機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
エグザベさんって、趣味とか無いのかな?
僕、カミーユ・ビダンがふとそう思ったのは、だしぬけにエグザベさんからチェス盤を渡されたからだ。
今時、電子式でなくて、デバイスのソフトでなくて、本物の折り畳み式チェス盤と駒だ。結構お値段もしそうな本格的なものを渡されて正直困った。小さいけれど。
チェスなんてしたことないし、触るのだって初めてだ。
存在は知っていたけれど。
「息抜きにどうかな?と思って、取り寄せてみたんだけど。」
エグザベさんは、そう言って渡してくれた。
「チェス、好きなんです?」
あまりに唐突なプレゼントだったから、言葉がそれしか咄嗟に出てこなかった。
「今まで、一度だって聞いたことない。」
そう。今までずっと訓練と勉強とニュースの話ばかりで、エグザベさんからチェスの話どころか、趣味の話も聞いたことはなかった。
それどころじゃなかったということもあるけれど。
つい先日まで、コロニー落としやらG3ガス阻止作戦やらで慌ただしかったし、グラナダ基地に帰ってきたら憲兵の一斉事情聴取やら不穏分子捕縛やらで、いつの間にかアーガマの中でさえも憲兵が常駐するようになっていた。
「いや、チェスは僕の趣味じゃないよ。できるけれど、ね。勝てるようになると面白くなってくる。一緒にやってみよう。」
エグザベさんは気軽に言ってくれる。
こういうボードゲームってお爺ちゃんとかがやってるイメージだ、僕にとっては。
老後の楽しみってやつじゃないのか?
「本当に触ったこともないんですよ。ゲームになるんです?これ。」
「誰だって最初はそうだよ。ルールブックも取り寄せればよかったかな?まあ、チェスはそんなに難しくないよ。駒の動きと定石を覚えてしまえば、後は口頭でプレイすることもできる。お手軽だよ。」
また、なんか変なこと言ってる、エグザベさんは、もう!そんなことできるわけないのは、初心者の僕だって分かる。
「ボードゲームとか、嫌いだったか?やっぱり、新型のハロの組立セットが良かったかな?そっちは、新バージョンが出るらしくって、旧バージョンとどっちがいいか聞いてからにしよう、と思って。カミーユ、どっちがいい?」
「新バージョンがいいです。色は自分で塗りますから、一番人気が無い色で。…そうじゃなくて!なんで今頃、チェスなんです?クリスマスでも僕の誕生日でもない。」
ついつい、つられてしまったけれど、ハロはもらうつもりだけれど。僕の誕生日はもうちょっと先だし、エグザベさんにプレゼントもらう理由が僕には思いつかない。
「でも、カミーユ。ずっと戦艦の中で気が滅入るだろう?室内だとリフレッシュできる手段も僕には余り思いつかなくて。ゲームならファさんや僕も一緒にできるし良いかな?って。いや、言い訳だな。ごめん。」
「それで、チェス?」
「悪かった。初めにカミーユに聞くべきだったね。僕の周りにチェスが嫌いな奴が居なかったから。つい。」
居心地悪そうな顔までしてみせるエグザベさんだけど、それなら僕に相談してから取り寄せてほしかった。チェスとハロなら、ハロ一択だ。
「別に。どうせなら、エグザベさんの趣味のもの取り寄せればよかったじゃないんですか?」
本当にエグザベさんは、自分の趣味のものでも取り寄せればいいのに。僕の知らない誰かの趣味じゃなくて。
まあ、エグザベさんも、チェスも嫌いじゃないから取り寄せたんだろうけれど。
「なんで?」
心から不思議そうな顔で言われると、僕も困る。この人、本当にもう。
「エグザベさんって、普段、何してリフレッシュしてるんです?」
「最近は、………。」
言葉に詰まってるエグザベさんを見るのは初めてかも。表情まで固まってる。
「最近は?」
「…仕事しか記憶にないな。」
「僕が言ったことの意味、わかってもらえました?」
「うん。まあ。でも、僕の場合は、仕事で戦艦に乗ってるわけだから、ね。仕方ないかな。…いや、殴らなくていいだろ?カミーユ。」
「『修正』ですよ!」
ジークアクス君は早いとこキャラの設定資料集だしてもろうて、いいですか??
カミーユがすぐ殴るのはZガンダム本編の描写に準拠しています(言い訳)