機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
どうした?お前ならまだ走れるだろう?
まあ、止まらずに歩き続けるのも悪くはないが、それでいいのか?エグザべ・オリベ。
俺達に、俺に追いつけるのか?それで?その程度で?
そうだ!走るんだ!全力で走れ!
出なきゃ、俺はお前を置いていくぜ。
何度だって、俺は、俺達はお前を置いていく。
何度だって、全力で追いついて来いよ!お前もそのつもりだろ?エグザべ・オリベ!
お前でなけりゃ、待ってやる義理もねえんだ。
俺達が待ってやってる、と言うことの意味を分かってるんだろ?
走れ走れ!!
転ぶ?疲れる?息ができない?脚が、全身が痛い?
関係ねえな。
お前は走り続けるんだ、エグザべ・オリベ!
「ジオン公国のマーク。本当に、公国の……カミーユ・ビダン!ガンダムは出すな!」
艦橋のブライト艦長から、そう僕に指示が出た。管制からの通信は艦内なら、ミノフスキー粒子の影響を受けない。接触回線だから。
「ジオン公国、ってザビ家のジオンか。」
口に出して確認してみる。
そうだ、ザビ家のジオン公国。突然、宣戦布告をして1年戦争で人類の半分を殺した、ザビ家。共和国だって彼らを虐殺者として、未来永劫批難する、と宣言しているザビ家、その残党。
宇宙移民の独立なんて言いながら、宇宙移民が住んでいたコロニーのほとんどを攻撃し、壊滅させた虐殺者。人々の命を育んでいたコロニー殺して、地球に落として、地球でさえも滅茶苦茶にした、戦争犯罪者。
ルウムも殺された。
「エグザべさんのルウムも。」
今、僕の思考が走ったか?ルウムも殺された。そう、確かにそうだ。エグザべさんのルウムもザビ家に殺された。
エグザべさんに呼ばれたような気がする。コクピットの外から、呼ばれたような?
コクピットの外にはまだ、エグザべ中尉の専用機であるギャン改-Ⅱは戻ってきていない。アーガマの近くにいた味方MSが順次、右カタパルトから収容されて戻ってきている。みんな大きな損傷はないみたいだ。よかった。
でも、だったら今の、僕を呼ぶ声は?
艦橋から戦闘は終了したと聞いてはいる。八百長だったし。でも、格納庫は物々しい雰囲気だ。アクシズが本当にザビ家のジオン公国だったから…
今、そのアクシズのMSにアーガマは囲まれているからだ。
ガンダムMK-Ⅱのコクピットから僕は出た。アストナージさん達整備士は、ガンダムMK-Ⅱの頭部にでかいシートを被せようとしていた。準備してあったらしい。無重力になっている格納庫の宙に浮きながらそれを見た。
格納庫にいる全員ヘルメット着用を義務付ける警告灯が点滅している。キラキラ、キラキラと。…警告灯って、こんなにキラキラするものだったか?
ちょうどいい、格納庫はMS収容のために扉を開け放されている。
なんで、僕は今、ちょうどよかったって思ったんだ?
誘われている?何に?僕が?なんで?
酸素残量とパイロットスーツについているバーニアまで確認した。僕が、していた。
思考が走り過ぎているんだ。止められない!
誰かが、僕を押している!なんだこれは!格納庫を飛び出して、僕が宇宙に出ている?!
アーガマは、ブライト艦長の言った通り見たことのないMSに囲まれていた。6機?いや、7機!
パイロットスーツで宇宙に出た僕を見て、驚いている?!
なんでわかるんだ?なんで?!
宇宙が煌めいて見える?!何度か見たガラスのきらめきとは違う!何色にも、無数の色に光って、宇宙が僕を押し流してくる!!アーガマの艦橋の方へ!!
アーガマの艦橋の前で無防備に待機しているギャン改-Ⅱが見えた。白銀の騎士。念のための、防衛のつもりかな。さりげなく、艦橋の近くを触っているみたいだ。接触回線で通信している?敵の前で?
いや、敵じゃない。
敵じゃないって、誰が思ったんだ?僕か?!いや、僕じゃない!!
「エグザべさん!!」
思考が!止まらないんだ!走り過ぎている!誰かが、僕を押している!!引っ張られてもいる!
わかるのはそれだけだ!
ギャン改-Ⅱの前に回り込む。こんな最小限の動きで?!バーニアの達人か!!
「エグザべさん!!」
僕の声が届くわけはない。ミノフスキー粒子があるから、ギャン改-Ⅱに接触していないから、エグザべさんと通信できない。
でも、ギャン改-Ⅱのコックピットは開いた。見ていてくれていた?
コクピットの中に、驚いて声をあげているエグザべさんが見えた。僕の名前を呼んだ?ということ?
「カミーユ!!無事か?!なんでここに?」
コクピットを飛び出してくれたエグザべさんが僕を捕まえた。エグザべさんの声が聞こえる。通信ができる。接触通信だ!
「呼んだんでしょう?」
だって、悲鳴のような声で、僕の名前を呼ぶ声がした。
「っ!こんな危ない場所には呼ばないよ!」
「危なくないから、エグザべさんは、僕を呼んだんです。」
思考が走り過ぎていたのは、もう止まった。普通だ。
普通か?これ?大丈夫か、僕は。
ブライト艦長にもエグザべ中尉にもエマ中尉にもアポリー中尉にもファにもサラにもシドレにもパプテマス大尉にもアムロ大尉にもハイファン中尉にもヌー曹長にもアストナージさんにも、みんなにこれ、怒られないか?
大丈夫じゃない。全然、大丈夫じゃない、これは!
「そ、うか。危なくない。だから、カミーユが来た?呼んだのか。そうか。カミーユ、教えてくれたんだな。ありがとう。」
エグザべ中尉はそう言うと正面のMS、赤いMSに大きく右手を振って見せた。僕も真似をする。
武器のない、MSの右手が僕らにゆっくりと近づいてきた。傷つけまいとする動き。敵ではないから、だ。
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しっかりしろよ、エグザべ・オリベ。
パプテマス・シロッコと約束したんだろ?
思い出せ、お前の役目を、アクシズの穏健派を誑かして見せろ。お前にはそれができるんだろ、エグザべ・オリベ。
ジオン公国の、ザビ家のマークをこんなに堂々と戦艦に掲げるような奴らと、僕はやりあって見せる。
だから、艦橋の近くで、接触回線を使って、敵MSのパイロットが新兵にも近い練度の低さだ、ということを伝えた。
おそらく、5機か6機でチームを組み、リーダーの射線に合わせてビームライフルを撃たせただけで、ほとんどが訓練未了に近い、と。
今だって、7機のMSでアーガマを囲んでいるのに、接触回線での通信を邪魔してこない。ベテランが少ないからだ。何を僕に悟られたのか、分かっていない。いや、もしかして、分かっていても無視できる技量が中心人物にあるのか?
MSの動きで全体の中心になる機体もわかる。それも艦橋に伝えた。僕のギャン改-Ⅱの正面にいる機体だ。こいつだけ、MSの動きが良かった。宇宙を思うままに動いていた。
そのMSの脇を固めている同型のMSのパイロットも少し経験はあるのかもしれない。位置取りがいい。
わかっているんだろう、逃げるなよ、エグザべ・オリベ。
笑って見せろよ。敵意に敵意を見せたから、だから、人が死んだんだ。なら、今は笑ってろ、エグザべ・オリベ。
僕は今、うまく笑えているか?誰か教えてほしい。人を安心させるような微笑みを浮かべられているだろうか?
ギャン改-Ⅱのエンジンを落とした。これで艦橋との通信も、全周天モニターもきれた。僕も覚悟を決めるしかない。
「ルウムのエグザべ・オリベ、はいらない。必要なのは、ジオン共和国軍人のエグザべ・オリベ中尉だ。」
いや、そうでもないだろ。だって、イイ子ちゃんじゃなくて、真面目君のお前が俺の親友だったんだから、わかるだろ、エグザべ・オリベ。
コクピットを開けた時、僕の後ろで誰かがそう、言った。
17歳の僕じゃなかった。
お前は!!僕じゃ、なかった!
振り向かなかったのは、目の前にカミーユがいたからだ。宇宙に、カミーユが、いた。
「カミーユ!!!!」
どっちのカミーユを僕は呼んだ?どちらもだ。
エグザべ・オリベは強欲な人間だから、どちらも呼んだ。
僕は、孤独ではなかった。ずっとそうだった。
そうか、お前、すごく強引な奴だったな。強欲な奴だった。気づけば、みんなお前のために動いていた。おまえも応えてくれた。
おまえがとても強い人間だったからだ。強い心を持っていたから、僕もみんなもお前もそうやって過ごしてきた。
お前は、僕を孤独にしなかった。みんな、お前を孤独にしなかった。
お前が、人間を好きだったからだ。人間を愛していた。
もちろん、お前自身も含めて。それが、僕のお前の好きなところだった。
カミーユ!!カミーユ…
僕が孤独でなかったのでならば、そうであるならば、僕もお前と同じことができる。人を孤独にしないことができる。
だから、僕は大きく右腕を振った。正面の赤いMSに向かって手を振ることが、できた。微笑んで手を振ることが、できた。
隣のカミーユも真似してくれた。
ありがとう。僕は、孤独ではない。ずっと、そうだった。
赤いMSが右手をゆっくり伸ばしてくる。傷つけまいとする動き。
接触回線だ。
「初めまして!援軍、感謝いたします。自分は、エゥーゴ所属のエグザべ・オリベ中尉であります。貴女の所属を、お聞かせください。」
そうだ。カミーユと共に、できる。
アステロイドベルトって往復2年かかるんです。往復2年。
エグザべとカミーユの関係編
いうて、弊SSのエグザべは自分のこと、それほど強くないと思っている。MSについても、いわゆるニュータイプについても。
ルウムのカミーユは自分の中では口も悪いし、凄く強引に事を運ぶ。そうでないとギレンに勝てない。勝つビジョンにならないから。こいつは、まじでギレンと戦争して勝つつもりでいた。0079年にコロニー落としされる前までは。
人望はある変な少年ルウムのカミーユ。パプテマスと友達になっていたかもしれない。