機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
病の身であるブライトを、子供たちを乗せたアーガマは再度戦場へ行く。
行かなければ、コロニーがここグラナダへ落ち、何の罪もない人々が殺されてしまうからだ…
ブライトに託された、カツ、ミライ、ハサウェイ、チェーミン。
彼らを護ることを誓いながらも、アムロはブライトの下へ行くことのできない己を呪った。
僕がジャマイカンのコロニー落とし阻止に当たり、再度、単機突撃を提案したのは、つまり親切心からだった。ブライト艦長の責任感に応えようと思った。
アーガマには、というかエゥーゴには今、クワトロ大尉がいない。正直、僕としてはブリーフィングにもデブリーフィングにも依然乗り気ではない彼の不在はありがたい。ブリーフィング前のブリーフィングなどという訳のわからないことをしないで済むし、自分の命を狙った人間が艦内にいないというのは、とても気分が楽だった。
思考も走らなくて済む。ついでに戦場での後玉も気にしなくて済む。
しかし、純粋な戦力としては、クワトロ大尉の不在は困る。ロベルト中尉も病院だ。エゥーゴのMS部隊はグラナダ占領時よりは練度が上がってきているが、それでも、まだ、万全とは言えなかった。先の作戦でも戦死者はいる。
パイロット達の戦闘意欲は高いが、連戦でもある。彼らの疲労も考えなければならない。
そうであるなら、負傷者や戦死者を減らしたいのであるなら、短期決戦を求めるしかない。
定石を打つ。
ジャマイカンの乗る戦艦アレキサンドリアさえ落とせば、降伏する戦艦も出るだろう。何せ、地球連邦軍正規部隊でさえ、他のティターンズの派閥の部隊でさえコロニー落としに関しては、積極的にエゥーゴへの協力を申し出てくれているのだ。アレキサンドリアを囲む戦艦の中にもジャマイカンに叛意を持つ艦はあるかもしれない。いや、そこまでは期待し過ぎか。
フォン・ブラウン市をすぐに出港したジャマイカンの艦隊は補給も万全ではない。滞在できた期間の短さからそう、判断できた。おまけに、相手はルナリアンの首都フォン・ブラウン市だ。ルナリアンなら、よく回る二枚舌で、補給をできる限り遅らせることくらい造作もない。
「だから、カミーユ。ファさん。先日の作戦よりは、ずっと確実性があるよ。大丈夫、ドダイも使えるし。すぐ行って、すぐ戻ってくるだけだよ。」
まあ、リック・ディアスも悪い機体ではない。愛機が欲しいところだけど。
「そんなこといって!!僕は、ケガだってまだ痛むの知ってますよ!」
うん。カミーユとアムロ大尉に殴られたところは、まだ痛い。だから、より一層、気を付ける。具体的には敵MSとの交戦をできるだけ避ける方向で。
ジャマイカンの艦隊はコロニー落とし遂行のためにMS部隊をこちらに差し向けるだろう。直掩MS部隊は少ないはずだ。できる。
「カミーユと私が、また、泣いてもいいんですか?!エグザべ中尉さんは、そんなに薄情者なの!!」
ファさんに力いっぱい耳を引っ張られる。カミーユからは羽交い絞めにされてるし、動けない。
「違う、違うって。待て、待てって。パイロットスーツは!!」
「ファ!!俺がいつ泣いた?!」
「アーガマ中が知ってるのよ、カミーユ。私たち2人が泣いてたこと。今更よ。カミーユそっち、抑えてよ!」
「待って、パイロットスーツは、待ってくれ!大丈夫だよ、今回は。」
2人からパイロットスーツを守るのさえ一苦労だ。できるだけ届かないように上にあげて持ち上げている。ファさんは耳と頭を押さえつけようとしてくるし、カミーユは膝裏を蹴ろうとまでしてくる。
そんなことをしている横を、エマ中尉が鼻で笑って通り過ぎて行った。止めてくれないのか、カミーユとファさんを。
「約束しただろう、カミーユとファさんのところに必ず戻ってくるよ。けがの治療もしないといけないし、何より、君たちを護るから、必ず戻る。」
そう、離れていては護れない。だから、僕は約束する。いつかは、果たせなくなる残酷な約束でも、カミーユとファさん、2人に命を懸けても子供たちを護りたいと思う人間がいることを忘れさせはしない。
生きて戻らなければ。殴られた痛みが、それを指摘していた。
僕は、いつもちょっとだけ、予測が甘い。人の悪意を甘く見過ぎている。それは教官にも先任軍曹にも指摘された欠点だった。実際、ジャマイカンがグラナダへコロニーを落とすことも読みそこなったし、今だってそうだ。
敵MSのハイザック3機とアンノウン1機。フォン・ブラウン市の時に戦ったアンノウンと同型の機体だ。モビルアーマーとモビルスーツの変形機構を持つ、パプテマス・シロッコの作った新しい体系の機動兵器。
つまり、MSだけでも単純に強い。
パイロットの腕も、ベテランなのだろう。あんなややこしい機体にすでに慣れている。一筋縄ではいかないか。
アレキサンドリアは、既に艦橋を、ジャマイカンを落とされて碌な反撃もできはしないだろうが、それでもまだ、弾幕くらいは張ってくる。
「味方を、巻き添えにするような弾幕を!」
だが、それならこちらも利用するまでだ。アレキサンドリアの弾幕で、この4機を撒く。できるはずだ、戻るためならば。
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「白いリック・ディアス1機でよぉ!!」
ヤザン・ゲーブルは激高した。
不本意なコロニー落とし作戦、アレキサンドリアで逃げを打つジャマイカン、そして、白いリック・ディアス。
全てが、俺をイラつかせる。
白いリック・ディアスはコロニー落としをするジャマイカン艦隊とそれを阻止する連邦軍勢力との戦場を大きく迂回して、アレキサンドリアだけを狙ってきた。
気づくのが遅れたのは、己のうかつさだ。ハンブラビのビームライフルの射程距離に入れた時には既にアレキサンドリアのデッキは対艦ミサイルランチャーで、ジャマイカンごとふっ飛ばされていた。
この俺が、出し抜かれた!
指揮を失ったアレキサンドリアの銃手は混乱のまま味方を巻き添えにするような弾幕を張っている。ビビりが!
アドル曹長以下3機のハイザックは下がらせるしかない。奴らはまだ、新兵だ。いざとなった時の味方撃ちはできないだろう。
白いリック・ディアスは、中破したアレキサンドリアに張り付いて同士討ちを誘う気でいる。対艦ミサイルランチャーも次弾装填しているのを見ると、奴の目的もわかる。アレキサンドリアを使って、俺を、ヤザン・ゲーブルを撒く気でいる!
なめやがって!!
「俺を撒けるもんなら撒いてみろ。腰抜け野郎が!!」
ビームライフルを牽制に撃ち、モビルアーマー形態で距離を詰めるが、ここに至っても白いリック・ディアスのパイロットは冷静か。アレキサンドリアに張り付くように動く!弾幕に怯えていない動きを。
急接近する俺にも、前後左右から追い詰めようとするアレキサンドリアの弾幕さえも気にもかけず、自分の足下にあるアレキサンドリアに向かってミサイルランチャーを撃った。
この近距離で!!爆発するアレキサンドリアの誘爆を避けようとすれば、距離が開く。
くそがっ!!
轟沈するアレキサンドリアからは離れるしかない。
白いリック・ディアスは逃げるのが見える。追いつけない。モビルアーマー形態でも難しい。轟沈するアレキサンドリアが邪魔だ。
「アドル曹長、そちらは無事か?!」
ミノフスキー粒子の散布濃度が濃い。機体の接触回線しか使えないか。ハイザック隊のアドル機に接触する。
「はっ、ヤザン隊長、こちら3機は無傷です。白いリック・ディアスは追いますか?」
新兵らしい答えだ。積極的に敵を倒そうとする意志と彼我の力量差もわからない初々しさだ。
かわいいもんだな、新兵って奴はよぉ。しかも、それが3機とも無傷とは俺を喜ばせてもくれる。
「いや、次がある。覚えておけよ。あれが、エースって言われる奴の動きだ。」
こいつらを徹底的にしごいてやろう。ヒイヒイ言って泣けなくなるまで徹底的に一人前の兵士にしてやる。この混乱の戦場を無傷で生き延びた新兵を、この俺がエースにしてやる。俺の次に有名なエースに、だ。
「エース。有名なクワトロですか?」
「…違うな。記録にある動きと違う。だが、冷静な奴だ。手ごわいぞ。」
先ずは、敵の動きの癖を覚えさせることからか?資料映像か…めんどくさいな、俺が直接追い回す訓練にするか。
「逃げましたが。」
「バカか!!アレキサンドリアの弾幕も誘爆も、俺のハンブラビも気にもかけなかった!戦場に慣れたやつだ!退くときに欲を出さずに退く。お前できるか?」
「わかりません。」
素直だ。素直で真面目な奴は良い兵士になれる。生き残った兵士がいい兵士だ。男の戦いができる、戦いに誇りを持てる良い兵士になる。
「それでいい!だが、生きていれば必ず勝てる機が来る。機を逃すなよ!!」
先ずは、そこからだ。この有望で素直な青臭い新兵を生き残らせる。こいつらには才能がある。俺の次に。
その俺を出し抜き、逃げ切った敵。奴も良い兵士だ。分かる。
いい度胸だ、白いリック・ディアス。次は撃つ。
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宇宙を自分の思い通りに飛ぶのは難しいと、僕はカミーユに言った。本当にそうなのだ。
目標はアーガマだから、そこに向けて飛べばいい、そのはずなのに。宇宙は目印になるものがない。距離感を測るものがない。
アーガマをリック・ディアスの進行方向のセンターに入れてはいても、少しずつずれていくことがある。本来なら、都度修正を入れていかなければいけない。
宇宙で戦艦は、しかも動いてる戦艦は小さすぎる。
そして、月と地球とコロニーの引力、か。
僕のリック・ディアスの推進剤がきれかけている。また、読み違えたか。もう、ちょっと笑ってしまった。笑うしかない。
しかし、アーガマに戻るためには、仕方なかった。あのアンノウンからは逃げるしかできなかったのだ。アレキサンドリアを盾にしてたはずの僕のリック・ディアスをビームライフルで正確に狙撃しようとしてくるし、巧みに弾幕に追い込もうともしてくるし。あのアンノウンがMA形態になった時の速度を考えれば、推進剤はあそこで使い切るしかなかった。
今は慣性だけで進んでいる。
まぁ、ある程度近づけば、光点滅信号で気付いてもらえるだろう。この機体白いし。
コロニー落としは無事阻止できたようだ。リック・ディアスの計器はそう計算を出している。よかった。どこに落ちるかまでは、計算できないが、おそらく人的被害は少なくなるはずだ。
……いや、本当なら、被害なんてないほうがいい。薄情になりすぎるな、エグザべ・オリベ。
ティターンズとの戦闘ももう終わっている。戦火は見えない。
退却まで間に合うかな?
モニターに光が移る。味方の光点滅信号だ。誰かが、僕に気づいてくれたか。運がいい。
返信をこちらも光点滅信号で送る。推進剤がきれた、と。
ガンダムMk-Ⅱが猛スピードで近づいてきて、僕はまた、カミーユに怒られることを悟った。
カミーユ。僕を見つけてくれて、ありがとう。
エグザべ中尉に逃げの一手しか選ばせなかった漢ヤザン・ゲーブル!!
ヤザンはいくらでもカッコよさと強さを盛っていい漢!
パプテマス・シロッコはいくらでも天才性を盛っていい男!
二次創作における便利枠。Zガンダム本編内だと設定も薄いし、こっちで設定つけて大丈夫やろ、の精神。
弊SSの公式カップリングはアドル×シドレです!よろしくお願いします!!