機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
エグザべ・オリベはアレキサンドリア撃沈の任務に際し、ヤザン・ゲーブルと交戦した。
出撃前にしたカミーユとファとの約束を果たす為に、リック・ディアスの推進剤を使い果たして帰艦する。
戻ってきたエグザべ・オリベを待っていたのは休息ではなく、情報部の不穏な脅迫だった。
「エグザべさん?」
僕はガンダムMk-Ⅱでアーガマに着艦する味方MSの支援をしていた。
先の敵MS部隊殲滅作戦ほど激しい戦闘は行われないだろうけれど念のために、とエグザべ中尉に先の作戦と同じことを任されていたのだ。今回はビームライフルを交換しなくてすんだ。アーガマ近くまで攻めてくるMSも少なかった。エゥーゴだけでなく、一部のティターンズ派閥の戦艦も地球連邦軍も僕らに協力してくれたおかげだった。
彼らの中には、今後、エゥーゴへの合流を表明してくれているものもあるらしい。彼らの協力のおかげで、コロニーは半壊し、コロニーデブリの落下地点もグラナダより300キロメートルは、ズレた無人地域に変更できたようだ。良かった。きっと誰も傷つかないで済む。
全部、艦橋からの情報だった。
エグザべさんは?アレキサンドリアの撃破に向かったはずだ。
戦闘の途中で、敵の動きに混乱が見られる、と観測班も言っていたから、襲撃には成功した、と思う。ブライト艦長もそう、言っていた。
途中まで白いリック・ディアスを乗せていったドダイも無事戻ってきている。
帰りはエグザべさんのリック・ディアス一機だけになるはずだけど、帰ってきてくれるって僕たちは約束した。
ガンダムMK-Ⅱのモニタには白いMSが映ってない。アーガマの艦橋からも特に連絡が無い。エマ中尉もアポリー中尉も1度は帰ってきているのに、エグザベさんはまだ戻ってきていない。2人が率いている部隊は短い休息と補給の後、人命救助のために再度出動して行った。
MSや戦艦からの脱出ポッドを回収する任務だ。
今まで、そういう任務があることさえ、僕は知らなかった。エゥーゴは、戦闘後に人命救助する組織じゃなかった。そういう余裕さえない組織だった。
そうだよな、戦闘が終われば、MSや戦艦から降りたら、みんな当たり前に人なんだから、助けていいんだ。助けるのが当たり前だったんだ。
父さん…父さんはMSから、クワトロ大尉のリック・ディアスから降りてくれてたじゃないか。あそこが戦場でさえなければ。父さんを、戦場からもっと遠くに離すことができていたら…
戦場から離れたら誰だって、人なんだ。父さんも、父さんに戻ってくれていた。きっと。
ミノフスキー粒子さえなければ、通信さえ、いや、父さんときちんと話すことが出来ていれば!
ミノフスキー粒子の散布濃度が濃いから、エグザベさんからの通信が届いてないだけか?もう、戦場じゃないのに、戦闘は終わったのに、なんで通信は回復しないんだ。
通信ができないのは駄目だ。人命救助ができないのは駄目だ。命を助けられないのは、駄目なんだ。この宇宙で、助けられる命を見捨ててしまうのは、酷いことなんだ。
宇宙は広いんだから、通信なんて一番大事なのに。
救難信号が使えなくしてしまうミノフスキー粒子は命の敵だ。酷い兵器だ。それが、わかる。この宇宙で、迷子になったら、見捨てられたら。
酷い、酷いことになるのに!
ふと、僕の思考が走った。粉々に砕かれたガラスが擦れあうような音を聞いた気がする。
ガンダムMk-Ⅱのコクピットの中でその音がした方向を確認する。砕けたキラキラ光るガラスが宇宙を流れていく。音を立てながら。僕の頭の中で、宇宙をガラスのキラキラが流れていく。
大丈夫か?僕は今、思考をちゃんと制御できているか?
ガラスが流れる先に、思考が走った先に何があるのか、確認しようとしている僕は大丈夫か?
でも、この、砕けたガラスは、それを見ているガンダムMK-Ⅱは、あの、時と一緒で…
コクピットの中で勝手に僕の指先が震えて上手く操作できない。ガラスのきらめきを追っているはずのメインカメラが不器用にガクガク動いてる。モニタの映像でそれが分かってしまう。何やってるんだ、僕は!
モニタがブレていたら、人命救助する側が揺れていたら!助けられる人も助けられないだろ!
ガクガクに動くメインカメラを反映しているモニタに一瞬だけ白い光が反射した。ガラスが反射するきらめきとは違う強い光。そうだ、エグザべ中尉は戻ってくるって言ってくれていただろ!
「管制聞こえますか?リック・ディアス、エグザべ機を確認しました。ガンダムMk-Ⅱ、カミーユ、迎えに出ます!」
艦橋からブライト艦長の許可が出る。戦闘はもう終わったのだ。なにしてるんだか、エグザべさんは。
『推進剤がきれた。救援求む』
そう、光点滅信号が読み取れた。本当に、もう!!なにしてるんだか!!
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僕はアーガマに帰ってきた後、当然カミーユに怒られた。また、一発痛いのをもらってしまった。しかし、謝るしかできない。
まだ、状況は落ち着いていないと感じる。どうして、そう、感じるんだ?アレキサンドリアは、コロニー落としを画策したジャマイカンは撃沈したはずなのに。
だめだ、思考がまた、走り過ぎている。現実を見なければ。
アレキサンドリアが率いていたティターンズの残存艦隊は2隻を除き、全面降伏した。とは言っても軽巡洋艦4隻か。降伏した4隻は武装解除をエゥーゴと協力艦隊で確認した後、グラナダに送られる。
残った2隻はエゥーゴの観測班によって追尾されている。補給もなく連戦続きの、僚艦も直掩MS部隊もほぼない敵戦艦だ。サイド7方面に向かっているのなら、ティターンズの本隊と、つまりバスクと合流する予定なのだろう。グラナダ基地の方が近いんだから、降伏すればいいものを…僕が、MS部隊殲滅作戦などと言うもの実行した、からか?それとも、グラナダ基地襲撃か?
どちらも、恨みを買うには十分な作戦だった。
グラナダ基地は現在、エゥーゴの拠点だが、本来は地球連邦軍の正式な基地だ。
エゥーゴがグラナダ占拠後の手続きについては連邦軍上層部の査察の受け入れやら、憲兵隊の強化案の受け入れやら、まあ、様々あったが。
最終的に、ルナリアンの伝手と地球連邦軍側の提案を全面的受け入れることで、正式に地球連邦軍所属エゥーゴの拠点として認可された。
でなければ、僕らはただのテロリストでしかない。
現実に、初期のエゥーゴは本当にただのテロリストだ。
ブレックス准将とクワトロ大尉の手駒でしかなかった。
そして、その件の2人は今、地球のダカールで地球連邦政府の総会に出席しているはずだが。
「地球連邦政府総会にブレックス准将が出席していない?」
アーガマの情報部で僕は間抜けにも、そう、復唱した。
アーガマに情報部が立ち上げられてから、出撃さえなければ1日に1度は顔を出すようにしていた。その情報部から敵情以外の情報が上げられる程度の余裕と信用が出てきたことがうれしい。僕がやれることが増えるし、戦闘をしないで済む選択肢も模索できる。情報はどこへ行っても大事だ。
だけど、個人的には、こんな情報は聞きたくなかった。僕に聞かせていい情報か?
「ええ、2日目にはクワトロ大尉だけです。ブレックス准将は欠席されています。状況的に考えて、ありえません。」
そう、だよな。総会の議席の権利を持っているのはブレックス准将なのに、クワトロ大尉が出席してどうするんだ?何ができる?クワトロ大尉に、そんなことをさせて、ブレックス准将は何を考えている?何をしたい?
確認したところ、1人出席したクワトロ大尉は総会の観覧席に居たわけでもないらしい。ブレックス准将の席に居た、そうだ。なんで?
「クワトロ大尉がグラナダに戻るのはいつ頃になる予定かな?」
まあ、グラナダに着く前にどこかで憲兵に確保されると思うけど。いや、よくダカールまで辿り着けたものだ。もしかして、地球連邦軍はブレックス准将の確保も視野に入れて、泳がせていたのか?
連邦軍の監視から逃れるために、ブレックス准将は姿を消した?いや、准将がそんな用心深い人間であったのならば、グリーン・ノアからアンマンまでの連戦は無かった。
エゥーゴさえ立ち上げなかっただろう。
「我々でも把握しかねています。ただ、先のフォン・ブラウン市防衛戦の直前に、戦艦ラーディッシュと、グラナダ市のウォン氏の間で無線通信がありまして。ミノフスキー粒子散布前でしたので、情報部でも傍受できていました。」
情報部部員はよく話してくれる。本当にこれ、僕に話してくれていい内容か?
それに、フォン・ブラウン市防衛線か。だいぶ、前の話のように感じる。そんなわけはないんだが。
それを今頃?まさか、今まで情報を温存していた?
…何のため、か。分かるけど、分かりたくない。エゥーゴ内部で権力闘争が始まろうとしている。
ちょっと、また中尉の権限の範囲を越えそうだな。
と言うより、これは、流石に超えたらダメな一線だろう。僕が共和国軍からの義勇兵だということは、情報部は当然知っているはずだ。
戦艦ラーディッシュはエゥーゴ所属の戦艦だ。グラナダ基地強化のために東奔西走していたヘンケン艦長が、今は乗っている。先のフォン・ブラウン市防衛線こと敵MS部隊殲滅作戦でも活躍していた。クワトロ大尉はそのラーディッシュから百式で出撃し、ロベルト中尉とアポリー中尉に合流していた。
つまり、情報部はクワトロ大尉とウォン氏の無線通信に不審な点があると言いたいのだろう。わざわざ僕が戦闘から戻り、情報部に顔を出すのを待ってまで温存していた、ということか?温存するだけの価値があって、暴露するタイミング次第で致命傷を与えられる情報、か。
嫌な予感がする。聞きたくない。
「そ、れは、僕が聞かなかったことにできる情報かな?」
「ブライト艦長の体調は万全でしょうか?」
情報部が、バスクミームとシャアミームさえブリーフィングで堂々と流した情報部が、ブライト艦長の体調を心配している。
「もしかして、まさかと思いますが、たかが中尉の自分に先に確認してほしいという要請でしょうか?」
僕だって、思わず敬語にもなってしまう。だって、本来の中尉の権限で判断していい問題じゃないだろうことは、今の時点で明らかだ。
僕はただのMSパイロットだぞ!
「ブライト艦長の体調が万全なら、自分たちは構いません。」
つまり、脅迫だった。
エグザべ・オリベ中尉はジオン共和国軍からの義勇兵(大事なので以下略)
割と視聴者にスルーされているけれど、Zガンダム本編随一の大問題だと思うシーン。
この問題をどう処理するか、厳しいものがある……
コロニー落としは余裕で阻止できます。
弊SSのエゥーゴの戦力は充実しています。MS部隊もジャブロー降下してないから100機以上はあります。戦艦も10隻以上はあります。グラナダ基地があるからできることです。
おまけにティターンズ派閥の戦艦も地球連邦軍もコロニー落とし阻止に参加しています。
余裕です。