機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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ジュピトリス 2

パプテマス・シロッコ大尉とエグザベさんが仲が良いのは分かるけれど!何も、僕らを放って、木星旅行の話をし始めるだなんて、どうかしてるんじゃないか?

2人の大人の会話を聞きながら、カミーユは少しむくれていた。

 

大体、エグザべさんは、少し無神経なところがある。僕とファをジュピトリスに連れて行くと言い出した時も唐突だった。

 

 

 

 

アーガマがグラナダ基地について半月ほど経っていた。憲兵の一斉事情聴取の騒がしさも懐かしく感じる程度の期間が過ぎて、僕もファもいつも通りの日常に戻り始めていた。

グラナダ基地は相変わらず憲兵が忙しく警備や捜査を続けていて、アーガマどころかエゥーゴはグラナダ基地に閉じ込められているような状態だったし。

いや、本当に閉じ込められてはいないか。月周辺の防衛や戦艦とMSの連携訓練は許可されてて、もちろん、僕もエグザべさんの訓練を継続していた。訓練を受けても、最近はもう、全身筋肉痛にはならなくなってきている。エマ中尉の持久力向上訓練の成果なのかな?

 

エグザべさんは、それでもグラナダ基地にいるのは良い休暇になる、とか暢気に言っていたけど、ティターンズは大丈夫なんだろうか?憲兵の人たちが何とかしてくれているのかな?

そんなことを思いながら、僕も日課になってきた持久力向上訓練やMSの訓練、ハイスクールの勉強に精を出していた。

そんなころだ。唐突に、エグザべさんがジュピトリス行を提案してきた。

 

「ちょっと、用事を思い出したからジュピトリスに行ってこようと思う。良かったら、カミーユもファさんも一緒に来てほしい。念のため、カモフラージュが必要なんだ。大丈夫、安全だよ。ジュピトリスだから。」

 

戸惑いながらも、僕とファがOKと返すと、すぐに書類を作り上げてしまった。

『カミロ・ダン』と『ファア・リリー』はグラナダの有名ハイスクールの2年生だ。成績が優秀で、進路を見据えて地球圏へ戻って来たジュピトリスの見学を希望している、という設定だ。

 

「情報部も憲兵もついてくるよ。パプテマス・シロッコもすぐ許可を出してくれるから、準備するのは学生らしいノートとペンくらいでいいか。」

 

小型輸送船でグラナダからジュピトリスまで行くらしい。同乗者に憲兵2人と情報部1人が乗る、とついでに言われた。ハイスクールの先生に扮していくらしい。生徒より、先生の数の方が多いのは良いのだろうか?

 

そのついてくる情報部のヌー・ハーグ曹長はエグザべさんに『お土産』になるものを用意するようにお願いされて困っていた。

 

「Ζガンダムかアナハイムか…いや、エグザベ中尉を差し出せば、それが一番では?」

 

とんでもないことを言いながら、準備を始めていたのを覚えている。ブライト艦長には出立前に告げ口しておいた。

 

 

 

 

そして、そこまでして僕らをジュピトリスに連れてきておいて、何をするのか、と思えばこれだ。

 

「僕とパプテマス・シロッコはちょっと機密の話をするから、カミーユとファさんは、ジュピトリスの見学に行っておいで。いい勉強になるよ。憲兵の人も1人ついていくから心配しなくていい。」

 

機密の話をするらしい。今初めて聞かされたんだけど!

大人って本当に勝手だな!いや、ジュピトリスに興味が無いと言えば、嘘になるけれど…

でも、こういうことは僕らに事前に教えておくべきじゃないか?本当にもう!!

 

「ジュピトリスの見学の案内は私の方でもう手配している。ああ、他にも同伴者を付けよう。まだ、このジュピトリスには来たばかりだ。サラ曹長とシドレ曹長。エグザべ、お前が助けた。」

 

パプテマス・シロッコ大尉はそう言う。

1人の男性に連れられてきた少女2人がエグザべさんと僕らに紹介された。エグザべさんが助けた?

 

「フォン・ブラウン市の時か、それこそ、戦闘中の話だよ。彼女たちの運が良かっただけだ。でも、無事で良かった。」

 

「オリベ中尉、あの時は、ありがとうございました。」

 

2人は曹長か。サラ曹長は少しきつめの美人で、シドレ曹長は真面目で大人しそうな女子だ。僕と同じ少年兵か。…エグザべさんに助けられたのも、同じ。

 

「本当に君たちの運が良かっただけだ。僕なんかより、パプテマス・シロッコに感謝したほうがいいよ。パプテマス・シロッコなら、君たちをこれからも護って育ててくれる。人の手本になる人だ。ちょっと羨ましいな。」

 

そう言って、軽く笑うとパプテマス大尉と情報部1人と憲兵1人を連れて、ジュピトリスの艦長室に入って行ってしまった。本当に、もう、あの人たちは!

 

「私がサラよ。こっちがシドレ。同じ年なんでしょ。仲良くしましょう。」

 

「私はファ・ユイリィです。こっちは私の幼馴染のカミーユ、カミーユ・ビダン。今日はよろしくお願いします。」

 

僕を女の子達の中に置いて行って、どうするんだ。どうすればいいんだ、俺は。

案内の男の人もそんなこと気にしてくれない。マイペースにハイファン中尉だと自己紹介された。

女の子達には握手を求められたから返したけど、あの人たちは、本当に、もう!

 

 

 

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男の子ってこんなに、わかりやすく可愛いことするのね。シドレはちょっと心の中でそう、思った。カミーユ・ビダン。すぐ、私を睨む。本当にニュータイプなんだ。

 

「ごめんなさい。私たち、サラも私も周りに同じ年の男の子いなかったから。孤児院出身なの。男子禁制の。」

 

カミーユって面白い子。私に気の毒なことを言わせてしまったと、伝わってくる。きっとサラにも伝わった。隣のファという女の子にも。

 

「シドレ、予定が詰まってるんだから。早くいきましょう。居住区域以外は私たちも初めていくの。」

 

「そうね、私たち、ドゴス・ギアに乗ってたんだけど、ジュピトリスに来てからずっと勉強ばかりで、ちょっと浮かれているの。わかる?」

 

「わかるよ、僕は訓練と勉強だ。」

 

でも、エグザべ中尉と一緒に居られて嬉しいんだ。ふぅん、そうなんだ。

 

「いいね。勉強も訓練も、誰かと一緒なら頑張れるもの。私もシドレといなくちゃ、やる気がでないわ。」

 

「サラは、パプテマス大尉の前だと猫かぶってるじゃない。背筋なんか伸ばしちゃって。」

 

サラをからかうと、すぐ手が出る。私の肩叩かないでよ。

 

「シドレはアドル曹長の…」

 

肩を叩き返した。ちょっと、誰が聞いてるか分からないじゃない。

 

「仲いいんだ、2人とも。」

 

ファが呟くのが聞こえた。そう、あなたは故郷と別れたばかりなのね。なんの慰めにもならないけど、少しだけファに近づいて、手を握る。サラも、そうしてくれた。私たちはそれが分かるから。

 

「サラとは長い付き合いなの、私たち姉妹みたいに育ったから。」

 

「ファは、新しい私たちの姉妹ね。カミーユは…そうね、学校の友達かしら?」

 

サラが笑いながらそう、言うと、カミーユが心の中で不満を表明したのが分かる。素直な男の子なんだ。

 

「初めての男の子の友達よ。私とサラの。サラは美人なんだから、美人の友達ができること、もっと喜んでよ。」

 

「カミーユは照れてるの。素直じゃないんだから、もう。」

 

ファがそう言ったのがおかしい。こんなに素直なカミーユなのに。

 

「カミーユもファも仲良しなんだ。私たちと同じね。」

 

そう、私たちと同じ。パプテマス大尉のいう、物のわかる人間。ニュータイプ。

お互いを傷つけあわなくていい、物のわかる人間と穏やかに出会えることがこんなにも幸せだなんて。護りたくなる。

 

パプテマス大尉もエグザべ中尉もきっと同じだ。護りたいんだ。

私も、そう。護りたい。

 

 

 

 

 

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ジュピトリスの全長は2,000メートルだという。MSなど比べてみれば点になってしまうほどの大きさだ。

これが木星にまで?アステロイドベルトという小惑星帯を越えて行って、つい最近、戻って来たのか。

 

積載物の多くはヘリウム3とはいえ、こんなに大きな輸送船をよく安全に地球まで守って来れた。

 

エグザべさんの言う通りパプテマス大尉は天才だった。ジュピトリスまで来て、中を案内されて初めて僕はそれをわかった。

 

カミーユ・ビダンは、僕はジュピトリスに乗りたいと言ったエグザべ中尉の気持ちも、今なら、ほんのちょっとだけ、分かるような気がする。

 

この大きな船、これに積まれたヘリウム3は、僕たちが普段使用するエネルギーの元になる。昔は石油と石炭だったりウランだったりしたけれど、今はヘリウム3だ。

 

「ジュピトリスは2年かけて木星まで行くんだよ。木星には生活物資と航行に必要な資材を満載して向かう。木星ではまだ植物の生産はできないからな。主に食料と医療品、強耐性の宇宙服など。向こうではどれも重宝されているし、量が足りていない。」

 

ハイファン中尉はパンフレットまで作ってくれていた。

ジュピトリスが運搬するもの、木星で働く人々が今なお置かれている過酷な環境、必要な物資。

ヘリウム3が無ければ、僕らはMS一つ動かせないこと。ジュピトリスは、木星とその長い航路のために大規模な製造工場もあること。それは、2隻目のジュピトリスまでは作れないけれど、それくらい大規模なこと。

そういう大規模な製造工場が無ければ、木星まで辿り着けないし、ジュピトリスの故障に対応ができない、らしい。本当は2隻目のジュピトリスを建造できるほどの製造工場と資材を艦載して木星まで行きたい、と言うのが現在の目標である、と説明してくれた。

 

「実際に木星までは2年もかけて行き来するから、向こうに必要物資が間に合わないこともあるんだ。悲しいことに。できれば、もう少し安全な航路を確保できればいいんだが。」

 

「難しいんですか?」

 

「火星もアステロイドベルトもザビ家の残党がいるの。」

 

サラがハイファン中尉に代わっていう。さては勉強の成果だな?僕らにそれを自慢した。

 

「サラ曹長のいう通りで、本来なら、ジュピトリスも長くて6年ほどで帰って来れるはずだった。MSが必要になったのはジュピトリスを守るために必要にかられたからだ。木星にも道中にも過激で破廉恥な連中は多い。」

 

パプテマス大尉の新体系のMSは、ジュピトリスを守るために作られていたのか。高速で移動できるのも小惑星帯でも戦うため、か。

おまけにジュピトリスは輸送艦だ。武装も最低限しかない。その、巨大な輸送艦を少人数で守るためにも、モビルアーマーとモビルスーツの両形態を使い分ける必要があったんだ。それが分かった。

 

「もっと木星との往来が簡単にできればいいんだ。実際、1年戦争前なら、その予定でジュピトリスも同型艦が6隻は作られるはずだった。資源の保管場所も地球圏で増設されているはずだった。まさか、失くなっているとは。」

 

「じゃあ、今、ジュピトリスはヘリウム3を満載したままなんですか?人類のエネルギー源が。」

 

僕の驚きもわかってほしい。だって、人類はこのジュピトリスのヘリウム3なしではもう、生きていけないんだ。戦争どころか、コロニーだって存続できなくなる。

 

このジュピトリス、今までよく無事だったな。ティターンズからもザビ家の残党からも守り切ったのか。8年もの長い歳月を、守り切った。

エグザべさんは、本当にパプテマス大尉のことが分かってたのか。

 

「今の地球圏だと、ジュピトリス以外の安全な保管場所がない。コロニーも大幅に消えてしまっていて、消費量も嚙み合わない。俺としては実に歯痒い。」

 

ハイファン中尉の気持ちも分かる。

 

ああ、そうか。1年戦争。人類のために木星まで赴いてくれたジュピトリスの艦載員の中には、故郷を失くしてしまった人も多いのか。いまだに家族も見つからない人も、きっと。

胸が締め付けられるように苦しかった。ファが背中を摩ってくれた。シドレもサラも、右手を握ってくれた。

 

「幸い、サイド2の未完成コロニーを1つ接収できそうなんだ。ようやく艦載員たちを休ませてやれる目途がついた。コロニーの完成まで1年強かかるが、未定よりずっと良い。全てパプテマス・シロッコ大尉のおかげだ。」

 

誰もかれも、1年戦争に傷つけられて、その傷を癒そうと手を尽くしている。傷を癒すということが簡単なことではないとわかってはいても、それが酷く切なくてもどかしい。

 

「大丈夫だ。1年なんてあっという間だ。俺たちは木星で、それを知っている。」

 

あっという間の1年で、人類が半分にまでなってしまった。僕もそれを知っている。

 

それでも、前を向いて進もうと、そう思える大人たちの強さを僕は知った。強さとはこういうものなのか。

 

 

 




宇宙世紀の人間が、どうして頭ハイファンにならないのか、俺には理解できない。
ハイファンはパプテマス・シロッコ信者なので、信者仲間が増えることを大喜びしてる。
エグザベ・オリベは外部信者だから、ライバル視もしない。(ハイファン視点)

宇宙世紀正史では、ジュピトリスと木星の扱いがヘリウムより軽い。なんでだよ!!

コレ書いてた頃にZガンダム本編全話、見終わったのか。懐かしい。
最後まで見て、シャア・アズナブルが何考えてんのか、皆目わからなかった雑魚が俺です!
富野監督にしか分からないんじゃないんですかね???


エグザべは、一番最初に「パプテマス・シロッコと呼べ」と言われたから、だいたいずっとそう呼んでる。
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