機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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1年戦争の終結から7年。宇宙にはコロニーの残骸が散らばっていた。

かつて、人々の暮らした大地が、命を育んだ大地が、デブリとなり果てて宇宙にばらまかれたままにされていた。

7年では、地球の傷も宇宙の傷も癒えるわけがなかったのだ。

傷は化膿し、やがて病と変わる。

戦争という病へ。
数多の非業の死は癒されぬまま、新たな火種へと変わった。


コロニー落とし1

敵MS部隊殲滅作戦のデブリーフィングの進行は、エマ中尉が引き受けてくれた。

 

リック・ディアスから降りた時より顔のあざが増えて、うまく微笑むこともできなくなった僕を見て、エマ中尉は何も言わず進行を引き受けてくれた。

顔には3枚も湿布を貼っている。医療班は骨折がないから、と痛み止めをくれなかった。またか。

 

敵MS部隊殲滅作戦はうまくいった。計算上、ジャマイカン艦隊の敵MS部隊の5割は削れたはずだ。大勝利といってもいい。

 

フォン・ブラウン市に最初に降りた敵戦艦ドゴス・ギアとパプテマス・シロッコはもう既にジュピトリスのある宙域に向かって出港したらしい。さすが、パプテマス・シロッコだ。冷静沈着で、英断だった。

 

これで、パプテマス・シロッコはルナリアンとフォン・ブラウン市の後始末に振り回されずに済むだろう。具体的にはルナリアンの恨みの矛先をジャマイカンに集中させることができ、これからフォン・ブラウン市で起こるだろうティターンズと民間人の軋轢に関わらずに済む。

目立たない、ということの重要性を理解している彼は敵としては手ごわく、人としては信頼できる。

 

フォン・ブラウン市をティターンズが武力制圧した今回の事件は、地球連邦政府からも既に批判を受けていた。地球連邦政府の総会前に行われたこの暴挙は今回の総会で議題に上がるだろう。ティターンズの行動を制限できるきっかけになるかもしれない。その推測は情報部からも同意を得られた。

 

エゥーゴの代表ブレックス准将は地球連邦政府の総会に議席を持っている。発言力は低いが、戦闘記録と戦闘詳報も作ってある。協力者も同意も多数得られるだろう。ぜひ、活用してほしいと思う。

 

 

フォン・ブラウン市、ルナリアン達は、あちこちにMSや戦艦、武器をばらまく悪癖があるのだが、それでも、無事に平穏に暮らしている。権力も資金も人脈も商売っ気も持ち合わせているからできることだ。

 

ティターンズの暴力で大人しくさせることができるなら、地球連邦政府だってとっくにそれを許可していただろう。連邦軍の駐留基地か補給基地を作り、ルナリアンの悪癖だって監視できていたはずだ。

今、制圧したフォン・ブラウン市を制御しようとしているジャマイカン・ダニンガンは無駄骨に終わる。汚名をバラまくだけバラまいて退散するしかなくなる。

 

今作戦は大勝利と言ったが、犠牲者が出なかったわけではない。

ロベルト中尉。彼はアポリー中尉と共にクワトロ大尉の百式とティターンズ艦隊の襲撃に出撃した。僕が10機のMSを視認した頃だ。

 

ブリーフィングの予定通り行われた、百式のメガバズーカーランチャーでの敵戦艦デッキの狙撃。僕としては、当たろうが当たるまいがどうでもいい作戦だった。誰にも言いはしなかったが。

ジャマイカンの動きを鈍らせ、MS部隊と連携をとろうとする敵戦艦を妨害するための提案だった。

 

ジャマイカンは臆病だ。自分の戦艦が狙われたと思えば、必ず周囲に厚く他の戦艦で防御を築こうとする。そう、僕は考えた。実際、した。

 

さすが、クワトロ大尉は敵艦隊の後方上から1隻の戦艦の艦橋にメガバズーカーランチャーの攻撃を当てた。その戦艦がジャマイカンの乗るアレキサンドリアでなかったのは残念だが、大戦果には違いない。そこまでは何の問題もなかった。

問題なのは、予定通りすぐにドダイに乗って引き返さずに、2発目の発射体制に入ったことだ。メガバズーカランチャーは連射できる武器ではない。次発装填のエネルギーチャージに時間がかかる最大の欠点がある。それはブリーフィングでも共有したはずの情報だった。

 

 

 

アムロ大尉と会ってから、だんだん分かるようになってきた。

クワトロ大尉はアムロ大尉と張り合っている。1人、張り合っているつもりでいる。

同じ戦場で、アムロ大尉と共に戦いたいと考えている。だから、宇宙までアムロ大尉を誘拐して連れてきたし、今作戦で大戦果をあげてアムロ大尉に戦場を、戦場での自分の活躍を見せつけたかったんだろう。

 

だから、予定にない2射目の射撃体勢に入り、敵の反撃を受け、それをかばってロベルト中尉は重症に陥った。一命はとりとめたが、復帰は無理だろう。グラナダの病院から出てこれるのも、いつになるか。

 

当然だが、アムロ大尉はこのことは知らない。

デブリーフィングにも参加するはずがないのに、クワトロ大尉はこの戦果をどうやってアムロ大尉に知ってもらう気だったのか。まあ、直接話す気だったんだろうが、もう憲兵が許可しないだろう。

 

アムロ大尉以外は必要としない人が、クワトロ、シャア・アズナブルか。

アムロ大尉以外の人間は彼の世界に存在していない。そう感じる。確信でもあった。

思考を走らせすぎたか。でも、アーガマがブライト艦長に交代した後に、パプテマス・シロッコと戦闘した後に、何度か、彼の手の者に殺されそうになったし、カミーユとも引き離されそうになった。

 

今は憲兵が職務に忠実なおかげで治まってはいる。

いや、これも、アムロ大尉がクワトロ大尉の近くにいるから、と考えるほうがシャア・アズナブルらしいな。

 

シャア・アズナブルの世界にアムロ・レイ以外は存在しないのならば、カミーユはアムロ大尉の代わりだったのか。身代わりを欲した。7年間もアムロ大尉の居場所が分からなかったから、代わりを欲した。

カミーユをアムロ大尉に育てようとした。だから、ブライト艦長やハロが必要だった。ガンダムに乗る少年が必要だった。

戦場が必要だった、までは考え過ぎか?

 

しかし、エゥーゴの実態を見ればない話では、いや、考え過ぎだ。

 

いずれにしろ、吐き気を催すほどの邪悪に違いはなかった。

 

 

 

 

今作戦では、ロベルト中尉以外にも、戦闘によりMSパイロットと艦載員に50人を超える戦死者が出た。

デブリーフィング後の黙祷の時、彼らのことを思う。

もっといい作戦は本当に、なかったのか。

犠牲を少なくする方法はもっとあったのではないか?

 

自分の力不足を思った。彼らの安寧をただ祈るしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

Zガンダムの完成報告と、カミーユの機種転換が提案されたのがそのデブリーフィングの終わりの頃だった。黙祷の前だ。

それまで一言も話さなかった、クワトロ大尉の発言だ。そう、大尉は、ロベルト中尉の負傷の報告についても口を開くことはなかった。

 

「上官命令ですが、自分の権限により拒否します。彼は、カミーユ・ビダンはまだガンダムMk-Ⅱでの訓練途中です。ティターンズで製作されたガンダムMk‐Ⅱは最新の機体で、量産できるほどの安定性と操作性を有しています。良い機体です。試作品のΖガンダムに乗せる必要性とそれによる優位性は皆無である、と僕は愚考します。」

 

今のうちに言い訳しておくと、僕はΖガンダムの設計者を知らなかった。

 

「モビルアーマーからモビルスーツへの変形機構は、パプテマス・シロッコ大尉のアンノウン1、ジュピトリス製のMSも採用していますが、あれは、彼自身のパイロット技術が高いからこそ、そして、ジュピトリスの持つ新技術が従来の地球の技術より革新的であるからこそ実戦投入できているのです。ただでさえ、ジュピトリスの技術体系に追いつけていないというのに、パイロットにモビルアーマーの操作技術を有し、さらにモビルスーツの戦闘技術を持てと?」

 

誰も何も言わなかった。そう、当たり前のことだが、飛行機と人型兵器は違う。エゥーゴでさえ、両方扱える技術を持つ人間は少ない。僕もあまり自信はない。MSのほうが得意だ。

 

「現実的な提案ではありません。パイロット候補を再選定すべきです。」

 

まぁ、以上の発言は、上官侮辱罪に問われるか問われないかギリギリの線だったと僕は思うが、デブリーフィング参加者全員の賛同を得ることができて、不問にされた。幸運だった。

デブリーフィングの後、結局誰がΖガンダムのパイロットに選ばれたのか、僕は知らない。クワトロ大尉はデブリーフィングが終わるといつもどおり、何も言わずデッキを去っていった。

 

 

 

 

僕が本当にショックだったのは、Ζガンダムの設計者にカミーユがいたことだ。Zガンダムはカミーユが設計していた。ガンダムMK-Ⅱの設計図とかを基にして、設計したと言う。

 

デブリーフィングには参加させていないカミーユは、僕の発言を誰かから、まあ、整備士のアストナージさんあたりだろう。誰かから聞いたらしい。

 

今は僕の部屋のデスクの前で腕を組んで椅子に座り、パイロットから見たMS設計に対する要望書をまとめようとしていた。

僕の意見だけを聞いても仕方ないだろう、とは言ったが頑なだった。

カミーユの美点ともいえる。何事も積極的で真面目に取り組む。伸ばしてあげたい美点だ。

 

愛機のことを思い出しながら、個人的な要望を話すとロマンがない、と怒られた。

僕は充分にロマンを満載させた機動兵器だと思うんだけどなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

フォン・ブラウン市を制圧したジャマイカンは早速、地球連邦政府の総会で早々に名指しで批難され、市を立ち去ることになった。フォンブラウン市の軍事基地化どころか、満足な補給もできない期間しか、ジャマイカン艦隊はフォン・ブラウン市にいられなかった。

 

ティターンズの総帥ジャミトフ大将も彼を庇うことはなかった。そこまでは報道と情報部に確かめて知った。ジャミトフ大将は何を考えているのか?

 

噂では、今回の総会でティターンズに地球連邦軍全軍の指揮権を与えるという法案を通すつもりでいたと聞くが。

まるでティターンズの暴走行為に興味すら持っていないようだ。信じがたいことだが。僕の妄想ではなく情報部とも意見が一致した。

 

あのデブリーフィングの後、クワトロ大尉はブレックス准将と共に地球連邦政府の総会に出席するために、ダカールという西アフリカの都市に出発していたらしい。なんでも、ブレックス准将の秘書と護衛を兼ねている、とのことだった。これも、世間話がてらに情報部から聞いた。

 

なんでだ?クワトロ大尉は秘密主義に過ぎる。僕にだけ情報を渡さないというなら、まだいいが。いや、本当はよくない。軍規にかかわる。

 

どうにかしなければならない、とは常々思うが。…思うが、ほかに優先すべきことは数えきれないほどあった。

 

グリプスⅡのソーラレイ、ジャミトフ大将の謎の動き、本国の政府方針、部隊の再編制、ロベルト中尉の見舞い、新しいリック・ディアスでの完熟訓練。そして、コロニー落とし。

 

そう、ジャマイカンのコロニー落とし作戦阻止だ。

 

グラナダはふっ飛ばさないだろう、などと予測を立てていたころが懐かしい。

 

僕は人の悪意を甘く見ていた。これは観測班がブライト艦長に持ってきた情報だった。戦闘の経験が豊富なブライト艦長に判断してほしかったのだろう。まだ、ベットにいる時間のほうが長いというのに。

 

ジャマイカンの艦隊の向かった方向とその後の動きを、民間船に偽装した小型輸送船で尾行したらしい。観測班も大胆なことをする。あるいは、ジャマイカンもコロニー落としに夢中になっていて捨て置いたか?どちらでもいい。

観測班の手柄だ。最近、情報部と張り合っているような気がしないでもないが、無理はしないでほしいな。

 

「コロニーをグラナダへ落とす?」

 

弱弱しい声で、ブライト艦長が繰り返した。艦橋の艦長席に短時間だけ座れるようになってきたばかりだというのに。彼は己の責任感から、そうしてくれた。艦橋でのブリーフィングだから、と。

 

「サイド4の27バンチです。現在は無人コロニーであるのは確認済みです。」

 

観測班の報告だ。もう、コロニーは動き出しているらしい。

 

「グラナダ、この月面都市に、か?連邦軍の基地だけじゃない。ジオン共和国の領事館もあるんだぞ。」

 

ブライト艦長もあまりのショックに青ざめた顔をしている。

 

「しかし、コロニーの軌道は確実にグラナダに。」

 

「全艦隊をだすしかない。エゥーゴの全火力を持ってコロニーの側面を攻撃して軌道を変えるか、破壊しなければ。」

 

ブライト艦長が即刻、決断をする。こういう早さで決断できる上官は実に有能だ。状況に慌てふためいて、決断を遅らせてしまう士官も少なくない。部下としてはありがたい限りだ。

 

「宙域全ての連邦軍には通達済みです。中には協力を申し出ているティターンズ派閥の戦艦もあります。」

 

情報部も、補足説明をする。艦長の許可もなくコロニー落としの情報を宙域全ての連邦軍に通達することは少々、勇み足だが、コロニー落としへの対処と思えば悪くない。

 

観測班と情報班の連携もうまくいっているようだ。良かった。反目からの張り合いではない。

 

「グラナダより全艦隊を出港させる。艦隊の総火力を27バンチに当て軌道をずらす。協力を申し出る艦隊は全て受け入れろ。派閥抗争なんかしている場合ではない。」

 

ブライト艦長はそう、決断した。万全の体調ではないだろうに、再度、前線に自ら赴くと。

 

そうであるならば、僕は、彼の決断に応えようと思った。

 

「敵MS部隊は、先の作戦で壊滅状態にあるとは愚考します。この際、ジャマイカンの乗るアレキサンドリアを撃沈できないでしょうか?この機を逃して、再度コロニー落としをさせるわけにはいけないでしょう。」

 

「…また、やるのか。エグザべ・オリベ中尉。」

 

ブライト艦長がこちらを見ている。不安そうな眼だ。なぜ?

 

「無理はしません。ですが、全力を尽くします。」

 

新しいリック・ディアスも既に白にしてある。今回はドダイも使えばいい。戦場を減らせるのであれば、何度だって僕はそうする。

 

「アレキサンドリアさえ落とせば、ジャミトフ大将にさえ見捨てられた艦隊です。補給も不十分のはず。抵抗もできなくなるでしょう。その代わり、コロニーと味方艦の防衛に関しては他の人に任せることになりますが。」

 

人を安心させることができる士官は良い士官になれる。ブライト艦長は良い士官だ。兵が彼に応えたくなる。

 

是が非でも、アレキサンドリアは落とさなければならない。

 

ブリーフィング後、ブライト艦長は命令を再度確認し終えると同時に昏倒した。無理をさせ過ぎたかな。

 




コロニー落とし阻止前編

コロニーの警備がざる通り越して枠!!
地球連邦には予算が無いんだよ!予算が!!
弊SSとテレビ版本編とはだいぶ状況は違うので、ぜひ、ゼータガンダム全話見てください。
おすすめです。






ここ書いている前後に、エグザベ中尉とクワトロ大尉が和解したIFを求めてくれたスレ民の人もいましたが……

無理でしょ?え??1年戦争のことはとりあえず置いておくとしても。
コロニーに穴開けたり、少年兵使ったり、少年兵に人殺し強要したり、絶対失敗するジャブロー降下したり、少年兵放って1人宇宙に戻ったり、ファとカツをMSのパイロットにしたり、コロニー落とし阻止作戦にも毒ガス阻止作戦にも戻ってこなかったり、護衛放棄したり、議会占拠というテロ行為したり、レコアに捨てられたり、エゥーゴを捨てたり、フィフスルナ&アクシズ捨てたりする人間と和解???(宇宙世紀正史)

ない。ありえない。無理。
スターリンとか毛沢東とかポルポトのほうがまだ可能性がある…と俺は思う……


でも、もし、万が一、和解IFを書きたいという人が居たら、リンク張ってくれたら別に気にしません。ハーメルンでご自由にお書きください。
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