機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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命の選択

 

僕とギャン改-Ⅱを乗せた小型輸送船はドゴス・ギアへ無事に到着できた。

パプテマス・シロッコの包囲網が完璧だったからだ。遠く、シャア・アズナブルの苛立ちさえ見えるかのような完璧さだった。

 

宙域のミノフスキー粒子の影響が少ない。既に何度かシャア・アズナブルはドゴス・ギアと戦闘を行っているはずだ。そうヌー曹長から聞いていたが、ドゴス・ギアには傷1つついていなかった。格納庫内の雰囲気も明るい。

それで、シャア・アズナブルが盗み出した戦艦の練度が随分と低いことが分かる。MS部隊もそう、なのだろう。

その、拙い戦艦で奴はまだデブリ地帯にいる。幼児2人を乗せたまま。それは、つまり…

 

いや、まだ思考を走らせるな。現実と乖離してしまう。

 

現実、僕はパプテマス・シロッコに伝えるべき軍機がある。

 

 

 

 

「急にドゴス・ギアまで来てしまってすまない。作戦行動中だというのに、着艦許可まで、すぐに出してくれて、ありがとう。」

 

「気にするな、エグザべ。緊急なのだろう。副長、敵に動きがあれば艦長室へ。奴のことだ。こちらに小型輸送船が着艦したことで、何らかの動きを見せるだろう。デブリダミーとバルーンダミーにはミサイルを撃て。MS部隊の直掩はまだ出さなくていい。敵艦が近づくような動きがあれば、その分だけ後退させろ。緊急だ。15分程度で戻る。」

 

格納庫にパプテマス・シロッコが来ていてくれたのは本当に助かった。取次を待たなくて済んだ。艦長への取次は場合によっては1時間以上かかることもある。手続きに慣れない兵士が相手だと、本当にそういうことがあるのだ。

 

やはり、持つべきは現場主義の親友だ。

僕の顔色を見て、僕の危機感を悟ってくれたのだろう。パプテマス・シロッコは艦内通信で艦橋へ指示まで出してくれた。これで安心して話ができる。

 

小型輸送船に乗っているのが僕だと知って格納庫まで迎えに来てくれたらしい。最重要の軍機に関わるはずだ、とまで気づいてくれた。さすが、パプテマス・シロッコ、僕の親友だ。

 

「シャア・アズナブルはキャスバル・レム・ダイクンだった。地球連邦政府の閣僚と地球連邦軍参謀本部と将官クラスの一部にしか明かされない最高軍機だ。ジャミトフもブレックスも当然知っていた。」

 

艦長室に入り、僕がパプテマス・シロッコにまず最初に告げたのはそのことだった。

ドゴス・ギアの中でもパプテマス・シロッコにしか開示できない情報だ。

 

「キャスバル・レム・ダイクンだと?馬鹿な。シャア・アズナブルが何をしたのか、地球連邦軍で知らない者はいない。ザビ家の犬をしていた。忠実な犬を、だ。」

 

パプテマス・シロッコ、君も鼻で笑うだろうと思っていたけど、本当なんだ。

僕も、嘘であってほしかった。ただの、ゴシップ記事だと思っていた。戦後の7年間、毎年この記事が書かれていたことの意味をもっと真剣に考えるべきだった。

 

「僕も、そう。パプテマス・シロッコと同じ考えだ。奴はただの、ザビ家の忠実な使いっ走りだ。でも、ブライト艦長、いや、ホワイトベースの基幹要員だった人間は、シャア・アズナブルがザビ家に報復をするために忠実なふりをしていたと信じ込んでいる。…ああ、いや、いた、だ。信じ込んでいた。特にアムロ大尉は、シャア・アズナブルがキシリアを殺した、と思っていて。…悪い、要領を得ない話しかできない。」

 

ホワイトベースの元艦載員に監視がつくのも納得ができる話だった。決して広まってはいけない、とんでもない醜聞だ。これのために、ブライト艦長もアムロ大尉も、地球連邦政府によって監視されていた。

 

人類の怨敵であるザビ家の忠実な軍人、シャア・アズナブルの正体がキャスバル・レム・ダイクンだということは、地球連邦政府にとって、いや人類にとって恐ろしい話なのだ。

 

ジオン・ダイクンの息子、キャスバル・レム・ダイクンならば、今だ宇宙にはびこるジオニズム主義者たちの旗頭に成れる。再び、人類の生存圏それ自体が戦乱の渦に飲み込まれかねない。

地球を人の住めない環境にしてでも人類のすべてをニュータイプにする、という馬鹿げた幻想ジオニズムを大義に掲げて、平穏に暮らしている人々を蹂躙しだすだろう。

 

ジオン公国の英雄、ザビ家の忠臣、『赤い彗星』のシャア・アズナブル。ダイクンの子はその名を捨てても陰ながらザビ家の偉業を支えていた、などとでも適当な美談で飾られれば…

 

「問題ない。分かった。シャア・アズナブルは1年戦争の最後の最後でザビ家を裏切った。それだけの話ということだ。ザビ家を裏切り、敗戦したジオン公国から逃げ出し、それでいてキャスバル・レム・ダイクンを名乗らず、シャア・アズナブルとクワトロ・バジーナの両方を使うか。いや、他人に対して都合のいい名前を騙り、己の利益になるように誘導している、と言うところだろうな。アクシズでも、一部の人間にしかキャスバル・レム・ダイクンを名乗らなかった、のは己の都合か。」

 

パプテマス・シロッコが話が分かる友で、本当に僕は恵まれている。僕がこんなに要領の得ない話をしても、分かってくれるのはきっとパプテマス・シロッコだけだ。

 

「アクシズのザビ家派閥に知られると拙い。キャスバル・レム・ダイクンを名乗られれば、共和国政府も動揺する。上官と連絡は取ったし、部下に防衛を任せてはいるが。…最悪の場合、キャスバル・レム・ダイクンがザビ家の、ジオン公国の思想を肯定し、後継者になった、と国民が言い出しかねない。いや、共和国自体が、公国に戻る可能性だって低くは無い、と僕は思っている。」

 

共和国政府が動揺すれば、共和国軍にも影響が出る。

共和国民の妄執に怯んで、アクシズに対して、シャア・アズナブルに対して、キャスバル・レム・ダイクンに対して、弱腰になってもらっては地球連邦政府と共和国政府の協力関係なんか、あっという間に水の泡だ。

 

戦争どころではなく、碌に抵抗もできないまま、真っ先にサイド3は消えることになる。1億5,000万人が宇宙に消える。

宇宙の誰も、ジオン公国を許しはしない。共和国政府の宣言通りに、ザビ家もジオン公国も未来永劫、誰からも許されることのない大量虐殺を行っている。

 

ジオン公国の再来を許してはいけない。

 

同じだ、アクシズと共和国は。

同じ、なのだ。

アクシズの敗残兵と共和国民は、同じジオンだ。

3万人と1億5,000万人。

 

だからこそ、相容れてはいけない、アクシズとジオン共和国は。

 

「エグザべ、お前のことだ。アクシズでは、どうせ情報部を使ったのだろう。『ルウムの亡霊』の記事か?奴は何を書いた?」

 

パプテマス・シロッコには言い辛い話だ。僕にだって良心はある。パプテマス・シロッコのような気高い人間に聞かせるような話題ではない。白状するのは、とても恥ずかしかった。

 

「………シャア・アズナブルは幼児性愛者って書かれたゴシップ記事をアクシズに置いてきた。いや、ブライト艦長の許可も取ったんだ。まさか、あいつがキャスバル・レム・ダイクンで、キシリア殺しとか、思わないだろう!」

 

なんで許可してくれたんだ、ブライト艦長。いや、記事の内容まで詳しく説明しなかったのは僕とヌー曹長だけれども!どうして?

 

「気にするな、私の副官でも同じことをしただろう。使えない手ではないし、これからのことを思えば有効でもある。だが、キシリア殺しまでは……証拠でもあればアクシズに内紛を起こすのにも使えようが。」

 

パプテマス・シロッコの優しさが、本当に僕にはありがたい。

 

「その証拠がないから、僕が来たんだ。シャア・アズナブルがキャスバル・レム・ダイクンならば、アクシズのダイクン派閥とザビ家派閥をまとめて、アクシズ、それ自体を地球に落とすかもしれない。ジオニズムの後継者を名乗って、それっぽいことをしてみせることで汚名を払拭し、ついでに世界の混乱を利用して姿を隠すつもりだ。」

 

「父であるジオンの名を盛大に汚しておいて、更に地球まで汚すか。奴ならやるだろう。生きるということの過酷さを知らない哀れな家畜だ。ジオニズムなどという馬鹿げた思想に飼いならされた家畜には、それくらいしか知恵はない。」

 

そうか、ハマーンだけでなく、僕だけでなく、パプテマス・シロッコも確信したか。

 

残念だよ、シャア・アズナブル。本当に残念だ。

 

「流石に、地球にアクシズを落とさせるわけにはいかない。」

 

「ここで、殺しておくか?そのために、エグザべ、おまえの愛機も持ってきたのだろう?」

 

パプテマス・シロッコと僕だ。それくらいのことは言わずとも分かってくれていた。

そう、僕はシャア・アズナブルをここで、サイド4で殺しておきたい。

ただの、「幼児性愛者の誘拐犯シャア・アズナブル」として殺しておきたい。キャスバル・レム・ダイクンだという証拠や証言がないうちに、消さなければならない。

 

僕とパプテマス・シロッコが予定していたアクシズの内紛は諦めた。そもそも、アクシズ内部に穏健派がいる、という前提の甘い考えだったと思い知らされた。

だから、

 

「アクシズは数で押しこめばいいだろう。」

 

そう、アクシズの3万人を、僕は殺す。そのつもりで、来た。

 

ジオン共和国の1億5,000万人を、僕は選んだ。

 

 

 

 

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「アクシズは数で押し込めばいいだろう。」

 

そう、それも悪くはない。

エグザべ、お前がジオン共和国から離れるというのであれば、共和国を捨て私のジュピトリスに来るのであれば、シャア・アズナブルをこのサイド4のデブリ地帯で殺し、お前の考えの通りにアクシズの人間を根こそぎ消してしまうのも悪くはない。

 

シャア・アズナブルを殺したお前は、共和国にはいられなくなる。

かつてジオン公国と言う独裁政権を持て囃し、シャア・アズナブルを英雄と称えたジオンの人間はエグザベ、お前を受け入れない。

それを思えば、悪くはない。

 

どちらにしろ、ジオニズムに汚染された人間は消さねばならない、人類の存続と発展のためにも。無論、その手段は検討する必要がある。

 

だが、今はまだ、

 

「いや、悪い手だ。」

 

そう、友に告げた。

不満そうな顔をするな、エグザべ・オリベ。お前の為でもある。

 

「カミーユ・ビダンに黙って来たのだろう。一番の悪手だ。」

 

私の指摘に、言い返せもしない。その甘さと正直さがお前の良いところでもある。

 

「…言えるわけ、ないだろう。ブライト艦長にも、アムロ大尉にもだ。パプテマス・シロッコにしか言えない。」

 

「ヤザン大尉に聞かれていなくて良かったな、エグザべ。大尉は既にパイロットスーツで待機しているはずだ。」

 

お前がこのドゴス・ギアに来たと聞いて、ヤザン大尉はパイロットスーツに着替え、ハンブラビのコクピットで自主的に待機している。

お前は気づいていなかっただろうが、私は格納庫で直接その姿を見た。私とお前が出した結論と同じものをだしたのだ、ヤザン大尉は。

 

すぐに、シャア・アズナブルが何か仕掛けてくるだろうと、結論を出した。

 

「ヤザン大尉が一緒なら心強いよ。ドゴス・ギアにはパプテマス・シロッコもいる。僕も、全力が出せる。」

 

嬉しいことを言う。

 

「私を、その気にさせるな。」

 

「今、奴を殺しておかなければ面倒なことになる。アクシズの3万人を殺す覚悟も決められる。思考が走って、そう、確信した。確信させられた。それだけでドゴス・ギアまで来た。分かってくれるのは、パプテマス・シロッコ、君しかいない。」

 

まっすぐに、こちらを見てそれを言うが、エグザべ、お前の手を汚させたくはない。子供を護ろうとする人間の手を。

 

「酷い殺し文句だ。カミーユに聞かせられるのか?」

 

「……ハマーン・カーンが、彼女の感覚が教えてくれた情報がある。前に、ヌー・ハーグ曹長が君に譲渡する予定を立てていたグラナダ基地のΖガンダムだ。あれに、バイオセンサーというサイコミュが搭載されていた。シャア・アズナブルは、カミーユをΖガンダムのパイロットにするつもりだったんだ。僕が止めていなければ、カミーユに何も知らせずに乗せるつもりだった。奴は、ニュータイプに幻想と妄執を抱いている。サイコミュを使って子供に何をさせるつもりだったのか、どうするつもりだったのかまでは分からないが。積極的に兵士として、カミーユを使うつもりだったのは間違いが無い。…殺すしかない。」

 

なるほど、才能豊かなニュータイプが素体ならば催眠とサイコミュだけで所謂ニュータイプの力を強化できるという発想か。

 

両親を目の前で失い、故郷を追われ、人殺しを強要されていたかつてのカミーユ・ビダンは、シャア・アズナブルの強化人間開発において、最良の素材だったのだろう。身寄りのない子供はシャア・アズナブルから、己を承認してくれる人間から離れることはない。どれ程、命を危険に晒されていても子供は離れられはしない。決定的に逆らうこともしない、扱いやすい道具となる。

そうであるならば、カミーユを洗脳する必要はなく、サイコミュと戦場が必要だったということか。

 

馬鹿馬鹿しい話だ。人間を、強化するなど。

ニュータイプと言う言葉に踊らされた愚物にしか思いつけないような下衆の発想だった。

 

「殺すしかないのは私も同意見だ。だが、奴に、シャア・アズナブルにジオニズムの殉教者の真似事をさせるな。奴の虚飾をすべて取り払い、家畜として殺す必要がある。ただの、醜い犯罪者として殺すべきだ。戦死などという名誉すら勿体ない。そうだろう、エグザべ。」

 

そう、奴には、シャア・アズナブルには醜く死んでもらう。この宇宙の誰も、未来の人間ですら奴に同情することができないくらい醜く。ただの犯罪者として。

 

そういえば、そのための良い手段を考えてくれる伝手もあったか。

『ルウムの亡霊』。

後のことは、ハイファン中尉に任せればいい。話の分かる副官は、本当に得難い。大切な友でもあった。

 

「アクシズの王なんか、もっと勿体ないよ。アクシズは資源の塊だ。人類の存続と発展の象徴にも成れるのに。…でも、仕方ないな。パプテマス・シロッコに反対されたら、僕も諦めるしかない。」

 

「私も、このパプテマス・シロッコも、お前が言うのであれば、ここでシャア・アズナブルを殺してもいい。そう、思った。だが、分かるだろう、エグザべ。カミーユとファがお前の帰りを待っている。私の帰りをジュピトリスが、サラ曹長とシドレ曹長とハイファンが心待ちにしているように。」

 

「分かるよ。僕はアーガマに帰ったら、カミーユに怒られることも。…大人をやるのは難しいな。笑ってくれ、パプテマス・シロッコ。」

 

「誰もお前を笑いはしない。誰よりも、私が、このパプテマス・シロッコがそれを許しはしない。」

 

そう、品性を持った人間ならば分かるだろう。

私の友、エグザべ・オリベの心の強さを、強くあろうと立ち続け、子供を、人類を救おうを努力するそのさまを。

 

それを笑うものは、人ではない。

 

 





まあ、普通に宇宙に住む人間すべてがニュータイプ(サイキッカー)になれるって心から信じているなら、壊滅させられたコロニーを再建したり、もっと住みやすく安全なコロニー開発したりしているはずなんで……それしてないってことは…編


ま、『ルウムの亡霊』もシャア・アズナブルがそーゆーことしている人間だったのなら、ゴシップ記事もシャアミームも作らなかったはずなので…
最強の敵『ルウムの亡霊』の倒し方なんてないから!!!

Zガンダム本編だと、カミーユ・ビダン君、アングラ雑誌でシャア・アズナブルがキャスバル・レム・ダイクンでザビ家に反抗した、という記事を読んでるんです、が、誰が書いたのか書かせたのか??
味わい深いな!!

Zガンダム本編のリバイバルがGのレコンギスタかな?と思ったりしていた。



自分のフラグ管理が間違ってなかったら、現時点で「エグザべ中尉はルウム出身」をしっているのは、連邦側で
憲兵、情報部、カミーユ、パプテマス・シロッコ、ハマーン・カーン、ハイファン

共和国側で
共和国軍(ギャン部隊込み)

になります。

共和国政府は知らないって裏設定です。
敗戦国なんてそんなもん。というか、情報とか参謀とか計画とか、しっかりして居たら1年戦争なんか起こさない。

「またしても何も知らない共和国政府」としてスレで評判のジオン共和国政府です。頑張って!
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