機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
彼らは地球からもコロニーからも心情的に離れていた。
1年戦争前からそうだった。戦争中も戦後もそうだ。
コロニーと地球の戦争を、遠い世界のこととして見ていた。
戦争があれば、月の経済は潤う。そう、勘違いしていた。
7年経っても、人類が半分になるということの意味を理解していない彼らは、新たな火種を育てていた。
エゥーゴという火種を。ティターンズという火種を。
MSの開発と製造が月に恵みをもたらす、と信じていた。
エグザベ中尉は、ブリーフィング前のブリーフィングで敵MS部隊の壊滅を言い出したらしい。
「おい、カミーユ!面白い話があるぞ!」
僕を廊下で呼び止めたアポリー中尉が教えてくれた。
僕にこれ教えるの大丈夫なのか?詳しい作戦内容までは流石にアポリー中尉も言わなかったけど。
エゥーゴの人たちは口が軽すぎる、って、何度もエグザベさんが愚痴をこぼすわけだ。
エグザベさんの部屋に向かうと、何人かの艦載員が書類を提出しに来ていた。僕とファは気にせず入る事にしているし、彼らももう気にもとめなかった。中には既にファがいて勉強していたのもあるだろう。
「アポリー中尉から聞きましたよ。ティターンズのMS部隊と戦闘になるって。」
艦載員達が部屋から出ていったので、僕は当然そう話した。エグザベさんはため息をついた。困った顔してる。
「アポリー中尉……いや、直ぐ分かることか。本当は嫌なんだけどね。ここ、グラナダ基地を防衛するなら、そうするしか無いかな?もっと良い案があれば、そっちを採用するけれど。」
戦闘以外の手段が取れない、とエグザベさんは言う。誰もフォン・ブラウン市にティターンズが進攻してくるとは予想していなかった、らしい。地球連邦政府と地球連邦軍のお偉いさんたちも予想していなくて、だから、ティターンズの進攻を制止する命令が間に合わない、らしい。
フォン・ブラウン市は地球連邦の都市だ。ティターンズは、それでも一応、地球連邦軍なのに。
「なんで、地球連邦軍はフォン・ブラウン市を守らないんです?!」
僕は憤りを覚えていた。だって、フォン・ブラウン市は非武装の都市だ。民間人が沢山住んでいる。エゥーゴの拠点でもないのに!
なんで、ティターンズが攻めてくるんだ?!地球連邦軍はなんで、防衛と制止が間に合わない、とか馬鹿なことを言い出すんだ?
「アナハイムエレクトロニクスの、というより、ルナリアンの意向だよ。軍が駐留するようになると戦争が起こった時に優先的に目標にされる、と思い込んでいる。防衛をすれば、都市が傷つけられる、と…なんでかな?中立や非武装を宣言すれば、自分の身だけは守ることができる、と昔から月の人たちは信じ続けている。グラナダだって公国軍に占拠された過去があるのに。」
重いため息をついた、あの、エグザベさんが。微笑むのは仕事のうちだって、いつも僕に言ってる、エグザベさんが。
フォン・ブラウン市に手が届かない、から?
届かなかった、8年前の……
「おまけにパプテマス・シロッコ大尉が、ティターンズの戦艦の艦長に着任している。アンノウン1で出てくることはないけれど、彼は優秀な人だ。MS部隊が強化されている可能性がある。」
エグザベさんは困った顔をして、もちろんブリーフィング前のブリーフィングとブリーフィングでも話したけど、と言いながら頭を抱えていた。
パプテマス・シロッコ大尉のアンノウン1の動きは、ずっと前に見せてもらった。本当は僕に見せるものではない、と言っていたけど。見せてもらって分かることもあった。操縦技術が高すぎる。パプテマス・シロッコ大尉でなければ、まともに動かせないだろう。
だから、アンノウン1は今回出て来ない。
「MS部隊の強化って?」
「首を突っ込みすぎだよ、カミーユ。」
また、ため息だ。確かにちょっとそうか。でも、男なら分かるはずでしょう。気になる。
「本来なら、そう止めるべきなんだけどね。アーガマは戦場に行く。だから、ちゃんと話すよ。カミーユ、ファさん。」
大事な話なんだ。それが分かったから僕もファも背筋を伸ばした。
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僕を笑ってくれよ、パプテマス・シロッコ。結局、僕は口だけの男だ。君に、パプテマス・シロッコにカミーユを戦場に出さないと言ったのに。アーガマ自体が戦場に出ることを止めることすら出来ない。
アムロ大尉やカツ少年、ブライト艦長の家族のようにグラナダに避難させることも出来ずに、カミーユとファさんを載せたまま、アーガマはMS部隊の殲滅作戦に出る。
カミーユとファさんは、クワトロ大尉に狙われている。カミーユを戦場に出すために。
グラナダに置いてくれば、二度と会えない。それは確信だった。
エゥーゴの情報班とアムロ大尉ですら同意してくれた。アムロ大尉とブライト艦長の家族も本当はグラナダに置いてきたくはなかった。クワトロ大尉の手の長さを思えば、艦長と僕の目の届く範囲に居てほしかった。
しかし、彼らは軍事裁判の証言台に立たなければならない。憲兵が彼らを守ってくれる。信じるしかない。
憲兵を信じた。
「部屋で話した通りだ。絶対アーガマから離れるな。僕は必ず戻る。クワトロ大尉に何を言われても、僕の命令だと、断るんだ。」
ガンダムMk-Ⅱのコクピットの中で、再度カミーユに確認した。
「アーガマのカタパルト近くで、帰艦する味方MSを支援してほしい。敵にビームライフルを当てる必要はない。それはアーガマがする。威嚇だけで良い。残弾がなくなる前に、格納庫で交換することを忘れちゃいけない。」
カミーユも真剣に頷いてくれた。ファさんは、非戦闘員用のスペースに他の女性艦載員達と一緒にいる。
「必ず僕は戻る。カミーユ。忘れないでくれ、君は戦わなくていいんだ。その為に僕がいる。本当に、戦わなくていい。生き延びることを優先するんだ。カミーユ、いいね?」
敵はうまいこと引っかかってくれた。怖いくらい、ついてる。味方MSはブリーフィング通りの動きをしてくれている。3機で敵1機を囲み、味方艦の近くに誘引し撃破する。
エリートのティターンズは本当に引っかかってくれた。新型のMS、恐らくパプテマス・シロッコがジュピトリスから提供したであろうMSも流石に戦艦の主砲や弾幕には、勝てなかった。
怒ってるかな?パプテマス・シロッコ。でもな、僕と君の仲だし。
戦場に出てこれなくて、僕と戦えなくて残念だろうな。
僕も残念だ。
フォン・ブラウン市防衛戦と言う名の敵MS部隊殲滅作戦で、僕が、エグザベ・オリベが行うのは、囮だ。リック・ディアスは白く塗ってもらった。敵艦隊の前方で、フォン・ブラウン市を盾に対艦ミサイルで攻撃をしかけ、敵MS部隊を吐き出させる。
フォン・ブラウン市ごと、僕を、たった1機のリック・ディアスを艦隊の主砲では撃たないだろう。占拠するためのフォン・ブラウン市に致命的攻撃は与えられない。MS部隊に迎撃させるのがセオリーだ。
あとは、まぁ、フォン・ブラウン市上空宙域に入る時と敵を引き付けて逃げる時に敵の火線を避けさえすれば、いいはず。僚機もいないので、気分としては楽な仕事だ。
予定では、僕のリック・ディアスが前方の敵艦隊の注目を集めた所で、ドダイで迂回して敵艦隊の後方に周ったクワトロ隊が攻撃を仕掛ける。クワトロ大尉とロベルト中尉とアポリー中尉のスリーマンセルがそれだ。
ロベルト中尉とアポリー中尉のハイパーバズーカの散弾とクワトロ大尉のメガバズーカランチャーの攻撃。ハイパーバズーカの散弾は実弾で広範囲に広がるが、威力は低い。精々、ミサイルを散らす程度で戦艦に有効なダメージは与えられないだろう。
しかし、クワトロ大尉の百式が持つメガバズーカランチャーは、高威力だ。それでも流石に戦艦を貫ける訳では無いが、デッキを狙えばやれない事は無いだろう。クワトロ大尉は、凄腕のパイロットだ。
味方の状況と作戦開始時刻を確認し、僕はアーガマから離れた。
やはり、フォン・ブラウン市を、ルナリアンを怒らせすぎない程度の散発的な攻撃しかして来ない。フォン・ブラウン市外周でもこれか。ミサイルも主砲もフォン・ブラウン市に当てないようにしている。
最前方にいる戦艦の指揮官は優秀だ。分かっている。恐らく、今作戦自体に反対したのだろう。総指揮をとるジャマイカンに邪険にされたから、最前線を任された。そして、ジャマイカンの戦艦が市に入るまでの時間稼ぎをさせられている。
優秀な敵指揮官は積極的に狙うべきだ。
「パプテマス・シロッコ!!」
その戦艦の指揮官はパプテマス・シロッコだった。
対艦ミサイルを撃つ前に気づけた、彼の後ろに少女が2人いたことに。ティターンズの少年兵か。
直後、2機の敵MSが突貫をかけてくる。有り難い。僕に建前をくれるのか。対艦ミサイルを保持したまま、味方艦のいる方向へリック・ディアスのバーニアのスラスターを全開に駆けさせた。
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戦艦ドゴス・ギアの艦橋で、右から流れてくる白いリック・ディアスを見た。対艦ミサイルランチャーを構えている。
ルナリアンを気遣いすぎた。このパプテマス・シロッコが。人々の生き血を啜る、戦争商人どものフォン・ブラウン市などを。
一瞬、だった。刹那と言い換えてもいい。リック・ディアスが対艦ミサイルランチャーの引き金から、MSの指を離すのが見えた。即座に直掩をしていたハイザック2機が白いリック・ディアスを追う。
「エグザべ、か。」
シドレ曹長とサラ曹長に助けられたか。後ろに控えさせていた2人を振り返った。恐怖に固まっている少年兵2人を見た。
エグザべは、友は、少年兵を見た。確信だった。
フォン・ブラウン市の制圧に名誉などない。意味もない。利益もない。
制圧の一番槍をジャマイカンに譲るなど、本来なら唾棄すべきジャマイカンのためのセレモニーだ。まだ、凡俗に毒されている私が、パプテマス・シロッコがいたか。
ジャマイカンの歓心など無価値だ。何の意味もない。害悪ですらある。無能極まりないジャマイカン、汚名はくれてやる。だが、
「MS部隊はすべて出せ!ドゴス・ギアの全火力をフォン・ブラウン市外周に放て!本艦はこれより、フォン・ブラウン市港に単独先行を行う!」
この戦艦ドゴス・ギアは頂いていく。少年兵も戦場から奪わせてもらう。
フォン・ブラウン市を制圧する手間と労苦と引き換えに。
私に不可能はない。パプテマス・シロッコに不可能なことがあるはずがない。
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ハイザック2機に追われている。おそらく、その後ろにはMS部隊がいるはず。そうでなければ、囮の意味がない。頼むよ。
まだ、保持していた対艦ミサイルランチャーを月面に向けて撃つ。衝撃で舞い上がる砂埃を煙幕代わりに、直角に月面に降りた。
ティターンズはエリートだが実戦の経験が少ない。やはり砂埃を、僕の進路そのままに直進してきた。読めていた。持ち替えていたビームライフルで後方下から両機の右腕を撃った。慌てた敵は確認のため、隙ができる。すかさずハイザックの頭を撃ちぬいた。2発。彼らのおかげで、僕は子供を殺さずに済んだ。
せめて、今作戦では生き延びてほしかった。代わりに後続のMS部隊に追いつかれたか。
僕はカミーユに必ず帰ると約束した。そうであるならば、アーガマまで帰れるはずだ。
追手のMS部隊は10機か。溜息がでそうだ。予想よりずっと多い。パプテマス・シロッコの新型戦艦。艦載MSも多いのか。強敵だ。マラサイが3機にハイザックが6機、あとはデータにない。
リック・ディアスをホバーでバックさせ、がむしゃらにビームライフルを牽制に撃つ。ハイザック1機は仕留めたか。残りは散開して、僕を取り囲もうとする。
それが定石であるなら、一番動きが遅いMSマラサイ、機種転換訓練中だったんだろうそれに向けて距離を詰める。ティターンズ、味方ごと撃てないよな?ほぼゼロ射程でビームライフルを撃ち、囲みを突破する。
移動はホバーだ。高くは飛ばない。
パイロットによっては、相手より高さをとることを重視する。僕はあまり、高さを重要視したことはない。特に地面がある場合では。敵の下方を取るほうがいいとさえ思っている。だって、人間は意外と下を見ていない。自分の体で歩いていても、躓くし、タンスに足の小指をぶつける。MSは機械だ。ならば、より一層注意が散漫になると信じている。
ニュータイプを名乗るなら、躓いたり転んだりしなくなってからだ。人類には程遠い未来の話だ。
後方からのビームライフルは避けていない。まだ当たっていないだけだ。
リック・ディアスのホバーと姿勢制御と機体の重心移動によって偏差撃ちを避ける。
近くのクレーターに飛び込むと同時に追手が出てくるであろう場所に向けて、ビームライフルを撃つ。マラサイの頭を1つ吹っ飛ばせたか。
クレーターの内壁を背に空になったビームライフルを捨てビームサーベルを構えた。
予定では、そろそろ味方と合流できるはずだが。敵のライフルは、当たらない。そう信じろ、エグザべ・オリベ。
後方から狙撃されることはないはずだ。だが、残り7機か。月面クレーターの内壁をすべるようにブースターを全開でホバーする。追ってくる敵ならば、僕を、リック・ディアスを甚振りたいはずだ。仲間の仇で、ライフルもない弱った獲物だぞ。内壁に対して直角にまで機体を持ってこれたら、上々だ。壁をけり、近くの1機に突貫した。マラサイも驚いただろう。僕もうまくいくとは思わなかった。
これで、残りはハイザック5機に、アンノウンが1機か。アンノウンが隊長機かな。マラサイ3機は動きが悪かった。パイロットが機体に慣れていなかった。
最後のマラサイが爆発する前に、リック・ディアスの脚で残りの敵のほうに押しやる。爆発で距離が開いてくれればいい。あとは、味方が来るまで悪あがきだ。
と、ハイザックが1機爆発をくぐり抜け、僕のリック・ディアスに正面からしがみ付いた。こいつ、自分ごと味方に撃たせる気だ!
「サーベルが使えないなら」
ハイザックがぶつかってきた勢いを殺さないように、バルカンを撃ち左後方に下がる。無理やり開けた隙間に左腕の盾をねじ込むようにして、機体の左脚と連携させしがみ付くハイザックを跳ね上げた。当然、バルカンはハイザックを貫く。そして、もちろん、その爆破は、リック・ディアスを激しく揺さぶって。
だめだ、す…き…が…
目の前をビームライフルの光が。
「エグザべ・オリベ中尉、返事を。こちらエマ機です。」
エマ中尉が間に合ってくれたか。よかった。
「…助かりました。左脚をやられて。援護をお願いします。」
まだ、5機も残っている。
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アーガマに戻ってきたリック・ディアスは廃棄するしかないと整備士の人たちが言っているのをカミーユはエアハッチの中で聞いていた。
MS部隊殲滅作戦は終始優勢に終わり、最後の最後に、エグザべさんがボロボロになったリック・ディアスで帰ってきたときは、ガンダムMk-Ⅱで消火剤を機体とカタパルトに撒くのを手伝った。
「参ったよ。まさか、10機も来るなんて。半分くらいだと思ってた。」
とは、ふらふらとリック・ディアスから降りてきたエグザべ中尉の言葉だ。
何故なに君とミリオタさんはアニマンのスレで、俺のSSの補足説明をしてくれたり、素晴らしいSSを書いてくださった人達です。勝手にSS友達だと思ってます。
他にもアニマンのスレでは、SSもポエムも書いてくださった人たちが居ます。
現時点で4スレ目半ばくらいですか?もしよかったら、皆様もスレを覗いてみてください。
よろしくお願いします。