機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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ティターンズMS部隊殲滅作戦後のデブリーフィング。

その5日後にはジャマイカンがグラナダにコロニー落としを画策していることが判明した。

ブライト・ノアは即時出撃を決断する。病の身をおして。

出港前の慌ただしいアーガマに、アムロはブライトの身を案じて来た。
ブライトが戦場へ行く前に、励ましてやりたかったのだ。



総集編1

「私に、耐えられると思うか、アムロ。」

 

艦長室のベットの上で横たわりながら、隣で椅子に座るアムロに訊いた。辛い。アムロの顔を見ることもできない。ブライト・ノアは、戦友達に顔向けできないことをしてしまった。リュウ、カイ、スレッガー…

 

私は、弱い私はアムロに懺悔するしかできない。アムロだって、誘拐までされて精神的に疲れているだろうに、私は自己満足の懺悔をしている。アムロの優しさに甘えている。

 

「正直、耐えるしかないことはわかっているんだ。弱音もお前にしか吐けない。どうかしてたんだよ、頭がおかしくなってしまっていたんだ、ブライト・ノアは。」

 

「…ブライト。」

 

「一年戦争は終わったはずなのに。まだ、あの戦場にいる。だから、また繰り返す。」

 

「繰り返すんじゃない。繰り返してはいないはずだ。ブライト。カミーユは、もう前線には出ないんだろう。」

 

「カミーユ・ビダンにはアーガマにしか居場所がないんだ。そして、アーガマのいる宙域が戦場になる。」

 

コロニー落としは、これには関係ない。グラナダ基地で彼を保護してもらうという案は、アムロからもエグザべ・オリベ中尉からも情報部からも反対を受けた。

 

少年兵として狙われている。

 

実際、彼はカミーユ・ビダンは少年兵だ。今は、エグザべ・オリベ中尉が一線を護っているだけで、それ以前はいつ死んでもおかしくないような状況に置かれていた。

 

一年戦争。

私もアムロもそうだった。護ってくれる人は亡くなって、いなくなった。それが、どういう苦難と悲劇をもたらすのか、身をもって体験したじゃないか。何度も何度も、悔やんで悲しんで声をあげて泣いたじゃないか、アムロも私も!時には怒りに身を任せてしまって、更に後悔する羽目にもなった。

 

それすらも分からなくなって、忘れてしまっていた。

 

「カミーユ・ビダンから、保護者を奪いたくないんだ。しかし……私はどうかしているんだ。他の方法を思いつけない。他に、有効な方法が思いつけないんだ。」

 

カミーユの保護者をしているエグザべ中尉は再度、単機での突撃による敵戦艦、しかも旗艦であるアレキサンドリアの撃破に立候補した。

有効な作戦だ。

 

今回の戦闘にはクワトロ大尉もロベルト中尉もいないのだ。MS部隊の数では勝っていても、勝ちきれなければ、コロニー落としなどという暴挙を行う人間を止めなければ意味がない。ジャマイカンに勝ちきれなければ、奴はまた繰り返すだろう、コロニー落としを。

 

アムロは無関係だ。コロニー落とし阻止作戦にも出ない。証言台に立つからだ。それは私にとって嬉しいことだった。

 

しかし、保護者がいない子供達を、自分の子供達を思えば、気が狂いそうな気さえする。

 

ハサウェイとチェーミン。もし、あの子たちが少年兵にさせられたのなら。私は…私は…

 

「先の作戦から帰ってきたリック・ディアスを見た。よく帰って来れたと思う。エグザべ中尉は悪くない腕をしている。」

 

その、アムロの言葉が私への慰めであることは分かっている。戦友だ。

アムロから見ても、悪くない、と言えるくらいにはエグザべ中尉のパイロットとしての技量は高い。彼を、死にに行かせるわけではない、と慰めてくれている。

だが、戦場では何が起こるか分かりはしない。それも知っていた。

 

「アムロ。お前は、せめてお前だけは戦わないでいてくれ。もう、戦場には。私だけで充分だ。」

 

それしか、今の私には願えない。資格が無かった。自分の過ちを直視してしまえばそうだ。

 

何をしていたんだろう?何故、戦場に戻ろうと思った?戦えば人が死ぬんだ、と嫌という程知っていたはずじゃないか。

 

「わかっているさ、ブライト。今はカツを、俺が大切にしてやらなくちゃいけない。みんなを助けてやりたい気持ちもあるんだ。だが、今は。」

 

「それだけでいい。それだけで、耐えられそうだ。…いざとなれば、カミーユ・ビダンとファ・ユイリィもアムロ、君に託すことになる。逃げ場があるだけでも違うと信じたい。」

 

部下の、人間の命を預かるという仕事、それは重責だった。忘れていたとでもいうのか。ブライト・ノア。ニュータイプならば、人間の命を軽くは見れないはずだ。命だぞ。

 

子供ならば、なおのこと。ニュータイプであろうとなかろうと。護るべき命だ。

 

私は父親になったんじゃなかったのか!

 

「早く戦争を終わらせなければ。子供達を帰す場所さえ無くなってしまう。」

 

アムロ、私たちは本当に帰って来れたのだろうか?一年戦争から。あの、戦場から。

 

 

 

 

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アムロ・レイはブライトの泣く顔を直視できなかった。ベッドに横になり泣きながら、俺が戦場へ出ることを止める言葉を紡ぐブライトを、直視できない。

 

俺が、ブライトを巻き込んでしまったのかもしれない。それを口に出せない。考えることすら、辛かった。

フラウ、カツ、レツ、キッカ、ハヤト、ミライ、ハサウェイ、チェーミン、ブライト…もしかすると、俺のせいで。

 

ブライトの顔すら見れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はブライトの見舞いに来る前にエグザべ・オリベ中尉の部屋を訪ねた。憲兵の勧めでもあったからだ。アーガマ内部の異変を、当事者の1人である彼から知るべきだ、と勧められた。

 

ついでに、と言っては変だが、謝罪も兼ねていた。エグザべ中尉の様子がおかしかったからとはいえ、俺は彼を殴った。『修正』だ。あの場では黙認された行為だが、まあ、俺は彼の上官ではない。立場としては、エグザベ中尉を殴ってはいけなかった、と言う憲兵が正しい。

 

戦闘で疲れているところに押しかけるのは俺の好みではないが、エグザベ中尉からすると俺に殴られたのは理不尽に思えたかもしれない。俺だって、理不尽は嫌だ。昔はブライトへも、ホワイトベースの皆へも反抗もした。

 

そういう俺ならば、彼に謝罪することは、俺自身の希望でもあった。

 

 

 

 

彼の、エグザベ中尉のアーガマでの自室は、艦載員のために在室時に扉を開け放してあるという噂は本当だった。ブライトから聞いてはいたが、俺だったら落ち着かない。

 

 

 

カツがグラナダの基地で拘束を受けることになった事件から、早一週間近くにもかかわらず、俺がアーガマを訪れる際には、憲兵の護衛は常に5人以上つくことになっていた。クワトロ、いやシャア・アズナブルが俺の誘拐事件の主犯だと俺が証言したからだ。

 

憲兵はアーガマへの訪問を止めたいようだった。その気持ちは俺にだってわかる。しかし、彼らにもエグザべ中尉にも悪いが、ブライトも俺の手の届く範囲にあると、そう、思いたい。俺の思いだ。もう、ないがしろにしたくはなかった。

 

部屋の中のエグザべ中尉は静かに書類を読んで、左手でメモを取っていた。彼は左利きだったか。

 

「エグザべ中尉、今、時間をもらってもいいか?」

 

声をかければ、穏やかな笑顔で招かれた。椅子を勧められる。彼は代わりの予備の椅子を出して座った。手慣れているな。いつものことなのだろう。

部屋の外には護衛が3人、中には2人が入る。

 

「アムロ大尉。扉も閉めましょう。他の艦載員には聞かれたくないお話では?」

 

「よく、わかるな。」

 

「子供たちが部屋に戻った頃合いを見計らって来られたのでしょう。ご配慮、痛み入ります。」

 

エグザべ中尉はいつも穏やかだ。艦載員からはそう聞いている。

だが、カツを叱った時の彼は真剣だった。いつも笑っている穏やかな人だよ、と言った整備士のアストナージが、後から、初めてあんな顔を見たと教えてくれた。

 

エグザべ中尉は、努めて穏やかに振舞っている。このアーガマで、あるいは戦場で。俺は、そんなことできやしない。

 

「まだ、痛むか?」

 

少し居心地が悪いような気がして、自分の頬を指さしながら、彼にそう聞いた。彼の頬にはまだ、大きな湿布が貼ってあった。仕方がなかったとはいえ、ほんの6日ほど前の話なのだから。

 

「ああ、いえ。見苦しいところを…いや、アムロ大尉には助けて頂きました。カミーユも、僕も、大尉に助けてもらいました。ありがとうございます。」

 

そう言うと、すぐに俺に頭を下げた。エグザべ・オリベという人間は素直なんだな。ますます、俺の居心地が悪くなるんだが。

 

「痛みはもうないです。湿布も規定で貼ったままにしておくように、と医療班に指示されているだけです。」

 

笑ってさえ見せた。

 

「もっと、俺に文句を言ってみたらいい。」

 

俺にしては、少し卑屈になりすぎたか?そう、言って見せても、彼は困ったように笑うだけだった。そういえば、彼は俺より年上か。2つ?3つだったか。

なるほど。これが、年下扱いというものなのか。なんだか、面映ゆい。

 

「久しぶりに、年下扱いされたな。誰かに、そういう扱いをされるのは、本当に何年振りか。」

 

言葉は素直に出た。俺の口から、不思議なくらいに素直に。

自分でも驚いた。

 

「いや、何でもない。今のは忘れてくれ。エグザべ中尉。…今日は、憲兵と一緒に中尉に確認したいことがあって来た。まぁ、後は謝罪だ。」

 

頭を下げようとしたが、エグザベ中尉に止められた。悪いのは自分だから、と。

謝罪させてもくれない。

 

「何か問題でも起きましたか?」

 

そう、不思議そうに問いかけてきた。

 

「エグザべ中尉、あなたがこのアーガマ艦内で2度ほど、殺されかけた事件があった、と。情報部のヌー・ハーグ曹長がそう、我々に報告書をあげました。こちらのアムロ・レイ大尉が誘拐されてくる以前の話だと。」

 

俺の後ろに立った憲兵がそう、問いかける。俺もこの話を憲兵から聞かされた時は驚いた。エゥーゴの旗艦アーガマで?戦艦内での殺人未遂?内部の人間か、そいつの手引きのない人間にはできない。戦艦とはそういう場所だ。

 

容疑者は一人しかいなかった。シャア・アズナブル。俺でもそう思った。

 

「ああ、ヌー曹長ですね。彼には、艦内の、というよりエゥーゴの結束を固めるために通報しないようにお願いしていました。」

 

エグザべ中尉はこちらが拍子抜けするくらい、あっさりと認めた。

 

「結束?」

 

そんなもののために?シャア・アズナブルの暗躍を見逃していたのか?

 

「僕にとっては重要事項でした。エゥーゴは新設の組織で所属軍人も寄せ集めです。今でも生活のため、給与のために所属している人間は多い。しかも、ヘンケン艦長時代は、軍規でさえ無いに等しく、士気も練度も低かった。まぁ、今はだいぶ改善できました。一部艦内に風紀のみだれがあるようですが、それはさておき。……当時はMSと戦艦を持ったチンピラの集まりのようなものだったんです。結束が乱れれば、そのまま、武装盗賊になりかねないと、僕は判断しました。」

 

簡単に聞かされただけでも、恐るべき状況だった。

 

エゥーゴという組織の実態。シャア・アズナブルの作った組織。ブライトは、この実態を知っていたのだろうか?いや、知ってはいなかったのだろう。

 

ニュータイプの未来という言葉に踊らされたのか、ブライト。お前ともあろう人間が、どうして?

 

「そんな当時のエゥーゴが地球連邦軍に受け入れられたことは奇跡に近かったんです。グラナダ占領後にアナハイムエレクトロニクスから地球連邦軍上層部への働きかけが大きかったこともありますが。……おそらく、連邦軍上層部の判断が一番大きかったのでしょう。彼らは現在のティターンズを、バスク・オムを疎ましく思っています。派閥の解体か、それともジャミトフ大将への対抗意識か。僕としてはどっちでも良かった。ここ、グラナダの拠点に通常の基地の10倍にも当たる憲兵を派遣していただけて、感謝しています。」

 

そう、言われてみれば、ここグラナダ基地では多くの憲兵を見かける。彼らは軍内部の警察組織だ。

今も、シャア・アズナブルのために働く民間と軍の人間を捜査している。それだけの余力があった。あるはずだ。

人海戦術を取っていたのか。

 

「カミーユ・ビダンを護るために、ティターンズと絶対に手を結ばない組織が必要だったんです。だから、僕はそれだけのことができる書類をヘンケン艦長に書いてもらいました。エゥーゴ自体を監視するための憲兵増員要請と地球連邦軍への忠誠を誓う書類、エゥーゴ独自の情報部の創設案、まぁ、そのほか色々あります。多分、彼は覚えていないでしょうけど。」

 

エグザべ中尉は何でもないかのように、そう、話した。

確かに、エゥーゴの情報部は、エグザべ・オリベ中尉と近しい関係にある。証拠に、その情報部からエグザべ中尉に対する殺人未遂事件が憲兵に報告された。

 

「その書類が原因で、エグザべ・オリベ中尉は、シャア・アズナブルに殺されかけたと?」

 

憲兵の問いかけに、エグザべ中尉は首を横に振った。躊躇もなかった。

 

「クワトロ大尉が、僕を始末しようと思った動機は、恐らく別ですね。検討はついてます。彼は僕のことをどうでもいい存在だと思ってますよ、いや、他の艦載員のことも、かな?本来なら、僕がどんな書類を作成しようが気にもしないでしょうね。…まあ、聞いてみないとわかりませんが、クワトロ大尉の態度から何となくそう感じます。」

 

「ニュータイプだからか?しかし、俺は…」

 

俺は、シャア・アズナブルからそういう印象は受けなかった。どうでもいい存在と、俺が思われているような印象など受けなかった。この7年間で鈍ったのか。

 

エグザべ中尉の表情が少し、ゆがむ。彼は痛みをこらえる様なそんな苦悶の表情を一瞬だけ。すぐに強張った微笑みになった。

 

「今から話すことは僕の憶測です。もしかしたら妄想に近いかもしれません。ニュータイプがどうこうという話ではないんです。ただ、彼の態度と普段の言動から判断しているつもりなので。」

 

「つもりって、言ったところで。」

 

思わず、言ってしまうが、後ろの憲兵はエグザべ中尉の見解を求めた。気持ちはわからなくはない。ここまでの活動を見れば、エグザべ中尉は、彼はエゥーゴに最大限貢献している。地球連邦軍エゥーゴの運営に関係する功労者だ。普通の将兵なら、彼を排除しようとは思わない。

 

だが、シャア・アズナブルはそれをした。

 

個人の憶測だろうと、手掛かりが欲しかった。

続きを俺が促すと、エグザべ中尉は重々しくため息をついた。

 

「クワトロ大尉は、アムロ・レイにだけ執着しているんです。」

 

「は?」

 

「彼は。…クワトロ大尉にとって、ニュータイプのアムロ・レイがどのような存在なのか、僕にはわかりませんが。…クワトロ大尉は、『アムロ・レイ』を求めて行動しているんです。」

 

思考が理解を拒んだ。

 

 




アムロ君、かわいそぉ……

まあ、宇宙世紀正史よりマシだから!ヘーキヘーキ!
宇宙猫と化すアムロ・レイ。
ニュータイプにだって分からないことはある。

え?ブライトさん、このまま戦場へ???
はい。戦場へ行ってもらう。
慈悲はない。
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