機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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総集編2

「『アムロ・レイ』を求めて行動しているんです。」

 

その言葉を聞いたアムロ大尉は、まるで僕を化け物を見るような目で見る。

いや、僕だってこんなこと言いたくはない、誘拐事件の被害者本人に。しかし、クワトロ大尉の行動を、言動を総合して考えてみると、僕にはそうとしか言いようがなかった。

 

アムロ大尉の後ろに立つ憲兵は、彼の混乱も気にせず更なる僕の意見を求めた。こんな状況で?アムロ大尉の青い顔が見えないのか。いや、見えないか。大尉の後ろに立っているんだから。

 

ふと、気づいた。そうか、アムロ大尉が裁判で証言台に立つ日が近いのか。ならば、これは荒療治?のつもりなのかな?憲兵は、当たり前に全力でクワトロ、シャア・アズナブルを仕留める気でいる。

 

つまり、僕の殺害未遂事件について聞きに来たという訪問理由には裏があるのか。結局、3回くらい殺されかけたんだっけ?4回だったか?クワトロ大尉とその手下が人目のつかない犯行現場を選んでくれるだけの理性があったから助かったようなものだ。

とは言え、あの頃は思考が走って大変だった。何度もアーガマの廊下を引き返したり、居留守を使ったり、刺客をかわす為とはいえ、あちこちの艦載員に声をかけて回ったりもしていた。カミーユにも行動を怪しまれて心配もかけてしまった。…まあ、もう終わったことだ。

 

ヌー曹長に口止めしておいた僕に対する殺人未遂事件の2件も報告が遅すぎて、憲兵でも物証や犯人を見つけられなかったのだろう。

だが、彼らは軍内部での犯罪者や犯罪者予備軍を見逃すつもりはないようだ。頼もしく思う。

 

憲兵の職務への熱意を思えば、僕が即時通報しなかったという事実は許しがたいものだろう。口止めを含めて。クワトロ大尉を捕縛する機会を潰してしまった。

憲兵は僕に警告をするついでに、僕のクワトロ大尉に対する見解を聞かせて、アムロ大尉に誘拐事件の当事者として、被害者として意識をもってもらおうという腹積もりか。迂遠な手段だ。

 

なんでこんな方法をとる?

いや、わざわざ取らなければならなくなった、と見たほうがいいのか?

 

もしかして、まさかとは思うけど、アムロ大尉は予定している証言の中でクワトロ大尉を庇うような素振りでも見せたのかな?

被害者意識が低い被害者はいるって小説で読んだことあるけど、アムロ大尉が?誘拐されて、縄でぐるぐる巻きにされてグラナダ基地まで連れてこられていたアムロ大尉が?

 

地球連邦軍における重要人物リストの上位にいるであろうアムロ大尉に対する誘拐ならば、憲兵だけでなく連邦軍上層部でさえ、何が何でも犯人を死刑に持っていくだろうけど。

 

ああ、なるほど。死刑にするために僕に今、指摘させているのか。アムロ・レイは被害者なのだ、と。

 

憲兵だってクワトロ大尉の動機については既に検討がついているだろうに。彼らの中には犯罪心理学のプロだっている。わざわざ、僕に言わせなくても。だいたい、ど素人の意見だ。アムロ大尉は参考にするだろうか?

 

「俺なんかを、いや、奴は俺に何を求めている?彼女の敵討ちだというならともかく。」

 

その言葉に違和感を覚えた。

アムロ大尉は心当たりというか、こういう系統の犯罪者心理に疎いのかな?

敵討ち…戦場でシャア・アズナブルと戦ったというのならば、そう、か。そういう風に考えてしまうものかもしれない。かつての部下の仇アムロ・レイを辱めるため、と考えるのは普通と言えば普通、か。

でも、アムロ大尉は、シャア・アズナブルから、いやクワトロ大尉から、殺気立ったものを感じていない。むしろ、クワトロ大尉とブライト艦長の部屋に居られるくらいには2人の関係に緊張感は感じない。第三者の僕でも。

 

あまり、ニュースに興味がなかったのかな?推理小説とかクライム小説にはよくある動機なんだけど。

まあ、小説はフィクションとして割り切るタイプだったりするのか?そっちの方が健全だ。

 

健全なんだけど、より一層、クワトロ大尉の動機の心当たりについて、アムロ大尉に話すのは僕の居心地が悪くなる。…最初から話すしかないから、だ。

 

「カミーユ・ビダン。あの子は、僕が着任する以前のアーガマで『アムロ・レイ』のようだ、あなたの再来だ、と周囲から頻繁に言われていた時期があるそうです。クワトロ大尉を始めとした周囲の人間に、あなたのようなニュータイプを目指すべきだ、と言われ続けていた。」

 

「……なんで、急に今、カミーユの話を?」

 

僕がクワトロ大尉の行動理念をはっきり理解したのが、この話を聞いた後だからだ。

1度目のアムロ大尉の訪問の後、カミーユからこの話を聞いて、クワトロ大尉の数々の謎の言動、そして、それに対する周囲の人間の反応と感情、そう言う物を総合的に見て、シャア・アズナブルにとって『アムロ・レイ』が強烈なキーワードだ、とようやく理解できた。

 

「カミーユは、エゥーゴに、いや、クワトロ大尉に『アムロ・レイ』になることを求められていたんです。おそらくは、アムロ大尉、あなたを7年間見つけられなかったから。だから、『アムロ・レイ』を自分の手で生み出そうとしたんです。戦場に追い込んで、逃げ道を塞いで、少年兵に仕立て上げてまで。……『アムロ・レイ』の身代わりを欲した。」

 

憲兵は一言も否定しなかった。首を横に振りさえしない。つまり、同一見解ということか。これは、僕だけ貧乏くじを引かされてるんじゃないか?アムロ大尉に恨まれたくはないんだが。

 

「俺の、身代わり?身代わりってなんだ?何をさせるための、いや、俺とカミーユ・ビダンは何の関わり合いもない。面識も…」

 

そう、その関わりも面識もない人間になれ、とカミーユは無理難題に振り回されていた。両親を失い、故郷を失い、平穏な生活を失った子供は不可能を求められた。

社会と隔絶し、無理難題で心身を疲弊させ、危機感を煽って正常な判断力を奪い、恐怖や怒りに共感した振りをしてみせ、自分たちの仲間として居場所を提供する。

つまりは、洗脳だ。

 

カミーユは、

 

「故郷を失くしたニュータイプの素質をもつガンダムに乗った少年。」

 

だったから、シャア・アズナブルによって洗脳されかけていた。

 

僕のその言葉を聞いて、アムロ大尉は震えあがったような青ざめた顔をした。

 

「…この間、シャアが言っていた。俺に似た少年がいる、と。故郷を失くしたこともよく似ている。そうも言っていた。まさか。」

 

アムロ大尉の故郷、サイド7のコロニーを破壊したのは、まさにそのシャア・アズナブルのはずだが、よく面と向かって言えたな。

 

え?本気で?本当にアムロ大尉に面と向かって言ったのか?

 

「本当に、そんなことを?アムロ大尉に?」

 

「シャア・アズナブルだ。それくらいのことは言う。」

 

少し怒りと困惑の混じった表情でアムロ大尉が答えた。その時の不快感を思い出したのかもしれない。

数多の苦難を乗り越えるには、アムロ大尉くらいの我慢強さと冷静さが必要なのかもしれない。僕には難しい。心が追いつかない。

 

「エゥーゴの本当の目的は、ニュータイプの未来を切り開くためではないんだな?」

 

アムロ大尉は平静を取り戻すのも早かった。彼は、僕より若いのに。己の拙さが恥ずかしくなる。年上の威厳というものが、まるで出せないのは恥ずかしいな、エグザべ・オリベ。

 

「はい。エゥーゴは本来、組織されるべきものではありませんから。許されるべきでもなかった。ティターンズの横暴や違法行為と戦う、というのなら、彼らが、憲兵がいます。」

 

そう、本来、軍の統制を外れた横暴や虐殺、犯罪行為を取り締まるために憲兵がいる。エゥーゴの拠点に憲兵が多いのは、エゥーゴそれ自体が、彼らの監視対象であるからだ。

 

「でも、僕にはエゥーゴが必要でした。バスク・オムから、子供を護るために。彼に少年兵という身分を与えたままにしているのも、そうです。民間のままにしておくより、軍に籍を置いた方がカミーユの安全を確保できると思いました。」

 

思い返せば、浅はかな判断だ、と言えるだろう。もっと、他に方法があったのではないか?本国に逃げれば、いや、バスクであれば、カミーユの亡命を宣戦布告のきっかけにするか。しかねない。ガンダムMK-Ⅱの件もある。そもそも、本国は治安が…ニュータイプにとって良い環境とは言い難い。

 

もっと、僕に知恵があれば、手段があれば、相談できる相手がいれば。

 

「僕がそう判断して行動して居た頃ですね。エゥーゴがホワイトベースのブライト艦長を確保できたのは。カミーユの幼馴染のファ・ユイリィも。」

 

「は?ホワイトベース?」

 

「再現です。あなたの経験した一年戦争を、このアーガマでカミーユに対して再現しようとした。」

 

たまたま、なのか?それとも、計算なのか?僕にはわからない。ホワイトベースの再現ができる要素がそろってしまった。

アーガマ、ブライト艦長、守るべき幼馴染、そして『ガンダム』。

 

「クワトロ大尉の認識の中では、アムロ大尉なら謎のモビルアーマー、ジュピトリス製のアンノウン1に対して戦闘を仕掛けていた。でも、カミーユは僕の指示に従って、退いた。僕がいる限り、カミーユは『アムロ・レイ』にならない。」

 

 

 

だから、僕を殺したかったんだろう。シャア・アズナブル。

 

 

 

 

 

 

 

 

可哀そうに、アムロ大尉は今、僕の部屋のトイレで吐いている。

音は聞こえないが、そういうことだろう。

 

「僕は出過ぎた真似をしましたか?」

 

部屋にいる憲兵に問う。彼らは重々しく首を横に振った。

アムロ大尉と話している間、僕は憲兵の反応を視界の外で伺っていた。彼らは一度も僕の憶測を否定しなかった。大きく外れてはいないから、だ。少し頷きすらしていた。

 

憲兵と意見が一致した。一致してしまった、か。

 

「外れていればよかった。そう思っています。」

 

そう、僕の考えすぎなら良かった。

グロテスクな話だからだ。他人の人生を己の掌で弄び、そして、その自覚すらない。そういう人間がいる。

 

「アムロ大尉は、平和な時代であれば、まだ、学生いや、博士課程を目指されていたかもしれない若者です。社会人だとしても、まだ先輩や上司の指導が必要な年齢でしょう。」

 

憲兵を責めるつもりはなかったが、思わず出てしまった僕の言葉に彼らは悔恨の表情を見せた。それだけで、察することができる。

そうか、本国と同じなのか。地球連邦ですら、

 

「軍でも信頼できる精神科医やカウンセラーは、自傷他害の行為のあるものや、入院措置が必要な患者を優先して診察しています。それから、未成年の保護者のいない子供を。ニュータイプという思想が流行するに従い、悪質な藪医者やカウンセラーが増えました。中には新興宗教やテロリズムを説く犯罪者もいるのです。人手が足りないんです。」

 

そうなのか。

人手が足りない。その現実は、僕も嫌と言う程、分かっている。

僕だって、傷ついて行き場のない人間だった時期もある。今、ここにいるのは、僕の運が良かったからでしかない。

人手が足りない、というのは、助けたい人間を、助けられるはずだった人間を助けられない、ということだ。

後悔はいつも着いて回るのに。

 

これも、一年戦争の傷だ。まだ塞がることのない傷。人類の半数が失われた一年戦争。

永遠に戻ることのない、あの、故郷。

家族と、友人たちと、親友たちと、もっともっと話して、笑いあっていたかった。彼らの助けとなり、そして助けてもらいたかった。支えあって生きていたかった。

もっと、長い時間を。

 

現実を思う。今の現実を。

僕は孤独に蝕まれているか?違うだろう。カミーユがいる。ファさんがいる。エマ中尉もアポリー中尉もアストナージさんも、力になってくれるだろう人はもっといる。アムロ大尉もブライト艦長もそうだ。

僕は彼らの力にもなりたい。

 

 

 

ああ、でも今は。今だけは、何でもない話を友人としたいな。悩みのある話ではなく、何でもないような普段の、あの故郷で友人たちと交わしたような話を。

 

僕はパプテマス・シロッコと話がしたいと思った。

彼もそう、思っていてくれるだろうか。




エグザべ中尉はジオン共和国軍からの義勇兵

若手25歳でMSパイロットとして派遣されてきた、はず

一年戦争未経験者

え?あの短時間でこれだけの仕事を??


スレ5での何故なに君はZガンダムについて曰く「ナレーターとあらすじとウィキペディアですら嘘をついてる」(さらしあげ)

まあ、俺も思うところはあります。宇宙世紀におけるエゥーゴ、いらんことしいじゃね??つか、エゥーゴも人、殺し過ぎじゃね?ライラさん、ティターンズじゃないし…

憲兵でも手伝ってろよ。何の証拠もなく武装蜂起したとこでティターンズに正当性与えるだけだろ。
ゲバ棒持って暴れりゃ世の中が変わる、なんて言うナイーブな考えは10歳で捨てろ。


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