機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
木星からも、地球圏からも離れたアステロイドベルト。
地球の人々が思う程小惑星が密集しているわけでもなく、かといって巨大な輸送艦が安穏と進めるほど広くもない。
特に1年戦争後は輸送艦にとってアステロイドベルトは命取りになりかねない危険地域と化していた。
アステロイドベルトには苦しい思い出しかない。
祖国サイド3はジオン公国と名を変えたというのに。ジオン・ズム・ダイクンを支持した父はザビ家によって追放された。先行した父の後を追うように、私たち家族は、私と母と妹は9年前にアステロイドベルトの小惑星モウサに到着した。そこは、とても人間が生活できるような環境ではなかった。
人が住めるような小惑星は当然なく、輸送艦の中で、少ない物資で遣り繰りしなければならなかった。水も無ければ、空気も無く。食料でさえ、戦争が始まれば覚束なくなった。
医薬品が足りなくなって、母は父の開拓したモウサに降りることもなく儚くなった。
姉が、そして姉の想い人が手を回してくれねば、アクシズにいた私たちは全滅さえしていただろう。
ドズル・ザビ。恨みも恩義もある。
だが、アクシズに住む人々が無駄死にすることだけは避けさせてくれた。
だからこそ、アクシズは、彼の一子ミネバ・ラオ・ザビを引き受けてもみせたのだ。
そのまま、静かに過ごしていけたのならば。アクシズに住まう人が平穏を求める心を持てたのならば、いずれ誰もがザビを忘れてくれたのならば、恨みは捨てることもできた。
父の苦しみも、アクシズの遅々として進まなかった開拓も、仲間を失った苦しみも故郷に帰れない寂しさも、全て時が癒してくれただろうに。
シャア・アズナブル!!
祖国の敗戦から、1年と半月経ってアクシズにやってきた奴のせいで、ミネバ・ラオ・ザビの健在が周囲の小惑星に潜む怪しげな者どもにバレた。シャア・アズナブル大佐の名前がそう、させた。
ミネバ様。
父を、母を亡くしてもザビの名を捨てられない、宇宙のみなしご。アクシズでただのミネバとして生きることができなくなった少女。
父が、シャア・アズナブルがそう、した。
父の亡き後に、アクシズの統治を引き継いだ私であっても、その鎖から解き放つことはできない。私もミネバ様もアクシズもみな死ぬ。それがわかる。
祖国の敗北と言う事実とアステロイドベルトの孤独に人は耐えられない。
それからはザビの名のもとに、敗戦したジオン公国から人々が集まってきた。
栄光のジオン公国を、ただの少女に求めて。まだ5歳にもなっていないミネバ様に求めて。
血の気の多い敗残兵が、戦いを忘れられない人々が、戦争を、権力を、資源を求めて、アクシズに集ってくる。
ジオン公国に栄光など、ない。今も昔も!ありもしない幻想をアクシズに、私に、ミネバ様に求めるな!
シャア・アズナブル!貴様の軽々しい発言が、私とミネバ様を縛り付けた。
そして、シャア、貴様自身は地球圏への威力偵察だと?なぜ、人の闘争心を、こうも煽る。戦うことを選択肢に入れさせる!!戦いに人間を駆り立てる。私であっても、アクシズはもう止められはしない!
人間は何故こんなに争いのためなら団結できる?!
今のアクシズは、もう父の愛したアクシズではなくなっていたのに。祖国の発展のため開拓されたアクシズはなくなってしまった。
ザビ家再興のためのアクシズとなってしまった。
シャア・アズナブル!それが分からないのは、貴様がアクシズも、私も、ミネバ様も無価値と見なしたからだ。所詮、アステロイドベルトの棄民だ、と見做した。
分かっていた。しかし、信じていたかった。
父の愛したアクシズ、父の信じたシャア・アズナブル、私は無価値だと思いたくなかった。
地球へアクシズを発進させたのは、それを確かめたかったからでもある。
父の判断は間違っていなかった、と信じたかった。
「地球が望遠に映ったか。」
アステロイドベルトを発って1年もかかった。
手元のデバイスで地球を確認する。
シャア・アズナブルは地球圏へ行ってから4年、一切連絡を寄こさない。エゥーゴという組織を立ち上げたという情報も、噂以上の信憑性はなかった。エゥーゴの名は聞いても、戦果は聞こえてこない。地球圏の大規模な混乱も、聞こえてはこない。もちろん、シャア・アズナブルの名も聞こえてこない。
シャア・アズナブル、地球圏で何をしている?アクシズのため、ミネバ様のために地球へ行ったのではなかったのか、やはり。
アクシズはもう、小惑星帯から発ってしまった。簡単に戻れはしないだろう。周辺の小惑星に潜伏していたジオン公国残党兵も、アクシズに合流したのだ。
これから地球圏に近づくにつれ、残党どもも更に増えることだろう。彼らがミネバ様に退くことを許さない。
寄せ集めが、さらに寄せ集めになる。ザビ家再興を謳いながら、このアクシズの水面下で今も蠢いている、寄せ集めの寄生虫が。
ミネバ様の身の安全には、一層気を付けなければならない。ミネバ様の侍女とて、各々の思惑で仕えているのだ。常に複数人配置しているのは互いに監視させるためであった。
私は、常にそばには居られない。ミネバ様と私の命、両方が危うくなる。そう、わかる。
ミネバ様は賢いお方だ。分かっておられる。
侍女に平等に接されるのだ。あのお歳で、その必要性を理解しておられる。大器であった。泣きたくなるほどに、悲しくなるほどの大器であった。
そのようなことをさせるために、父はミネバ様を引き取られたか?
あの赤子に、このように振舞わさせることの残酷さを分からない父ではなかった。私の記憶の父はそうだった。
地球圏、ジオン公国からアクシズへ、最後に連絡が来たのはもう何年前だろう。私は、故国を覚えているのだろうか。
地球圏は私たちを忘れてくれていればいい。
故郷、サイド3は?父の愛したサイド3も、どうか私たちを忘れていてほしい。
勝利のためにそう思ったのではない。私は、ハマーン・カーンはそれほど情のない人間ではない。
ザビ家を忘れてくれない地球圏に私たちの生きる場所はないのだ。
コロニー落としにG3ガス、核攻撃。人類が半分死んだ。ザビ家が、サイド3が、ジオン公国が、それを起こした。ミネバ様はそのザビ家の血をひいておられる。私のアクシズもザビの空虚の栄光を纏っている。
だが、それでも、生きることを許される場所が欲しかった。帰る場所が欲しかった。
Zガンダム本編の描写だけから考えるとアクシズの実情ってこんなものでは??
設定でアクシズの裏にジオン共和国がいるってあるそうですが、
往復2年かけて物資を運ぶだけの余裕って敗戦国にあるんですかね???
あと、その物資、無から湧いてない?
ジオン公国の残党も無から湧いてない?
コロニー落とし、とかいう蛮行をしたサイド3って普通に地球連邦も月もコロニーも見張ってると思うんですよ。そーゆー状態で、どうやってアステロイドベルトまで補給持っていくの??