機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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ハマーン・カーンはミネバ・ラオ・ザビと妹セラーナ、マシュマー・セロをアクシズから助け出した。

ジオン公国から、助け出したのだ。

必要な『力』は、アクシズの外から与えられた。

ルウムが、ハマーンに与えてくれたのだ。


必要な『力』

 

 

力が必要だった。

 

いつの時代も、人類は力を欲した。生きていくために。

 

宇宙開発においても当然、力は必要とされた。きっと後世、MSは人類が欲した力の1つの形として残っていくのだろう。MSの原型は、人型の作業ロボだというのに。兵器としての機能だけが注目されて残っていくのだろう、と言うことは僕にとっては悲しく、虚しくもある。

僕自身、MSに対して機能美を感じないわけでもない。浪漫だって感じることはある。

 

宇宙で人類が欲した力。人類が宇宙で生きていくために、小惑星の開発や掘削、人が住めるようなコロニーの建築、重い機材や物資の運搬に必要となった力、その形が人型作業ロボだった。それらの作業は、人間がただの人間の大きさのままでは行えなかった。人間のままの力では行えなかった。

太陽からの紫外線や宇宙風を遮る地磁気や空気、重力がない宇宙では。

 

重力がなくとも、重さはある。宇宙に、重さはある。

無重力でも人間は重さに潰されて死んでいった。

理解した時は不思議な感覚だった。重力のない宇宙で、それを見た。

 

頭を振る。

 

深呼吸をする。

 

パイロットスーツの腰にあるケーブルは既にコクピットのシートに接続した。このケーブルは僕の脳波をリアルタイムでギャン改-Ⅱに送信するためにある。万が一、僕が操縦をミスってレッドアウトやブラックアウトしたら、その脳波の異常を感知して気付け用の電流を僕の体に流すためのケーブルだ。

1度だけ喰らったことがあるが、あの時は痛すぎて死ぬか、と思った。直後に調整してもらって、今は、箪笥に足の小指をぶつけた程度の痛みになっている……はず。

 

マウスピースを嵌めてから2、3度噛んで位置を調整する。ジオン共和国軍の新型のパイロットスーツはヘルメットのバイザーが開かない。ヘルメットを外してからでないと、マウスピースが嵌められないのは酷く不便だ、と再三、スーツデザイナーに意見しているが、まだ採用しない。曰く、マウスピースを使うような機動をするMSパイロットは少ないので視野の確保を優先する、と。

そんなわけないだろう。僕だってやれていることだ。

練習すれば、誰でも、僕くらいには動ける。

 

ギャン改-Ⅱだって、僕だけが乗っているわけではない。

いや、白銀に金のラインのギャン改-Ⅱは僕だけだが、ギャン改-Ⅱは5機が現役だ。僕以外の4機とも、僕の部下だ。彼らは訓練をして、努力を積み重ねてきた。僕と同じだ。

 

マウスピースだってそうだ。初めの頃、マウスピースを嵌めた口では、会話はスムーズにはできなかった。コツを掴むまで、部隊の指揮は本当に大変だった。マウスピースの作成に協力してくれた歯科医と相談しながら声が出せるように改良してきたし、口頭や通信以外の部隊指揮の方法も検討してきた。

 

検討してきたから、僕のギャン改-Ⅱ部隊はハンドサインを多用する。

ミノフスキー粒子対策にももってこいだった。いわゆるニュータイプの能力でカバーする、という馬鹿げた案は部下からも出たが、却下した。

他の部隊と連携できない、戦場で使えない兵士に彼らをしたくなかった。

 

人間はそんな便利な存在ではないし、そんなに便利に使っていい存在でもない。

 

でも、人は便利を必要とした。生きていくために。

だから、人は組織を作った。人間の力、個人の力でできないことをするために。MSを作った理由と同じ理由だった。

 

僕が今からしようとしていることは、それに反する馬鹿なことかもしれない。

これを組織、いや部隊ではなく、個人で行うのは、愚かだろう。

 

ギャン改-Ⅱの火を入れる。コンソールを叩き、計器の数値を確認する。

問題ない。

全周天式のコクピット、視界不良の場所もない。

大丈夫だ。見えている。流石、イマニュエル上等兵だ。いい仕事をしてくれる。

 

エアハッチにパイロットスーツを着たカミーユが居るのも見えた。特に指示は出していないから、ギャン改-Ⅱでも見に来たのかな。同じくパイロットスーツを着たファさんがカミーユを怒っている。

カミーユは何したんだろうな?

 

「行ってくるよ、カミーユ、ファさん。」

 

『行ってきます』のハンドサインを出す。ギャン改-Ⅱの右手に専用ビームサーベルを掴む。左手にパンジャンドラムも。

 

専用ビームサーベルは右腕かランドセルに固定もできるし、部下にはそうしている者もいる。右腕に固定したまま専用ビームサーベルを使うという戦法だ。

ライフルの同時持ちをできるから、と勧められもしたけど、僕はあまりしないな。そもそも共和国軍のライフルは威力が弱い。テロリスト相手には充分な威力ではあるけれども。

 

だが、このビームサーベルはせっかく柄が他のものと違い丈夫で長い。出力も高い。

それは近接戦闘で、敵の虚を突くのに使えた。

ベテランの眼が良いパイロット程、かかり易かった。柄の持ち手部分、長く持つか、短く持つか、ただそれだけで宇宙空間でも、最新のMSの観測カメラをもってしても、人間は間合いを読み間違う。

右手のマニピュレーターの加減を覚えるまで何度もビームサーベルがギャン改-Ⅱの右手から抜けたが、まあ、練習したら出来るようになった。

コツは、腕の振り方とマニピュレーターの加減を合わせることだ。慣性を使っても良い。

 

さて、これからが大変だ。なんせ航続距離がどうなることやら。

 

ギャン改-Ⅱほど航続距離のあるMSはアーガマにというより、地球連邦にもない。パンジャンドラムのおかげだ。いずれは、ジオン共和国の軍縮でできた徒花となり消えるかもしれないパンジャンドラム。

 

だが、僕の理想とする戦いを、現実にしてくれる。僕が必要とする道具だった。

 

そう、敵に気づかれる前に、敵を殺す。

 

それが、僕の理想の戦い方だ。

 

 

 

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ミネバ様は、私に、このハマーンに会いに会議室の近くにいらしていた。アーガマからもたらされた情報を仕分けしていた会議室近くまで。ミネバ様のお部屋からは距離があるというのに。気づかなかったのは、記事の動揺のためだった。

私としたことが、この程度の動揺で…

 

ミネバ様は私を近くに呼び寄せられると、酷くおびえた様子で、

 

「何か、ザラザラするのだ、ハマーン。とおくから、ザラザラするものたちがたくさん、こちらをみている。わたしたちをみているのだ。こわい、こわいのだ、ハマーン。わたしをまもっておくれ」

 

後ろに連れた2人の侍女よりも、私を頼りにしてくださった。

 

「無論です。このハマーン、ミネバ様のためならば命も惜しくありません。」

 

とっさにミネバ様の前に膝をつき目線を合わせてそう、言った。普段、私はミネバ様の傍に長くは居られないのだ。それなのに、私を頼ってくださったミネバ様。

 

そのまま、ミネバ様の腕の脈と熱を確認させてもらった。ミネバ様の腕に鳥肌が立っている?心拍数も高いような…熱は無いようで安心した。アクシズの医薬品は、医療は充分なものではない。

 

そうして、ミネバ様の信頼に応えて見せれば侍女たちから鋭い視線があるのを感じる。2人の侍女は、ミネバ様と私を、立ったまま上から見下ろしている。

そう、ミネバ様は具合が悪いとおっしゃっているのに、貴様らは立ったままミネバ様に何もしなかったのか。

 

アクシズには、こんな俗物だらけだ。私とミネバ様を見下ろして悦にいっているのは分かる。

 

だが、もういい。ミネバ様の手は温かだった。セラーナの手も。

忘れたことはなかった。忘れたくなかった。

だから、地球圏に戻ってきたのだ。

温かさをなくさないために、生きるために戻ってきた。ミネバ様とセラーナと、生きるために!

 

人間は宇宙にたどり着いても温かさを求めた。

それが、重力いや、引力だというのなら、地球の重力の底にも温かさはあるだろう。人間が引かれるものがあるのだ。

 

今の私には、ハマーン・カーンにはミネバ様の緊張を、ザビの因業をも解かすことのできる温かさが地球圏にある、と信じられた。

無ければ、私とセラーナで作ればいい。

 

このハマーンの服の下、小型煙幕弾が2つある。笑ってしまうくらいに小さな武器だ。人も殺せない。閉じた指の隙間に3つ収まるくらいの小ささだった。

ルウムのエグザべ・オリベが渡してきた武器はそれだけだった。

 

充分だ。貰い過ぎるくらいにもらった。大きな借りができた。

 

借りは、互いに生きていなければ返せない。恩も恨みもそうだ。

 

ミネバ様、あなたをザビから解放してあげられる時が来ました。

ルウムが、それを示してくれた。

 

煙幕弾を一つ取り出し、ミネバ様を抱き上げた。

 

そう、ルウムが私たちを引き寄せてくれる。

 

 

 

 

 

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「エグザべ中尉!グワダンに動きがあった、格納庫が開いている。」

 

「了解しました。ブライト艦長、エグザべ・オリベ、ギャン改-Ⅱで出撃します。」

 

「カタパルト良し!射出角度、グワダンの左舷、鼻先横になるぞ!」

 

「問題ありません。エグザべ機、出ます!」

 

これから、アーガマは急速旋回して、グワダンから離脱する。必要なのはグワダンからの追撃を躱すこと。いや、追撃できなくなればいい。

 

グワダンは巨大な戦艦だ。なんせ、謁見の間さえある。パプテマス・シロッコのドゴス・ギアよりも大きい、のが分かる。まあ、詳細は後から、観測班と情報班がまとめて出してくれるだろう。

 

今、僕に必要なのはグワダンの砲の位置だ。それは手元モニターで確認も済んでいる。アーガマの観測班や情報班が観察する時間は充分にあった。グワダン外観から分かる砲の位置は全て僕の頭に入っている。

 

カタパルト発進後、すぐにパンジャンドラムを起動する。

身体が、腕が、肩がシートに押し付けられるようなGをマウスピースを噛みしめて耐える。肺から空気が出そうになるのも。

 

赤い戦艦グワダン。鼻先が長い犬の顔のような戦艦。その鼻先にジオン公国のマークが大きくペイントされている。そこには、主砲も副砲もない。

 

鼻先横に目標物がないのなら!

パンジャンドラム、スラスター、バーニア!!急速反転!

グワダンの正面から、砲を潰していく!グワダンの副砲は驚くほどに自在に動く。動いているのが視界の端で見えた。ギャン改-Ⅱの速さにも追いつけたのならば、きっと僕を落とせただろうに!

 

グワダンの主砲の手前、副砲が2対4門ある。直線状に配置してくれるというのは有難い。

パンジャンドラムに推進を任せる。速度は落ちない。宇宙には空気が無いに等しい。

 

その勢いのまま、ビームサーベルをグワダンに当て副砲ごと切り裂けばいい!

それがブレーキにもなる。

揺れるコクピット、身体、急ブレーキの衝撃、かかるG、全て過去に経験したことがあるのなら、僕は何度でもやってみせる!

 

主砲は前方上だ!正面に現れるグワダンの外壁を蹴り、MSの体勢をひねりパンジャンドラムの位置を調整する。

 

肺から空気が全部出た!!だが、主砲はこのまま切り裂ける!!

 

少し視界が揺れたか?空気を吸わな過ぎた。

主砲を切り裂いたそのまま、進路を維持し息を吸う。ギャン改の頃は、一気に空気を吸い過ぎて咽て大変だった。今はもうない。

 

僕はグワダンの直上にいて、それほど離れていない。

 

グワダンの左舷側に旋回したアーガマとそれに追従するMSが3機。ハマーンと妹と?護衛の男性かな?一つはガザCではない。それがハマーンか。

 

思いながら、グワダンに再び取り付き、左舷の副砲を破壊する。

グワダンの後方から前方へ。

ついでに左舷のカタパルトにも傷を入れる。MSの発進を遅らせるために。

 

しかし、ろくな反撃をしてこない。僅かばかりの反撃もギャン改-Ⅱに掠めもしない。

実弾の攻撃が無いのは、何故だ?

 

グワダン自体も旋回すらできていない。運が良い。

 

だが、追手のMS部隊が無事な右舷カタパルトから出て来たか。

 

彼らは位置を考えて出てくるべきだった。僕の、敵の前に出てくるべきではなかった。ギャン改-Ⅱを迂回して追えばアーガマに1機くらいは追いつけていただろう。

 

ああ、そうだ。ジオン公国に兵は無し。

 

その通りだ。

 

その残党に兵士を育てられるはずも無かった。

 






宇宙は臭くないそうです。そら真空だから。でも、宇宙服にはラズベリーみたいな匂いが移るそうです。


ギャン改-Ⅱ 始動編

大丈夫だろうか、ギャン改-Ⅱにエグザべ中尉、ちゃんと乗れてる?

これ、10割ギャン改-Ⅱです。




Zガンダム本編だとアクシズとジオン共和国と繋がりがあったなんて言う発言もない。
ナレーションでジオン共和国も陰謀を持っている、とか一度言われるくらい。
共和国はアナハイムエレクトロニクスとティターンズそれぞれから、勝手にアクシズに売り渡されてて大草原wwwww…笑えねぇ……
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