機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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グラナダ基地に帰還したエグザベ・オリベを待っていたのは、ハマーン・カーンの怒りだった。

彼は親友のパプテマス・シロッコがハイファン中尉に連絡を取っていたことを知らなかった。
怒りで視野が狭まっていたのだ。

ハイファンもまた、具体的な状況を知らなかった。
知らずとも、彼の敬愛するパプテマス・シロッコ少佐の気分を害したという『キャスバル・レム・ダイクン』に懲罰を下すのに躊躇はしなかった。

『ルウムの亡霊』はハイファンの依頼を受けた後、地球連邦政府に詳細を知らされた。
人類の敵を知った。


アジテーション

 

 

 

僕は今、とても憂鬱だ。

アーガマに帰って来たばかりだというのに、既にあちらこちらから怒られてもいた。まあ、それは僕が悪いんだけれど。

特に、カミーユに対しては、言い訳のしようがない。

 

帰還を含めた報告のために来た艦長室で、今まさにハマーンに苦情を申し立てられている。彼女は苦情のために憲兵を引き連れて、ブライト艦長の艦長室の前で僕と情報部員のタナカ伍長を待っていた。

僕を待ってる必要あったんだろうか?…いや、あるか。

 

何の苦情かと言うと、キャスバル・レム・ダイクンの件、だった。グワダンでの1件も考えれば、僕も当事者の1人と思われても仕方なかった。

 

「プロバガンダが必要ということは、私も重々承知している。」

 

僕の隣に座るブライト艦長も、ハマーンを前に沈痛な面持ちでうつむくだけだ。僕もうつむくしかできない。

 

「バスクミーム?とシャアミーム?というものを、子供たちが見られないように、デバイスの設定をしてくれたことには、感謝もしよう。」

 

ハマーンの声が、とても重々しい。単語一つにも力が入っているのが分かった。当たり前に。

こういうのがプレッシャーが重いって言うんだろうな。初めて体験した。

 

「だが、何故、そこまで、用意周到に、子供らを、気遣ってくれた貴様らが、キャスバル・レム・ダイクン配信を、『ルウムの亡霊』のアジテーションを、事前に、この、ハマーン・カーンに、報告し、警告しなかったのか?私が、そう、訊いているのだ。」

 

「本当に、申し訳ありませんでした。知らなかったんです。情報部も、僕も。地球連邦軍のプロバガンダ要員の動向なんて、ただの中尉の僕は当然として、ブライト艦長ですら知らされないのが軍隊なんです。」

 

今、ハマーンに言った通り、知らなかったのだ。

この5日間、ドゴス・ギアに行って、パプテマス・シロッコ率いる『ヴェルザンディ』と打ち合わせや情報のすり合わせで、僕はドゴス・ギアから、シャア・アズナブル包囲網から離れられなかった。問題なく奴がアクシズに回収されたことを確認し、それで、グラナダ基地のアーガマに戻ってきて、ハマーンからキャスバル・レム・ダイクン配信の件を聞かされて初めて知った。

 

『ルウムの亡霊』は、もしかすると、僕らより先に『キャスバル・レム・ダイクン』を知らされていたのかもしれない。エゥーゴよりよっぽど連邦軍に信頼されている。まあ、それは仕方ないからいいけれど、しかし、ハマーンのこの怒り、だ。

何を配信したんだろうか?

 

「マイネちゃんが見てしまったことについては、本当に、心から僕らの配慮不足だったと、お詫びいたします。」

 

「本当に、申し訳ない。私の息子も、ハサウェイと言うんだが妻が目を離した隙に見てしまっていた。動画配信サービスのおススメ欄に出ていたらしい。あんなものを、子供に見せてしまって……私も、あの子にどう説明すればいいのか、わからない。ハサウェイだってあんなに面白がっていて、あの子が無邪気に笑う顔を見ていたら、見てはいけないと言えなくなってしまって………親として、ハマーンの気持ちが痛いほどに分かる。注意喚起もできず、自分が情けない。」

 

ブライト艦長と僕が深々と頭を下げたところで、ハマーンには響きもしないだろうが、他に謝罪の方法がないのが真実だった。

 

「あの、こういう事を聞くのは失礼だとは思うんですが、どのような配信動画を?」

 

ハマーンに地球連邦軍のプロバガンダだと気づかれたのは、つまりそういうことだった。

 

2日前、突然『キャスバル・レム・ダイクン』を名乗る人物が複数人、動画配信サイトに表れ、各々暴れだした。暴れだしたとしか言いようがない配信内容だったそうだ。

 

この短期間で、さまざまな年齢と性別の『キャスバル・レム・ダイクン本人達』とその関係者を名乗る人物までが動画配信を始め、動画配信サイトは魔界と言われてもおかしくない状態だという。

僕は、それをさっきハマーン本人から聞かされた。

 

「昨日の時点で、6人の『キャスバル・レム・ダイクン』が動画に出ていた。その全てが再生済みだったのだ。マイネの目に、あのような俗物を!!私の怒りが分からぬわけではあるまい?」

 

「はい。本当に、心から。手配が遅れて、すみませんでした。」

 

そう言って気づく。

カミーユとファさん、あの2人見てないだろうな?いや、でも、彼らも、もう17歳だし。だけど、キャスバル・レム・ダイクン配信の内容、僕は確認してないけど、ハマーンがこんなに怒るんだから察せないわけではない。

 

「えー。1人目はレトロゲーム配信で、よくある感じのありふれた配信ですね。2人目は下手なダンス練習配信で…いえ、ありていに言えば、動きがカマキリみたいで気持ち悪いですが普通です。3人目は半生を振り返るという名の昔はモテた自慢配信です。おススメはしません。4人目は賭博配信で、人間の愚かさが笑えるのでおススメです。5人目はミュージシャン志望のギタリストですね。排泄物について歌っているので、特に子供に人気のようです。6人目は既にアカウント停止させられましたが、泥酔した不審者の半裸配信でした。駄目な大人の姿です。」

 

艦長室の隅にいたタナカ伍長が淡々と教えてくれた。果たして、土下座って文化はアクシズでも通じるんだろうか。

 

深々と頭を下げるしかできない。ハマーンは憲兵や情報部に協力してくれていたというのに、僕らを信用してマイネちゃんたちを預けてくれていたというのに、僕らは無力過ぎた。

 

「私は、怒っていると、言っている。」

 

彼女の怒りは尤もだった。マイネちゃんの護衛の憲兵は何をしてたんだ?いや、護衛はしてたんだろうけども。

デバイスで何見るか、はプライベートだとでも思ったのだろうか?

 

「『お初だねぇ。キャスバル・レム・ダイクンおじさんだよ、だよ!!おじさんねー今日はお馬さんで10万円消えちゃったのー!ガンバランバラルってお馬さんにねー、全財産賭けたのにねぇ!レース途中で草食べ始めちゃってぇ。それでねー仕方ないからナンパした16歳か17歳くらいの女の子の靴、路上で嘗めて、ご褒美にご飯奢ってもらったんだよー!世界って優しいねぇ。』6人目の配信、復活してますね。別アカウントで。」

 

僕は椅子から降りて、土下座をした。

今は少しでも、ハマーンの視線から逃れたかった。タナカ伍長も間違いなく情報部員だった。バスクミームとシャアミームをブリーフィングルームで流した情報部員だった。

 

「……セイラ、セイラ、すまない。こんな、ことに、なるなんて。」

 

ブライト艦長は誰か女性の名前を呻きながら倒れた。今の名前、僕らが聞いても大丈夫な関係者だろうな?かつてのブライト艦長の不倫疑惑記事が頭を過ぎる。まさか、な。

土下座しながら、タナカ伍長に目配せをした。

 

「ブライト艦長、ベットに行きましょう。あとは、エグザべ中尉が何とかしてくれるそうです。」

 

言ってないぞ、そんなこと!!僕に何ができるって言うんだ?この状況!

 

「ようやく、アクシズの劣悪な環境から離れ、様々な価値観や娯楽に触れるようになれたのだ。マイネもセーラもマシューも。公国を礼賛する娯楽ではなく、旧世紀時代の王や貴族が楽しむような娯楽でもない。普通の子供が手に入れられる娯楽だ。分かるか?あの子らと同じくらいの年齢の子供が、料理を楽しんで作っている動画や作曲をしている動画、絵を描いている動画など。そんなこと、と貴様らは言うだろうが、そんなことさえ、考えることも許されなかったのだ、アクシズでは。動画とはいえ、あの子らにとって初めて見るものばかりだ。アクシズでは得られなかった友人たちとの交流の場さえ、得られるのやもしれん、と私は期待していた。軍も政治も関係なく、ただあの子らが心からやりたいものを見つけられるのかもしれないと、期待していたのに…そこに、このような、クズが!!」

 

「子供たち、全員のデバイスを再設定します。キャスバル・レム・ダイクンの単語を検索できない様にしましょう。とりあえず、このプロバガンダ戦争が終わるまでの間は。」

 

保護者フィルタをくぐりぬけて、キャスバル・レム・ダイクン動画は子供たちに見られている。

つまり、地球連邦軍は永世に渡り、『キャスバル・レム・ダイクン』を動画配信の象徴にすることを決定した。子供でも見られるように、動画配信サイトの運営会社と調整もしたんだろう。

子供の、その子供達の時代の先にまで、『キャスバル・レム・ダイクン』はただの目立ちたがりの芸人の名称として語り継がれるように。ニュータイプ幻想主義の思想家『キャスバル・レム・ダイクン』など、その1人に過ぎないと言い切るために。

 

「アクシズで、あの子らの周りには俗物だらけだった。思想や価値観を子供に刷り込んで、己の思い通りにできると思うような、下衆どもしかいなかった。摂政などしていれば、教育方針に口を出す機会も限られていた。過激派をさりげなく外すくらいのことしかできなかったのは私が弱い立場に居たからだ。…私自身、俗世の価値観がまだ、分からない。このように、貴様に怒っていることもまた、私自身の未熟さかもしれないが!!子供たちに、このようなアホが世に蔓延っているなど、教えていいわけではなかろう!そうではないか?エグザべ!」

 

「はい。僕も、そう、思います。本当に。」

 

そういう経緯は、ハマーンにも話せば分かってもらえるだろうが、それは誠実ではない。

 

子供たちは、間違いなくショックを受けただろうから。特に6人目。

 

とにかく、謝罪以外にできることはないよな。僕だって、こんな動画を子供たちが見ていたと聞いたときはショックだった。大人のエゴそのものなんだろうが、でも、せめて成人してから見てほしいと思う。あまりにも酷すぎる世界を子供たちに見てほしくない。

 

それは、ハマーンの言う、アクシズの『俗物』と変わりない考え方なのだろう。

 

そう。

僕は、間違いなくエゴイストだ。

 

 

 

 

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「…それでも、エグザべさんは、ダメだよって言ったんですね。ダメだよって、言えて、しまうんですね。」

 

僕がヌー曹長の言葉にそう、返せたのはエグザべさんのことが大好きだからだ。

何度も見て来た。エグザべさんがヌー曹長の提案を、はねのけるところを、見て来た。

 

「ほんとにね、それが言える軍人だから、俺もね、中尉には強く言えないよね。ほんとにね、困った人だよね、カミーユ君の保護者は。楽な方法を取ってくれないんだものね。誰に対しても、真面目に向き合おうとね、してくれるのはありがたいんだけどね、俺としても。でも、それだけ杓子定規とでも言うんかね?いや、よくやってるよ、あの若さでね。できることをね、しているだけなんて、エグザべ中尉はよく言ってるけどね。…まあ、そういう生真面目で真っ当な軍人なんだからね、サイド3への復讐だって中尉がしたいっていうならね、何割かの連邦軍上層部は即、賛成するよね。大義があるんだものね。」

 

復讐。

そう、地球の人も、コロニーの人もサイド3に復讐をしたいと、苦しめてやりたいと思う人間はたくさんいるはずだ。エグザべさんだけじゃない。この7年間、ジオン公国に連れ去られて今だ帰ってこれない人々も、取り戻せない悲しみに囚われた人々も、たくさん、いる。

 

「宇宙で生きると、人間って他人に冷たくなるもんなんかね?ルナリアンなんかね、その代表なだけで。各コロニーもね、サイド3相手に単独だと経済報復もしないし、裏で密貿易なんかもしてるしね。俺もね、宇宙育ちだし。だからかね、サイド3殲滅も本気で言えるの。」

 

宇宙の人間は他人に冷たい。それは、地球に住む人々が宇宙移民によく言う侮蔑だと思っていた。宇宙のことを何も知らない無知さから来る差別的な発言だと。

本当にそうだろうか?

 

コロニーのサイド1、2、4、5、そして地球。ジオン公国が起こした1年戦争で、たくさんの人が、普通の人々が死んで、でも、今、宇宙に残ったコロニーには地球に住む人々を蔑視している宇宙移民で溢れている。

 

僕だって、地球の重力に縛られたままの地球の人間を馬鹿にしたことがある。

ティターンズのことだ。

本当は、母と父がティターンズの技術士官になって、仕事に夢中になって…僕は両親をティターンズに取られたような気がして、それで言った言葉だった。

地球のことなんて、生まれた場所の事なんて何も覚えてない、考えてない子供の言葉だった。

 

「僕も、地球のことなんて何も知らないです。サイド3のことも、地球のことも、酷い人たちが住んでる場所だって、ずっと、ずっとそれだけしか考えてなかった。でも、住んでるってことは、生きているってことなんでしょう。そこで、命が生まれて、誰かがその命を守って愛して、温めあって生きている場所だってことなんでしょう。木星のことも、エグザべさんはきっと良い場所だって言ってた。エグザべさんはそれが分かってるんだ。」

 

そうだ。僕は、ジュピトリスに行くまで木星のことなんて考えたことはなかった。テストに出るから名前だけ憶えていただけで。

 

「そういうの、ニュータイプって言うんかね?でも、割と普通にね、上の人って、当たり前に木星まで考えてるからね。そうでなきゃね、木星人なんて全滅してるわけだし。1年戦争終わって、ジュピトリスが無事に帰って来たことなんて、本来ね、奇跡に近いわけだしね。いや、ほんとにね、よく帰ってきてくれたと俺も思うよ。反乱もせずにね。」

 

「エグザべさんは、退役したらジュピトリスに乗って木星に行きたいって言うんです。僕は、エグザべさんに置いて行かれたくないし、ファを置いて木星にも行けない。」

 

いや、本当に言いたいことはこれじゃない。木星のことなんかじゃない。

だって、ファなら僕が土下座したらきっと木星までついてきてくれる。僕も、ファに頼まれたら断れないし。

本当に言いたいことは、あまりに残酷すぎて言葉にできそうになかった。

言葉にしたくなかった。

 

「いやいや、エグザべ中尉がね、この先、退役できるわけないよね。考えればね、分かるだろうけど。中尉はね、サイド3の英雄になるんだよね。つまりね、これから先ずっとMSに乗ってね、最前線だよね。テロリスト制圧の最前線ね。ジオン共和国に戻ったらね、連戦させられるのは、もう目に見えてるだろ?俺もね、非人道的行為だから、連邦軍上層部に反対を申し立てしてるんだけどね。サイド3なんて、全滅させればね、良いだけなんだし。」

 

ヌー曹長は面白くなさそうに言った、その言葉が、僕を突き動かした。

言葉が、出てくる。言葉に、成ってしまった。言葉に、してしまった。

 

「僕は!エグザべさんに、生きてほしいんですよ!し、死んでほしくないんです!エグザべさんに、僕たちと、生きていてほしいんです!それなのに、エグザべさんは!…僕に!将来のこと考えろって!僕の将来に、エグザべさんがいないみたいに!!2度と会えないみたいに言うから!!」

 

そう、本音はそれだった。残酷で言葉にしたくなかった。考えたくなかった。

酷い、酷い話だ。なんでエグザべさんは、自分が死んでしまった後のことを考えてるんだ?死にたくないって言ってくれないんだ?僕たちと、一緒に生きていきたいって、言ってくれないんだ?

 

「軍人はね、時には死ぬのも仕事のうちだからね。いや、やめてよね、カミーユ君殴らないで。俺をね、殴っても何の意味もね、ないんだから。本当に、マジでね、やめてね。俺、普通にね、泣くから。大の大人がね、子供に殴られて泣くところ見たくないだろ?…頼むからね、うんって言ってよ!」

 

「僕は、エグザべさんに僕らと一緒にいてほしいんだ!これって、そんなに難しいことなんです?!」

 

「…まあ、ね。それなりには。というか、かなり難しいかな、現状のままだとね。…それよりは。」

 

ヌー曹長が、真面目な顔をして僕の目を覗き込んできた。この人の目は時々怖いことがある。僕を生物として観察してくるような目だった。

 

「俺もね、詳しくはないんだよ。カミーユ君。でもまぁ、聞いたことくらいはね、あるよね。大昔は、ストックホルム症候群なんて呼ばれ方してた症状があってね。適応障害の一種のことだよ。カミーユ君見てると思うよね。環境に適応しやすい事は、メリットばかりじゃない、てね。やっぱりね、ニュータイプなんて幻想なんだなって。…カミーユ君、今、思い当たる節あったね?少しはね、子供の君でも分かってきてるんじゃあないかな?君はね、昔、戦場に過剰に適応していたね。そう、アンマンにエグザべ中尉がね、来る前。」

 

ヌー曹長の言葉に動揺したのは、それが本当のことだったからだ。

 

僕は、ガンダムMK-Ⅱのパイロットになれ、と大人に言われるままに敵MSと戦って見せたし、ライラさんという女性軍人を殺した。アンマンでは、カクリコンと白兵戦までした。戦場へ出るのが当たり前になっていた。自分はまだ民間人だと口では言いながら、ガンダムMK-Ⅱに乗って戦闘をすることに抵抗もなくなっていた。

そう、エグザべさんがアーガマに来てくれなかったら、きっと、生身で人を殺してもいた。シャア・アズナブルの命令のままに。

 

「………それで、今はね、カミーユ君は、エグザべ中尉が求めるね、理想の子供像に適応しているんじゃあないかい?」

 

咄嗟に、ヌー曹長を殴ろうとしたけど、避けられた。狭い部屋なのに、距離まで取られる。

ヌー曹長は手慣れたように部屋にあった椅子を僕との間に置いて盾にした。

 

「なんでかね、知らないけれど、俺、昔から人にね、唐突に殴られることが多くてね。軍では不意打ちを食らうことはね、なかったけれど。学校の帰り道で待ち伏せ喰らってね、囲まれるなんてことはね、しょっちゅうだったよ。俺を殴ったってね、何の得にもなりゃしないのに。なんでかね、俺と話した連中は、俺を殴りたがるんだよね。カミーユ君は、俺に理由を話してくれる?誰もね、教えてくれないんだよね、理由。」

 

理由?ヌー曹長の言葉が、僕を傷つけたからだ。ただ、僕の口から、それを言うには、自分が惨めすぎた。

握った拳が痛いけれど、そうでもしないと涙が止まらなくなる。それが分かっていた。ここまで、自分の惨めさにさらされてのなら。

 

「もちろんね、俺を殴らない人もいるよ。少ないけれどね。エグザべ中尉もね、俺を殴ろうとしなかったよ。まあ、あの人は普通の真っ当な軍人だからね。いや、不当に他人を殴らないのがね、当たり前なんだけど。でも、アポリー中尉もねエマ中尉もね、本当に手が早くてね、困るよね。」

 

まだ、僕を観察する目で、距離があるのに、僕らの間には椅子があるのに、僕の目を覗き込んでくるヌー曹長はそう続けた。

 

「…僕が、おかしいんですか?今、ヌー曹長を殴ろうとした僕が、悪いんですか?」

 

怖くて、ヌー曹長の目から、僕は目をそらした。

 

「そう、今までね、俺を殴ろうとしたね、奴も、周りの奴らも、みーんな、カミーユ君と同じこと言ってきたよね。みんながね、同じこと言うんだから、俺に悪いところがあるんだろうけどね。人間性の悪いところを矯正できるってね、就活の時に学校の先生に言われたから軍に入ったんだけどね。」

 

僕は、何も言えなかった。言葉も出てこなかった。

 

エグザべさんの理想とする子供の姿。

 

僕は、あの日、アンマンでエグザべさんに会うまで、兵士を、いや、大人の男をしようとしていた。大人の男が、どんなものなのか分からないまま、求められるまま、それっぽい安いモノマネをしていた。

 

今は?今の僕は?

 

惨めだ。それが、分かってしまった。

 

 




弊SS世界で、誰が一番の被害者って、宇宙世紀の世界に居る『キャスバル』って名前の人じゃないか? 編


そもそも、ジオンって名前は絶滅してんじゃないか??生きてたとしても名前の変更手続きするやろ。多分。
キャスバルって名前もシャアって名前もクワトロって名前もこれから全滅する。確定情報!


ハマーンとママ友してるエグザベ中尉。
この後、カミーユとファとマシューとセーラが例の配信動画を勉強時間中に見ていたので、ハマーンに子供達を怒ってもらいます。本人が怒っても威力迫力が皆無なので。
弊SSのエグザベ中尉は色々考えた挙句に言葉に詰まって「だめだよ、見たら。」くらいしか言えない。人生経験が足りない。まあ、25歳の若造だし、仕方ないな…いや、お前もっと頑張れよ!!ハマーン任せで恥ずかしくないのか?!どう叱ればいいのか分からない????資料作ってプレゼンでもしてろ、馬鹿!ヌー見習えヌー!



『ルウムの亡霊』は全財産を『キャスバル・レム・ダイクン』達を雇うのに使ってもいる。しかし、まあ、宇宙世紀の世界なので、明日の食べ物のために自分の人生を切り売りする人間はいくらでもいるし、娯楽としても喜ばれているので採算があってしまう。
まあ、気持ちが落ち着いたら難民支援事業でも開始すると思います。別名義で。

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