機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
もはや、ジュピトリスのパプテマス・シロッコの行動を阻めるほどの影響力さえ危ういものになっていた。
コロニーレーザーとジュピトリスの補給を握っている、という危うい均衡の上で成り立っている関係であった。
もはや、雌伏の時ではない。パプテマス・シロッコは、そう判断し、ティターンズ内で暗躍を始めた。
パプテマス・シロッコ大尉は、人を、人類を導くことができる才能と魅力と実力を併せ持った、俺たちジュピトリス艦載員の希望だ。
俺たち、ジュピトリスが木星へ必要物資を届け、ヘリウム3を採掘するにあたり様々な苦難がある。
まず、木星までは往復4年かかるのだ。木星に行くだけで、2年。そして、木星の現地勢力である木星船団公社との交渉、ザビ家残党や宙域を行き来する武装強盗団、何より、人間が打ち勝つことが難しい木星の厳しい環境。高重力、強力な磁場、放射線。
全てが苦難の道程だった。
本当に様々な敵が俺たちに襲い掛かって来た。人類の存続と発展のためのジュピトリスに容赦せず襲ってきた。
それを搔い潜り、1年戦争を挟んで計8年の歳月をかけてでも、地球圏に戻って来れたのはパプテマス・シロッコ大尉の指揮と鼓舞があったからだ。
本来は、こんなに地球圏への帰還が遅くなる予定ではなかったのに、予定外の事態にもパプテマス・シロッコ大尉は落ち着いて対応してくれた。
頭が固く木星内部での勢力、権力争いに忙しい木星船団公社からも、大尉が一目置かれるのも当然だった。
地球圏を出発した当時、まだ18歳だったパプテマス・シロッコ少尉にこんなに大きな負担を強いることになるとは、彼にジュピトリス艦載員5,000人の命を預けることになるとは誰も思っていなかった。
全て、1年戦争のせいだった。
しかし、パプテマス・シロッコ大尉はそれを成された。俺たちの期待に応えてくれた。人類の存続と発展のため、俺たちのためにジュピトリスを導いてくださった。誇り高く、素晴らしい、俺たちのパプテマス・シロッコ大尉。
本来なら、もっと上の将官位にあるべきお方だ。地球圏を、人類を守られるべき方だ。
ジャミトフなどという人類の害虫などより、よほど大将の地位に相応しい方だ。
1年戦争という、馬鹿気た争い、人類が半分も亡くなってしまった争いを起こすような地球圏の人類ですらパプテマス・シロッコ大尉は救おうと今、尽力されている。
俺たちジュピトリス艦載員を、できるだけ大規模な争いに巻き込まないようにも奔走されている。
今、ジュピトリスは人類の存続と発展のためにある輸送艦だというのに、ティターンズに協力をしなければ補給さえ危うい状況に置かれている。ようやく地球圏に帰ってこられたというのに、地球圏は荒れ果てていて、木星どころかジュピトリスにすら報いるだけの余裕がない。
品性のない地球圏の人類の争いにジュピトリスは協力せざるを得ない。
この状況で、ジュピトリスが、仲間が戦場に行かず無事に済んでいるのは、パプテマス・シロッコ大尉が1人、奔走されているからだった。
ジュピトリスを守るために、それが1番の方法だと判断なされたのだ。我々を、守るためにパプテマス・シロッコ大尉は、ティターンズからの侮辱も屈辱も飲み込んでくださった。
だからこそ俺は、命を懸けてもパプテマス・シロッコ大尉の力になりたい。
そう、思う人間が俺たち以外に、地球にも増えたことは良いことだ。喜ばしい。
エグザべ・オリベ、見る目があるじゃないか。
ジュピトリス見学の申し入れ書。それはグラナダにある有名高校から発信されたものだ。引率責任者に、『ザビエル・オリバー』がいる。引率されてくる高校生は『カミロ・ダン』『ファア・リリー』の二人か。
見学の申し入れ書を、パプテマス・シロッコ大尉は面白そうに眺められた。
大尉の眼がこちらを向く。俺なんかの意見を聞いてくださるだなんて。
「健気にパプテマス・シロッコ大尉を慕う姿は、私としては喜ばしく感じます。」
「エグザべは律儀な男だ。私の意図することをこんなにも読み取ってくれる。ハイファン、おまえと同じくらいに。」
エグザべ・オリベ中尉は、パプテマス・シロッコ大尉に地球の友として認められた人間だ。そして、私と同じくらいに信頼されている。
物のわからない私でさえも、パプテマス・シロッコ大尉のお気持ちが分かる。確かに律儀な男だ。名前と身分だけは偽ってあるが、ジュピトリスに正式な訪問手続きを取って来た。建前を立てることの重要さを知っている。
「では、間違いなくパプテマス・シロッコ大尉を裏切るようなことはしないでしょう。恥知らずのティターンズどもと違って、あなたの期待に応える様に全力を尽くすはずです。」
物のわからない俺でもわかる。俺がそうだからだ。
エグザべ・オリベ中尉、あなたもそうだろう。
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「久しぶりだ、パプテマス・シロッコ!元気そうでよかった!」
エグザべは出迎えた私を見ると、にこやかに笑い、そう言う。私も、このパプテマス・シロッコもお前を心待ちにしていた。格納庫の上階で私がお前を待っていたことに気づいていたな。
「エグザべ、お前も健勝で良かった。連戦だったのだろう?」
そう、心待ちにしていた。だから、ジュピトリスの移動先にサイド2を選んだのだ。お前も私の意図に気づいた。
わざわざ、ハイスクール学生の社会見学という建前と正式な書類を作ってまで、ジュピトリスへ訪問してくれた。これならば、ティターンズであろうと口出しはできない。
いや、本来ならば、このパプテマス・シロッコの、木星船団公社のジュピトリスに対してティターンズは口出しできる立場にないのだが。
ジュピトリスの格納庫は軽い重力だ。月程もない。そのまま、上階の手すりから下へ降りた。この私にそこまでさせようと思わせたのは、エグザべ、お前だ。
小型輸送船から降りて来たエグザべが伸ばしてくれた手を取り、地に足を付けた。
「心配してくれるのか。ありがとう。僕は慣れているから大丈夫だ。ただ、パプテマス・シロッコに謝らないといけないことがあって。また、こうして時間を作ってくれたことに感謝している。」
「私も、エグザべに謝らねばならないことがあった。互いに良い機会だった。よくジュピトリスへ来てくれた。」
お前は、私の少年兵2人を救ってくれた。命を懸けてまで、そうした。
そういう男だとわかってはいても、このパプテマス・シロッコが感謝しようというのだ。その意味は分かるだろう。
「僕のことを誘ってくれただろ?それだけで充分だよ。」
「エグザべ、お前も私のジュピトリスに加わってくれるとでも言うのか?」
「あ。いや、そういうつもりではなくて。僕としては、ジュピトリスに乗りたい気持ちもあるんだが、どうにも…」
お前が、ジオン共和国からの義勇兵でなければ私の権限でできることだ。だが、
「冗談だ。お前の立場が分からない私か?」
今はその時ではない。今はまだ。
やがて、再びジュピトリスが木星に行く時が待ち遠しい。
「久しぶりに、人にからかわれたよ。びっくりした。でも、僕がジュピトリスに乗りたいのは本気だ。僕ができることがあるなら、力になりたい。そう思ってる。今は無理だけど、いずれ…」
「エグザべさん!」
カミーユ・ビダンがエグザべを咎めるように声をあげたことに、私としたことが笑ってしまった。微笑ましく健気でいじらしい、物のわかる少年。
エグザべ・オリベにはまだ、使命がある。カミーユがそれだ。
「あ、ごめんな、カミーユ。つい話し込んでしまった。紹介するよ、パプテマス・シロッコ。こっちの子がファ・ユイリィさん。君が助けてくれたテンプテーションに乗っていた。お礼が言いたいって言うから、一緒に連れてきてしまった。許可してくれてありがとう。」
「またあの話か。ユイリィ嬢、あれは品性のない任務だった。私に感謝する必要はない。状況を知った今なら、恨んでくれと言えもする。」
「でも、私、命が助かったんです。お礼を言わなかったら、前に進めません。ありがとうございました。カミーユにも無事に会えたのは、偶然だったのかもしれませんけど、シロッコ大尉のおかげです。」
地球の人間も品性を持つことができる。エグザべとその周囲を見れば、それが分かる。
それは、私のささくれだった心をなだめてくれた。
「素晴らしいお嬢さんだ。わかった。その感謝、受けいれよう。エグザべ、お前の周りにも良き人間が集まるのだな。嬉しいことだ。」
「僕は運が良いから、かな?本当に有難いことだよ。何より、パプテマス・シロッコと友になれた。」
嬉しいことを言う。だから、このパプテマス・シロッコもエグザべ・オリベのことを友と思える。私の大事な友。
今日は話をしよう。
パプテマス・シロッコとエグザべ・オリベ、私たち2人の敵の話を。
人類の未来を切り開くための話をしたい。
パプテマス・シロッコの捏造プロフィール
ジュピトリスに乗って木星出立したときは「少尉」。無論、新任。
ハイファンはパプテマス・シロッコ少尉の先任軍曹だった。
本来、4年で帰ってくるはずが、出立早々に1年戦争、ついでデラーズフリート(機密)があったため木星で4年過ごすことになった。
その間に、着々とハイスピードで出世し、元々いたジュピトリス艦長が木星で病死したため、急遽代理艦長に就任。
デラーズフリート後に、地球連邦から正式に認可され、「大尉」となる。
木星まで2年の無寄港長期輸送船ならば、2~3倍期間の物資は詰んでいるはず。余裕物資は木星で降ろせばいい。戦時中に帰ってこられて、ジュピトリス撃墜されたら地球圏は「死」あるのみなので、木星に居てもらった方が安心できる。
え?Zガンダム本編のラスト?…まあ、だから地球圏にコロニー戦国時代が訪れたんじゃないでしょうかね!!!(カミーユにはとても聞かせられない発言)