機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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ヌー・ハーグは曹長である。37歳という若すぎる若さでこの階級になったのは、まあ、人手不足が原因だ。

地球連邦軍は人手が不足している。空前絶後の人手不足だ。

1年戦争で、戦中戦後の復興で、デラーズフリートの暴挙で、

地球で、宇宙で、コロニーで、月で、木星で

ありとあらゆる人手が不足していた。

しかし、エゥーゴに着任して早々、自分の認識の甘さを再確認することになった。

子供が、戦艦に乗っている。MS、ガンダムMK-Ⅱのパイロットとして、既に戦場で戦果も挙げている。

それほどまでに人手が不足していたのだ、と思い知らされた。

カミーユ・ビダンは少々、生意気なだけの小賢しい子供だったのに、戦場へ出ていた…

そんなことも、気づけないくらいに

そんな暴挙をさせている犯罪者が軍に潜伏したことも気づけないくらいに、

地球連邦軍は人手不足だった。







ヌー曹長のお説教

 

 

 

 

アーガマの情報部は今日も大忙しだ。

 

アクシズのMSと戦艦の動きから得られた情報と、エグザべさんがハマーンさんと接触して得られた情報を整理と分析して、それをもとにアクシズの『お土産』になるようなニュース記事の選択をしないといけなくなったからだ。

情報部員は全員、それぞれデバイスを覗き込んで、時折、印刷機の前でスクワットしてる。情報部ではエコノミー症候群防止のためにコピー機の前でスクワットしてる、というのはエグザべさんから聞いた。それについて、情報部に訊くと顰蹙を買う、とかなんとか。

 

とにかく、情報部の部屋は騒がしくて、僕は身の置き所が無い気持ちを味わされている。

 

 

 

エグザべさんとブライト艦長は、情報部と憲兵を連れて今から2時間後にアクシズの戦艦グワダンに向かうことになった。

 

ハマーンさんは、あの後すぐ、

 

「3時間後、グワダンで待つ。」

 

と、僕たちをMSの両手でギャン改-Ⅱのコクピットへ運び、戻っていった。

 

 

 

それから1時間たって、今、僕の目の前に座る情報部のヌー曹長はひたすら、

 

「ああああああああああああああ。」

 

と、声を出しながら、コンピューターを乱暴に操作している。キーボードなんかバウンドしてるようなありさまだ。高いんだろうな、あのキーボード。かなり頑丈だ。

他の情報部員は慣れたようにヌー曹長を視界に入れないようにして働いていた。

 

僕、カミーユ・ビダンが情報部にいるのは、まあ、つまり、謝罪行脚というものだった。

 

グラナダの大掃除が終わり、アーガマ艦載員全員の身上調査が憲兵で行われて以後、僕とファはアーガマの艦内を自由に歩けるようになった。自由時間も増えた。グラナダの市街地には行けないけれど。まあ、特に行きたい場所もないからそれは別にいいけど。

 

ギャン改-Ⅱでエグザベさんと一緒に格納庫に戻ってきた僕は、当然、皆に怒られた。

ブライト艦長なんか、艦長室のベッドの上で泣きながら僕を叱ってくれた。心配してくれてたからだ。僕がパイロットスーツで宇宙に出たという報告を聞いたときは悲鳴をあげて、飛んできた医療班に鎮静剤を打たれたらしい。

ファにはびんた2発を食らったし、エマ中尉はげんこつをくれた。アポリー中尉は笑ってくれたけど、そのあと、二度としてはいけないと真剣な顔で言ってくれて、

 

「ファを泣かすなよ。」

 

とまで僕を諭してくれた。

 

エグザべさんは、

 

「僕の友人が、カミーユに助けを求めてくれたんだ。強引な奴らで、ごめんな。」

 

と言って、僕に謝ってくれたけど、僕の謝罪行脚には付き合ってくれなかった。エグザべさんはエグザベさんで憲兵と情報部と艦長室と格納庫とそのほかと往復している。今も、情報部前の廊下を通り過ぎて行った。ハンドサインで「謝罪」を僕に見せて。ドアが開けっぱなしだから見えた。

 

ヌー曹長は、そんなことも気づいていないかのようにまだ、声を出している。今、50秒か。肺活量すごいな。

 

「本当にね、本当に良くないんだね。良くないね。これは良くない。君ね、カミーユ君ね、君、艦橋のカメラにも映っちゃってるじゃないね、これよくないよね。俺たち情報部員もね、今んのところカミーユ君のことね、色々大人の事情ってやつでね、見逃してるから他人のこともね、言えないんだけどね、正直本音言うと、カミーユ君ね、少年兵だからね、なるべく記録、残したくないんだよね。記録残したくないの、本当にね。カミーユ君たちが戦艦に乗ってるって後世の人にね、知られたくないんだよね。分かってくれるかな。大人の事情というものはね、癒着とか権力闘争とか本当に良くないイメージ持たれてるからね、子供の君には胡乱に写るんだろうけどね、だって、これ、良くないよね。そうだよね。良くないよね、少年兵っていう前例が残るのは本当によくないもんね。分かってくれるよね。それがカメラに残っちゃってんだもんね。おまけに、格納庫のカメラじゃなくて艦橋のカメラだもんね。エグザベ中尉と身長比較してもね、子供ってわかっちゃうし、カミーユ君、ここね、顔まで映ってるよね、分かる?分かったらダメなのもね、分かるよね。俺らのこれからの作業ね、君の姿が映っちゃったカメラを戦闘で壊れたことにしてね、新しく繋ぎなおすって記録作ってんだよね。いや、記録だけじゃなくて実際ね、繋ぐよ。当たり前だよね。後でね、みんなでね、繋ぎに行くよ。カメラの在庫と数が合わなくなるからね。それが200か所。アーガマの外側だけでね、それ以上のカメラがね、あるんだよね。それで全部のカメラの映像をね、記録改ざんするの、これからね。でも、それだけだと不十分だよね。だってカミーユ君の顔見たのね、アーガマのカメラだけじゃないよね。だろ?だから、できればね、アクシズ側のMSも全部壊してね、グワダンに乗っている人間全員殺してきてほしいってね、さっきもエグザべ中尉に言ったんだけどね、ダメだよって言われちゃってね、本当に、良くないよね。」

 

今までで一番長い説教だった。ヌー曹長はおしゃべりだ。辛い。

 

「そもそもね、エグザべ中尉にもね、常々言ってるんだよね。情報を取られたくないから、敵は全員殺してきてくれってね、俺言ってるのね。それが、中尉ときたらね、まぁ、最小限にしてくれちゃってね。おまけにちょっと前のジュピトリスの件でね、ブライト艦長は俺をね、怒ってくるし目の敵にしてくるのも良くないよね。」

 

僕が、告げ口したこと、ばれたのかな。ヌー曹長は睨んでくる。大人げない人だ。

 

「自分の情報を知られたら死ぬし、敵の情報を知らなかったら死ぬんだよね。情報部はいつも、いつでもね、最前線なんだよね。俺らの働き次第で、人の生き死にもね、決まりかねないからね。本当はね、他の部署の人に知られるのは良くないけどね、情報部はここが最前線と思ってるんだよね。俺ら次第で、戦争もね、起っちゃうかもしれないからね。それでね、カミーユ君ね、君ね、少年兵ってことね、誰かに知られたら、真っ当に生きられないと思いなね。本当にね、社会に居場所なくなると思いなね。一生ね、隠して生きていきなよね。少年兵なんて本来は使い捨てだしね、バレたら宗教の人とかね、反政府派とかね、まあろくでもない連中に一生たかられるんだよね。特にカミーユ君顔良いからね、看板にはもってこいだよね。一生、まともな暮らしはできないからね、看板はね。ま、エグザべ中尉もね、手を尽くしてくれてるしね、お偉いさん方もね、色々あってホワイトベースがあんな体たらくだからね、君のね、進路の希望は融通利かせてくれるだろうけどね、カミーユ君ね、本当にね、まだまだ危ないんだよね。今のカミーユ君の立場とかね、社会でね、本当に良くないんだってことね、そういうことね、分かってほしいんだよね。本当にね、少年兵は良くないってこと、よく思われていないってこと、分かってほしいんだよね。」

 

「はい。」

 

素直にそう言うしかなかった。いや、でも、エグザべさんによると、僕のあの暴挙はエグザべさんの……

 

「わかってくれて、俺もね、うれしいよ。はい、なら、俺の仕事が終わるまでね、助手しててね。お水とコーヒーね、みんなに配っててね。それから印刷機の紙補充してね。シュレッダーの掃除もね、よろしくね。」

 

それから、整備班のアストナージさんのところへ謝りに行けた時には、ヌー曹長の助手をしていた僕はぼろぼろになり過ぎていて、すぐ帰って休むようにまで言われたのだ。お説教は明日に回すとも、言われた。

 

僕の第2の部屋のベットを占拠したのは、つまりそういう訳だった。

 

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カミーユには悪いことしたな。カミーユが。

 

そう思って、後で埋め合わせでもしてあげようとは考えているけど、残り時間は2時間か。

 

ギャン改-Ⅱの補給と調整を最優先にしてもらったし、訪問用の軍靴の底に、小さいが投擲して使うタイプの煙幕弾をいくつか詰めてもらうように手配もした。整備班に頼む仕事ではなかったが、他に頼める手先の器用な作業班は、アーガマの修理に忙しい。

 

場合によっては、アーガマには最大船速でグラナダの拠点に戻ってもらうことにもなる。護身用の銃も持ってはいけないから、装備が心許ないな。

 

情報部の前を通り過ぎる際、ヌー曹長がグワダン艦載員を全員殺してきてくれ、と言ってきたけど、またいつもの発作かな?

彼は時折、敵の殲滅を提案してくる。断るのがお決まりだ。エマ中尉にもアポリー中尉にも言ってくるらしい。困った人だ。

 

だが、優秀で信頼できる情報部員でもあった、敵殲滅さえ、言い出さなければ。

 

そうだ、彼に『ルウムの亡霊』が書いた最新記事を用意してもらおう。

『ルウムの亡霊』はおそらく、プロパガンダ要員として地球連邦政府と手を結んだ。業務委託か政府に所属しているのかまではわからないけれど。以前より積極的に、様々なネットミームやゴシップ記事を生み出している。

憲兵も協力しているのだろう、クワトロの写真も『素材』として活用しだした。更なる人気配信者兼人気記者になっていた。命の心配が減ったからだろう。安全を確保できたのなら、活発に精力的に活動もできる。

 

情報部に戻ってヌー曹長に頼むと、グワダン艦載員の殲滅をまた提案された。

 

「だめだよ、いたずらに敵を増やしても、何にもならないことは曹長だってわかっているはずだ。情報部員なんだから、節度をもって発言しないと君の信頼にも傷がつく。僕らは冗談だってわかっているけど、ね。」

 

ヌー曹長は大きくため息をついてみせた。いつものやり取りだ。

 

全く、優秀な情報部員のヌー曹長にのせられるような軽率な人間がアーガマに乗って無くて何よりだよ。曹長自身もいらぬ傷を増やさなくて済む。経歴だけではない、心の傷だ。

 

ブライト艦長を心配していれば、彼を見ていれば分かることだろう。

 

 




僕らの頼れる情報部 

愉快なエゥーゴ情報部アーガマ分隊主任曹長
ヌー・ハーグ

使いやすすぎるオリキャラ。
水曜どうでしょうアフリカ 編に出てきたヌーからきました。

スレではキャラデザまでもらった幸せ者!

曹長にしては若すぎる??まあ、宇宙世紀だし、仕方ない。
あんなに人が死んでるんだ、仕方ない。

カミーユに対しては、割と仲いい小賢しい生意気な近所の子供くらいの感覚で接して居たら、とうとう激やば事件起こしてくれちゃって、心が死んだ。
MSに乗ったままならなんとか誤魔化せたのに、戦艦内なら誤魔化せたのに!!お前、顔がカメラに!!敵にも知られて!!

しかし、この子供、訳アリで周囲に真面目に説教してくれる人がすくないのである。エグザべ中尉?中尉は一番甘やかすに決まってるだろ!!

俺が、俺が何とかしなきゃ!という精神から出た子供向けのお説教。
ヌー・ハーグ人生初の子供向けのお説教。




ヌー曹長は殲滅作戦提案する人間をこれでも選んでる。某グラサンには決して言わないし、そもそも某グラサンのいるところで必要事項以外は話さない。人間として至極まっとう。
某グラサンとその配下が居なくなったので伸び伸びと情報部できて油断してた。
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