機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
アクシズは直ちに旗艦グワダンを発進させた。
地球圏には地球連邦が、敵がいる、からだ。
戦艦グワダンには、ミネバ・ラオ・ザビとハマーン・カーンさえ乗艦していた。
アクシズの統治者は戦場へ出なければならなかった。
私が乗るガザCはアステロイドベルトで開発されたアクシズのMSだ。本来は、アクシズの資源を発掘し、人間の居住空間を作るための作業用人型機械ガザ。それを元に開発された、ザビ家再興のための兵器ガザC。
小惑星を開拓するための、ひいては祖国の発展に寄与するための機械でさえ、アクシズは兵器に変えねばならなかった。変えて、しまった。
目の前の、エゥーゴの戦艦の艦橋を守るように立つMS、ギャンのことは知っていた。制式採用はされなかったが、ジオン公国のMSだ。アクシズに集まる敗残兵が持ち寄った情報の一つでもある。特徴的なモノアイも残っていた。
ギャンがエゥーゴにいる。それは希望のようにも思えた。ジオンは、私たちアクシズを見捨てて居なかった?共和国になっても?
戦後、ジオンに捨て置かれたアクシズに生きてきた私が持つには愚かすぎる希望だ。
それが分かったのは、ギャンのモノアイから光が消えたからだ。アクシズの、ガザCの前でギャンはエンジンを止めた。ジオン公国軍人ならば、決してそのような振る舞いはしない。
敵か味方か分からないMSに囲まれているのに、武器を捨てるなど絶対にない。そんな真似をするなど許されもしなかった。命を捨てるまで祖国のために戦うことを教え込まれていたからだ。パイロットはジオン公国の人間ではないことを分かるしかなかった。
宇宙に、目の前に人が飛び出してきたのはその時だ。人影が唐突にバーニアを操ってギャンとガザCの間に流れて来た。戦艦から、飛び出してきたのか。どうして?
ギャンに乗るパイロットは、急に格納庫から宇宙に飛び出してきた1人を心配したのか、無防備にコクピットから出てきた。細い頼りない姿のパイロットスーツ?
頼りないパイロットスーツなのに、しかし、飛び出してきた1人を何もない宇宙空間で確かに受け止めて見せる。
コクピットからも、兵器からも恐れもなく離れて、宙で受け止めた。バーニアで勢いを相殺して。
2人はそのまま少し話をしたのか、こちらへ大きく右手を振って見せた。私をハマーン・カーンとわかったのか。小賢しい奴。
だが、気づけばガザCの右手をゆっくりと伸ばしていた。傷つけないように、このハマーンがそうした?私が?接触回線を求めた?
「初めまして!援軍、感謝いたします。自分は、エゥーゴ所属のエグザべ・オリベ中尉であります。貴女の所属を、お聞かせください。」
若い男か、おそらく、もう1人のほうも。1年戦争の戦場を経験した者ではない。それが、穏やかな声で分かった。アクシズの敗残兵や兵士未満の雑兵では出せない声だ。そして、やはり、この戦艦エゥーゴのものだったか。
「私は、アクシズのハマーン・カーンである。戦艦グワダンにおわすアクシズの統治者、その尊いお方のご指示で援軍に入った。」
アクシズから出航した戦艦グワダンには、ミネバ様との謁見の間さえ作られている。プライドだけは高い敗残兵をまとめるには、必要だった。グワダンでの、ミネバ様のご出陣さえも。
相手を威圧するための修飾が、必要だった。
だが、エゥーゴには、いやこの男にはそれさえない。手を振ってさえ見せた。突然の援軍にも、私のプレッシャーにも驚きすらしなかった。
プレッシャーを返してこなかった。
オールドタイプか?だが、私に気づいた。私が、ガザC部隊を率いていることに気づいた。
ガザCの右手が2人を掬い上げるように動いていた。私が?
2人はガザCの両手の中で大人しく、朗らかにしている。このハマーン・カーンの両手の中で2人の人間が、にこやかにしている。
「アクシズの、ハマーン・カーン。」
通信からそう、聞こえた。
「ルウムの、エグザべ・オリベ。」
応える。今、私が、ハマーン・カーンが無意識に口にしていた。
ルウム。サイド5。
宇宙を走る数多の戦艦、幾筋もの閃光が交差する。その間をMSが、コロニーへ行ってしまう!!コロニーが!大きく割れて、人の命が零れ落ちていく!宇宙に、虚空に吸い込まれていく。悲鳴さえも!
コロニーの割れた大地から、人が!散り散りにされて!繋いだ腕も引き裂かれて!
粉々に砕かれたガラスが、コロニーの破片が、戦艦さえ切り裂く速度で流れていく。ああ、断末魔を上げる母親の腕から赤子が!!赤子がガラスの中を流されて…
ニュータイプの感応か!一瞬、だった。だが、ルウムだ。
ジオン公国の過ちの一つ。数多くある過ちの中の一つであるルウム。
本来なら、本来のジオン・ズム・ダイクンの思想なら守るべきだった、救うべきだったサイドの一つ。同胞であるはずのスペースノイド達。
毒ガスで殺したコロニーも、地球へ落とされたコロニーも、そう、敵ではなかった。
全てザビ家のやったこと、などという恥知らずなことは言えはしない。
私には、ハマーン・カーンにはそれを言う資格はない。言ってはならない、ミネバ様を思うのであれば。
「私を、このハマーン・カーンを恨め、エグザべ・オリベ中尉。憎むといい!ルウムのエグザべ・オリベ!」
私は、あの時、13歳だった!何も知らない小娘ではなかった!
私を、ジオン公国を憎め!
貴様の帰る場所を故郷を家族を友を仲間を全てを奪った、ジオン公国の権化である私を恨み、嘲笑うが良い。
おめおめとアステロイドベルトから帰って来たザビに殺意を持て!
そうでなければ、私はお前を殺せない。大義を持てない。
大義のない私では、ミネバ様をお守りできない!!傍にさえいられない!!
ミネバ様は、子供なのだ!まだ、守られるべき子供なのだ!!
ミネバ様は、赤子は何も知らなかった!
もうこれ以上、宇宙へ赤子を吸い込ませはしない!
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「私を、このハマーン・カーンを恨め、エグザべ・オリベ中尉。憎むといい!ルウムのエグザべ・オリベ!」
悲鳴のようだ。威厳ある女性の声だけど、断末魔の悲鳴のようだ、とカミーユは思った。
ああ、この人は、僕とエグザべさんと同じで、思考が走る人だ。物が分かってしまう人。思考を走らせ、物が分からなければ、生きてこられない場所にいた人が、ハマーン・カーン。
「あなたは、ここに、安心できる場所に、安心させられる場所に帰って来たかったんでしょう!だから、こんなに、戦うことに傷ついている自分さえも無視して、帰ってくるために自分を生け贄にまでした。ハマーン・カーン!」
声が出ていた。アステロイドから、地球圏までどんなに長く辛い旅路だったのだろう。ジュピトリスとは違う。
地球まで帰ってきても、待つ人のいない旅路。
エゥーゴだってそうだったように、誰も彼らに、ジオン公国に帰ってきてほしくは無かった。残酷だけど、ジオン共和国も各コロニーも地球連邦もそうだった。
ハマーン、貴女もそれが分かっていた。多分、アクシズの誰よりそれを理解していた。
思考が走らなくても、分かることだった。
「僕は、カミーユ。カミーユ・ビダンです。アクシズのハマーンさん。貴女みたいな優しさを持った人が、無事でよかったと思っています。」
「…子供が、カミーユ・ビダン。」
帰る場所のない辛さは、僕も分かることだ。
昔の僕は、アーガマしか、戦艦しか帰る場所がなかった。エグザべさんが来てくれなかったら、そばに居てくれなかったら、僕は戦艦しか居場所のない宇宙のみなしごのままだった。
戦うことしかできない哀れな僕だった。ハマーンさんは、かつての僕だ。
「ハマーン・カーン。帰る場所が必要なら、僕が力になる。そういうのは得意だ。協力してくれる人たちもいる。貴女が共にいることを望む人たちがいるのなら、その人たちも含めて、帰る場所をきっと作ってみせるよ。」
エグザべさんが、そういうのであれば、ある程度の算段はついているんだろう。パプテマス大尉もいるし、ブライト艦長もいる。憲兵も地球連邦軍の人もいるんだろう。ついでに情報部も。
ハマーン・カーン、もう、孤独に戦わなくていいんだ。
優しい貴女が、宇宙に争いを起こさなくてもいい。
アクシズのために、守るべき人たちのために、宇宙の憎しみを一身に集めなくていい。貴女が思う人たちだって、そう思っている。
ハマーンさんは人を支え、人に支えられて生きていける人だ。
「ハマーン・カーン。人を想える貴女が戻ってきてくれて良かった。貴女を知ることができて、僕は貴女に気遣われて嬉しかった。無事に帰ってきてくれてありがとう。」
エグザべさんが、そう言った。いつもの優しい、エグザべさんの声だ。
そうだ、エグザべさんの悲しみにもハマーンさんは寄り添ってくれた。
自分だけを憎むように、身を差し出した。護りたいものがあったから、だ。彼女にはそれだけしかできない証左でもあった。
誠実な人だから、最大限、自分にできることをしてみせた。
僕は、エグザべさんの手を握った。エグザべさん、あなたももう、孤独じゃない。僕がいる。エグザベさんも優しく握り返してくれた。そう、僕も孤独じゃない。だから、
「僕も、貴女を知れて良かったと思います。ハマーンさん、お帰りなさい。」
言葉が素直に出てくる。
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カミーユ、カミーユ・ビダンは強い子に育った。僕だけじゃない、みんなもカミーユを支えてくれた。それを心の強さにもできるカミーユは、とても強い子に育った。
僕は君に、カミーユ・ビダンに寄り添っているつもりだったけど、君が寄り添っていてくれていた。僕は鈍感だ。
ジオン公国、故郷の仇。僕の仇。
パプテマス・シロッコの激励が無ければ、僕は戦いを挑んだかもしれない。
もう会えないカミーユが背中を押してくれなければ、泣いてもいた。
目の前にいたカミーユが現実に戻してくれなければ、憎しみの心でハマーンと対峙していた。
僕だけでは、ダメだった。それが、分かっていたから、カミーユが来てくれた。僕の親友たちが、来てくれていた。
カミーユを連れてきてくれた。
ジオン公国の蛮行を赦すわけではない。
僕は生きているから、そして、軍人として戦って行くのだから、それをする資格はない。
だが、忘れない。生きている限り、忘れはしない。
ハマーン・カーン。貴女の優しさも、忘れない。僕の、そして死んでいった人々の無念を晴らせと、覚悟をみせたことが貴女の優しさだ。
自分の命を懸けても、護りたいものがあると示した優しさでもあった。
カミーユが手を握ってくれている。貴女も僕と同じなのか。優しく握り返したい手があるんだろう。
だから、このMSは、僕とカミーユを潰さない。振り払いもしない。血で汚れた手で、その手に触れたくないからだ。
貴女には大切にしたい人がいる。おそらく、子供だ。それが、分かる。
「……私はアクシズのハマーン・カーンだ。私のことは良い。だが、ミネバ様、ミネバ・ラオ・ザビ様と妹だけでも、2人だけでも平穏に過ごせる場所を、と願うのは恥知らずな話だ。特に、エグザべ・オリベ中尉、お前に頼むのは。」
そうか、貴女は、ずっと2人のために、悪意の中を戦ってきた。再び、地球圏に戦争を起こそうという人の悪意の中を生き抜いてきた。悪意に流されてさえも。
「僕は、貴女にも平穏に過ごしてほしい。大丈夫だ。全力を尽くすよ。」
戦争は大人の仕事だ。
カミーユは強い子だけどまだまだ護られるべき子供で、ハマーンは僕より若いだろうに子供を護るため孤軍奮闘している。
だったら、僕は本来の仕事をすればいい。
平穏に過ごす民間人を、平穏に過ごしたい民間人を護るために軍人がいる。大人で、軍人の僕がいる。
子供を助けたいというハマーン・カーンの願いにも、ハマーン・カーンと共に平穏を過ごしたいという子供たちの願いにも僕は応えられる。
おかえり!ハマーン!
最前線に、正体不明の敵の前に!!ミネバと摂政ハマーンが両方出てくるってよぉ!!!
もう終わりだよぉ!このアクシズ!
アクシズは全戦力投入してない、とか嘘つくの止めてもらっていいですか??この2人が戦場出てるのに余剰戦力ある?
それ、もう戦場で死んでくれってことじゃんかよぉ!それはよぉ!!
Zガンダム本編だとアクシズはサイド3の統治権を欲していて、ティターンズ、エゥーゴ(アナハイムエレクトロニクス)それぞれから許可もらってるんですよね、確か。戦力貸してくれたらサイド3と交渉する、とティターンズもエゥーゴも明言してる。
アクシズとジオン共和国と繋がり合ったら、こんな面倒な事せずさっさとサイド3行ってるはずなので、まーじーで!戦力温存してたとか言うZZガンダムの設定がノイズすぎる!
ノイズすぎるのでノイズキャンセラー使いました!!
誰だってそーする。俺だってそーする。
スレではエグザベ中尉は「対人ノーガード戦法、常に心が全裸の人」と呼ばれました。
よろしく!