機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

31 / 138
エゥーゴの指導者ブレックス准将が暗殺された。

だが、クワトロ・バジーナはそれを隠したつもりで行動をする。

宇宙にいるエゥーゴの構成員やアナハイムエレクトロニクスにも隠したつもり、で彼は行動する。

それが、どのような結果を呼ぶのか彼は知らない。


暗殺

戦艦ラーディッシュのヘンケン艦長は、G3ガス阻止作戦の後、すぐにアーガマへ訪れた。

戦艦と戦艦の間をワイヤーでつないで物や人を輸送するランチ、つまり宇宙用の輸送ヨットに乗って来た、という。まあ、ランデブーしている戦艦間ではよくある移動手段だ。

荷物と一緒に運ばれるのだが、それさえ気にしなければMSやMAで移動するより早い。格納庫を経由しなくていいから。

 

ちょうどそのころ、僕はカミーユに1人で戦闘をしていたことを怒られていて、ラーディッシュとアーガマの間をランチが行き来していることさえ気づきもしなかった。

動きが鈍い敵だったし、エマ中尉もアポリー中尉も部隊を率いて周囲の警戒と援護をしてくれていたから、問題ないと思うんだが。

カミーユはちょっとだけ、ほんのちょっとだけ手が早い。何も、腹を殴ることは無いと思う。

 

そうか、ちょっと航宙期間が長くなってきたから、カミーユもストレスが溜まっているんだろう。アーガマはグラナダ基地にも戻れないまま、サイド2まで来ている。

それにまあ、連戦と言えば連戦だ。軍の規定なら、そろそろ10日程度のまとまった休日がでるのだが。ここ、エゥーゴだから、難しいかな?

 

おまけに、僕らは身の安全から、アーガマから離れるのは得策ではない。外出もできないし、出来たとしても警戒しなければならないこの環境はカミーユとファさんみたいな子供には辛いだろうな。

何か、室内でもリフレッシュできるような遊びはないかな?

僕がカミーユくらいの歳の頃は、何をしていたんだっけ?友達と思いつくまま遊びに出ていたか。あまり参考にならないな。

何か簡単なテーブルゲームでも取り寄せるかな?カミーユは頭を使う作業が好きみたいだし。

チェス辺りは一通りできると、どこへ行っても一目置かれるようになる、そうだ。なんでかはよくわからないけど、と高校の友人達は一時期そう言って、チェス盤なしの口頭だけでプレイしていた。

 

それとも、機械作業が好きなら、それこそ新型ハロの組み立てタイプを取り寄せてもいいかもしれない。カミーユが今持っているハロは、なんとアムロ大尉の持ち物だった、という。

アンマン近くのコロニーのデブリの中から見つけたと聞いたときは、ちょっと怖かった。凄いという驚きよりも、ゾッとした。なんでかは、よくわからないままだが。そういうこともある。

 

と、まぁ、僕がつらつらと、カミーユのストレスについて考えているのは、現実逃避のためだった。現実に、戻らなければ。

 

僕は今、アーガマの艦長室にいる。模範的な軍人の立ち方をしながら、ブライト艦長とヘンケン艦長の話し合いを情報部と憲兵と共に聞き流していた。

 

艦長室へは情報部の数名に囲まれて連れ込まれた。カミーユにはエマ中尉がついていてくれる。情報部はそこまで周到に準備をして、僕を艦長室に連行した。

 

エマ中尉はカミーユを始めとしたMSパイロット達に持久力を着けさせたいらしい。訓練室のランニングマシーンで10キロランニングを2セット行い、その後スクワットや腕立て伏せを各自の限界までさせて今後の体力養成訓練計画に役立てる、と言っていた。

連れていかれるカミーユの恨みがましい目が忘れられない…

その準備してくれた情報部も着いていった、というよりエマ中尉に連れていかれた。記録係が足りない、という理由で急遽抜擢されたからだ。彼らも恨みがましい目をしていた。情報部員は誰も彼も碌に寝られていない。ブライト艦長とヘンケン艦長の話し合いに備えるために彼らは、不眠不休で働いていた。

 

僕がヘンケン艦長との話し合いの場に居ることについては、ブライト艦長の許可が既に取ってあった。これは艦長室についてから知った。

 

僕はブライト艦長を信用して、あの仕事を引き継いだはずなんだけど。まぁ、仕方ないのか?僕はクワトロ大尉に命を狙われている当事者だから、という憲兵と情報部の配慮もあるのだろう。

そうであってほしい。そうでないと困る。

憲兵も情報部も僕の身分は知っている。エゥーゴの権力闘争の場に居ていい身分じゃないし、そんな権限もない。

本当に、この場に居ていい人物ではない、僕は。

 

憲兵はとうとう、航宙中の戦艦の中にまで数人派遣されるようになっていた。

コロニー落とし阻止作戦前のことだ。憲兵専用のブロックがアーガマの中に設定され、寝食は僕らアーガマの艦載員と全て分けられる。艦内で癒着が起こらないように、そう規定されている。

 

僕が、艦長同士の話し合いを聞き流しているのは、まあ、ちょっと信じられない話を聞いているからだ。

ブライト艦長は今にもまた、気絶しそうな顔をしている。ブライト艦長には本当に同情する。こんなに苦労を背負いこんで体調まで崩して、それでも、艦長という責任に真摯に向き合おうとする彼には、いつも頭の下がる思いだ。本当に、本気でそう思う。

 

でも、しかし、これは…

 

「カラバ?カラバとは、何です?こちらは聞いていません。」

 

ひきつった声で言うブライト艦長の気持ちはよくわかる。

アーガマはエゥーゴの旗艦なのに、よりによって、そのアーガマの艦長がエゥーゴの方針や予定を共有していないなんて。

 

そして、そのことを部下や憲兵の前でぶちまけられるなんて。

残酷すぎる。

 

「クワトロ大尉の受けた密命ですよ。ブライト艦長。大尉は地球で反ティターンズ活動をしている組織カラバと秘密裏に接触を持つことを今回の地球行で、出資者のアナハイムエレクトロニクスから依頼されていました。」

 

ヘンケン艦長は何でもないかのように、そう言う。ブライト艦長も僕も情報部も初耳の情報を。

憲兵も初耳なんだろうか?いや、ウォン氏の周辺は捜査しているだろう。憲兵の本部は把握しているか。

 

つまり、今、目の前でラーディッシュとウォン氏の無線通話の件とクワトロ大尉の帰還予定を、ヘンケン艦長に問いただしているのだが、これはもう、ひどい。

 

ヘンケン艦長はアーガマに事前連絡も事後連絡もなく、フォン・ブラウン市の敵MS部隊殲滅作戦直前にウォン氏との無線通信を行っていたことを認めた。

 

クワトロ大尉は確かに地球連邦政府の総会にあたり、ブレックス准将の護衛と秘書を兼任する予定を立てており、先の敵MS部隊殲滅作戦開始直前でウォン氏から即時現地に向かうように要請されたらしい。クワトロ大尉が、護衛が足りないことも認めたうえで、戦闘後に向かうと返事したのも認めた。

なんで?

 

クワトロ大尉は、エゥーゴで内部分裂が起こっているとティターンズに誤解させ、油断を招こうとしたらしい。

この会話内容で、どうやって?

アナハイムエレクトロニクスがティターンズに反抗的で敵対したのは確実な情報だけれど。いや、これももうとっくにティターンズは知っているか。

 

まあ、いったん置いておこう。

 

そんなことを堂々と言うヘンケン艦長も、肝心のブレックス准将の安否はわからないらしい。20日近く経っているのに、クワトロ大尉はブレックス准将の安否に関して連絡を寄こしていないと言う。

え?なんで?

 

ただ、謎の組織カラバとは順調に交渉が進み、クワトロ大尉はカラバが持つシャトルで地球周回軌道上に打ち上げてもらうので、アーガマかラーディッシュでランデブーして回収してほしいとだけ連絡が来た、という。

 

これ以上、よくわからないことは言わないでほしい。2度と!

本当に、もう、どうしたらいいかわからない。僕はバカになってしまったんだろうか?

ブライト艦長も、とうとう声が出なくなってしまった。

 

深呼吸。深呼吸だ。思い出せ、エグザべ・オリベ。

落ち着いて、考えるんだ。深呼吸。

 

「ヘンケン艦長。クワトロ大尉が、宇宙に打ち上げられてくる日程はいつ頃でしょう?ブレックス准将の安否はエゥーゴの進退に関わります。急ぎ確認しなくては。」

 

嘘だ。

ブレックス准将の安否はもう既にエゥーゴにとって、関係しない。亡くなっていても。

 

僕はテロリストのエゥーゴを、地球連邦軍所属のエゥーゴにした。ブレックス准将の代わりになる将官はとっくに決まっている。軍はそういうところだ。常にもしも、は考えられていて、そうであるなら、当然対策は取られている。

 

バスク?バスクだって、そんなことは知っている。ただ、バスクのような人間は次の将官も殺せばいいと考えているだけだ。

ついでに言えば、憲兵の監視対象組織エゥーゴでもある。名ばかりのトップに代わるかもしれないが、それでも、身辺や思想調査された確かな将官に代わる。

 

もちろん、絶対にクワトロ大尉が選ばれることはない。彼には既にシャア・アズナブルとして捕縛命令が出ているはずだ。

 

憲兵はアーガマに着任したとき、僕にだけそれを教えた。警告だと知った。身辺に気をつけろという意味か。

 

「すぐだ。アーガマとラーディッシュはグラナダに帰らず、このまま地球の周回軌道上に向かうことになる。」

 

ヘンケン艦長がそう、言う。嘘だろ。

 

「……初耳です。全てが。」

 

ブライト艦長が、呟くような小さな声で言う。だが、この静かな、誰も声を立てない緊張の艦長室ではよく響いた。

 

ブライト艦長の絶望はいかほどのものか。

アーガマの艦長に着任し、身を削る努力をしているブライト艦長を僕は知っている。彼は人命を守るためにコロニー落とし阻止作戦にもG3ガス阻止作戦にも最前線から逃げることはなかった。ブリーフィングもデブリーフィングもきっちり艦橋まで出てきて参加してくれる。兵からの人望も間違いなく高い。1年戦争の伝説を背負っていても。

その、ブライト艦長はエゥーゴの運営から外されている、と今、ここで、部下と憲兵の前であらわにされた。ないがしろにされている。

 

そもそも、アーガマもラーディッシュも連戦で、補給も戦艦自体の修繕も必要になってきている。ここへきてグラナダ基地へ戻れないとは。

 

兵が無意味に死んでしまいかねない。満足に戦えない。

 

「我々の、アーガマの動きはティターンズも監視しているでしょう。クワトロ大尉が乗ったシャトル回収中にティターンズから攻撃を仕掛けられる可能性は非常に高いと愚考します。ジャマイカンは、あくまでも彼らの一部でしかありません。」

 

僕の発言に、ヘンケン艦長は困った顔をする。

 

「しかし、こちらからクワトロ大尉に連絡はまだ取れん。」

 

ヘンケン艦長の言葉が信じられない。待ち合わせ場所は地球の周回軌道上だぞ。分かっているのだろうか。

まさか、クワトロ大尉はコロニー落としもG3ガス阻止作戦も知らないとでも言うのか?両方とも、とっく、ニュースになっていて、ティターンズの立場もジャミトフの立場も危うくしてくれている。

敵味方の両方に関係する重要ニュースだ。アーガマもラーディッシュも連戦していることは察せるだろう?補給が必要だろうことも理解しているはず。…補給や休息が無ければ、兵が戦えないことくらいは流石に理解しているよな?

 

「次の連絡で、月のフォン・ブラウン市の港に来てもらえるように、クワトロ大尉に連絡できませんか?」

 

それができれば、憲兵も大尉を捕縛しやすくなるだろう。ぜひ、正規の手段で、フォン・ブラウン市に来て欲しい。

頼むよ。

 

「無理だな。次の連絡のタイミングは、俺たちが地球周回軌道上に待機できたのを確認出来てからだ、と聞いた。」

 

なぜ、もっと密に連絡を取らないのか?

 

いや、分かっている。クワトロ大尉、シャア・アズナブルにとって、僕らは本当にどうでもいい存在だからだ。自分の思い通りに動くか動かないか。そこにしか基準はない。

 

アムロ大尉以外には、本当にそれだけなのだ。

 

「最悪の場合、エゥーゴとティターンズの戦闘区域に無防備のシャトルが打ち上がってくることになります。」

 

当然、最悪の場合、地球周回軌道上に待機することになる僕らはティターンズと戦闘になるだろう。

そうなると、僕らはいい的だ。補給も修繕も足りない戦艦とMS部隊。有能な敵なら嬉々として狩りに来る。

 

アーガマはエゥーゴの旗艦で、ティターンズの最優先目標だと、分かっていないのか?それこそ、まさか、だ。

 

この際、いっそのこと事故ということにして片付けても。

いや、だめか。

シャア・アズナブルには軍事裁判に立ってもらう。地球連邦のためにも、ジオン共和国のためにも、戦争を起こす為に身分と名前を偽りテロ組織を作り暗躍する人間が存在しているということの見せしめのためにも、シャア・アズナブルは正式な裁きを受けてもらわなければならない。

ついでに、エゥーゴの出資者のアナハイムエレクトロニクスにも釘さしできる。

 

「とにかく、その作戦は実行不可能です。ヘンケン艦長、我々は艦載員の命を預かる立場です。クワトロ大尉には申し訳ないが、たった1人のためにアーガマとラーディッシュを、他の戦艦も危険に晒すことはできません。ブレックス准将の安否は地球連邦軍に確認してもらいましょう。准将の立場にあり、地球連邦政府に議席をもつ人間が行方不明で安否不明などという前代未聞の事件です。憲兵に正式に捜査を依頼します。」

 

ブライト艦長はそう、判断した。判断してくれた。

どんなに、エゥーゴの上層に足蹴にされようと、ないがしろにされようと、ブライト艦長は部下の命を守ろうとしてくれている。だから、彼は信頼できるし、信用できる。

 

そういう姿を見ているから、僕はブライト艦長の力になりたいと思うのだ。




エグザべいつも大変だな編

ここ、書いてて胃が痛くなって大変だった。ブラック会社にいた頃を思い出して、動悸が止まらなかった。

え?エゥーゴを代表する戦艦の艦長なのに、エゥーゴの今後の予定とかブレックス准将の安否とか知らないんですか???アーガマの艦長なのに???
え?このやり取りが、実はエゥーゴの今後のかじ取りを誰が行うか、という権力闘争の一環だということも分かっていないんですか?ブライト艦長。

まあ分かってたらエグザベ中尉の同席は許可しない…
ブライトは一応『大佐』だけど、多分、佐官教育なんか受けてないんだ…多分、性格と思想で資格剥奪されてる。
俺が地球連邦軍上層部ならそうする。権力闘争とか根回しに向いてない。部下も殴るし。





スレで、どなたかが的確に表現してくださいました。
現状は

>>「もう事故ってことでロストにしていいか→裁判とアナハイムへのけん制があるからそうはいかない のコンボよ
貸した額がでかすぎて絶対破産にさせたくない債務者みてぇだ アーガマの不良債権シャア」

です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。