機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
運命。それがあると、信じているのは人間だけだ。
未来を意思で変えられると信じているのは人間だけだ。
「バスク・オムとシャア・アズナブルが手を結んだかもしれません。今年の3月から5月頃にジャブロー付近でティターンズに捕縛されたはずのレコア・ロンド少尉の姿を敵戦艦の艦橋に確認しました。自分がエゥーゴに着任する以前に、アーガマにMSパイロットとして乗っていた人間です。シャア・アズナブルの副官も担っていました。ティターンズの人事の記録、確認をお願いします。」
ドゴス・ギアに帰還後、すぐに管制に報告をした。後で、戦報にも敵戦艦の艦橋映像データを添付して提出しなければならないな。子供が、…銃で脅されていた映像を。
くそっ!!僕は、間抜けだ!シャア・アズナブルなら、子供を生け贄にしかねないことを、彼がカミーユにしたことから予測できたはずだろう!
どうして、僕は!!子供が、あんな小さな幼児が、泣いていたんだぞ!
息を吐いて、深呼吸をする。3回。
「エグザべ中尉!相変わらず、良い腕だったな!!」
コクピットを開ければ、ギャン改-Ⅱの下にヤザン大尉がいた。
軽く敬礼までしてくれた。優しい人だ。
「ヤザン大尉も、ご無事で何よりです。素晴らしい操縦技術でした。」
僕もコクピットを降りて、ヤザン大尉に握手を求めた。
彼は本当にベテランの天才パイロットだ。既に、切り替えができている。そして、戦闘で激昂していた僕を心配して、わざわざ声をかけてくれたのか。
ヤザン大尉のような尊敬されるべき人物を僕も目指さなければ。
思えば、僕は彼の足元にも及ばないな。敵の前で激昂をしてしまうだなんて、教官や先任軍曹にも顔向けができない。
それから、カミーユ・ビダンにも。
「どーした?湿気た面してよ。」
「いえ、アーガマに戻るのが遅くなりそうだと思いまして。」
ヤザン大尉は笑いながら、僕の背中を強く叩いた。
「いいぜ、中尉。このまま、ドゴス・ギアに居ればいい!あと6時間もすれば、俺達もティターンズじゃなく『ヴェルザンディ』になる。」
「もう、そんな時期でしたか。おめでとうございます。」
そうか、もうそこまで地球連邦軍は進んでいたか。これでティターンズの行った悪事はバスクと共に切り捨てることができる。地球連邦軍が、これ以上人々の信頼を失うようなことは避けられる。人材を失うことも。
いや、そうか。バスクやジャミトフとアクシズの手を組ませるように誘導したのは、地球連邦軍の上層部だろう。もっと言えばこの青写真を描いたのは、パプテマス・シロッコかもしれない。
相変わらず、僕は彼の思考に追いつけないな。苦笑するしかない。
「おうよ!デブリーフィングは早めに終わらせてやる!さっさとしろよ、エグザべ中尉!」
僕を気遣ってくれたのか、ヤザン大尉。僕が、なるべく早く、アーガマに帰れるように。
ああ、ヤザン大尉は、パプテマス・シロッコから聞いているのか。僕の立場や、カミーユ・ビダンの事を。
そのヤザン大尉の気持が何より嬉しく思えた。
「はい!ありがとうございます、ヤザン大尉!」
『ヴェルザンディ』か。
かつて北欧で信仰されていた運命の3女神のうち『現在の女神』の名だ。過去を想い、未来を信じて歩み、人々の運命を決定する。そう、聞いていた。カミーユから、だ。
宇宙世紀の『ヴェルザンディ』は、人類の生存圏に戦乱をもたらすテロリストに死の運命を決定する。パプテマス・シロッコが、僕の親友がそう、決めたから、だ。
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エグザべさんの帰りが遅い!アーガマの格納庫にようやく到着した小型輸送船をエアハッチから見ながら僕は本当に怒っていた。本当に、もう!
何が2~3日だ。5日もドゴス・ギアに行ったままだった!
グラナダ基地とは連絡を取っていたみたいだけど、軍機に関わるからって、僕とファにはヌー曹長を通しての伝言しかくれなかった。
ヌー曹長は、まあ、ジュピトリスを間に挟まなくてよくなったことにご機嫌で、僕とファが不機嫌なのも全く気にせずに伝言だけすると、すぐ情報部の仕事に戻って碌に話も聞かせてくれない。おしゃべりスピーカー陰険マンのくせに。
エグザベさんがドゴス・ギアに行っちゃったから、僕の訓練の時間は情報部の助手の時間にさえ変わった。ヌー曹長の助手って大変だったんだぞ。マシューに数学を教えるより、ずっと大変だった。
ギャン改-Ⅱが小型輸送船から降ろされる。ああ、やっぱり。エグザべさんはアストナージさんとイマニュエル上等兵さんに怒られてる。
ギャン改-Ⅱ、使うようなことがあったんだ。行くときには、念のため、って言ったくせに。嘘つき。
「ただいま、カミーユ!」
ギャン改-Ⅱのことで1時間もアストナージさんとイマニュエル上等兵さんに捕まって、とっくにエアハッチにいた僕に気づいていたのに、エグザべさんがくれたのは『謝罪』のハンドサインだけだった。
2人からの『お話』が終わって、エグザべさんはようやくエアハッチに入って来た。
僕に笑ってみせるエグザベさんは、やっぱり、ちょっと無神経だと思う。
「…エグザべさんは、嘘つきです!」
僕の口からでてきた言葉は自分でも呆れるくらいに子供っぽかった。僕だって、こんな子供っぽいことが言いたいわけじゃないんだ。
だけど、怒っていた。言いたいことが多すぎて、言葉にならないくらいに、言葉にできないくらいに僕は怒っている、エグザベさんに。
「ごめんな、カミーユ。僕も、こんなにドゴス・ギアと打ち合わせをしないといけないことが山積みだったなんて思わなかったんだよ。向こうでも、書類整理ばかりだった。でも、ティターンズも解散出来て、パプテマス・シロッコの『ヴェルザンディ』として何事もなくスタートできたようだ。よかったよ。これを機にパプテマス・シロッコも少佐に昇任する。本来、彼の功績を考えたら、まだまだ低いと思うけど。頼りになる有能な人が上にいるのは、本当、喜ぶべきことなんだ。」
誤魔化す気だな。考えずとも分かった。だから、明るく言ってみせてる。
「ギャン改-Ⅱに乗ったんでしょ!アストナージさんとイマニュエル上等兵さんに怒られてるところ、ずっと見てました!エグザベさんだって、知ってたじゃないですか!」
「ヤザン大尉と模擬戦、したからね。本当にすごいパイロットだよ、彼は。」
「本当に!」
エグザべさんのお腹にパンチ一発入れた。
また、嘘ついたのが分かったからだ。絶対に僕に言う気もないことも。
エグザべさんは転びもしなかったし、倒れもしなかった。ただ、痛そうにお腹で僕の拳を受け止めていた。
あんまりだ!!僕がどれだけ心配したと思ってるんだ!
サイド4のデブリ宙域に、一度だけ、ほんの少しだけだったけど、凄く恐ろしい何かがいた。マシューもセーラさんもミネバもざらつく感覚を持て余していたし、ハマーンさんも、自分が出撃をしてもいい、とさえ言ったんだ。あの、ハマーンさんが!ファだって、僕だって、怖くて仕方なかった。
エグザベさんがサイド4に行ったから!
「軍機はね、言えないんだよ。カミーユ、本当にごめん。」
分かってる。そんなこと。軍は上の命令が絶対だ。それは、民間人を守るためで、そして敵を倒すために必要なことだからだ。
カツの奴にエグザべさんが言っていたことを、僕も覚えている。
「僕は!…僕は、軍って大嫌いです。」
そうだ、軍って嫌だ。
僕らが、普通の戦いたくない人たちが、何も心配しないで、安心して暮らす為に軍が、軍事力が必要だってことは、僕だって分かっている。そのために、僕らに代わって危険で残酷なことをしてくれている人達がいることも分かってはいるけど、でも、大嫌いだ!
僕は、エグザべさんに危険を押し付けていることが本当に嫌だ。エグザべさんだけじゃない。パプテマス大尉やハイファン中尉、ブライト艦長やアムロ大尉、エマ中尉やアポリー中尉、ヌー曹長やアストナージさん。皆、命をかけて戦ってくれている。僕が顔も知らない誰かだって、命をかけて……その誰かにだって、大切な人がいる。大切で戦ってほしくないと心で、本音で思ってくれている人がいる。家族がいる。友人が、恋人が、知り合いがいるんだ。僕が知らなくったって、いる。
嫌な仕事を、嫌なことをその顔も知らない誰かに押し付けて、それで何も知らないふりをして生きていくのがニュータイプだと言うのなら、そんなものは無くなってしまえばいい。
今思えば、シャア・アズナブルは正に、そういう人間だった。あいつは、戦うことしか、人殺ししかしたくなかったんだ。他のことは、全部、ヘンケン艦長やブライト艦長、エグザベさんやエマ中尉、アポリー中尉なんかに任せっきりだった。僕を『修正』することすらウォンさんに押し付けた。あの『修正』は絶対に正しいことじゃないって、僕に教えてくれたのはエグザベさんだった。
シャア・アズナブルは、本当に、人殺ししか、僕に教えなかった。
教える気がなかった。
それがニュータイプだと言うのなら、、僕はニュータイプになんか、なりたくない。思考が時折、走ってしまう人間で良い。ただ、それだけの人間で。
いつの間にか僕は、エグザべさんにしがみついて泣いていた。
僕は無力だ。無力だけれど、でも、無力なままでいたくはない。
無力な、僕のままでいたくはない。でも、…どうすればいいんだ?!僕にできることって、僕がしていいことって、なんだ?
エグザベさんに抱き留められて、エグザベさんの前では泣いてばかりいる僕だ。僕が安心して泣ける場所。
エグザベさんは、いつも寄り添ってくれるから。自分のことを、ほったらかしにしてでも、僕に寄り添ってくれる。そんなこと、してほしくないのに。
今も泣いてる僕を優しく抱きしめてくれている。一緒に居るのに、なんで、僕はこんなに悲しいんだ。辛くて、そして、哀しい。
思考が、走っているのかもしれない。悲しくて、でも、どこか安心したような何かがある。
エグザベさんの声が聞こえたからじゃない。なんだろう、この寂しくて悲しい、安心感は。
「大丈夫だよ、カミーユ。大丈夫だ。だって、君にはたくさん友達ができただろ。カミーユを助けてくれる人たちだ。君も彼らを助けてあげたいと思ってる。だから…」
それ以上は聞きたくなかった。力いっぱいエグザべさんにしがみついて、うめき声をあげさせた。だから、何だ?だから?
もう、僕は家族を失いたくない!それだけで、僕の頭はいっぱいになる。
大事な、家族!!僕の家族!!
母さんと父さん、2人が亡くなったのは、殺されたのは、僕のせいだった。
僕が、あの日、ガンダムMK-Ⅱを盗んだからだった。
僕は嫌だった。女みたいな名前と、知らない奴らに言われることが嫌だった。僕とファとのことをからかってくる奴らが嫌だった。僕の顔を見て女みたいだと笑う奴らが嫌だった。浮気をしている父が嫌だった。父の浮気を見て見ぬふりして仕事だけ見ている母が嫌だった。そんな両親を見限れず、いつか元通りなってくれと祈るだけの女々しい自分が嫌だった。大人の男になれない自分が嫌だった。
そんな嫌なことばかりのグリーン・ノアから逃げ出して、その後を無責任に知らない誰かに、ジェリドに、ティターンズに押し付けた。MSを盗んだ僕が、MSを盗まれた彼らのほうが悪いのだと責任を押し付けた。
その結果が、母と父の死だった。
だから、今も、あの時のガラスが、エグザベさんの頭の周囲で煌めいている。僕が、何も知らないふりをしていたから!分からないふりをして、目を背け続けたから白く光って、瞬いているんだ!
もう、これ以上、何も知らないふりはできない。しちゃいけないんだ!家族を失いたくないなら。
「僕のせいで!!両親は!!」
僕の懺悔を止めたのは、エグザベさんだ。僕はエグザベさんと目が合った。エグザベさんの眼を見た。いつものエグザベさんなのに。目の奥の方にまで、ガラスが煌めいて……頭の中で光っちゃいけないものが…
「カミーユ、君のせいではないよ。何も、君のせいじゃない。ティターンズの基地とMSの管理が甘かったからだ。バスクのような狂人を庇う人間が居て、それを地球連邦軍が捕縛できなかったせいだ。制度の、システムの欠点が起こした問題だった。カミーユ、本当に君のせいじゃなかったんだよ。」
震える僕を、エグザべさんが頭をなでてくれた。
「僕のことも、心配してくれたんだよな。ありがとう。僕のことも、カミーユのせいじゃないよ。僕が、軍人だからだ。良いんだよ、知らないふりをしてくれて。君たちに知られないことも、軍人の仕事のうちなんだ。」
エグザべさんはずっと、頭を撫で続けてくれている。
両親を思い出した。父さん、母さん。僕がテストで満点を取れた時の、かつての両親を。転んで泣いた小さな僕を抱きしめて、泣き止むまで撫でてくれた、母さんと父さん。
そうだ、僕の心は追いついていなかった。
変わっていく両親に、僕を見る目を変えていく人たちに、ファを好きになった自分に、僕自身の心が追いついていなかった。
「心は追いつかないって!!そう言ったのが、エグザべさんです!」
「そうだね。だから、そのために、訓練があるんだ。君たちが安心して暮らせるように、訓練を受けた軍人がいるんだ。僕にとって、本懐なんだよ。…なぁ、カミーユ、そろそろ、考えてもいいんじゃないかな?将来、君は何になりたい?」
今、今聞くのか?将来?
将来なんて。
僕の未来?未来ってなんだ?
なんで、今?僕に、聞くのか?
エグザベさんが、今、ここで、僕に、未来を聞く。その意味が、分かった。
混乱して、思考が走って、怒りも悲しみも全部、全部がごちゃ混ぜになって。叫びたくなる。こみ上げてくる悲鳴を、押し殺すのに全力を使って…
それでも。
1つ、1つだけ、未来でもずっと変わらないで欲しいものがある。
僕は、ずっと、これから先もずっと、ファとエグザべさんと支えあって生きていきたい。
それだけしか、今の僕にはなかった。
「僕は!エグザべさんに似て、強欲ですから!!」
そう、エグザべさんに吐き捨てるように言ってエアハッチを出て行ったのは、僕が宣言通りに強欲だったからだ。
僕にだって、エグザべさんほどはいないけど!でも、力になってくれる人はいる。
情報部で僕は、だいぶ労働したんだ!!ヌー曹長の面倒を見てあげた!情報部員は僕に感謝してくれた!
それなら、書類を人質に取ってでも、僕は、僕の願いを叶える方法を見つけ出す!
巣立ち 編
まあ、仕方ないね。Z本編では両親のことから目を逸らしてて、戦うことで現実逃避してたからね。だから、ジャブローで木に潰された猿の親子で精神やられてたわけだし。
それで、そのまま流されて戦争に参加するから争いを呼び込むから…あんなことに。
弊SSのカミーユも、巣立ちが大変そうだ。でも、ありあまるパワーをぶつける先はたくさんある。ファもカミーユを支えてくれているからできるよ。友達もできた。
不安になることって後なにがある??
富野監督作品を見るときは、主人公の主張を信じたら駄目だと思ってる。特にZくらいからは、もうその傾向があるよな。主人公すら、正しくない。
信頼してはいけない語り手パターンだよね。どのキャラクターというか人物もエゴがある。そして、たまに嘘ついてる。自分自身にも嘘ついてるときもある。
その人間臭さが、たまらなく良い!
シャア・アズナブルとかその代表。一番分からない。Z本編だと、人間の言語を話しているようで話していない、という感じを受けるし、会話ができていない。
エグザべ?わからん。自分の中のエグザべは勝手に話してくる。何こいつ。