彼は保身から総指揮はとっても、最前線には出て来ないし、他の戦艦も最前線には出させないでしょう。その上、一番槍も手柄も譲りたくないと考えているはず。つまり、MS部隊と連携し前線にくる戦艦も少ないと愚考します。」

 

僕の意見に、頷いてくれる人も、首をかしげる人もいる。良い傾向だ。

最近のパイロットブリーフィングは活発に意見が交わされるようになってきている。部隊練度も、各部隊の連携もあがる。

 

「フォン・ブラウン周辺に、塹壕代わりになりそうなクレーターがある。」

 

「味方艦との連携があるなら火力は問題ないが、どうやって誘引する?」

 

「スリーマンセルを徹底させましょう。敵1機に対して、必ず3機で相手します。ティターンズは馬鹿ではありません。むしろ彼らはエリートです。自尊心が強ければ、こちらの真意に気づいても対応は遅れるかと。」

 

意見を交わし、部隊の方針を定め、戦術を決める。これがどれだけ大変で、難しいことか。そして、それがどれだけ重要なことか。これが出来なければ、味方が死ぬのだ。人間が死ぬ。

 

死なせないためにブリーフィングがあり、訓練がある。積み重ねることが大事ということを、僕は、エグザベ・オリベは知っている。

 

 

 

 




友よ!君たちは何故、彼女を作ったのか?  編


あーあーあー……
忘年会無しだってよ……

積み重ねた友情も、恋人たちの前では無力……無力。

俺らは仲良く、ハーメルンでクリスマスを過ごそうな!な?読者の皆様。


駄目?まあ、駄目か…





Zガンダム本編を見ればわかるんですが、テレビ版だとエゥーゴの戦力はこの時点で大変少ない。多めに見ても数隻の戦艦と20機くらいのMSしかない。
俺がティターンズだったら10隻の戦艦全て、グラナダに向かわせてアーガマにチェックメイトしますけど……え?エゥーゴが全滅する?うん。そのつもりだけど?
見ててもよく分からない展開だったな。この辺りの話。
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