機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
10年前、エグザベ・オリベはルウムに居た。ハイスクールに通い始めたばかりの頃だ。
相変わらず、隣の家のカミーユと一緒に通学していた。
カミーユが家からもちだした新聞を通学バスの中で2人して読むのが日課だ。
「爺臭ぇ!」「うるせぇ、現代社会落第してろ。」「最近、応用環境学の教授がコラム書いてるんだよ。」「あの爺さん、元気すぎ、ウケる。」「でも、また、ゼミ休講だろ。なんでだよ?」「あの教授、地球で講演会してるからね。」「いや、今度はアフリカにネズミ捕獲に行くって聞いた。ゼミ生全員ワクチン打つんだろ?」「ヤッバ、絶対あのゼミ入らねぇ。」「ワクチン打っただけで地球に行けるなら、お得じゃないかな?」
ハイスクールに着くころには、新聞のことなんか忘れてた。
戦争が起こるなんて、僕は思ってもいなかった。
「カミーユのことが心配か?」
目の前のハマーン・カーンは、廊下に正座している俺を、彼女の部屋にあるデスクの後ろから睥睨した。
あのね、これでも、俺一応、曹長なんだけどね。いや、彼女は地球連邦政府の大事なお客様だからね、俺もこの程度では怒らないけどさ。
ハマーンは、彼女の愛娘マイネちゃんがいる部屋に俺が入ることを拒んだ。ここはアーガマの憲兵区画にある、彼女とセーラとマイネの部屋だ。憲兵に囲まれるように設定してあるし、常に監視と護衛がついている。俺の横にも憲兵がいる。もちろん俺を見下ろすようにしてね、立ってる。
マイネちゃんとファさんは部屋の隅の大きなクッションに座って、絵本を読んでいるというのにね、俺は床に正座かぁ。いや、俺はね、大人だから、うん。
よく見たら、エグザベ中尉がマイネちゃんにね、買ってあげたクッションだ。持ち歩いてるのかな?
「そりゃね、そうでしょ。なんたって、小さいクソガキですからね。よくよく考えもせずにね、一生軍属の道なんか選んでくれちゃってね。本当に、ハマーンさんもね、憲兵さん達もね、地球連邦軍の上層部の人たちもね、なんで先に俺たちに相談してくれなかったんです?よりにもよってサイコミュ。あのね、サイコミュなんてね、安定しない技術ですよ。言っちゃなんですけど。ニュータイプでないと無いと使えないとか、なんとか?そんなよくわからない感覚に依存するとか、なんとか?技術としてね、そんなもん使えないんですよ。あと10年もしないうちにね、廃れることが確定してんですよ。そんなもんのために、クソガキ共の未来がね、軍になっていいわけじゃないでしょうよ。」
本当にね、何のためにエグザべ中尉もへとへとになりながら、カミーユ君とファさんを護って来たんだか。
子供を戦場から離す、なんて義勇兵の『中尉』の権限じゃとてもできないことなのにね。諦めて少年兵使う方がエグザベ中尉にとっては楽だったろうにね。そんな道を考えもしないで、ようやくね、軍属からも離せるってなった途端にハマーンの起こしたこの騒ぎだ。
本当に嫌になるよね。
「エグザべとカミーユに恩を返したいと、このハマーンがそう、思ったからだ。」
ハマーンは平然と返してくるし。なんだかなぁ、俺が間違ってるんかね?そういう気分にさえなってしまう。
いや、俺はね、間違ってないはずだ。情報部でも人事部でも、ハマーンに苦情を申し立てると決定した時に、タナカ伍長も含めて全員一致で俺を応援してくれたわけだし。……人事部とタナカ、ついてこなかったな。いや、まあ、腐ってもタナカ伍長はアーガマ情報部の次席なわけだし。なんでついて来なかったんだ?…タナカぁ!!
「強化人間とかいうね、バカげた技術。あれとクローン人間の兵士化計画。それらとね、サイコミュとをね、連動させてるとしてもね、正直、無意味ですよ。兵士しかできない、MSの部品にしか見られていない人間がね、戦後に真っ当な社会をつくれるわけないからね。資源と技術の無駄遣いの極致と言うかね、どぶに金を投げ捨てる様なもんでしょうよ。」
ハマーンが手元に置いていた、水の入った紙コップを俺に投げつけた。
「この、痴れ者が!子供に聞かせられる話か!」
確かにそうなんだけどね!でも、先に子供に見せられないような機密を見せたのはハマーンのほうだよね。
「申し訳ありませんでした。」
でも、俺は大人だからね。頭くらいね、いくらでも下げるよ。
それでクソガキ共を戦場から連れ戻せるならね、いくらでも、頭下げるよ。俺の頭なんか安いもんだよね。
「部屋を変える。憲兵の詰め所に移らせてもらおう。…マイネ、怖がらせてごめんなさいね。できれば、マイネもファも今の話は忘れて。30分だけ、ファお姉さんと一緒にこの部屋にいて。すぐに戻ってくるから。」
ああ、女って怖いよな。
俺がそう思うのは、こういう姿を見た時だ。え?そんなに使い分ける?自然に、施政者と母を使い分ける姿はね、本当に俺には怖すぎる。
というかね、今更、使い分けたところであまり意味ないのでは?
「さっさと来い、痴れ者め。いつまで座っているつもりだ。」
本当にね、女って怖い。怖いしね、意味わからないよね。
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ニュータイプ。人類が宇宙に適応し革新した姿。そんなものは、ただの妄言だ。
空間認識能力、洞察力、直観力、テレパシー、未来予知。
人がそういう力を持ち、自在に扱えるようになれば人類社会の全ての問題が立ちどころに解決する。
腹立たしいほど、笑いだしたくなるほどの、妄言だった。
アクシズで、それを嫌というほど思い知らされた。
そのニュータイプの能力を前提としたサイコミュ兵器、サイコミュMS、それが近い未来に不要の物となることは、このヌー曹長に言われずとも分かっていた。所詮、数に勝る戦力は無い。
「マイネによくも、残酷なことを、聞かせてくれたものだ。」
「本当に、申し訳ありませんでした。」
「サイコミュだけなら、兎も角。よくも、強化人間のことなど!」
そう、強化人間。過度のストレスと催眠医療、薬物による人体の強化。それが、只人をニュータイプへと無理やり覚醒させる技術だ。そう、研究を主導していたザビ家派閥は謳っていた。
本来のニュータイプと何ら変わりはない、と。
ニュータイプを強化して更なる戦力増強すら可能だ、と。
そう、戦力だと言ったのだ、あの俗物共は。
「強化人間のことを、生きたMSの部品だと考える俗物ばかりだ。その延長線上で、ニュータイプさえ、私でさえアクシズを、ジオン公国を効率的に機能させるための部品にしか見られていなかった。ミネバでさえ、そうしなければ、生きては来られなかった。…どれほど残酷な環境だったことか。マイネに思い出してほしくないというのは、私のエゴか?」
「いえ、違います。正しいです。ハマーンさんは正しいです。」
ヌー曹長は自発的に床に正座している。まだ頭が水で濡れているのが、逆に腹立たしい。小賢しい男だ。このハマーンの怒りを鎮めるために、みすぼらしい男でも演じてみせているのだろう。
「クローンを強化人間にし、兵士、いやMSの部品にする計画。アクシズで止められなかったのは、間違いなく私の力不足だ。ジオン公国に兵はいない、軍もない。私でさえ、MSの操縦が上手いだけの小娘だ。軍のことなど、戦争のことなど、何もわからず、知る機会もなく、目標さえ曖昧なまま突き進むしかできなかった。ましてや、戦後のことなど考えられるような知識も環境もありはしなかった。アクシズでは誰も地球圏を手に入れるという勝利以外見ていなかった。それを正せなかった私は、このハマーンは無力な小娘だ。……しかし、そうであるならば、そうであったとしても、サイコミュも強化人間の研究もクローン兵士の開発も、アクシズの醜悪さを知る私が生きているうちにこの世から消さねばならない。マイネの生きる世界に残しておけるものではない。違うか?」
「違いません。」
「憲兵も連邦軍上層部も、このハマーンに同意した。エグザべではなく、この私に。」
告げれば、ヌー曹長の顔色は変わる。そうだ。お前はアーガマの情報部員でしかない。分かると良い。
「は?え?え?あ?はぁ?!」
「貴様の、アーガマの情報部が、エグザべに協力し、カミーユとファの情報と記録を改竄したことも、私が連邦軍上層部に報告した。」
アーガマの情報部も憲兵も人事部も、ずいぶんと子供たちを気にかけている。護ろうと全力以上のものを尽くしている。
羨ましいくらいに、妬ましいくらいに。だが、自分がかつて得られなかったからと言って、子供たちからそれを奪うようなことは、私はしない。
このハマーンの矜持がそれを許さない。
子供たちを護るために尽くすべき最善は、この私が示す。決して、その場凌ぎの物ではなく、本当にあるべき最善を。
「査問委員会程度ね、今更ですから。別にね。ていうか、憲兵さんも人事部さんもね、賛成してくれてたしね。憲兵さんなんかね、記録改竄にも証明写真の加工にもデータのすり替えにもね、協力もしてくれたでしょ。3日前まではね。…え?今更ね、俺らだけ切ってね、はいバイバイってできるとでも思ってんの?は?一生、軍基地から外に出られない様にしてやってもね、俺は全然構わないんだけどね、憲兵さん。」
「カミーユは、ニュータイプのMSパイロットだ。ガンダムMK-Ⅱ、地球連邦軍の最新型MSの設計図さえ頭に入れている。Zガンダムの設計者でもある。今更、軍と無関係に生きていける立場にないことは分かっていただろうに。戦闘記録にまで手を付けたな、ヌー曹長。連邦軍上層部は、お前を危険分子として登録した。今後、憲兵の監視が外れると思うな。」
「それこそ今更なんだよね。まあ、俺の口をね、塞いでどうにかなるなんて考える馬鹿は山ほど、居た、わけだしね。ハマーンさんもね、そんなこと考えるとか、ちょっと想定外だったかな。」
そうか、鼻で笑うか。だが、書類を、記録を改竄した程度で、軍から離れられるほどカミーユとファの立場は軽くはないことは本当だ。
ティターンズの暴虐の被害者であり、エゥーゴの浅慮の被害者であり、機密を多く知ってしまった、情報管理の甘い地球連邦軍の被害者でもあるのだ。
貴様らの失態の証人を野放しにできるほど、地球連邦政府にも余裕はない。
エグザべもヌー曹長も、甘い人間だ。書類改竄程度の一時しのぎなど、何の時間稼ぎにもなりはしない。
歪の根本を正さねばならない、という覚悟が足りない。
「私は、カミーユにサイコミュを使わせる。」
「サイコミュなんて欠陥品ね、子供に使わせるわけないでしょうよ。上層部がね、許可出してたとしても、1週間後には撤回させてやるだけのお仕事がね、俺にできただけ。」
「サイコミュによるアクシズの洗脳計画は、時間と費用が足りなかった。」
未練だ。時間と費用、それさえあれば。
エグザべにも悟られたかもしれない未練だった。
「洗脳計画?サイコミュによるアクシズの洗脳計画?初耳なんですが?え?何それ?時間と費用があればできんの?サイコミュ研究にそんな論文、無かったんですけど?え?3万人も、洗脳できんの?」
言葉遣いが悪いな、この痴れ者は。憲兵を見やると、私に代わり、ヌー曹長を叩いた。
『修正』という文化らしい。
「時間と費用が足りなかった、と、私は言った。…アクシズの3万人を真人間に戻せるのであれば、多くの問題が解決しただろう。ニュータイプとサイコミュによる他者の洗脳計画は、アクシズの極秘研究だった。ニュータイプの持つ他者への感応力とテレパシー、それをサイコミュで増幅させ催眠医療と合わせて洗脳する研究だ。実験段階にも辿り着いてはいないが、理論としては問題なかった。……人間は追い詰められ、危機感に支配されれば行動が単純になる。自己さえ見失う。洗脳に適した状態になる。知っているだろう。今のアクシズはその状態にある。洗脳計画の実験としても十分なサンプル数が採れるはずだった。」
「まあ、それは、そうでしょうけど。…しかし、ニュータイプの人はね、オールドタイプと相容れない、みたいな気分でいる人が多いでしょ。そういう気分の人がね、洗脳装置なんて使いやしませんよね。生かすことより殺すことを考えますよね。普通のニュータイプの人って、手が早いというか、すぐMSに乗るというか、殺したがると言うか…。なんかそういう傾向が強いんですよね。そういう人間使ってね、3万人を1人で洗脳できるって言ってもね、…まさか、子供にね、それをさせるつもりだったり、するんなら!」
立ち上がりかけたヌー曹長を憲兵が抑える。逸り過ぎなのも問題だな。痴れ者なだけはある。
「何度も言わせるな、痴れ者。洗脳計画は諦めた。アクシズは、全滅する。いや、全滅してもらう。地球連邦軍とも共和国軍とも同意を得ている。ここまではエグザべも同じ方針だ。だが、あの愚か者はサイコミュのことは詳しく知らないらしい。ニュータイプのくせに、とんだ間抜けだ。」
「まあね、共和国はサイコミュ研究を禁止されてますし。1年戦争後にね、潰したフラナガン機関の研究資料も研究者も連邦軍が押さえてますし。そもそもね、エグザべ中尉はMSパイロットなんで、あれでもね、詳しいほうではあるんですよ。」
だからか。エグザべとヌー曹長が甘いのは。覚悟が足りない。サイコミュに対して、恐怖心が足りない。
ニュータイプが、強化人間がMSの一部になるサイコミュが齎す災厄が見えていない。
エグザべ、己をただのMSパイロットのままに押し込めて、そのままで居たところで、カミーユやファを護れはしない。もっと見るべきだ。世界を。未来を。
「サイコミュ兵器の恐ろしさを、アクシズ殲滅戦で、キャスバル・レム・ダイクンに喧伝してもらっては困る。未来のためにも、人類のためにも。奴には、サイコミュ兵器で何もできないまま惨たらしく消えてもらう。そのために、私はカミーユにサイコミュを使わせる。アクシズのサイコミュ兵器を、サイコミュMS全てをカミーユにジャックさせる。ここ、グラナダ基地から、だ。敵にジャックされるような兵器など、誰も信用しなくなるだろう。研究費用さえも出さなくなる。信用できない兵器は、兵器ではない。制御できない兵器は必要とされない。人間と同じだ。」
「いやでもね、子供にね、カミーユ君に使わせる必要性がないでしょうよ。それなら、エグザべ中尉もアムロ大尉もいますしね、パプテマス・シロッコ少佐をね、ここまで引っ張ってきても見せますよ、俺が」
大きな口を叩くものだ。たかが、アーガマの情報部員ごときが。ニュータイプの特性も分からぬ、痴れ者が。
だが、面白くもあった。そうか、分かるはずもあるまい。人間とはそういうものなのだ。本来、人間というものは時間を重ねて話し合い、己の考えを、思いを伝えあって、ゆっくりと分かち合っていかねばならないものなのだ。
便利になり過ぎては、周囲の人間も自分さえも置き去りになって……やがて、消えゆく存在なのだ、ニュータイプとは。
ニュータイプに社会というものは作れはしない。自分を含めた全てを置き去りに、宇宙そのものと適応してしまう能力は人間には荷が勝ちすぎている。
「ニュータイプが、ニュータイプ同士が感応すると相互に影響を与えあう。本来は、だ。…私は過去にシャア・アズナブルと感応したことがある。アムロ・レイ、奴も私と同じだろう。シャア・アズナブルの影響を受けた部分があると見た。」
そう、アムロ・レイのことも、ララァ・スンのことも、アルテイシアという女児のことも、私はシャア・アズナブルと軽い感応を起こした時に知った。
かつてのハマーンは、恋する少女は恋人のことを知るために、そう、した。愚かな振舞いだった。小娘らしい愚かさだ。私の恋慕に応えないと分かっていた相手にするような真似ではなかった。
「そこがね、一番分からないところですよ、俺らオールドタイプにとっては。…感応、ね。相手のことが一瞬で完全に理解できるという解釈が今一番の主流らしいですけど。俺に言わせれば、なんか味気ない能力ですよ。人間味がないというかね、人をデータとかシステムみたいに扱えてしまうというか。情報なら別にそれでいいんでしょうけどね、人間は情報じゃないですしね。…面白くも、羨ましくもないんですよね。」
「貴様のような痴れ者に、訳知り顔で言われたくはない、が。…同意せざるを得ない。私達ニュータイプにとって、感応は諸刃の刃だ。強い相互作用が相手に執着を生む。時には、家族以上自分以上の存在にもなる。そのことを自覚するのも難しい。……感応した相手を否定することは自己否定以上のストレスにも繋がる。これは、私の実感だ。私では、シャア・アズナブルに対して隙ができる。アムロ・レイでも。」
「より一層ね、カミーユ君には厳しいでしょうよ。あの子ね、このアーガマで、シャア・アズナブルの部下やってたんですし。ニュータイプの感応だって、とっくに…」
「貴様は、道具に感応できるのか?…いや、そうだな。言葉を濁さずに言うのであれば、感応は官能に通じるところがある。シャア、奴は男に、アムロ・レイ以外の男に感応するのか?」
そう、アムロ・レイ以外の男は、シャア・アズナブルの中に存在しない。それは、確信だった。
「……なるほどね、まあ、シャア・アズナブルですし、そうですよね。そうか。アムロ・レイは例外っていう話はね、エグザべ中尉も言ってましたし。そうなると……シャア・アズナブル相手にサイコミュジャックできるのは、エグザべ中尉とカミーユ君とパプテマス・シロッコ少佐くらいになるということか。マシュー君は?」
「マシューは素直が過ぎる。あの子が正直者なのは美点ではあるが、強者に惹かれやすくもある。駆け引きもできないだろう。性格が向いていない。…痴れ者の貴様が言うパプテマス・シロッコ少佐がどのような人物か、私は知らないが、簡単にアーガマへは呼べはしまい。『ヴェルザンディ』の持つ大艦隊、その指揮者だ。直にエグザべもその旗下に入る。」
「あの!でかいクソガキ!!」
憲兵は私が見ずとも、痴れ者を殴った。
『修正』か。おかしな文化もあったものだ。これをテレビ放送するのだから、よっぽど私達が地球圏と離れている期間が長すぎたのだろうか。理解できないのは、当たり前の人々の生活から離れすぎていたから、か。
「私に、協力しろ。ヌー・ハーグ曹長。悪いようにはしない。貴様の行った様々な問題行動さえも、働き次第では不問にもなろう。お前は、私に協力して、この後、100年の平和を築かなければならない。平和な時代を知らぬまま育った私だけでは、不可能なことだ。今もまだ、戦場に、1年戦争の中にいる人間にも不可能なことだ。生まれたばかりで、互いに争い、傷つき、傷つけあうニュータイプにも不可能なことだ。多くの人間を協力させなければ、できはしまい。私は、覚えている、知っている、あるとあらゆるジオン公国の情報をだそう。人脈も、だ。好きに使え。そう、必要ならアクシズの貨幣……貴様は恥ずかしげもなく、よくも。…いや、いい。使うと良い。アクシズの貨幣、偽札をよく作れ。私が許す。」
子供たちを護る。そう、世界に啖呵を切るというのなら、これくらいのことは言って見せろ!100年の平和を言って見せろ!エグザべ・オリベ!
「100年の平和。…まあ、そう。ほんの10年もね、経たないくらいの前か。戦争なんか起こるはずがないってね、俺だって思ってましたよ。平和ね。長らく忘れてたのかね、俺も。いいですよ!大賛成です。俺としても願ったり叶ったりってところでね、全力でやりますよ。まあ、俺がね、できることだったら。」
深々と、このハマーンに頭を下げるか、ヌー曹長。この痴れ者でさえも、未来を、子供たちの生きる平和な世界を見る、か。
エグザべ、お前にも見せてやろう。それが、実現できると。
お前は私たちをアクシズから助けだした。
そして、これからも宇宙を泳ぐ白い糸になってさえ、カミーユやファを護ろうとしている。
馬鹿な男だ。それでは、足りない。それだけでは。本当に馬鹿な男だ。
その馬鹿な男の願いを、叶えてやろうと思う我々もまた、愚かなのだろう。
ニュータイプであろうとオールドタイプであろうと関係なく、人は平和を求め、実現できる未来にするために奔走することができる。いや、むしろニュータイプを妄信していないからこそ、できることか。
人類の歴史は、オールドタイプが宇宙世紀まで繋いできた。今も人類の多くはニュータイプではなく、オールドタイプだ。
ニュータイプが紡いだ歴史など無いに等しい。
「ニュータイプなどという言葉、幻想の中に消えてもらう。人類の生存圏に平和をもたらすためには、それが必要だ。そのために、全力を尽くせ、ヌー曹長。」
「イエス、マム。」
陰謀や計略も、そう、オールドタイプが生み出した戦術の一つだ。男だけの特権でもあるまい。
女子供の計略こそ、怖れねばならないことを思い知らせてやろう。
「そのためには、地球でさえ、共和国でさえ、コロニーでさえ巻き込んで見せよう。」
そう、オールドタイプもニュータイプも、強化人間も、全ての人間を巻き込まなければ、人類は戦いから逃げられない。
ハマーン・カーンは政治家である 編
本質が兵士とか戦士ではなくて、政治家なんだよな。真面目だし、計画性も他のキャラクターよりはある。
まあ、その割には毒ガス暗殺未遂したり、銃で脅迫しようとしたりしてて、周りに信頼できる部下とか戦力が少ないから自分が何とかしようという感じが伝わってくる。
アクシズの兵士も訓練が足りてないってハマーンは理解してるし、地球圏にはマジで死にに来た感がZ本編にはある。え?俺の気のせい?じゃあ、なんで最前線に出てきてるんです?ハマーン・カーンは。
アクシズにとって大切な資源惑星で主要工場で生活物資生産基地で軍事基地の小惑星アクシズを質量兵器として使ったのは、もう自殺行為では?お前ら全員殺して、私も死ぬ、くらいの。
アクシズ内部で空気漏れあったら、改修やらなにやらにどれだけ時間と資源と人材がいることやら。戦争の片手間にできることじゃないよ。
新訳Zガンダムですが、あの後、アステロイドベルトにアクシズ帰れるんですかね?だってZZガンダム本編で出て来た灰汁の強いキャラクターどもが再び敗残兵になることを、というか逃亡を許してくれるんですか?
ジオン公国の敗北を再度受け入れられるんですか?アクシズは。
無理じゃろ。ZZガンダム本編で見ても、ハマーンはそれほど強権握ってないっぽいし。
自分のSSでくらい、穏やかに優しく生きてほしい。