機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

52 / 138
修正

 

 

 

僕は今、僕の第2の部屋でエグザべさんが正座をさせられているのをファと一緒にベットに座って見ていた。

 

エマ中尉とアポリー中尉と何人かの基幹パイロット達とアストナージさんと…まあ、10人くらいに囲まれて、部屋の真ん中でエグザべさんは正座していた。正座を指定したのはエマ中尉だ。

もう絶対、エマ中尉は怒らせない様にしよう、と思う。硬い床に直接正座は、空手やってた僕にはわかる。辛いやつだ。

 

彼らは、無言でエグザべさんを囲んで立っている。その中心で、なんで怒られているのか分からない犬の顔してるのがエグザべさんだ。本当に何やらかしたんだか。

 

ヌー曹長が誰かに引きずられて、僕の第2の部屋に投げ込まれた。

あれは管制の人だ。若くて気さくな人なのに、艦橋にいる人なのに、力は強いんだなぁ。

 

僕とファが部屋に来た時には既にエグザベさんは正座させられていた。

 

僕はエグザべさんに、ファとの仲裁を頼みに来たんだけど。ちょっと無理そうだなって思って、その後、でも面白そうなので見ていることにした。エマ中尉も何も言わなかったし。

エグザべさんは、多分助けを求めてこっちを見ているんだと思うけど。この面々に立ち向かうのは子供の僕とファじゃ無理でしょ。

 

「え?情報部と憲兵は知ってたって?」

 

アポリー中尉が言う。ヌー曹長に確認するように睨みつけながら。迫力あるな。いつものアポリー中尉とは別人みたいだ。

 

「そりゃね、知ってるでしょ。何のためのね、憲兵と情報部かってね。わざわざ言いふらしたりもね、しないでしょうよ。だってね、何の意味があるんだって話でね。聞かれたらね、答えるけど。いやいや、正式な手続きをね、踏んでくれって前提でね。」

 

ヌー曹長は眠そうにうだうだ言っている。壁に凭れ掛かっているのはアポリー中尉が下から睨みつけているからだ。両手を軽く上げて見せて、『降参』のポーズまでしてみせてるけど、僕には分かった。ヌー曹長は欠伸を嚙み殺してる。

 

彼がおしゃべりなのはアーガマでは周知の事実だ。なんでも話してくれるわけではないというのは、エグザベさんから聞いて分かっているけれど。

 

「そもそも、身分を明かしていいという許可が地球連邦軍と共和国軍から出たのは、僕の愛機、ギャン改-Ⅱが届いたのと同時だったんだ。八百長の打ち合わせがあって、打ち明けるのが遅れただけで作戦に特に支障はないと。」

 

と、エグザべさんもグダグダ言い出したところで、エマ中尉からげんこつが落ちた。

 

「『修正』です。」

 

「…話すのが遅れてしまい、大変申し訳ありませんでした。」

 

深々と頭を下げたエグザべさんは、珍しく、しおしおした顔をしている。

アポリー中尉もげんこつを作って、ハアーッと息を吹きかけている。

 

「ジオン共和国軍は、エゥーゴを地球連邦軍の穏健派が作った新たな宇宙の治安維持組織、つまり反ジオン公国を主目的に掲げた、実質ジオン公国の残党狩りのための組織と考えていて、その組織にMSパイロットが不足しているという話を聞きつけたのを良いことに共和国政府に秘密で、連邦軍との協調路線を既設してしまおうと。ティターンズの創設時には、その交渉すらできなかったから、ちょうどいいと。」

 

「とんでもない話だ。」

 

エグザベさんの言い訳を聞くアポリー中尉の眼は鋭い。そう言えば、怒ってるアポリー中尉は久しぶりに見たな。

 

「実際にそうで、僕はギャン改-Ⅱが届くまで共和国軍と連絡が取れなかった。というか、ある日、上官に呼び出されたと思ったら、パスポートといくつかの書類を渡されて、グリーン・ノアに向かわされて、何が何だか分からないうちに現地の連絡員に遅刻したって怒られて、次は月のアンマンに向かえと指令書だけを渡されて。僕がグラナダの領事館へ行って共和国軍の指令に間違いが無いか確認にしてほしい、と言ったら、そこに待機していた連邦軍の憲兵にアンマンへ連行されて……いや、本当なんだ!!」

 

アポリー中尉がげんこつを落とした。

 

「本当にね、俺も全容を確認した時はね、連邦軍と共和国軍の正気を疑ったよね。」

 

ヌー曹長はそう言って、とうとう欠伸した。眠そうに眼も擦っている。

 

そんなにおかしな作戦だったのか。いや、僕もエグザべさんが共和国軍人だとは知らなかったけど。そういえば、時々妙に共和国の事情に詳しかった。情報部と仲良かったから気にしなかったけど。

 

アポリー中尉もヌー曹長の言葉に、エグザべさんが嘘を言ってないとわかったのだろう。少しバツの悪い顔をしている。

 

「なんで、私たちに打ち明けてくれなかったの!」

 

エマ中尉のいうことは尤もだった。

いや、エグザべさんのことだ、本当にうっかり、忘れていたんだろうな。そういうところあるから、エグザべさんは。

 

「タイミングの問題で。いや、本当に申し訳ないです。僕としても、軍の命令が正式に下っていて。既に軍機の指定が外れている今だから話せることですが、本来、僕に下っていた命令は、MSパイロットの育成と訓練の支援で。共和国軍もエゥーゴがジオン公国の残党以外との戦闘行為を行っているというか、行う予定で居たことなんて想定外だったんです。」

 

ましてや、民間人で子供の僕がMSのパイロットしているなんて、本当に想定外だったんだろうな。

そういえば、エグザべさんはジャブロー降下作戦だって反対してくれたし、ティターンズと正面切っての戦闘だって、可能な限り避けていた。

 

シャア・アズナブルのことも当然、想定外だったんだろうな。想定していたのなら、エグザべさんはアーガマに来なかった。共和国軍だって、エグザべさんをシャア・アズナブルに会わせようとはしなかっただろう。

だって、シャア・アズナブルは、エグザベさんの故郷ルウムの仇だし、共和国軍にとっては死んでいるはずの人間だ。子供の僕だってわかる。それは、とてつもなく残酷なことだ。

でも、共和国軍はそんなことを想定していなかったから、エグザベさんがアーガマに来てくれたのだ。

僕にとっては有難い想定外だったのだ。

 

「ブライト艦長まで知らないだなんて本当に、僕も思ってなくて。ギャン改-Ⅱが届いたときに知らされているものだとばかり。艦長からみんなに連絡がいくと思っていたのもあるんです。いや、本当に、僕から話すべきことだったんですけど。」

 

また懲りずに、グダグダ言い出したエグザべさんに今度はアストナージさんがげんこつを落とした。

 

「自分は、大したことしてないって、ハマーン・カーンに言ってたわね!」

 

エマ中尉のすごい剣幕に、エグザべさんはたじろいている。そんなこと言ったのか。まったく本当に、エグザべさんは。

 

「それは、そうでしょう。僕は大したことはしてないです。軍規に従っていただけで、グラナダがエゥーゴの基地になったことも、ヘンケン艦長を始めウォンさんや憲兵、他にも尽力してくれた人たちがいてくれただけですよ。」

 

エマ中尉から、またげんこつだ。

大丈夫かな?エグザべさん、馬鹿になったりしないだろうな。

 

結局、エグザべさんは1時間の説教をみんなに散々受けた後、足がしびれて転んで、ヌー曹長に医務室に連れていかれた。

 

僕とファとの仲裁は要らなくなっていた。なんだか、エグザべさんを見ていてわかった。ファも僕を大事だと思ってくれているんだということが。

 

「いつも僕の事、見ていてくれて、ありがとう。ファ。」

 

何度だって、伝えていいんだ、こういう事は。

 

 

 

------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

「あばらは折れてないね。変な動きでもして筋肉が攣ったんだろ。湿布だけ張っとくよ。」

 

結構、全身痛いんだけどな。特に足。しびれて転んだ時、変に捏ねてしまったようだ。

 

「痛み止めもいらないだろう。まあ、1週間は安静に過ごすことだね。」

 

医療班の人はいつも僕にだけ、痛み止めくれないよな。アムロ大尉とカミーユに殴られたときもくれなかった。

新しく来た医療班の老年のお医者さんは動きも診察も早い。ヌー曹長に訊いたところ、1年戦争前から戦艦に乗っていたらしい。なら、おじいちゃん先生の診断に間違いはない、か。

いや、僕としては痛み止めは欲しいけれど。

 

「念のためにカルシウムを多くとるようにタブレットでも出しておこうか。」

 

「いえ、子供たちに心配をかけるので。」

 

カルシウムタブレットなんて飲んでいたら、カミーユなんかすぐ怪しむだろう。そう、言ったら、付き添いのヌー曹長に頭を軽く叩かれた。

今日はすごく皆から頭を叩かれる日だ。まあ、そんな日もあるか。

 

「本当にね、エグザベ中尉は常にこの調子なんですよ、先生。」

 

「ここは怪我人専用なんだよ、ほら、さっさと行った行った。」

 

あと、アーガマの医療班はすごい怪我人の扱いが雑だと思う。今も前も。全身に湿布だけ張られて、ヌー曹長と一緒に追い出されてしまった。

 

「いいですか、エグザべ中尉。グラナダの大掃除がね、こんなに早く終わったのもね、共和国軍の全面協力と情報提供がね、あったからなんですよ。そういうことをね、分かってもらわないと。」

 

「共和国軍がまだ、グラナダの情報を握っているなんて、僕は全然知らなかったよ。わずかに残っている公国時代の情報なんてものは、戦史研究者たちを苦しめているのに。」

 

本当にそうだった。公国時代の軍は、軍機が多すぎる上に破棄された文章も焼失した文章も多すぎて、ジオン共和国では研究者は発狂寸前というか、発狂してからが始まりとさえ言われているような有様なのだ。

なんせ、ザビ家だ。独裁を敷いていた。

 

「中尉のね、担当教官と先任軍曹とね、一度ゆっくり酒でも飲みかわしたい気分ですよ、俺はね。」

 

「気のいい人たちだよ、大らかで指導熱心だった。でも、僕の失敗談とかで盛り上がられるのは、少し困るかな?」

 

また、ヌー曹長に叩かれた。本音なんだけれどな。

 

「いや、今日は本当にヌー曹長に迷惑かけて、おまけに曹長は僕もカミーユたちも助けてもくれた。感謝してるんだ。ありがとう。」

 

素直に頭を下げた。本当に、心から、彼には感謝していた。

ヌー曹長の協力が無ければ、彼が全力を出してくれなければ、ハマーン達を助けることもできなかったし、カミーユに僕の戦闘を見られるところだった。

 

カミーユは賢い子だ。ギャン改-Ⅱの戦闘を見れば、悲しむだろう。これ以上、カミーユに人の死を身近に感じてほしくはない。MSに人間が乗っていることを分かる彼には、酷なことだ。

 

「本当に、もうね、エグザべ中尉ときたらね。人の足元見るのが、得意で困るんですよね。」

 

「そんなことしてるつもりは、ない。でも、誤解させるようなことをしたのなら謝るよ。」

 

「あのですね、子供たちが大事だって言うんならですね、エグザべ中尉も、相応のことをしてくださいってね、つまり気をつけてくださいってね、俺は言ってるだけなんですよね。情報部だって憲兵だってね、そりゃできることはしますけどね。俺たちだけでカバーできるもんじゃないでしょうよ。子供っていう奴はね。そういうことをね、分からないと本当にね、情報部総出でね、第2弾のお説教しますからね。」

 

説教の準備はできているとか、何とか言ってヌー曹長は情報部へ戻っていった。説教の準備って何なんだろうな?

 

 




エグザべ、お前そういうところだぞ 編

士官の役割って結局、作戦目的を達成させることなんで。限界ギリギリちょっと先だろうが、検挙されない違法行為だろうが、達成させれば良いんですよ。オーストリア帝国が言ってる。もちろん、建前と手順は大事だけど。



エグザべのしたこと、簡単まとめ

アンマン潜伏中のアーガマを防衛した。
ジャブロー攻略を中止させて、少なくともMSパイロット80名の命を守った。
グラナダをエゥーゴの基地にした。
エゥーゴを地球連邦軍中央参謀本部下の組織にした。
エゥーゴ監視のため憲兵をグラナダ基地に多数配置してもらうように陳情した。
ティターンズ指揮下に入らざる得なかったパプテマス・シロッコ大尉と水面下で連絡を取り合い、決定的な敵対を避けた。
フォン・ブラウン市防衛戦で暴走したティターンズ指揮下のMSを多数撃破した。
フォン・ブラウン市防衛戦でクワトロ・バジーナに戦果を出させてあげた。
カツ少年の保護に協力した。
グラナダ基地にコロニー落とそうとしたジャマイカンの乗る戦艦アレキサンドリアを単機で墜とした。
G3ガスをコロニーに対して使おうとしたティターンズのMSを撃破し降伏させた。
ブレックス准将の安否確認を憲兵にブライト艦長を通して依頼させた。
パプテマス・シロッコと連携してアクシズ穏健派を保護することに成功した。


こんなもんか?
ん???まあ、ぎりぎり越権してないので大丈夫では?作戦立案として具申しただけだし?功績は全部、ヘンケン艦長とかブライト艦長のものになるから、これ。
エグザべ中尉も大したことしてないって言ってるし。OKです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。