機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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アーガマに迎え入れられたハマーン・カーンはアクシズを語る。

アクシズの歴史とそこに住む人々のことを。




憂鬱

 

 

「ファ!エグザべさん、帰ってきたはずなのに部屋にいないんだけど、どこに行ったか知らないか?部屋で戦報書いてると思ったのに、いないんだ。」

 

僕は情報部の助手が終わり、医務室で湿布をもらった帰りだった。たまたま、廊下で会ったファに訊く。

ファは助手じゃなかったから、コーヒーと水の配膳と少々のシュレッダー掃除を終えたら僕を置いてさっさと情報部から退散していっていた。ズルいと思う。

僕はエグザベさんが帰ってきても、1時間は助手していたのに。

 

情報部に居たときに、戦闘が終わって帰ってきていると艦橋からの放送を聞いて知ったから、医務室より先にエグザべさんの部屋に行ったのに。

 

ギャン改-Ⅱの戦闘、まともに見れていない。いや、エグザべさんに強請っても、子供が見るものではないってたしなめられるんだろうけど。

でも、僕だって男だ。かっこいいMSは好きなんだ。本当に。

戦闘詳報書いている時なら、なんとか盗み見たりできるのに。エグザべさんは、甘いから。

 

「さっき、ヌー曹長に聞いたわ。ハマーン・カーンさんと面会してるんだって。艦長室よ。カミーユは入れないわね!」

 

ファが妙にすねている。困るなぁ。

 

「なんだよ、まだ僕がハマーンさんに見惚れていたって思ってるのかよ。」

 

「カミーユったら鈍感なのよ!」

 

ファが腕まで組んで僕を睨みつけてくる。

こうなると、昔からファにはかなわない。とにかく平謝りした記憶か、アイスかジュースを奢って誤魔化した記憶しかない。他の方法なんて思いつきもしないし、ドラマでだって教えてくれない。

どうしよう、サラとシドレに相談できないかな?女心って難しいって本当だ。

 

「別に、僕はハマーンさんに見惚れていないよ。あの人、母親じゃないか。」

 

「そ、れは、それは私にも分かるわよ。ミネバちゃん見たら、分かっちゃうわ。でもね、カミーユ!私が欲しい言葉は、そういう言葉じゃあないってこと、わかってよ、カミーユ!いい?エグザべ中尉さんに相談しようたってそうはいかないんだから。それに、カミーユってエグザべ中尉さんに似てるから、わかりはしないわよ!」

 

僕だって、エグザべさんに相談しようとは思わない。忙しいし、エグザべさんから、そういう恋愛の話なんか一度も聞いたことないんだ。相談するわけないだろう。

 

いや、後で仲裁はしてもらうけど。そういう機微くらいは僕にだってわかる。

サラとシドレに相談したい、本当に、心から。僕には難しすぎる問題だ。なんで女心講座とか世の中にはないんだろう。

 

「ファのこと、いつも見てるのに。」

 

なんで、僕は責められるんだ?というか、なんで僕はわからないんだろう。

そもそも、僕とファはこれでも長い付き合いだ。僕がグリーン・ノアに引っ越した時からずっと仲良くしてきたのにお互いこうも拗れるのがわからない。

 

なんだかな。分からないといけないのに、分かりたいと思っているのに、一足飛びに分かってしまうのはダメなんだろうな。

思考を走らせてわかっちゃったら、ビンタ4発どころじゃ済まないよな。

 

そういうことは何となくわかるようになってきたんだけど。本当に、なんだかな。

 

 

 

 

 

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艦長室には、憲兵が4名、女性士官が4名、ブライト艦長、エマ中尉、僕とハマーン達4名が詰め込まれていた。他に場所はないのかと言われれば、まぁ、無かった。

彼女たちは地球連邦軍に保護された賓客という扱いになる。だから、当然、ブライト艦長も彼らを尊重しているという姿勢を示さなければならない。ジオン公国、ザビ家に対して敵意を持つ艦載員がいないとは言い切れない。彼らを賓客として遇する、ブライト艦長の判断は的確だ。

艦長室前にも憲兵が2名警護している。

 

 

 

 

僕は帰艦後、着替えるとすぐに、艦長室に連行された。

 

女性士官のうち2人の情報部員に両隣に立たれ、僕は両手を上にあげて、艦長室まで歩かされた。あんなに近くに立たれていたら、カミーユとファさんにとんでもない勘違いされそうだったから両手をあげるしかなかった。

これはヌー曹長の案だと言う。本当に優秀な情報部員だ。まったく。

 

代わりに、カミーユとファさんが僕の戦闘を見ないようにしておいたから、と言われては、僕も感謝するしかなかった。

 

いや、でも、ハマーンに質問する役も僕に回すのはやり過ぎだとも思う。女性情報部員は何のためにいると思っているんだ?

 

そうは思っても、仕方がない。ハマーンには不安を抱かせたくない。せっかく、アクシズから脱出してきてくれたのだ。ハマーンの力にもなりたい。

結局、僕は彼女に煙幕弾を渡すしかできなかった。まだ、21歳になったばかりだったというハマーン・カーンに脱出のすべてを任せてしまった情けない大人だ、僕は。

 

だが、まあ、ハマーンも顔見知りになった人間と会話する方がリラックスできるのだろう。艦長室に入った時、少しだけ得意げな微笑みを見せてくれた。

 

 

 

「シャア・アズナブルは地球圏の威力偵察を提案して、あなたの父、マハラジャ・カーンの古くからの部下を連れてアクシズから出て行った?」

 

僕はブライト艦長の席の隣に立ち、ハマーンに質問していた。

復唱をしているのは、いま、あまりにとんでもない話を聞かされたからだ。

 

「5年前、0083年の8月に奴に引き抜かれた父の側近と腹心は、シャア・アズナブルが乗って来た戦艦で地球圏へ出て行った。多少は訓練されていたアクシズ警備の兵士と奴が連れて来た兵士も合わせて600名にも及んだ。当時のアクシズの人口は一万人強程度だったから、人口の6パーセントだ。…残されたダイクン派だけでは行政機能に支障をきたすと判断して、私がアクシズのミネバの摂政ハマーン・カーンとして、ザビ家派閥の高官だった人間に協力を要請した。アクシズは今も、ダイクン派とザビ家派の二つの勢力に大きく分けられる。」

 

恐ろしい話だ。アクシズの統治のほとんどを司ることになるミネバの摂政と言う立場と権力。それを拝命したばかりだったというハマーンにとっては地獄に近い有様だっただろう。

 

「父は、シャア・アズナブルを信頼していた。ジオン公国の敗戦までザビ家の命令に従い、戦果以外の実績がなかったというのに。ザビ家の派閥を率いてアクシズへ逃亡してきたというのに。敗戦した故郷を捨てて来た男だというのに、何故か、私たち姉妹やミネバの近くにも置いていた。事あるごとに、シャア・アズナブルの意見を聞いていた。私が摂政になったのも、奴の意見があったからだ。2年程度しかアクシズにはいなかったのに、私もシャア・アズナブルをいつの間にか信用していた。」

 

孤独なアステロイドベルトで2年を共に過ごすのだ。アクシズの指導者であり、家族でもあるマハラジャ・カーンさえ気を許した男を、ハマーンのような優しい女性がどうして疑えるだろうか。

僕は、彼女の境遇に悲しみさえ憶えた。誇り高い彼女は、きっと僕のことなど気にもかけないだろうけど。

 

「ハマーン、クワトロ、いや、シャア・アズナブルはどうしてアクシズへ?ジオン公国が健在だった頃はダイクン派閥の流刑地、と言っても過言ではない場所のはずだ。わざわざザビ家に恨みを持っているだろう敵対派閥がいるアクシズまで、どうして?」

 

僕の質問に、ハマーンは首を横に振った。

 

「分からない。ただ、父を頼って来た、とは噂に聞いた。」

 

シャア・アズナブル。お前は何を考えている?何を考えていた?

敗戦したジオン公国。ソロモンさえ陥落し、ギレンもキシリアも戦死した。混乱のサイド3やグラナダを捨て、逃げて来た男をどうしてアクシズは、マハラジャ・カーンは、ダイクン派閥は迎え入れた?ザビ家に忠実な軍人を、迎え入れた理由は何だ?

 

「…シャア・アズナブルはダイクンの意志を継ぐ者だと。私は父が執務室で話をしているのを盗み聞きしました。姉さん、シャア・アズナブルがアクシズに来たばかりの頃です。」

 

話に入って来たのは、艦長室の部屋の隅でミネバの相手をしていたセラーナ・カーンだった。彼女はカミーユやファさんより年下の女の子だ。まだ、16歳だという。

 

アクシズで彼女は外務次官を担当していた。

共和国との共生の道を探るために、穏健派の筆頭をも引き受けていたという。だが、その穏健派も地球圏に至るまでの道程で消えていった。思想的にも、物理的にも。

セラーナ自身も何度か、危うい目にも合ったという。だから、信用できるマシュマーという男性を護衛につけたのだと。

 

ハマーン曰く、本当の意味での穏健派はアステロイドベルトから離れることを拒み、今もそこにいるという。地球圏に居場所は無いと、わかっているからだ。

 

アステロイドベルトで生き、死ぬことを受け入れた穏健派を想う。アクシズが彼らに残せた物資も少ない、という。彼らも求めなかった、と。

死ぬために、アステロイドベルトに残った穏健派。

おそらく、そこには1年戦争と全く関わりのなかった人々もいるのだろう。ただ、アクシズ開拓に従事してきただけの人々も…

 

1年の距離は、彼らに届かないくらいに遠すぎた。

 






多分、ものすごいギリギリの綱渡りの連続だったであろう、アクシズ統治。
Zガンダム本編だと、アクシズ内部におもちゃ屋さんやキャバレー?みたいなのや服飾品の店があります。エレカも走ってるらしい。……生産ライン、どうなっとるん、これ?3万人とは???

小説版だとレストランと紅茶もあるんだ…まあ、スレで紅茶は水耕栽培実験中らしいと聞いたので、それは置いておくとして!

ZZガンダム本編の薔薇!!おま、おまえぇ!薔薇って!
随分と余裕のある生活してんの、なんでだよぉ!!どうしてだよぉおおお!!
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