機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
シャア・アズナブルはキャスバル・レム・ダイクンだった。
全宇宙の人間が信じがたいであろう事実にエグザベ・オリベはパプテマス・シロッコへの急使になる決断をする。
決して漏洩が許されない、地球連邦政府と地球連邦軍の最重要機密が明かされた意味を、エグザベ・オリベは正しく捉えた。
グラナダに帰港して、まだ1週間しか経ってないのにアーガマは大騒ぎをしている。
今度こそは、アーガマが忙しすぎて、今まで滞っていた戦艦とMSの予備部品の補給やら、延期されていた艦載員の休息やらを軍の規定で取らせなければならない、とエグザベさんやブライト艦長は意気込んでいたのに。1か月くらいはグラナダ基地内で過ごせる、と僕は聞かされていた。
でも、それを言った張本人の2人は碌に休めていない。というか、休む気が無いんじゃないだろうか?
まあ、ブライト艦長は家族やアムロ大尉と面会したりしていたから、リフレッシュもできたんだろうけれど。できたのだと思いたい。ブライト艦長、最近ずっと青い顔でふらふらしてるから、みんなが心配している。
エグザベさんも落ち着かない。
最近は、朝から執務室で変な体操をする習慣までできてしまっていて、僕だって心配にもなる。グラナダ基地でも流行している体操らしいけれど、マシューに言わせるとエレガント?ではないらしい。まあ、基地でも中高年の、ちょっと年上の人達に流行っている体操らしいから、そう、言ったんだろう。
それを考えると、ますますエグザベさんが心配になる。
僕がそうやって心配しているのに、アーガマの格納庫で、この大騒ぎだ。
また、エグザべさんはパプテマス大尉に会いに行く、と言い出したらしい。唐突過ぎる!本当にもう。
ヌー曹長もブライト艦長も止めているが、憲兵は乗り気だ。
バスクとジャミトフの件でティターンズとエゥーゴ、つまり両組織の代表者であるパプテマス大尉とブライト艦長には話し合いの場を持ってほしかったらしい。
それはたった今、コンテナの陰でファと一緒に盗み聞きした。
エグザベさんのギャン改-Ⅱの整備をしているイマニュエル上等兵さんも、一緒に盗み聞きしていて凄い顔をしかめていた。美人な女の人って顔をしかめてても美人なんだな。
つい先日、バスク・オムはティターンズじゃなくなった。バスクを信頼していたジャミトフ大将が急死したからだ。後ろ盾がいなくなったことに怯えたバスクはティターンズと地球連邦軍から逃亡した、と言う。
だから、ティターンズの代表者はパプテマス大尉になった。バスクやその手下どもと違ってパプテマス大尉は逃げなかったからだ。
エグザベさんが、そのパプテマス大尉に会いにジュピトリスへ行くのなら着いていきたかったのだが、どうもドゴス・ギアのほうにいるらしい。ジュピトリスに行くか、ドゴス・ギアに向かうか、でヌー曹長とブライト艦長が揉めている。
いつの間にか、エグザベさんがアーガマから出立することが決定事項になってる。なんでだ?
どっちにしろ、パプテマス大尉がドゴス・ギアにいるんなら、サラとシドレにもハイファン中尉にも会えないな。僕もせっかくの休息なのに、残念だ。
ハイファン中尉は、ハイスクールの先生のように色々丁寧に教えてくれた。前に僕らがジュピトリス訪問をした時だ。マシューとセーラの教師役をするにあたって、ハイファン中尉にたくさん相談したいことができていた。
「小型輸送船にギャン改-Ⅱを乗せる??馬鹿を言うな!ドゴス・ギアで整備できると思ってるのか?」
アストナージさんの怒声が聞こえる。ギャン改-Ⅱってそんなに整備が大変なのか。まぁ、変わった機体だって聞くし、そんなものか。共和国軍のMSだから、より一層大変なのかもしれない。
僕らの後ろにいるイマニュエル上等兵さんは両手で顔を覆って天を仰いだ。
見ていた僕はファに頭を叩かれた。やきもち焼きのファだ。
「使う予定はありません。が、念のためです。」
エグザべさんの声が硬かった。胸騒ぎがする。ファと顔を見合わせた。
僕とファに異変を感じさせるような、硬い声。
「あのね、中尉。ドゴス・ギアの場所わかってんですか?パプテマス大尉がいるのはね、サイド4宙域ですよ、デブリ地帯のね。ミノフスキー粒子の影響もあるかもしれないのに、今からどうやってね、戦艦一つを見つけるってんです?」
早口で言い募っているのはヌー曹長だ。ジュピトリスに行くようにエグザベさんを説得していた。
デブリ地帯にドゴス・ギアがいる?なんで?
この前は、僕らと一緒にアクシズの近くにいたのに?距離を考えると、八百長試合してから、すぐにサイド4に向かったんだろうけれど。
デブリ地帯にわざわざ?
「場所なら分かってるよ、追い込み漁をするって言っただろう。ティターンズの艦隊群、その指揮が一番取りやすい場所にいる。」
「情報部もね、把握してないんですけどね、その場所!」
「実戦と訓練してれば分かるようになるよ。兵士として、戦艦として、そこに指揮官がいてくれないと困るって場所が分かる。今、アクシズはサイド3より先の宙域、かつサイド1とサイド4のラグランジュポイント5の先の宙域にある。グワダンも修理と整備のためにアクシズに戻ったはずで、サイド4のデブリ地帯からアクシズに追い込むのであれば、だいぶ場所が絞れてきただろう?」
なんか、変なことを当たり前のように言ってるな、エグザベさん。また、思考が走ってるのなら、止めないといけないけれど。
ガラスは煌めいてない。白い瞬きもなかった。エグザベさんの思考は走ってない?こんな変なこと言ってるのに?
「割と遠いし!デブリ地帯、突っ切る気ですかね?!」
今ので、ヌー曹長は理解できるのか。情報部は、そういう訓練してるんだろうな。頭の中で戦場を見る訓練。
そう考えると、なんだか、脳の奥がかゆくなるような気がする。頭の中で、宇宙の戦場を見る?それって脳の奥で、光っちゃいけないものが光って見えているんじゃないか?
ヌー曹長は、思考が走る人でも、物が分かる人でもないのに。
だって、僕が呆れるくらいに曹長はおしゃべりだ。艦内でおしゃべりスピーカー陰険マンって言われるくらいに、デリカシーが無いんだから間違いない。
「そんなこと、するわけない。とにかく、急ぎで連絡を取らないと。ジオン共和国には、グラナダの領事館からアクシズの戦力については共有した。あとは、向こうに残してきた僕の部下に共和国の防衛を任せられる。アレについては直属の上官に地球連邦軍上層部が直接、報せてくれる手筈になっているから、問題ない。だが、ティターンズは無理だ。無線通信もできないほどの重大機密は、僕か君か憲兵しか運べないだろう。まさか、連邦軍の上層部に前線まで赴いてもらうわけにはいかないよ。ヌー曹長、君ならわかるだろう?敵は狡猾なところがある。確実にドゴス・ギアまで行けるのは、僕の方だ。」
のぞき見して居たら、エグザべさんと目が合った。まずい!怒られる!
「カミーユ、ファさんも。今日はジュピトリスじゃなくて、ごめんな。2、3日もあれば戻って来られると思う。…大丈夫です、ブライト艦長、デブリ地帯は迂回します。輸送船のパイロットもデブリ地帯に直進はしません。」
ブライト艦長が一緒に行く、とまで言い出したのをエグザべさんが止めている。イマニュエル上等兵さんがエグザベさんに代わってブライト艦長を宥めに言ってくれた。
あんなに白い顔して冷や汗をかいているのに、ブライト艦長は大丈夫なんだろうか。
そんなブライト艦長をアストナージさんとイマニュエル上等兵さんに任せて、エグザべさんはこっちに歩いてきてくれた。僕とファを優先してくれたのがわかった。
のぞき見や盗み聞きを怒りもせずに、僕とファに目線を合わせるように屈んでまでくれた。僕たちにしっかり話を聞いてほしい時のエグザベさんだ。
「本当にごめんな。少し騒がしくなると思う。忙しくもなるし、今までみたいに時間通りに行動するのも難しくなる。でも、大丈夫だ。あと少し、ほんのちょっと頑張ったら、本当に安全なところへ君たちを連れていけるから。もう少しだけ、カミーユもファさんもアーガマで待っててほしい。ハマーンも頼りになる人だよ。彼女とマイネちゃんとセーラさんとマシュー君。彼らとアーガマで待っててくれ。僕は大丈夫だ。すぐに戻るから。」
慌てて、エグザべさんの手を握った。
なんだろう。嫌な、嫌な胸騒ぎがする。背中がゾッとするような胸騒ぎ。思考が、走っている。
優しくエグザべさんが握り返してくれて、それに気づいた。僕はまた、思考に振り回されて。
「大丈夫。すぐ戻ってくるよ。行ってきます、カミーユ、ファさん。」
なんで、パイロットスーツを持っているのかは聞けなかった。でも、エグザべさんは行ってきます、と言ってくれたから、それなら大丈夫だ。
だって、エグザべ・オリベなんだぜ、カミーユ・ビダン。信じられるだろう。応えてくれるから、俺達は親友になったんだ。
誰かが、僕の耳元で囁いて行った。僕の胸騒ぎもその声が連れて行ってくれた。
そうか、そうだよな。エグザべさんだもんな。
いま、大丈夫って言ってくれたんだ。それなら、大丈夫にしてくれる。
エグザべさんは孤独じゃないし、向こうにはパプテマス大尉もいるし、彼が率いるティターンズの艦隊もある。地球連邦の正規軍も少なからずアクシズ警戒のために集まってきている。
アーガマには、皆がいる。エマ中尉もアポリー中尉も、ブライト艦長もアストナージさんも、ハマーンさん達もいる。
「本当にもう、エグザべさんは!帰ってきたら『修正』してやるからな!!今度という今度は、本当に!もう!」
「ビンタ2発じゃ済まさないんだから!ね、カミーユ!」
僕たちが怒ってみせても、エグザべさんはいつも通りだ。
勝算があるんだ。無理に作った微笑みではないのは、もう、長い間エグザベさんを見てきて分かった。
でも、僕とファは怒る権利があるから、早く帰ってきてほしい。
出発する小型輸送船にハンドサインで合図を出した。早く戻れって。
コクピット席で、パイロットと話をしていたエグザべさんは困ったように笑って、了解のサインを返してくれた。
アムロ大尉に訓練を付けてもらおう。あの人、毎日アーガマに来るから。
カツの奴の相談をブライト艦長としているらしい。難しい顔をいつもしている。
あいつ、アムロ大尉とブライト艦長にすごく大切に想われてるんだな。あんな無茶苦茶をしたカツなのにちゃんと心配してくれてる大人が居てくれるのは、僕にとっても安心できた。カツだって、孤独じゃないんだ。
まあ、僕も一度だけなら、カツの様子くらい聞いてあげてもいい。元気にしているか、ご飯は食べているか、くらいは。
別に、自分のことを棚に上げているわけではないけど。絶対に。
クソガキムーブするカミーユ編
カミーユ、子供一人で戦況や世界が変わるほど甘くないんだ。でも、大人を振り回す経験は大事だからヌーとエグザベ振り回しといてくれ。
パプテマス・シロッコもZ本編で言ってるでしょ?武器振り回してりゃ世界が良くなるなんで考えるなよ馬鹿どもが(意訳)って。
クソガキムーブくらいがカミーユには丁度いい。身の丈に合った世界改変、大事これ。
ニュータイプ能力が最高だろうとなんだろうと、カミーユの手の届く範囲って現実、こんなもんだよ。だって、人間だもんな。
イマニュエル上等兵さんちゃんのさりげないフォロー。ありがとうございます。
ブライト艦長のこと頼んだ。(無茶ぶり)
『ウォンさんの修正コーナー』
ウォンさんがグラナダ市で大人気。朝の報道番組の中で10分間のコーナーを獲得。
番組の最初に、ウォンさんに修正されたい人数名が登場して、実際に懺悔して修正されたときのシーンが流れるんだよね。
エグザべは、ウォン氏が手加減して修正しているの見てて、「なんだかなぁ」って思ってしまうわけですよ、「民間人と軍人の区別つくようになったんだ」って。体操もしてますね、釈然としないまま。だって、かつてウォン氏自身が支援していたシャアを『修正』するための体操だもんな。まあ、体操に罪はないから…
裏設定で、もう書かないと思うので書いておきますと、ウォン氏はアナハイムエレクトロニクスのメラニー会長を憲兵と警察に売りました!司法取引して、即日保釈されたという設定です。
突然の会長交代劇。アナハイムエレクトロニクスに激震が走ったけれど、ウォンは人気がうなぎ上りなので無傷です。
強いな!ウォン!頑張れ!ウォン!